肌寒く感じ、閉じていた瞼を開けると廊下を歩く生徒達の姿が目に入ってきて、横に視線を移すと彼女は相変わらず眠っていた。
どれぐらい寝ていたかは分からないが、どうやらまだお昼の時間は終わっていないらしい。
......そろそろ起こさないとな
ルーナは午後の授業もあるし、もしお昼を食べていなかったとしたら夕飯まで我慢することになる。私の経験上お昼を抜いての授業は辛いものだ。
私にもたれてぐっすりと眠っている彼女を起こそうと手を伸ばし、優しく名前を呼ぶとゆっくりと瞼を開けて、ぼんやりと遠くを見つめだした。
「お昼は食べたの?」
私の問いかけを聞いたルーナはまだ眠たいのか首を横に振りながら、目を擦っている。
「じゃあ遅めのお昼にしましょうか。」
もう殆どなさそうだが、パンぐらいは残っているだろう。
そんなことを考えながら、立ち上がると誰かに引っ張られ、振り向くと座っているルーナが私の服を握っていた。
「...怖い夢はみなかった?」
どうやら私の心配をしてくれているらしい。私は少し嬉しくなって笑いかけながら頭を撫でる。
「貴女のお陰でぐっすりと眠れたわ。ありがとう、ルーナ」
安心したように表情を崩す彼女は子供らしくて、胸の奥が温かくなったが、何も知らない彼女を見ていると罪悪感が膨らんでいった。
「さぁ、行きましょう。なくなっちゃう」
ルーナを立たせて、ローブについた汚れを振り払っていると彼女はどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
「どうしたの?」
不思議に思い、問いかけてみればにっこりと笑っているルーナは思いもしなかった事を口にした。
「ヘルキャットさん、あたしのお母さんみたい」
驚きで体が固まったが、いつもの彼女の冗談かと頭が処理して、私も少し笑いながらルーナの髪を整える。
「こんな大きい子を産んだ覚えはないわよ。ほら、行きましょう」
私の言葉を聞いたルーナはまだどこか嬉しそうで、大広間に向かっている途中も鼻歌を歌っていた。
きっとルーナのお陰なのだろう。その日の夜もまた次の日の夜もあの夢をみることはなくなり、ぐっすり眠れるようになっていた。
それに比例するかのように顔色もだんだんと回復していき、隈も消えていった。あんなになかった食欲も回復し、今朝もサラダとパン、そしてデザートとしっかりとした朝食をとった。
いつも通りに午前の授業が始まり、することがない私はベンチに腰掛けて、ぼんやりと遠くを眺めながら時間を潰していた。
しかしひとつだけ意外だったことがある。それはハリーがエバンズの事を聞きにこなかったことだ。てっきり知りたがりの彼のことだから、付き纏ってでも聞き出そうとしてくると思っていたが意外にもそれはなく、今のところそんな様子も見せていない。
......まぁボガートが自分の母に変身したら聞きたくても聞けないか...
相手の最も恐れているものに姿を変えるボガートが自分の母になっても、知りたいという好奇心より、知りたくなかった事を知ってしまうかもしれないという恐怖心の方が勝るのだろう。
それか私に悪いと思っているのか、私直接でなくても周りの人に聞いているかもしれない。
...セブルスに聞くはずないから、可能性があるのはルーピンね…
変なことを言っていなければいいが、そこら辺のことは変に気が回る彼は大丈夫だろう。
背筋を伸ばし、立ち上がると少し体を動かしてちゃんとペンダントを持っているか確認した。
......一瞬だったな...
この過ごしやすい時も、本当に一瞬だった。もうすぐ訪れるイースター休暇が明ければ、ブラックが寮に忍び込む日もすぐに訪れる。そうすれば私は今までの立場に逆戻りだ。
そろそろ授業も終わる頃だろう。私は昼食まで時間を潰すため、図書館に向かった。
それからはとても平穏だった。何事もなく、何する訳でもない日々が過ぎるのはとても速い。イースター休暇まであっという間に過ぎていき、休暇が終わってしまえば、すっかり季節は春になり、走ると少し汗が滲むほど暖かくなり、そのおかげか夜中に城中を見回るのも苦でなくなった。
授業がない日も廊下は一日中生徒達の声で賑わっていたが、夜になれば一気に静まり返り、いつも通り城の中を歩き回る。
壁に掛かっている絵画の人を起こさないように明かりを灯さずに歩いているせいで、暗くてあまりはっきりとは見えない。
そろそろ部屋に戻ろうかと思い、自室の方向に足を向かわせていると人の気配を感じ、目を凝らしてみればハリーを連れたルーピンがいた。
「こんばんは、レイラ。見回り中かい?」
にこやかな笑顔で話しかけてくる彼の隣にいるハリーは、何も言わずにただじっと見つめてくる。
「今終わった所よ。...ところでこんな夜中に生徒を連れ回すなんて教師のする事では無いと思うんだけど」
何故こんな夜中にハリーと歩いているのか不思議に思った私が声に出すと、ルーピンは苦笑いを浮かべて困ったように頭を掻く。
「別に私が連れ回している訳じゃないよ。だからそんな冷ややかな目で見るのを止めてくれないか?」
別に冷ややかな目で見ていたつもりは無いのだが、どうやら彼はそう感じたらしい。ルーピンから視線を落とすと、彼が何か持っている事に気づいた。畳まれている羊皮紙のようなものは、暗がりではっきりとは見えなかったが、私が思いつくのは忍びの地図しかない。ということは、セブルスと別れた後ということか。
「じゃあ、仕事頑張ってね。先生」
嫌味たっぷりに言いながら、隣を通り過ぎると後ろからルーピンの声が聞こえてきた。
「おやすみ、レイラ」
振り向けば、いつもと変わらず笑っているルーピンが明らかに私の返答を待っている姿が視界に入り、面倒な事を避けるために呟くように小さな声を出した。
「...おやすみ」
視線を逸らし、彼等に背を向けるとそのまま廊下を歩き進めていく。
......良かった...
1回大きく変わろうとしたせいもあり、不安はあったが私の知っている通りに進んでくれているようだ。
順調に進んでいることに安心したがすぐに別の不安が襲ってくる。
この方向に進んで、セブルスとばったり会うなんてことはないよね…。
少し嫌な予感がしたが、どうやら私の気の所為だったらしく、セブルスに会うことなく部屋に戻ることが出来た。
それからは淡々と時間だけが過ぎていき、生徒達が大興奮するクィディッチ優勝戦を迎えた。
グリフィンドール対スリザリンということもあり、試合の数日前からお互いに睨み合い、いつも以上に衝突するのか、度々喧嘩している姿が見られたが、学生時代に見ていた喧嘩程激しくなく、全て生半可に思ってしまった。
生徒達はストレス発散をするように盛り上がるのだろうが、残念ながら私はそうはいかない。ハリーを守るという仕事は現在も継続中で、更には変わった事はないかどうかよく目を凝らして集中しなければならないから楽しめるものじゃない。
観客席の1番後ろの端に座り、試合が始まるのを待っていると試合の始まりを告げる笛の音が響き渡った。一斉に応援する歓声と、解説の声がその場を盛り上げる。
時々箒に乗った選手が頭ギリギリを横切るものだからハラハラした。それ以外は見ていて楽しいものだが、それも余計な心配がなければの話で私はどこか変わった所はないか集中しながら探し続ける。
「このゲス野郎!このカス、卑怯者!」
突然汚い言葉をマイク越しに叫ぶ声が耳に入ってきて、マイクを片手に興奮しているリー・ジョーダンに視線を移すと彼は指をさして何か叫んでいる。
彼が指をさしている方を見ると、ドラコがハリーの箒の尾を握りしめて、引っ張っている所だった。
四方八方から非難の声が飛び交う中、ドラコは特に気にしていない様子で体制を整える。
ドラコだって、クィディチの選手に選ばれるぐらいなのだから普通に箒に乗るのは上手いのだろう。ただ彼の場合、ハリーで雲隠れしてしまっているだけ。
...........こんな真っ直ぐな子が人を殺せるわけがない
ハリーを目の敵にして、勝つことに必死になっているドラコを見て心からそう思った。こんなにも無邪気にただ目の前の勝利のために一生懸命になっている子供がいずれ家族を守る為に苦しむことになる。
人を殺すことなど、小心者な彼には到底出来る事じゃないし、更にはその相手が知っている人となると難しいだろう。
自分の命が危険に晒されていようが、ハリーを良い風には思っていなくても、彼はハリーをあの人に引き渡すような事はしないし、人を殺さない。
比べるまでもない。ドラコは私よりも何倍も綺麗な人間だ。少しばかり不器用で、頑固なだけでちゃんと話をすればきっと直ぐに友達もできるというのに、変な方向に歪んでしまった。止めてくれる人がいなかった。ただそれだけだ。
人を殺せないのは普通の事なのだろうか。私はセブルスを救うためだとはいえ、今まで傍にいてくれた家族をあっさりと殺した。殺せてしまった。
ふと顔を上げると、丁度ハリーがあっさりとスニッチを手に取り、クィディチ競技場は爆発するんじゃないかと思うぐらいの歓声が響き渡った。
地面に足がついたハリーに仲間達は喜びを分かち合うように抱きついて、グリフィドール生達は、喜びのあまり観客席から乗り出している。
喜びを爆発をさせるハリーの笑顔が目に入ると、いつか見た3人に囲まれながら満面の笑みを浮かべるポッターの顔が自然と重なった。
「......本当に...そっくり...」
やっぱりポッターの血を受け継いでいるのもあるのだろうか。無意識に呟いてしまうほど、クィディッチで勝った時に見せていたポッターの表情と瓜二つだった。
何も知らず、無邪気に笑みを浮かべる緑の瞳を持ったハリーの笑顔を見ていると、あまりに残酷で恐怖を感じた。
試合が終わり、観戦していた生徒達がぞろぞろと帰る中、グリフィンドールの生徒達は興奮がまだ冷めていない様子で、凄い盛り上がっている声が私の方まで聞こえてきた。それに比べ、負けてしまったスリザリンの生徒達は残念そうに肩を落として、騒ぐグリフィンドールの生徒を睨みつけている。ちょっとしたきっかけがあれば今にも喧嘩が勃発しそうだ。
観戦席から生徒達が少なくなった事を確認し、城に帰ろうと席を立ち、帰り道を歩いていると丁度競技場と繋がっている入り口から出てきた誰かとぶつかってしまったらしく、カランという音が聞こえてきた。
「あぁ...ごめんなさい。」
地面に転がっている箒を拾い上げ顔を上げ、まず目に入ってきたのは悔しそうな表情を浮かべているドラコの表情だった。彼は箒を落としたことにも気づいていないかのように、拳を握り締めたまま少し下を俯いて険しい表情を浮かべている。
「.........これ、落としたわよ。」
再度話しかけながら差し出してみると、我に返ったように顔を上げ、一瞬だけ間抜けな表情を見せた彼は、私を見た瞬間直ぐに不機嫌な顔をして私から箒を奪い取った。
彼から嫌われるような事をしたかは分からないが、どうやら目の前にいるドラコはそんなに私を良くは思っていないらしい。
「貴女と父上は知り合いなのですよね?」
突然口を開き問いかけてきたドラコの言葉遣いは、一応私が年上な事を気を使っているのか前話した時よりも上品にそして丁寧だった。
「...えぇ、そうね。「嘲笑っているんでしょ」
それがどうかしたのか訳を聞こうとしたというのに、私の言葉に被せるように話す彼は睨んできながらペラペラと言葉を並べていく。
「貴女もあんな奴に勝てない僕を馬鹿にしているでしょ」
何か勘違いしているのか、何を思ったのか知らないが話を続けるドラコが拳を作った手を力いっぱいに握り締めているのは、震えている彼の肩を見てすぐに分かった。
「もううんざりだ。」
私から視線を逸らし呟いた言葉はきっと私に向けた言葉ではないのだろう。
引き止める気などなかったが、あんなに寂しそうな顔をされたら、いくら私でも放っておける訳がなく、私の横を通り過ぎようとする彼の腕を握りしめて引き止めてしまった。
引き止められると思っていなかったのか、少し驚いたような表情を浮かべる彼だったが、直ぐに険しい表情に変わった。
何も考えずに引き止めてしまった私は、自分が今彼に伝えたいことを考えてみると、最初に思いついたのはドラコがハーマイオニーに対してあの言葉を言う姿だった。
この際去年からここに来たかったなんて事を思いながら、さっきから何か言っている彼を見つめて口を開いた。
「はな「そんなこと思ってないわよ。」
ドラコの話を途中で遮ると、私の言葉を聞いた彼は機嫌を悪くしたのか、鋭い視線で睨んでくると冷たい言葉を吐き捨てる。
「同情なんて求めていない。」
「......同情...かは分からないけど、少なくとも貴方を馬鹿にした事も嘲笑ったこともない。」
私を睨んでくる彼は耳を傾けるように口を閉じた。
「貴方はそのままでいて。無理に変わる必要なんてない。」
私が頭に手を置いたのが想定外だったのか、ドラコは驚いたような顔をしてたが、気にすることなく頭を優しく撫でた。
「.........また悪態つきたくなったら来なさい。私でよければ、いつでも聞くわよ。」
言葉を残してその場を離れると、城に向かって足を向かわせた。
優勝したグリフィンドールの生徒達がお祭り騒ぎをしているだろう時に、私は少し雲がかかっている空を眺めながら、これから起こるであろう出来事について考えていた。
私の記憶が間違いなければ、今夜ブラックが寮の中に忍び込んで、ロンが彼の姿を見ることになる。
もし本当にブラックが忍び込んだら、その出来事は直ぐにホグワーツ中に広まるだろう。そうなれば、あの消えかかっていた噂もまた確証の近いものとして広まって、休んでいた頃に元通りという訳だ。
.........やっと...過ごしやすくなったと思ったのにな...
今回ばかりは私が疑われるのが必然だろう。事が起こるのは生徒達が寝静まった真夜中、つまり私が誰の目にも見られずに自由に動き回っている時間帯な訳で、きっと生徒達も教師達も直ぐに私に疑いの目をかけてくる。
とは言っても誰から疑われようが、流れを変えよう動く気はさらさらない。
......何事もなく進んでくれたら...それでいい
そんな事を思いながら見上げると、夜も深くなってきた空に怪しげな雲が浮かんでいた。
夜空に浮かんでいる月を隠す雲のせいで、今夜は月明かりが差し込まず、廊下もいつもより暗い。
しょうがなく明かりを灯し、見回っていると天井からひょこりと顔を出してニタリと笑っているピーブズと遭遇してしまった。
「やぁ、こんな夜更けまでご苦労さま。嫌われ者さん」
こんな奴と遭遇してしまうなんて今日はついてない。構わなければすぐに飽きて他に行くだろうと、無視を決め込んでいても今日の彼は物凄くしつこかった。
「きっと今日はお前にとって良い記念日になるよぉ〜ヒヒヒッ」
良い...記念日?
私はピーブズが言った言葉が引っかかり足を止めると、彼は面白そうに口角を上げ、2、3回目の前で回転する。
「どういう意味?」
「さぁ〜どういう意味だろうねぇ〜」
私の問いかけに答えてくれるもなく、ニヤニヤと笑いながら話すピーブズを見ていると無性に腹が立ってきた。
聞いた私が馬鹿だった。本当に彼と関わって良かった事なんて何一つない。
そう思いながらまた歩きだそうとすると、横から愉快そうなピーブズの声が聞こえてくる。
「...これは面白くなりそうだ」
振り返ってみると、彼は私ではなく奥の方を見ていて、いつも以上に口角が上がっていた。ピーブズが見ている方から足音が聞こるような気がした私は後ろを振り向いてみると、明らかに寝巻き姿のマクゴナガルが私に近づいてくる。
「少し、校長室までいいですか?」
「............えぇ...」
何故校長室に連れていかれるのは大体予想がつく。ちらりとピーブズに視線を移すと、さっきまでそこにいたはずなのにどこにもいなかった。
マクゴナガルに連れられ、螺旋階段を上ると、普段閉まっている扉は開いており、中に入らなくとも誰がいるのか見えてしまった。
ダンブルドアとセブルスの姿が見えた瞬間、一気に入る気力が失せてしまい、溜息をつきたくなる。
「こんな夜中にすまんの。」
何とか足を動かし、中に入ると椅子に座っていたダンブルドアが話しかけてきた。
「いえ、お気になさらず。......それで何の用でしょうか」
校長室の扉が閉まる音を聞きながら問いかけると、目の前に腰掛けている彼は真剣な表情を浮かべながら口を開いた。
「...少し話があっての。ついさっきのことじゃが、またもやシリウス・ブラックが城の中に忍び込んだようなのじゃ。」
勿論知っていたが、私は知らない振りをするために表情を歪ませる。
「...すいません、少しばかり理解が出来ません」
「グリフィンドール寮に、ほんのつい先程の事じゃ。姿を見たという生徒まで出ておる」
声を出せばすぐにダンブルドアの声が返ってきて、校長室は一気に静まり返った。
「寮に?合言葉があるはずでしょう」
「合言葉を書き写していた生徒がいたんです。その生徒曰く無くしたと」
私の疑問に答えるマクゴナガルの声はとてもはっきりしていて、分かりやすく説明してくるが、私からしたらそんなことより今この状況で頭がいっぱいだった。ダンブルドアにマクゴナガル、そしてセブルスとなると、私が怪しまれている事はほぼ間違いない。
「....そうですか...分かりました。すいません、私の失態です。一度じゃなく二度まで.........しかしひとついいでしょうか?」
変わることないダンブルドアの顔色を伺って、静かに声に出した。
「.....あなた方はそれを盗んだのが私だとお考えなのですね?」
私は後ろにいるマクゴナガルと、斜め前にいるセブルスにそれぞれ目で追うと溜息をつきながら口を開いた。
「...なるほど......私を呼び出したのはシリウス・ブラックを手引きしていると疑われているからですか。......これでも一応魔法省の人間なんですけどね。」
「いや、疑っておらんよ。ハリーを命懸けで救ってくれた君がブラックを手引きするとは考えられんからの。」
私の言葉を否定するダンブルドアは、いつもの調子で後を続けていく。
「君を呼び出したのは、お主じゃったらブラックが忍び込んだ方法も大体分かっているんじゃないかと思っての。」
それのどこが疑っていないというのだろう。誰がどう聞いても疑っているではないか。
「知りませんよ。分かっていたら私も苦労はしてないんですから。......仮にこの城の中に手引きしている者がいるとしたら、きっとそれはブラックが信用している人だと考えています。」
上手く私から話を逸れるように話すと、視界の端にいるセブルスの表情が少し険しくなっていく。もう今は何を言っても怪しまれるような気がする。
「............あの子が死のうが生きようが私には全く関係ないことぐらい貴方が一番ご存知でしょう?ダンブルドア先生」
殆ど口を開かずに声を出すと、彼は何故か満足したような表情を浮かべて、少し明るい声を出した。
「十分じゃ。すまんかったの。真夜中に呼び出してしまって」
何を基準に判断したのか分からないが、ダンブルドアの表情は明るく、にっこりと笑いかけてきた。何か言いたげそうなのはセブルスだけではないらしく、後ろにいたはずのマクゴナガルも前に乗り出している。
「ハリーのことはもう心配はいらん。レイラが守ってくれるというのなら安心じゃ」
守るなど一言も言っていないというのに、ダンブルドアは断言するように言ってくる。
「仕事ですからね。」
後付けをするように口を挟むと、それでも彼は満足そうな表情を崩すどころか、嬉しそうだ。
「...あの、戻っていいですか」
そう問いかけてみるとダンブルドアは、にっこりと笑ったまま頷く。
「おやすみ、いい夢を」
「......おやすみなさい」
小さく声に出しながら校長室を出ようとすると、明らかに私を睨むように見てくるセブルスと目が合った。
......凄い...怪しんでる...
いつもと表情は変わらないものの、真っ黒な彼の瞳に映る自分の顔を見て、私は視線を逸らすと校長室を後にした。