シノンには悪いが、ここでリンクとなった彼の物語は終わりを告げます。
それではどうぞ。
全てが終わり、須郷の手により、一時VRゲームは大打撃を受けた。仕方ないことだ。
安全性を第一にしていたVRで起きた大事件。SAO未帰還者の拉致監禁と言う事案は、多くの目が向けられる事件として世間を騒がせた。
これによりVRMMOであるALOも一時停止。VRは世間から消されるのも時間の問題。
だがある人物により、それは一転する。
その人物は『世界の種子』と言う、完全フリー権利プログラムを無料配布した。
これは環境さえ整えば、誰もが簡単に仮想世界を創り出せるプログラムであり、それにより『アルヴヘイム・オンライン』を始め、多くのVRゲームが芽吹きだす。
須郷を始め関係者は全て捕まり、いまだ悪あがきしているようだ。
茅場晶彦はやはり、ナーヴギアによる死因で死んでいると、ゼルダの父親から聞かされる。
だが本当に死んでいるのか? 俺の前世の記憶から、自身をデータにして生きている。そんな夢物語を考えてしまう。
彼の死因は、脳をスキャンした結果なのだから、余計にそう感じる。
SAOから帰還した者たち。キリトたちぐらいの学生年齢層は、ゼルダの父親が作った《学校》に通い、ゼルダやミファーもそこに通うらしい。
成人である人たちも、彼のより手厚く保護され、社会復帰が見込まれている。
SAO事件はこうして全ての後始末、結末が決まっていく。
俺の転生した結果、変わったことはそう多く無い。
死んでいない者は死んでいないし、助けられた人は助けられただけ。
俺の独り相撲は結局のところ、なにか意味があったのか分からない。
それでも俺ことリンクは、全てを終えた。終わったのだ………
◇◆◇◆◇
それはとあるパーティー会場。
多くの人たちが戸惑う中で、正直、俺こと桐ケ谷和人も戸惑っていた。
「あ、アスナ、俺ラフ過ぎないか?」
「気にしなくていいって、言ってたじゃない」
ここはゼルダの家の屋敷で、SAO関係者が《アインクラッド攻略記念パーティー》として、彼女の父親が場所を提供した。
彼女の父親はかなり強引に捜査したとのこと。色々大変な中で、さらにはVRの可能性も信じてくれて、いまでは大忙しらしい。
そんな中で、ここでのパーティーなのだが、
「ホテルの一室まるまる借りるってか、ここ私有地らしいぜ」
クラインが飲み物が入ったグラス片手にビビっている。俺もそうだから他人ごとでは無い。
唯一苦笑するだけなのは彼女。結城明日奈ぐらいか?
「あの人、まあ会って分かったんだけど、あの家の娘さんならね」
明日奈はそう微笑みながら、正直縮こまるパーティーのメインに苦笑していた。
ゼルダの彼女は、かなり恥ずかしそうにしている。服装もしっかりされ、ミファーと共にいる。無論、リーバル、ウルボザ、ダルケルも側で控えている。
「ルクスやフィリアさんたちもいますけど、ルクスさんもおっかなびっくりです」
「シリカ、じゃなかった、あ………」
「別にここにいるときはいいんじゃねえか? 正直、オレはまだリンクの本名聞いてないぜ」
綾野珪子こと、シリカが顔を出して、俺は壺井遼太郎こと、クラインはそう言いながら、周りを見渡す。
そうしているとこちらを見つけるプレイヤーが現れる。
「おーいシリカ」
「フィリアさん、それにルクスさん」
「シリカ、その、彼を知らないかな。あ、会いたいって思ってて」
ルクスは頬を赤くして言う中、ユナとノーチラスも辺りを見渡して探していた。
「あの人にはちゃんとお礼を言って無いから」
「ユナさん、ここに来ていてね」
「お父さんにはかなりね。戻ってから心配させたから、少し自重しないと。だけどVRは続けたいかな」
「まったく………」
ユナである彼女は、父親にだいぶ心配されていて、ゲームも禁止にされそうということ。
それでも諦められないと、ノーチラスは呆れながら彼女の側にいて、そこに、
「楽しんでいますかキリト」
「ゼルダさん、あの、その」
「すいません、お父様が少し張り切り過ぎてしまって………」
ゼルダは恥ずかしそうにしつつも、楽し気なパーティーにほっとしている様子だ。
ミファーも苦笑する中、レインも周りを見渡していた。
「あの、ゼルダ。彼奴知らないかな? 来てそうだけど、やっぱり来てないのかな」
レインの言葉に、少しだけ寂しそうな顔をする二人。
だけどすぐに微笑み、
「彼なら」
◇◆◇◆◇
それは少し遅い時間だった。
月明かりの窓を見ながら、一人の少女はぶーたれている。
「あーあ、今日も検査大変だったな~」
検査の為、そして自分の病気の為に、パーティーに行けなかった少女は、個室の病室から窓ガラスを見つめていた。
紺野木綿季、15歳。
病気は後天的なもので、母と双子の姉と共に、闘病生活を余儀なくされた。
だが、ゼルダの父親がとある治療機器に希望を見出し、彼女たちを始め、何人かデータを取ることを条件に、その治療を受けられることに。
その結果、母も個室で治療、姉も無菌室だが、時折元気な姿を見せている。
その治療は《メディキュボイド》。痛覚を感じないように、意識を仮想世界に置き、その間身体に薬などを投与する方法。
その結果、彼女は無菌室から出られるほど回復し、もしかすれば薬で治るかも知れない。いま彼女はその瀬戸際にいるほど、回復していた。
「髪伸びたな、切っちゃおうかな?」
それでもSAOの中に囚われていた所為で、心配をかけてしまった。取り戻し始めていた筋力も衰えていた。
髪も長く伸びて、ALOの世界の自分に瓜二つだなと思う。
その為、切るのは少しもったいないと思っていると、ドアがこんこんと叩かれた。
「はーい」
それを聞き、来客者は静かにその扉を開く。
「えっ………」
そこにいたのは、金色の髪をなびかせ、湖のような碧眼の青年だった。
「元気そうだな」
どこかほっとするように言い、その姿はこの国ではかなり目立つ顔立ちで、本人からすればかなり迷惑な顔なのは、誰も知らない。
「り、リンクっ!?」
不意打ちの為、彼女は少し布団を深くかぶり、顔だけ出す。
(ど、どうしてっ!? パーティーは!!? ぼ、ボクのパジャマどうなんだろっ)
そう内心思う中、彼は近づき、椅子に座る。
「ど、どうしてここに? パーティーは」
少女は動揺するのを隠しながら、それでもちらちらと青年を見る。
「行く気になれないから、ここに来た。パーティー行けなかっただろ」
そう優しく言う中、彼女の中に何かが芽吹く。
嬉しいような、恥ずかしいような、そんな感情。
(なにこれっ!?!?)
どんどん身体が熱くなる感覚。彼は気づかず、少女を見ていた。
「な、なんか、向こうと同じだね」
「あ、ああ。髪は少し切った程度だな。ユウキは少し伸びて、ALOみたいで可愛いよ」
彼は自分の綺麗な金髪をいじる。彼はこのきらきら光る髪は目立つだけのものとしか考えていないかのように雑に扱う。
そう言われた、心音が聞こえてきそうになった。
(ナースコールした方がいいのかなボクっ)
「ユウキ?」
「は、はひっ」
◇◆◇◆◇
ユウキの様子がおかしい。ちらちらとこちらを見るが、目線を合わせようとしない。
この顔に生まれ変わってからこんなんばかりだ。そんなに変なのか?
布団でガードされてる気がするが、
(年頃の女の子だし、パジャマ姿は恥ずかしいのか)
そう納得しながら、例の件を聞かなければいけない。
「ユウキはALOは続けるのか」
「えっ、う、うん。姉ちゃんが同じ人たちとギルド作ってるんだ。今度入れてもらう」
新規に始めるのも、SAOの記録を一部引き継いで始める。シリカの場合ピナを連れて行ける。
ストレアたちも、このままピクシーとして、あの世界で生きられるようにしてもらい、俺は火に焼かれたかいがある。まさか現実で遭うとはな。
「そうか」
「リンクはどうするの」
「俺は」
俺の目的は全て達成した。
SAOの被害者は1000人くらいは減っているし、それ以上は俺がどう足掻いても無駄だったと折り合いがつく。
ユウキの様子から、無菌室から出られるほど回復したのに、俺はもうやるべきことは全部したと、そう現実に知る。
ここからの記憶は、もう摩擦の中で消えていた。
これ以上、キリトと言う主人公に関わる必要は無い。
ま、
「続けるさ」
それはそれでこれはこれ。
できることはしてやるよ、この芽吹きの先になにかあるか、知るために。
もうここが、いまの俺の世界だ。
「そうなんだ………」
嬉しそうに微笑むユウキが、少しだけ防壁を解き、いつものユウキだ。
そして、
「ユウキ」
その手を握り、
「ふへっ」
少し恥ずかしいのか顔を赤くして、俺はその手を握る。
「今度は一緒に遊ぼう」
そう言うと、頬を染めたユウキは静かに、そしていつもの笑顔で、
「うんっ♪ 遊ぼうっ、一緒に♪♪」
そう嬉しそうな顔を見て、
(………ああ)
地獄を味わい、意味を見失い、目的だけで動いていた人生が、やっと終わる。
握り返された手の中、
「ねえリンク」
「ん?」
「いまからボク、ALOにダイブするから、その………手、握ってて欲しいんだ」
それに静かに頷き、彼女と別れる。
◇◆◇◆◇
ALOの世界、いまから大型イベントが開催される。
ユウキは急いで、姉たちがいる場所に出向く。
その時、ふとっ、町のガラス、自分を見た。
「………可愛い、か………」
髪は伸ばしたままにしよう。
そう思い、ユウキはすぐに空に飛ぶ。
◇◆◇◆◇
新たな『新生アルヴヘイム・オンライン』は、ALOデータだけじゃなく、『旧ソードアート・オンライン』のデータも渡され、そのアバターなどを引き継ぐことが可能になる。
多くのプレイヤーが引き継ぐ中、キリトは引き継がなかったが、
「俺はお前で遊びたいからな」
リンクを見ながら、僅かに笑う。
引き継ぐそのデータで、遊びつくすと共に、何かあれば無双する気でいる。
この世界のVRの問題に、友人が関わると言うのなら。
「それくらいはしないと、ま、釣りはある報酬だがな」
そうしていると、こちらに気づく、三人を見る。
ゼルダの父親に、報酬のデータを渡しながら、ついでに三人はピクシーからアバターへと変わり、空を飛ぶ。
そして、
「リンクっ」
満面の笑みのユウキを見ながら、俺は、
「ああ行こうか」
そう言い、夜空に生まれた『新生アインクラッド』へと飛ぶ。
こうして俺が勝手に作った使命は終わり、今度は俺の選択で先を選ぶと決めた。
この世界の芽吹きと共に………
のちに妖精の世界で、絶対負けない剣士と黒の剣士。
それと共に勇気の勇者と言われるプレイヤーが、この世界に名前を轟かせる。
ただ一つ、勇気の勇者だけは、彼は勇気あるからそう言われているわけではないと、仲間たちは語った。
一人の少女だけは、ほんの少し頬を赤く染めて、その理由を彼に隠し続けている。
お読みいただき、ありがとうございます。