全部、お兄ちゃんのものですっ!   作:雨宮照

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私の好きな人。

放課後の屋上。

私、有栖川京香は、クラスメイトの男子で、サッカー部主将の、帝野玲夜くんに呼び出されました。

......また、きっと、告白です。

帝野くんは、運動神経抜群で成績も優秀な、女子の注目を集める、キラキラした男子。

性格もよくて、人のお手伝いとかもよくしています。

「実は、二年の頃からずっと、有栖川さんのことが好きでした。付き合って下さい!」

帝野くんが、頭を下げて、手を差し出します。

私は、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、その手を取らずに、告げました。

「......ごめんなさい、好きな人がいるので」

目の前の帝野くんは、頭をあげて自嘲気味に笑うと、「突然ごめんな」と、バッサリ断った私のことをフォローしてくれます。

ほんとにいい人です。

私に、好きな人がいなかったら、付き合っていたかもしれません。

私は、踵を返して校舎の中に戻ります。

実は、私の好きな人は、この学校にはいません。

他の中学校にいるわけでもありません。

 

教室に戻ると、担任の先生が、私のことを待っていました。

今日の放課後は、先生が私に話があると言っていました。先にすこし用があることは伝えておいたので、仕事を進めようと思ったのでしょう、先生は先日行われたテストの採点をしています。

「遅くなって、すみません」

「いやいや、用があったならいいんだ。そこにかけてくれ」

私は、先生の向かいの席に座ります。

すると、先生はこんなことを聞いてきました。

「こんなことを聞くのは、君にとっていい事なのか分からないが、有栖川さん。君は、この学校生活、楽しいかな?」

「なぜ、そんなことを聞くんですか?」

「いや、君が楽しいならいいんだが、あまり他の生徒と一緒にいるところを見ないから、心配で、ね」

......余計な心配をかけてしまいました。

また、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

「先生、私は、先生たちのおかげで、毎日楽しいですよ」

先生に申し訳ない気持ちを、精いっぱいの笑顔であらわします。

「それに......」

私は続けます。

「私、お兄ちゃん以外のひとに、興味ないので」

 

恋愛だってそう、友だちだってそうです。

そんなことに現を抜かしているくらいなら。

そんなことに時間を奪われるくらいなら。

お兄ちゃんに好かれるような、魅力的な女性になりたい。

綺麗になりたい。優秀になりたい。かわいくなりたい。

そう思ってしまいます。

 

でも、それでいいんです。

私の全てはお兄ちゃんであり、私の喜びは、お兄ちゃんとともにあるのです。

 

これは、そんな不器用な生き方をしている私と、お兄ちゃんの、限りなく不器用な、恋物語です。

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