「……何やってんですか」
私は、全裸で最後のポーズを決める秋川さんに、自分が作れる一番のジト目を向けます。
秋川さんは、こちらに気がつき、振り返りざまに言います。
「あんたもうお風呂から出てたのね! じゃあ私、いただいてくるわね!」
いや、なんですかその何事にも動じない究極のマイペースは。
友だちの家のリビングで全裸魔法少女ダンスを繰り広げることが既にマイペースの極みではあるんですけど。
私は、秋川さんが出ていったドアを見つめながら考えます。
……秋川さんの裸、綺麗でした……。
スラリと伸びたハリのあるみずみずしい脚。
くびれのある健康的なお腹。
のっぺりともせずぷりっとしすぎてもいない、理想的なお尻。
そして、推定Cカップと思われる、程よく膨らんだ乳。
乳首が上にツンとたっていて、雪のように真っ白で。
理由もなく目を奪われてしまいました……。
私のおっぱいが爆乳のBカップだとしたら、秋川さんは超乳のCカップですか……。
恐るべし、発育です。
そのあと、しばらくリビングの椅子に腰掛けてライトノベルを読んでいると、唐突に大音量でアニソンが流れました。
「まったく……秋川さんですね」
私は、音の出どころと思われる、秋川さんのスマートフォンを探します。
私は未だに二つ折りの携帯電話を使っていますが、世の人々はみんなスマートフォンを使っているようです。
秋川さんのスマートフォンは、探し始めてからものの数秒で見つけることができました。
……電話の着信音だったようです。
私が端末を見つけると同時、電話が切れてしまいました。
よくあることです。
するとだんだんと、通話が切れたあとの画面に、秋川さんの壁紙画像が表示されていきます。
(さて、秋川さんはどんな壁紙にしているのでしょうか)
気になります。
アニメオタクのようですから、アニメの画像とか?
それとも私のように、猫の写真?
……いや、お兄ちゃんへの愛が壁紙に出てないとかそういうことではありませんからね!
ほら、私たちって昨夜付き合い始めたばっかりじゃないですか。
だから、付き合う前は壁紙をお兄ちゃんにするわけにもいかず、かわいい猫の写真にしたんです。
だって、壁紙だと他の人にもお兄ちゃんを見られてしまうじゃないですか!
お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんなので、他の人には見せませんよ!
……そうです。壁紙画像は、ときに他人の目に触れるもの。
秋川さんの壁紙画像は……なんと、入浴中の有栖川京香の写真でした。
私じゃないですかぁぁぁぁぁああっ!
私は、すぐにスマートフォンを持って風呂場に向かいます。
そして、お風呂の扉を勢いよく開けて、声を張り上げました。
「なにやってるんですかぁぁぁぁあっ!」
すると、秋川さんはキョトンとしたあと、何かを思い出したような顔になって。
「ああ。あんた壁紙見たのね! よく撮れてたでしょ」
「よく撮れてたでしょ! じゃないわぁ! 何盗撮してくれちゃってるんですかぁっ!」
あのときカラカラ音がして入ってきたのは、私の爆乳を盗撮するためだったんですね。
「とにかく、他の人の目に触れる前に気づいてよかったです」
私が、不幸中の幸いに胸をなでおろしていると。
「あ、有栖川さんの裸の写真ならさっきいっぱい撮ったわよ」
「おぉいっ! おぉいいいっ!」
なんですかこの人は!
何を考えているのかさっぱりわかりません!
とりあえず、秋川さんのスマートフォンをタップして、画像を削除しようと奮闘するのですが。
「パスワードなんてのが出てきましたよ!?」
私の二つ折りの携帯電話にはない機能をまずひとつ見つけました!
秋川さん、答えて曰く。
「あー。パスワードは教えられないわねぇ……恥ずかしい写真とかいっぱい入ってるし!」
私の恥ずかしい写真がいっぱい入ってるんですよ!
あんたの恥ずかしい写真なんか今はだるまさんがころんだことよりも興味がありません!
……困りました。
パスワードとなっては、私にはどうすることもできません。
四桁なので、単純な人ならいくつかの質問でわかるんですけど……。
一か八か、やってみますか。
「秋川さん! 誕生日はいつですか!」
さすがにいくら秋川さんでも、これでパスワードを探っていることに気づくでしょう。
そして、さすがに自分の誕生日がパスワードなんてことはなく、自分の誕生日だった場合はこんな質問に答えるとこはないわけで。
「十月の八日よ!」
あっ、言いました。
(まあ、さすがに誕生日がパスワードってことは無いですよね……)
私は、思いながらも、いち、ぜろ、ぜろ、はちと、持ち主の誕生日を入力します。
すると、表示されるホーム画面。
……真性のアホがここにいました。
もちろん私は、壁紙を含めすべての写真を削除しておいたのでした。
続く。