有栖川京香が秋川茜による数多の迷惑を被り、風呂上がりにも関わらず、どっと疲れている、その時。
遠く離れた寺院の一室にも、風呂上がりにも関わらず疲れのとれない三人の高校生がいた。
……県立上某高校短歌部の三人組である。
俺、涼介は寺のしけた布団を敷きながら、ため息を吐いた。
「……はぁ。寺って聞いてたから大変だっていうのは予想してたんだが、こんなに大変だったとはなぁ」
それに呼応するかのようにため息を吐いた太陽が、後に続ける。
「ほんとだよ。雑巾がけはあの長い廊下を延々とさせられるし、休もうと思ったら精神統一のための座禅だとよ」
「極めつけはあのお粥にもなってない飯だ。何じゃあの風呂に浮いた垢レベルの量しかない粥は! お粥にあやまれ!」
俺は布団の上に寝転がり、畳み掛ける。
畳の上で畳み掛けていたら面白かったのに。
二人で布団に寝転がっていると、俺たちの頭上に、般若のような顔をした恐ろしい女が一人。
「あんた達ねぇ、こんな修行にも耐えられないくらいの精神力で短歌詠むんじゃないわよ! 何よお粥に謝れって! あんたが寺に謝りなさいよっ!」
おぉ怖ぇ。
主催者様が怒っている。
……このアングル、スカートならパンツが丸見えなんだけどなぁ。
本来なら可愛らしいピンク色のパジャマが憎たらしくすらあるぞおい。
「ねえ、なにニヤニヤしてるの? 踏み潰されたいの?」
はい。踏み潰されたいです。
とは、間違っても怖くて口に出せない。
「……でも、結構厳しい修行だったってのは一理あるわね」
紅葉が思案する。
「そうだっ! 王様ゲームしない?」
「王様ゲーム? 三人でか?」
太陽がさっそく嫌そうな顔をする。
「なによ! 何か文句があるの?」
「い、いえ……」
部長の言うことは絶対なのである。
王様の言うことよりも絶対なのである。
……でも、これはチャンスなのではないだろうか。
同じ部屋で、男女が寝泊まりするのだ。
間違いが起こらない方が不自然だろう。
右の太陽を見ると、やつも俺の方を見て、こっそりと親指を立てた。
これは、作戦である。
王様の命令を武器に、王様にならなかった男子ひとりが、王様になった男子にエロい命令をしてもらう。
……初めてこの世で、王様になることが残念な王様ゲームが開催された。
京香には悪いが、男ってこういう生き物なんだ。……すまん。
結果から先に言うと、俺たち男子組は、一度も王様になれなかった。
紅葉の運がよかったのか、俺たちが幸薄かったのか。
どっちにしろ、既に疲れが最高潮に達していた俺たちは、命令を受けてさらに疲れ。
法師にお経を唱えられた異形のもののように、すうっと眠りについたのであった。
続く。