先ほどより、少し長い接吻のあと。
さっきまでとはまた違った理由で、私は思考が停止します。
「はわわぁ…………」
変な声が漏れてしまいました。
真剣だったお兄ちゃんの顔が、くしゃりと歪んで、私に微笑みかけます。
久しぶりに思考が回復した私の頭の中を埋めつくしたのは、愛おしさでした。
優しい笑顔で微笑みかけるお兄ちゃんは、愛おしくて、くるおしくて。
そこで、私は気づきます。
もう、私はためらいなくお兄ちゃんに抱きついていいということにです!
いやまあ、今までも抱きついてはいましたが、兄妹としてのとはまた少し違うじゃないですか。
なので、今日の私は、積極的です!
お兄ちゃんが胡座をかいている前に、同じ向きでちょこんと座ります。
巷でいう、女の子座りというやつです。
お兄ちゃんは、突然立ち上がって前に座った妹に困惑している模様。
そこで、私は振り返って上目遣いで、精一杯の甘えた声で、言いました。
「お兄ちゃん、後ろから、ハグしてくださいっ」
お兄ちゃんが、「お前はかわいいやつだなぁ」なんて言いながら、腕を私のお腹に回します。
背中には、お兄ちゃんの温もり。
……ああ、今、私、お兄ちゃんに包まれていますっ……。
そう思うと顔が熱くなってきて。
でも、俯くことはなくて。
顔を真っ赤に紅潮させたまま、斜め下くらいの一点を見つめて、口をもにゅもにゅさせるのでした。
それから、しばらく後ろからお兄ちゃんに抱かれていると、私は、さらに大胆になってお兄ちゃんとイチャイチャしたいと思いました。
私は後ろを振り返って、両手を広げると、隠しきれない満面の笑顔で言いました。
「お兄ちゃん、抱っこしてくださいっ」
するとお兄ちゃんは、私のまだプニプニな肌を摘んだり、背中をさするようにしながらハグをしてくれます。
最初はお互いに腕をお互いの背中に回すだけだったのですが、だんだんと愛おしさが勝って、最後には、私は思いっきりの想いを込めて、つよく、つよくお兄ちゃんを抱いていました。
「お兄ちゃん、愛しています」
「俺も、京香のこと、愛してる」
そんなやりとりが、ずっと、ずっと続きます。
同じような言葉の応酬。
しかし、それを全く退屈に感じることはなく。
……最高に幸せなひとときでした。
そして、長い長い抱擁のあと。
お兄ちゃんと私は、向かい合わせに座ります。
なんでも、お兄ちゃんが私に話しておきたいことがあるらしいです。
なぜか、少し緊張して、二人とも正座になっています。
お互いの顔を真正面に見て、ニヤニヤし合ったりして照れ合っていると、自分の両の頬を平手で叩いたお兄ちゃんが、真剣な表情になって話し始めます。
「……俺、考えたんだ」
「?」
「お前が言ってたこと」
お兄ちゃんが言っているのは、昨日の夜に私が最後に言ったことでしょうか。
「……今まで、俺には覚悟が足りてなかった。本当に、ごめん」
お兄ちゃんは、深々と頭を下げます。
そして、顔だけを上にあげて。
「でも、これかは違う! 俺は一晩、京香との一生について、考えた。それで、結論を見出したんだ」
私は、唾をゴクリと飲んで、お兄ちゃんの言葉を待ちます。
「俺の人生には京香が必要で、不可欠で。京香さえいれば、なんでもいいって思えたんだ」
お兄ちゃんは、とっても嬉しそうに、話します。
ああ、お兄ちゃん、かっこいい……。
ああ、お兄ちゃん、かわいい……。
私は、あの笑顔にめっぽう弱いんです。
それに、私のことを考えて、人生に不可欠だなんて言ってくれて……。
やっぱりお兄ちゃんは、全世界で一番の、私だけのお兄ちゃんです!
私は、お兄ちゃんを、見つめます。
そして、静かに口を開きました。
「……ありがとうございます。でも、お兄ちゃん」
私は、目をくしゃっと閉じて、先ほどから何度目かの、いっぱいの笑顔になります。
「心配しないでください、だって、前も言ったとおり、私は……」
ここで、お兄ちゃんのことを思って、さらに笑顔が最高点に達しました!
首を傾げるようにして、私は笑顔を咲かせて、お兄ちゃんに言います。
「……私は、全部、お兄ちゃんのものですからっ!」
終わり、ません。