駅から十分ほどのショッピングモールへと肩を並べながら。
私とお兄ちゃんは、精いっぱいイチャイチャします。
といっても、ショッピングモールが開くのは十時なので、時間は有り余っています。
「京香」
「なんですか、お兄ちゃん〜」
私はもう、お兄ちゃんにでれでれです。
なんていうか、夢の中にいるみたいに、ふにゃふにゃしています。
まあ、いつもなんですけどねっ。
お兄ちゃんが、続けて口を開きます。
「今日の服装、かわいいな。赤いチェックが京香に似合ってて、すげーかわいい」
「えへへ〜。お兄ちゃんに喜んでもらえるように、頑張ったんですよ〜」
「あー、京香かわいい。幸せだなぁ」
「お兄ちゃん、私もお兄ちゃんとデートできて、最高に幸せですよ〜」
お兄ちゃんが嬉しそうで、私は、もっと弛んだ、だらしがない笑顔をお兄ちゃんに向けます。
すると、気分は高揚してきて。
「お兄ちゃん」
「んー? なんだー?」
「手を、繋いでもいいですか?」
なんて、恋人っぽく聞いてみたりなんかして。
「もちろんだ」
お兄ちゃんの方から握ってくれることに、また笑がこぼれたりなんかして。
他愛もない話に花を咲かせながら、私はずっと、お兄ちゃんの指をにぎにぎするのでした。
そんなお兄ちゃんの手は、二月の肌寒い大気にも負けず熱を持っていて。
その熱が、私のものかお兄ちゃんのものかわからなくなるくらいに私たちは触れ合っていて。
でも、確実にこの歳の兄妹では行わない行為を分かち合っていて。
その全ての事実が、私の心の臓をじわじわと温めて行きます。
そしてその熱は、中心から末端に。
子供の成長過程のように広がって行き。
やがては、私とお兄ちゃんを包み込みました。
すると、私はだんだんと昔の記憶を思い起こします。
昔、お兄ちゃんに夏休みの宿題を手伝ってもらったこと。
昔、家族で琵琶湖に旅行に行ったこと。
昔、お兄ちゃんとお風呂に入っていたこと。
そのいずれもで、お兄ちゃんは私を魅了させました。
宿題は、ただ手伝ってくれるだけではなく、わかりやすく教えてくれて、正解すると髪をくしゃくしゃしながら抱き合って喜んで。
琵琶湖では、外来種の藻を怖がって湖水浴を断念した私をおぶって、沖の方まで泳いでくれて。
お風呂は、いつしか二人で入ることはなくなってしまったけれど、ぐずって身体を洗わない私の身体を過保護に洗ってくれて。
そんな大切な思い出を反芻していたら、昔のようにお兄ちゃんにベタベタするのも悪くないと思ってきました。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「どうしましたか、姫。なんちゃって」
姫ですって。
お兄ちゃんは私にとって、王子様だからそれでもいいんですけど!
むしろウェルカム!
「王子様は、どうしてそんなにかっこいいんですか?」
「それはだな……」
あっ、否定しないんですね。
「とんでもなくかわいい妹の、お兄ちゃんだから、かな!」
「はぅっ…………」
あー、少し恥ずかしそうに言うお兄ちゃんがかわいいです!
その直後お兄ちゃんは突然私の背中に手を回します。
そして、私の頭を丁寧に上から下に梳くようにして撫でてくれます。
えへへ。幸せです。
そんな感じで歩いていたら、徒歩十分くらいで着くはずのショピングモールへの道程が徒歩一時間程になっていて。
着いた頃には、開店まで数十分にまで時が進んで行っていました。
続く。