全部、お兄ちゃんのものですっ!   作:雨宮照

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ショッピングモールデート、開幕ですっ!

開店時間まで、あと三十分。

何をするか選択肢がたくさんある中、私たちは二人でベンチでずっと喋ることに決めました。

なぜなら、家だと個々のことをしてしまって、あんまり長く喋る機会がないから。

それに、外でデートしながら喋るのは、普段の会話とまた違う趣があるからです。

今日はどこを回ろうか、とか。

今日の夕飯はなにがいいですかなんて。

そんな普通の会話が、将来でかけがえのないものになることを信じて、大切に言葉を紡ぎます。

そんな幸せな時間がしばらく経って。

十メートルくらい先に、風が渦を巻いているのが見えました。

「ほらほらっ! お兄ちゃん、竜巻ですよ!」

私は、楽しくなって、小さな竜巻を追いかけます。

「大きくなってきたら危ないからすぐ離れろよー」

竜巻は、近くの葉っぱをも巻き込んで、かわいくくるくると回ります。

そして、私もその中に入って、くるくる。

……すると突然。

竜巻が、ひゅおっと音を立てて、吹き上がりました。

「きゃっ!」

私は、咄嗟に竜巻から跳び退きました。

はあ、助かりました。

私は、怪我をしなかったことに安堵し、胸をなで下ろします。

そして、安心した私がお兄ちゃんの方を見ると。

お兄ちゃんは、顔を真っ赤にして私の方を見つめていました。

その視線の先を辿っていくと、そこは、私の下半身で…….....。

なんと、スカートが風に煽られて、履いていた黒のストッキングと私の薄い水色のパンツが丸見えになってしまっていたのでした!

「み、見ないでくださいっ! お兄ちゃんのエッチ!」

「わ、悪いっ!」

私は、急いで自分の身だしなみを正します。

そして、お兄ちゃんのもとへ駆け寄ると……。

「…………かわいいパンツだったぞ」

「もう!」

と、お兄ちゃんのデリカシーのないフォローにとどめを刺されるのでした。

 

それから、またしばらくさっきのことでからかわれたりしながら開店を待っていると、ピンク色の作業服を来た小熊さん体型のおばさんがやって来て、自動ドアの鍵をかちゃりと開けました。

ついに、開店です。

週末とはいえ、まだ開店直後。

人はあまりおらず、カップルと家族連れがちらほらいる程度です。

私たちも周囲のカップルにならって、恋人繋ぎで指を絡ませながら、店内へと入ります。

すると視界には、ズラッと並ぶ色とりどりのオシャレなスイーツやファッションのお店。

普段は質素な私も、こういう光景には心が踊ります。

「うわぁ。お兄ちゃん、どこからまわりますか?」

と、興奮してさっきまで充分に議論していた内容を、また蒸し返す。

「うーん。スイーツは午後にするだろ……。で、昼は映画を見て……、じゃあお昼まで歩きながら何か見てまわるか」

「お兄ちゃん、お言葉ですが私たちは一番グダグダになる選択をしているような気がしてなりません」

「いいんだ、京香。ショッピングモールをよく知らない二人が来ているんだから、後悔が残らない方がおかしい」

「確かに、パンフレットを読み漁っただけでは一見にしかずですけど……あっ」

話の途中で、私は不意に声を上げます。

「ん? どうした? 何かあったか?」

「お兄ちゃん! ちょっと見たいお店がありますっ!」

「おっ。果たして何のお店だ」

「あそこにある、キッチン用品のお店ですっ!」

「それはいいな! 最近はアイデア商品がいっぱい出てるからな」

私たちがショッピングモールで真っ先に心惹かれたのは、キッチン用品のお店でした。

私たちのお母さんはイラストレーターで、どんな仕事も断れない性格なので、会社のお金でホテルによくカンヅメをします。

そのためにほぼ子どもたちだけで料理を作ることが多い私たち兄妹は、料理のことに二人とも関心があるんです!

早速お兄ちゃんが何か面白い商品を見つけたようです。

「ほら京香、見てみろよ。焼くところが三つに分かれてるフライパンだってよ! これがあれば、左右でウインナーを焼きながら、真ん中の細長いところで卵焼きが作れるぞ!」

「ウインナーを焼いている間に卵焼きを作ってしまおうっていうアイデア商品ですね! 要らないです!」

私たちは、その後も楽しくキッチン用品デートをします。

「こっちにはスライサーやマッシャーがありますよ!」

「まな板カバーとかどうだ?」

私たちは、すごく楽しいデートを繰り広げます。

キッチン用品デートは、世間一般の学生カップルがするそれとは少し違うかもしれないけれど。

お互いの興味関心をよく知っている兄妹だからこそできる、高度なデートです。

「でもさ、こうしてると不思議だよなぁ」

「何がですか?」

まな板カバーを手に取って二人で見ながら、ふいにお兄ちゃんが発した言葉に耳を傾けます。

「なんか、こうしてキッチン用品を選んでると……俺たち、夫婦みたいだ」

きゅんっ!

「夫婦……!」

私は、二人の新婚生活を妄想します。

朝は私の料理をする音で、お兄ちゃんが目覚めて。

お兄ちゃんが、料理をする私を後から抱きしめて、囁きます。

「おはよう、マイスウィートハニー」

……きゃぁぁぁぁぁぁっ。

お兄ちゃん! 大好きです!

今考えてみると、一緒に住んでる今でも全然できる内容でしたが、最高じゃないですか!

兄妹でも、絶対結婚してみせますから!

思わぬところから結婚への憧れを持つ、少女気質な私なのでした。

 

 

続く。

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