キッチン用品を満足するまで手に取ってみて。
お兄ちゃんにまな板カバーをプレゼントされた私は、上機嫌です。
まあ、お兄ちゃんが私にプレゼントするときに言った言葉は、私を無意識に傷つけていましたが。
「京香には、こういったまな板カバーがぴったりお似合いだと思うんだ」ですって。
なんか、それじゃあ私がまな板だって言われてる気分です。
まな板じゃないもん! 爆乳のBカップだもん!
誰に伝えるわけでもないですが、必死に訴えます。
ね? 私、まな板じゃないですよね?
キッチン用品を買い終えた私たちが次に向かったのは、屋上から一つ下の階にある映画館です。
チケットを先に買っておいて、時間になったら入場する計画でいます。
同じ考えの人が多いのか、行ってみると受付には列ができていました。
やっぱり、週末のショッピングモールというとカップルが多いらしく、そこらにはカップルがパヤパヤと湧いています。
私たちもそんな風に見られていると思うと、顔が熱くなっていくのですが。
列に並ぶと、隣のお兄ちゃんが何かを発見したような顔になります。
どうしたんでしょう?
お兄ちゃんは、二歩前に出ると、前に並んでいたカップルの顔を覗き込みます。
(何してるんですか!)
私は内心焦ります。
だって、知らない人の顔をのぞき込むなんて普通じゃありません!
しかし、その私の焦燥は無意味だったようです。
そのカップルは、どうやらお兄ちゃんと親しい友達のようです。
「おう、光野と赤羽だよな?」
お兄ちゃんは、親しげにカップルに話しかけます。
「あ! 有栖川じゃん! どしたの!」
背の小さいショートカットの活発そうな女子が答えます。
さて、お兄ちゃんはここでなんと答えるのでしょうか?
妹と買い物? それとも、彼女とデート?
さあお兄ちゃん。答えをどうぞ!
「妹とデートだ」
きましたぁぁぁぁぁぁぁ!
嘘はついていないけれど、変な感じにならない絶妙な答えです!
さすがお兄ちゃんです。
「そうなのか。お前はシスコンだなぁー」
カップルの男性の方が答えます。
その後、自己紹介をしたあと映画のチケットを買い、昼の上映までまたショッピングを楽しむことになりました。
食べ物屋さんに小物類、カバンやメガネ屋さんをざっと見てまわり。
続いて入ったのは、キャラクターグッズの店。
店の奥では、光野さんと赤羽さんが商品を前に何やら話しています。
「ねえねえ太陽。このうさちゃんかわいいよね!」
「そうだな。じゃあ買えばいいじゃん」
「……そういうことが言って欲しいんじゃないんだよなぁー」
あ、光野さんは女心が分からないんですね。
こういうときの女の子は、買えばいいじゃんとか、そういうことを言って欲しいわけじゃないのに……。
(……はっ! お兄ちゃんにも試してみましょう! お兄ちゃんを試すような真似をするのは心苦しいですが、興味があります!)
「お兄ちゃんっ! このクローバーのクマさんトートバッグ、可愛いですよねっ!」
私はクマさんトートバッグを手に持って、胸の前に持っていきます。
さて、お兄ちゃんはどんな気の利いた事を言ってくれるのでしょうか。
「このクローバーの柄と、素朴なベースの色に対する黄緑色の合わせがかわいいな。小さいクローバーの儚さっていうか可愛さっていうか、そういうのが京香に合ってて、すごく可愛いと思うぞ」
ずきゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!
お兄ちゃん! なんて完璧なお兄ちゃんなんでしょう。
素敵すぎます、かっこよすぎます!
女の子は、色とか自分に似合うかとか、そういう感想を求めてるんです!
お兄ちゃんは、もう、完璧です。
「お兄ちゃんっ」
「ん? なんだ京香」
「ぎゅーって、してください」
私は、外だというのにはしたなく、おねだりしてしまいます。
するとお兄ちゃんは。
「家に帰ってから、な」
と耳元で囁くと、私の手をぎゅっと握って、クマさんトートバッグを持ち、レジへと歩き出すのでした。
家に帰ってからも、私は憂鬱な気分にならずに済みそうです。
続く