目が覚めると、私は、あまりみたことのない天井の下にいました。
「ここは……?」
だんだんと、視界がはっきりとしてきて、私は事態を飲み込みます。
「私は、リビングで寝落ちしてしまったのですか……」
眠たい目をこすりながら、ゆっくりと起き上がります。
するとひとつ、私のセンサーに反応するものが。
私のお兄ちゃんセンサーは、何よりも敏感で、寸分違わぬお兄ちゃんを導き出してくれます。
「この匂いは……お兄ちゃんの匂いです!」
私、いま、お兄ちゃんの匂いに包まれています!
そう思った途端、眠気などは一切吹き飛び、なぜ今私はお兄ちゃんの匂いに包まれていてこんなにも幸せな思いをできているのかを、考え出します。
考えられることは……。
「……はっ! お兄ちゃんが、添い寝していたから⁉︎」
ききききっと、そうに違いありません!
実はお兄ちゃんも、私のことが好きで、寝ている間にあんなことやこんなことを……!
私の馬鹿! なんで起きてなかったんですか!
……私が自責の念にかられていると、二階からこちらに近づいてくる足音が聞こえます。
この足音は……お兄ちゃんです!
私のお兄ちゃんセンサーが、だいすきなお兄ちゃんに、ビンビン反応しています!
きっと、また私によからぬことを致しに来たのでしょう。
そうなると、今私に求められていることは……。
妹が寝落ちしてしまってから、数時間。
今は、朝の四時だ。
京香には、朝に一時間ほど学習する習慣があるし、昨夜は寝てしまって、お風呂に入っていない。
だから、少し早く起こしにきたのだ。
一階のリビングに降りて、京香が寝ているのを確認する。
俺が昨夜かけておいた俺の布団が、まだそのままになっていて、そこから京香の整った、それでいてふにゃりと柔らかい寝顔がひょこりとのぞいている。
京香の部屋のベッドまで運んでやろうかとも考えたのだが、外に行った制服のまま連れて行くのも、いい判断とはいえないだろう。
だから、そんなことは気にしない、俺の布団を被せておいたのだが……。
「……よ、よだれが……」
すごいよだれだった。
よっぽど疲れていたんだろう、京香の口からは、水見式の強化系のようによだれが溢れ出していた。
「……よ、よだれが……」
お兄ちゃんが、呟きます。
私は、その言葉で、私がお兄ちゃんの匂いに包まれている幸せから、よだれが出てしまっていたことに気がつきます。
また、それと同時に、私にお兄ちゃんの布団がかけられていることに気がつきました。
(こ、ここ、これは拷問です!)
お兄ちゃんの布団がゼロ距離でありながら、くんかくんか匂いを嗅ぐことができないなんて……!
私が目をぐるぐるさせて、あわあわしていると、お兄ちゃんがさらに近くに寄ってきました。
そのままお兄ちゃんは私の横に腰かけると、私の顔を覗き込みます。
(……困りました! 起きていることが、バレてしまいます!)
お兄ちゃんは、「……この寝顔を見てたら、起こすのは悪い気がしてきたなぁ……」なんて呟いています。
起こしていいですよ! 起こしてください!
キスで、目覚めさせてください‼︎
私は、いろんなどきどきがいっぺんに訪れて、まだ寝起きということもあり、パニックに陥ります。
(ええい、もう、どうにでもなれー! です!)
私は、隣にいるお兄ちゃんに、抱きついてのしかかり、大きな胸板に、頰をすりすりします。
ほんとうは、ぎゅーっと、つよく抱きしめたいのですが、朝にそんな力はでません。
でも、とっても、とっても、幸せな時間でした。
……一つだけ残念なのは、お兄ちゃんには、「寝ぼけていたから抱きついてきた」と認識されてしまったことです。
いつか、寝ぼけていたからなんて理由じゃなくても、堂々とお兄ちゃんに、ぎゅーってできるように、なりたいと思う私でした。
続く。