そんなこんなで私たちは強く手を握りながらモール内をぶらつき。
映画の上映時間の十分前には、映画館の自分のシートにつきます。
「京香、携帯の電源は切ったか?」
「はい、お兄ちゃん! 準備は万端ですよ!」
「メロンソーダとポップコーンは手元にあるな!」
「はい! キャラメルが濃くて、おいしいです!」
「よーし! ならいい。映画、楽しもうな」
お兄ちゃんは、何故か映画を観るだけなのに、すごく張り切っています。
そんな張り切っているお兄ちゃんと同じとまではいかなくても、これから観る映画に対してすごくわくわくしている私。
映画というよりも主にお兄ちゃんと観ることに価値を見出しているのはしょうがないことですが。
私は、これから始まる映画がどんな映画なのかお兄ちゃんに知らされていないので、周りのお客さんの年齢や性別からどんな映画なのか予想することにします。
お兄ちゃんが私に内容を教えてくれないのは、お兄ちゃんが私に映画の内容を教えたくないからという、理由になっていない理由なのですが、本当に謎です。
いったい今から私は、どんな特殊な映画を観せられるのでしょう。
エッチな映画でも見せられるんでしょうか。
私、まだ十五歳ですよ?
私たちが座っているシートは、映画館の真ん中の後ろの方。
後になるにつれて座席の位置が高くなっていくので、周りは見渡しやすい位置です。
まずは、ざっと見て客層を確かめます。
やはり週末のモールとあってか、学生やカップルが多くを占めている模様です。
今も、一組学生の集団が入ってきました……って、あれ?
なんだか見覚えがあると思ったら、秋川さんたちじゃないですか!
赤髪が目立つ秋川さんのお陰ですぐわかりましたよ!
秋川さんたちは私たちに気づかなかったようで、左手前のシートに並んで座ります。
やっぱりクラスのイケてる女子たちは、こういうところで遊んだりしているんですね……!
服装もベージュで纏められ、ロングのスカートが似合っていて、お洒落です。
しかし、ここから先はなんとなく、この人たちに見つからずに一日まわりたいような気がします。
先日秋川さんの私以外の友達について考えたばかりだったこともあり、少し気が沈みます。
秋川さんだって、こんな私なんかより他のお友達と遊んだ方が楽しいでしょうから。
でも、上辺ではそんなことを自分に言い聞かせていますが、やっぱり心の奥にはなにか引っかかるものが。
秋川さんが他の女子達と遊ぶのを嫌に思う、私が嫌いな私が私の中に住み着いているようです。
しかし、映画が始まる数分前。
私は考えを改めることになるのでした。
それは、照明が落とされて、少し雰囲気が静かになったところで。
秋川さんたちのグループのひそひそ話が聞こえてきたんです。
「茜って、最近よく有栖川さんと話してるよねー」
女の子の一人が言います。
急に雑踏の中から自分の名前を聞いた私は、反射的に耳を傾けてしまいます。
私は、秋川さんの友達になんと思われているのでしょうか。
暗い気持ち悪い女? ろくに話もしないお高くとまったお嬢さん?
きっと、いい印象は抱かれていない。そう思っていました。
しかし。
「そうよ、有栖川さん、とってもいい子なの」
「そうなんだ。有栖川さんって、口数が多くないし飾らないけど、すごくかわいいよね〜」
「うんうん! お洒落とか教えてあげたいし、頭もいいから話もしてみたい!」
「茜、今度紹介してよ〜」
(.........えっ!)
私、まさか褒められてる……?
クラスのイケてる女子たちに褒められちゃってます……!
てっきり、中心にいるような女子たちは、悪口ばかり言うものかと……。
そんな風に、印象だけで人を判断してしまっていた私が恥ずかしいです。
友達の友達は、友達ですね!
今度、今日観る映画についてでも話してみましょうか。
「そういえば、これから観る映画ってどんな映画?」
引き続き、秋川さんたちの会話が聞こえます。
「茜には内緒〜」
「えー、なんでよー」
これまた知りたい内容だったので耳を済まして見ましたが、聞こえませんでした。
そうこうしているうちに、お兄ちゃんが横で「始まるぞ……」と小さく呟きます。
すると、二秒後。
ズゥゥゥゥゥゥン!
画面から、白い腐乱した手が迫って来ました。
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」」
館内に秋川さんと私、二人の絶叫が響き渡ります。
…………始まったのは、ホラー映画でした。
後で聞いたところによると、お兄ちゃんは、怖がる私が抱きついてくると思ってホラー映画にしたんだとか。
私は、お兄ちゃんをちょっとだけ恨みました。
ホラー映画を見せられたからっていうのはもちろんなんですが、まんまとお兄ちゃんの策略に乗せられて、いっぱい抱きついてしまったことに対してちょっともやもやしてるだけなんですけどねっ!
続く。