映画館で、最新の恐怖というものを心から体感したあと。
それなりにポップコーンでお腹が膨れてしまった私たちは、スイーツのお店にやってきていました。
モール内でも一押しのお店だったようで、パンフレットの表紙には必ずここのストロベリープリンが載っています。
「京香は何が食べたい?」
「うーん。私は、やっぱりストロベリープリンが気になりますね!」
「実はだな、ここで京香に権利をあげようと思う!」
「えっ! やりました! なんでしょう!」
「もう一つスイーツを選ぶ権利だー!」
「わーい! 交換しながら食べるんですね! やったー!」
お兄ちゃんと、食べさせっこです!
うまうま!
「さっき怖いの見せたお詫びも兼ねて、な」
「ほんとですよ! 夜中に一人でお手洗いに行けなくなってしまいます!」
「行けなくなったら俺がついてってやるよ。安心してくれ」
「うぅ、そうじゃなくて……もうっ!」
私はなんだかテンションの高いお兄ちゃんの手の上で転がされてるような気がして、ほっぺたを膨らませます。
「じゃあ、宇治抹茶わらび餅にします」
「京香は昔から抹茶が好きだったもんなー」
「そうですね。いつからだったかは覚えてませんが、アイスでもなんでも、選択肢にあれば大体抹茶味を食べている気がしますね」
生まれたときから一緒に暮らしていると、やっぱり好みも嫌いなものもわかるんですね!
ちなみに、実はお兄ちゃんも抹茶が好きなんですよ!
好きなものが同じなんて、やっぱり兄妹なんですね。
それに、嫌いなものすら似ているんですよ!
嫌いなものが同じだと配偶者と長く続く傾向があると聞いたことがありますが、好きなものまで同じなんです。
私たちは、絶対にうまくいきます!
そのように私が妄想を膨らませていると、
「京香、ちょっと話があるんだ」
と、お兄ちゃんが話し始めます。
…………なんでしょう?
はっ! まさか、私に……プロポーズを!?
つ、ついに私はお兄ちゃんと……結婚できます!
そしたら、結婚式ではたくさんの人の前でお兄ちゃんと誓いのキスをして……永遠の愛を誓うんです!
私がまたも妄想の海に泳ぎ出ていると、
「父さんのことなんだ」
と、お兄ちゃんが話を続けます。
「ほら、俺たちって、父さんに一度も会ったことがないだろ?」
そうなんです。
私たちのお父さんは、海外でお仕事をしているらしく、私たちは会ったことがないんです。
私たちが小さい頃の写真はあるのですが、物心がついてからは一度もあったことがなくて。
でも、なんで急にその話を……?
「京香。あのさ……」
お兄ちゃんが、言いにくそうに、繊細に言葉を紡ぎます。
しかし次の瞬間、お兄ちゃんは意を決したように堂々と提案を持ちかけました。
「……父さんに、会いに行こう」
ええっ! お父さんにですか!
「京香の卒業祝いも兼ねて、母さんに相談してみようぜ? それに……」
「それに?」
「俺たちのこと、両親にきちんと話そう」
「あ…………」
それは、相当に覚悟のいることでしょう。
お母さんや、まだ会ったことのないお父さんに私たちのことを打ち明けると考えるだけで、今から緊張してしまいます。
……でも、この提案は、これから二人が一緒に生きて行くためには必要な過程で、避けては通れない問題です。
だから、仕方のないことです。
でも、それ以上に……。
「ん? どうした京香、下を向いちゃって! 急に変なこと言い出してごめんな。ええと……そんなすぐにって話じゃないから……!」
「んふっ……くすくす」
「……? おい、どうして笑ってるんだ?」
私が俯いたことに困惑したお兄ちゃんが焦っています。慌てちゃって、かわいいです。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「嬉しくて、にやにやしてる顔を見られたくなかっただけですよ♪」
私は、照れながらもいたずらっぽく笑います。
「あ、慌てちゃったじゃないか……」
「怖い映画を見せた、仕返しですっ!」
今度は、舌をぺろっと出して、あっかんべーをしてやります。
そう、私は今、お兄ちゃんがそこまで私たちのことを真剣に考えてくれていると知って、最高に嬉しいんです。
そうして、お互いに照れながら、真っ赤になった顔を凝視することもできず。
スイーツが運ばれてくるまでの長い長い、短い時間を、最高の幸せのまま、待ち続けるのでした。
続く。
こんにちは、雨宮照です。
私事ですが、前作を小説賞に投稿した結果が出たのでお知らせします。
MF文庫大賞、一次落選でした!
でも聞いてください!
ここがすごくて、評価シートっていうものが全員に配られるんですけど、その内容が的確でいいんですよ!
きちんと見ていてくれて、すごくためになるんです。
是非小説を書く人、書いている人は、一度応募してみてはいかがでしょうか?
以上、雨宮照でした!