全部、お兄ちゃんのものですっ!   作:雨宮照

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お兄ちゃん、あーんしてくださいっ!

しばらく、初々しいカップルのような時間が続いて。

いえ、まあ、本当に初々しいカップルなんですけど、そんな時間が続いて。

ついに、スイーツが運ばれて来ます。

私の前には、広告で見るよりもさらにホイップと苺が香る素敵なストロベリープリンが。

そして、お兄ちゃんの前には京の控えめな美しさが鮮やかな、宇治抹茶わらび餅が運ばれて来ます。

「さ、食べようか」

「じゃ、じゃあ……早速あーん、してください……っ!」

いざその時になると緊張しちゃいます。

「い、行くぞ……」

「ふふっ、はい!」

満面の笑みで待っている私の口元に、お兄ちゃんがクロモジで丁寧にわらび餅を運んできます。

お兄ちゃんも緊張しているのか、指先がぷるぷるしています。

そうやって差し出されたわらび餅を、私は身を乗り出してぱくっと咥えます。

すると、その瞬間に口の中に広がる宇治抹茶の濃厚な風味!

口溶けは滑らかで、冷たいぷるぷるの固体はすぐに口内に馴染みます。

後味もさっぱりで、夏に食べたらとっても季節感があってよかったでしょう。

冬に食べた今でも、あーんしてもらって熱くなっている私の身体には、ひんやりしてちょうどいいんですけどねっ!

「どうだ、京香。おいしいか?」

「はいっ! お兄ちゃんが食べさせてくれたから、余計においしいです!」

「じゃあ、プリンも食べさせてあげよー!」

「ほんとですか! やりました! 今日の私は幸せですっ!」

続いて、お兄ちゃんはプリンも私にあーんしてくれます。

私は、小さい口をちょこっと開けてプリンを咥えます。

すると、口の中にお花畑のようにふわっと広がる、濃厚ないちごの甘さ!

一面に広がる甘酸っぱい香りに、私はもう虜です!

「ほっぺたが落ちそうです〜」

「あはは、喜んでくれたようでよかったよ」

愛情って、何にも変えられない特上の調味料なんですねっ!

「ときに京香」

「なんですかお兄ちゃん」

「…………俺も食べたい」

「食べていいですよ?」

「そうじゃなくて、えーっと……」

「?」

「あー……俺も、京香にあーんしてほしいなーって」

「いいですよ…………って、ええっ!」

お、おお、お兄ちゃんに、私があーん!?

お兄ちゃんにしてもらうことばっかり考えてましたが、私がお兄ちゃんに!?

こ、これは予想外の展開です!

私があーんするってことは、私のスプーンで私が差し出したスイーツをお兄ちゃんがパクッと食べちゃうってことですよね!

それって、もしかして、相当えっちなシチュエーションなんじゃ……。

って、お兄ちゃんはさっき私に同じことをしたわけですから、お兄ちゃんはすごくえっちな人じゃないですか!

考えが暴走した私は、脳内でおかしな結論を出します。

そして、考えがまとまらないまま、お兄ちゃんに大声でこんなことを言ってしまいました。

「お、お兄ちゃんのえっち!」

「え、ええっ!」

お兄ちゃんが目を白黒させて困惑しています。

周りのお客さんが驚いてこっちを見ています。

「お、俺、なにか変なことしたかっ?」

「ええいっ! お兄ちゃんはえっちです! えっちなんです! とにかくえっちなんです!」

「なにがだよっ!」

私は、頭がパンクしてよくわからなくなってしまいます。

お客さんがざわめき出します。

「お兄ちゃん!」

「な、なんだ!」

ここは、とりあえずお兄ちゃんが悪者にならないように、お客さんの注目を回避しなければ……!

「……あーんは恥ずかしすぎるので、普通に食べましょう!」

「お、おう! そうしよう!」

そうして私たちのデートの目的であるあーんは、無事大成功? に終わったのでした。

 

続く。

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