「お兄ちゃん、ゲームしましょう!」
スイーツ店での大暴走から一時間。
私は、唐突にそんな提案をしてみます。
「いいけど、急にどうした?」
「えっへん。実は、最近ゲームの特訓をしたんですよ!」
そうなんです!
最近、秋川さんの勧めで、私はよくインターネットでゲームの通信対戦をやっていました。
家でもたまにお兄ちゃんとゲームをしますが、小さい頃からあまりゲームが得意ではなかった私は、いつもお兄ちゃんに負けてしまっていました。
でも、今日の私はひと味違います!
強くなって、お兄ちゃんにも私とのゲームを楽しんでもらいたいという思いから、頑張ってゲームの練習をしたんです!
今回こそは負けませんよ!
と、いうことで、私たちはショッピングモール内にあるゲームセンターへとやってきました。
「まずは、どれで対戦する?」
「そうですねぇ。最初は、リズムゲームで勝負といきましょうか!」
「オッケー! 望むところだ!」
まずは、曲に合わせてノーツを叩く太鼓ゲームをチョイスします。
ふふふ。このゲームは秋川さんと練習した中でも、上達が早かったゲームの一つです。
ここでしっかりと勝ちを飾って、お兄ちゃんを牽制しましょう!
「難易度は、いつも通りふつうでいいか?」
「お兄ちゃん。舐めてもらっちゃ困りますよ! ここはひとつ、鬼で対戦しましょう!」
「お、鬼だと!」
お兄ちゃんが、驚いて腰を抜かしています。
そうでしょうそうでしょう。
驚くのも無理はありません。
鬼といったらその字面の通り、その難易度は人間を恐怖に陥れる凶悪な鬼が如しです!
さあ、お兄ちゃん。
鬼のスコアに対抗するなら、鬼を選ぶしか方法はないはずですが、どうしますか……?
「ふっ、腕を上げたようだな。だがしかし、俺はそんなにできん! 難易度むずかしいで挑む!」
「え、ええっ!」
なんでですか!
鬼のスコアに対してむずかしいのスコアは相当に低いはずです!
なんでそんな無謀な闘いを……?
「ほら、始まるぞ。第一試合、スタートだ!」
リズムに乗って、太鼓に顔がついたキャラクターのノーツが流れてきます。
それを正確に処理していくお兄ちゃんと、大量の重なって流れ来るノーツに多少は苦戦しつつも付いていく私。
このまま行けば勝利するのは私に決まっています。
しかし……。
「どうした! ミスが続いてるぞ!」
「だ、だってぇ」
太鼓を叩いているお兄ちゃんが見たくなってしまったんだもん!
兄としてのプライドをかけて私とたたかうお兄ちゃん。
そんな姿を見逃すわけにはいきませんっ!
「実はな、今お前の姿を筐体の上に置いたスマートフォンで撮影している!」
「な、なんですって!」
知らないうちに妹を盗撮する変態お兄ちゃんがここにいました!
「俺だって、京香が頑張ってる姿を見たかったんだ! だから、ゲーム開始前に仕掛けて置いたのさ!」
「ず、ずるいですぅ〜!」
お、お兄ちゃんも私の姿を見たがっていたなんて!
なんて嬉しいことを言ってくれるんですかぁっ!
頬が緩んで、他のことを考えられなくなって、嬉しくてぇぇぇぇえっ!
「もう私の負けでいいですぅぅぅぅ!」
気付いた時には私は、お兄ちゃんの姿を眺めて、手を合わせて拝んでいました……。
「う、ううっ……」
「ほら、涙を拭けよ」
そのまま兄妹ゲーム対決第一回が終了して。
お兄ちゃんが惨敗した私にハンカチを差し出します。
「な、泣いてないもんっ!」
それでも、私は抵抗します。
だって、本当なら私が勝てたんですよ!
ゲームの腕は私の方が格上になったはずなんです!
「ふ〜ん。泣いてないんだぁ〜?」
「な、なんですかっ! 何が言いたいんですかっ!」
強がる私にお兄ちゃんが、ニヤニヤしながら言い放ちます。
「じゃあ、このハンカチは必要ないな〜?」
「ぐ、ぐぬぬ……!」
お兄ちゃんが使っているハンカチ!
一日中肌身離さずに持ち歩いたハンカチ!
「ふはは、欲しかったら泣いていたことを認めるんだな!」
「はい。泣いていたのでハンカチを貸してください」
「そ、そんなに早口で肯定されたらなんか気持ち悪いからやめなさいストーカーシスター」
「ふふっ、背に腹は変えられません!」
お兄ちゃんのハンカチの欲しさに比べたら、私のちっぽけなプライドなんて財布の奥でぐちゃぐちゃになったレシートレベルです!
えっへん。とお兄ちゃんへの想いに胸を張る私に、お兄ちゃんがひとこと。
「お前は背に腹を変えられそうだけどな」
「…………どういう意味ですかっ!」
なんですか! 貧乳だから、体の前側と後ろ側を取り替えても何の違和感もないっていうんですかそうですか!
「お兄ちゃん!」
「なんだ京香? 言いたいことがあるなら俺に勝ってから言ってもらおうか」
「望むところですっ!」
こうして、兄妹ゲーム対決第二試合が行われることとなった。
続く