目を覚ましてから、二時間くらい。
私がお風呂に入ってから日課の勉強を始め、一時間が経とうとしていました。
そろそろ終わりにしようかと思っていたところ、こんこんと優しくドアがノックされました。
(こ、これはお兄ちゃんのノック……!)
私のお兄ちゃんセンサーがピクッと反応します。
「京香ー。入るぞー?」
お兄ちゃんはいつも通りの、低くて優しい、それでいて可愛さも持ち合わせた完璧な声で言います。
「どうぞ、入ってください」
私は、緊張に震えながら、入室を促します。
兄妹で緊張してどうするんですか! 私のばか!
ただでさえ兄妹ってだけでお兄ちゃんからは恋愛対象に見られにくいっていうのに、妹の特権である血の繋がった親しみやすさというアドバンテージを自ら亡き者にしてどうするんですか!!
と、私が思考を遥か彼方に飛ばしていると。
「す、すまんっ。ちょっとドアを開けてくれないか?」
申し訳なさそうに、お兄ちゃんがいいます。
なんと私としたことが、お兄ちゃんがしてほしいことを事前に察知し、事前に行っておくことを怠るとは……。
これはもっとお兄ちゃんを研究しなければなりませんね!
私が静かにドアを開けると、お兄ちゃんは、お盆を両手で持って私を待っていました。
あぁ、なんと幸せなことでしょう。
ドアを開けたら、だいすきなお兄ちゃんがいました!
「そろそろ朝ごはんの時間だと思ってさ。トーストと、スクランブルエッグとベーコン。このくらいしか俺には作れないけど、一緒に食べようぜ」
視線を下に落とすと、お兄ちゃんが持っているお盆には、朝ごはんと、ホットココアの入ったマグカップが二つ。
「……⁉︎」
二つ!
ということは、わわわ、私とお兄ちゃんが二人きりで食事⁉︎
それも私の部屋で⁉︎
……びっくりして、息が止まってしまいそうになりました。
「どうした? 顔を真っ赤にして」
お兄ちゃんが、心配して顔を覗き込んできます。
違うんです……体調が悪いとか、そういうのではありません!
そんなに顔を近づけたら……もっと体温が上がってしまいます!
なんとか心配するお兄ちゃんを安心させた私は、お兄ちゃんを部屋に招き、一緒にご飯を食べます。
「お兄ちゃんは、私の机を使ってください。私は床にちゃぶ台を出して食べます」
私は、お兄ちゃんを床に座らせないように席を譲ります。
しかし、優しいお兄ちゃんは。
「気を使わなくていいよ。俺が床で食べるからさ」
なんて、微笑んでくれます。
とってもかっこよくて、とってもかわいいのですが、今はそんな気遣いは要らないのに……。
「でも……」
失敗しました。
私のわがままな気持ちが表に出て、浮かない顔をしてしまいました……。
お兄ちゃんは、気を悪くするでしょうか。
「うーん、京香は真面目だからなぁ。来客だけ下に座らせるようなことはできないんだろ?」
じゃあ、と。
お兄ちゃんはおもむろに床にちゃぶ台を出してあぐらをかきます。
「二人でちゃぶ台で食べようぜ!」
きゅんっ……。
ふぁぁ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんは、なんて素敵な人なのでしょう。
お兄ちゃんは私のために、二人で食べようだなんて……。
お兄ちゃんが止まりませんっ!
お兄ちゃんで脳みそがとろけます。
お兄ちゃんで身体が熱くなります。
でも、お兄ちゃんは酷いです。
お兄ちゃんが大好きすぎて、せっかくお兄ちゃんが私のために作ってくれたごはんの味がわかんなくなってしまったんですから。
続く。