艦これ ~Bullet Of Fleet~ 作:クロス・アラベル
引き続き投稿します。
どうぞ!
☆
「……はあ、はあ、はあ、はあ、あ、あと少しで陸地に……」
「………」
「大丈夫……あと少しだから……」
「……」
海の上を滑るように走る茶髪の女の子2人を運ぶ白髪の少女と紺色の髪の少女。4人全員の服はボロボロになっており出血も酷い。普通なら気を失っていてもおかしくはない。だが、彼女達は普通の人間ではない。
『ひびきさん!もうすぐねんりょうがきれます!きかんもあと少しでとまるおそれがあります!』
彼女達は《艦娘》という特殊能力を持った……駆逐艦なのだ。
彼女達の中の1人、『響』の艤装から1人の妖精が警告を飛ばす。
「……あと少しなんだ!それぐらい、持たせて、くれないか?」
『さいぜんのどりょくはしています!あかつきさんもいそいでください!』
「分かってる、わよ!……こんな時に限って機関が止まりそうなんて…」
「……でも、絶対に……電と雷は、助けるんだ……」
響と暁は電、雷と呼ばれた2人を背負ってあと5メートルの海を渡りきり、陸に上がる。
渡りきったところで、二人はいきなり倒れ込んだ。疲れが溜まっていたんだろう。
『ぜんきかんていししました!まにあいましたよ、ひびきさん!』
妖精が響に向かって叫ぶものの、響は疲れ果てて聞こえていない。
そんな彼女達の前に誰かが走ってくる。
暁に黒い影が覆い被さる。
「……助けて……雷…と電と……響を……誰、か……」
この言葉を発した直後、彼女達は気絶したのだった。
○○○○○○○○○○○○○○○
温かい。
私が目覚めて感じた。
目を開けるとそこは知らない天井だった。
所々黒ずんでいる。かなり古いのだろう。
「………い、電と雷は…〜〜ッ⁉︎」
無理に動いた反動が……それよりみんなは……
『あ…目が覚めた?』
その声を聞いて驚いた。私の横に男がいた。
白と黒のメッシュの髪。銀色の右目と黒色の左目。背丈は、私達よりかなり高い。175センチは超えるだろう。
「……目が覚めて良かったよ。僕以外に人がいるって分かってよかった……」
「……?」
「……僕は月駆星奈(つきかけせな)。君は……暁型駆逐艦二番艦の響、だよね?」
「……知って……?」
「……それなりには知識はあるつもりだけど……君の姉妹艦達は無事だよ。今……入渠してる。ここの施設は広いし施設も多いんだけど、使えるのが横の部屋とここしかなかったんだ。ごめんね、一人にしちゃって……」
「……この状況は、意図的に仕向けたのかい?人間。」
「……僕、自己紹介したはずなんだけどなぁ……まあ、意図的にと言えばそうかも知れないね……」
「……」
…人間……これだけは、許さない………なんなら、今打ってやるよ……
「君から話を聞いておきたかったんだ。僕も今この状況がどうなってるかわからないからね。」
「……本当に、そんな理由で…?」
「……そうだけど……どうしたの?」
「………私達は遠征中に大勢の深海棲艦に襲われて、逃げて来た……それで島を見つけてここに来た。」
「そっか……やっぱり、ここはVRMMOの中なのかな……」
「……?」
「あ、ごめんね。こっちの話だから気にしないで。」
「……ここは?」
「えっと…無人島、だと思うよ。人一人としていないから。」
無人島。ということはうまくいけば、ここに姉妹で仲良く暮らせる。鎮守府から逃げ出せた…
彼女達の鎮守府は世に言う『ブラック鎮守府』だ。休み無し、娯楽無し、補給や睡眠時間もほとんど無し。艦娘への暴言暴力は日常茶飯事。最悪の状況だった。鎮守府唯一の人間である指令官のせいで人間へのイメージは最悪だった。
そのせいもあり、星奈への接し方も良くないのだ。
「ここには高速修復剤が無くてね……多分あったとしても腐ってるだろうしね。」
「……」
響は星奈の話など全く聞いていなかった。どうやってこの人間を殺すか、どうやって妹達を助けるか。これだけしか考えていなかった。
「とにかく、安静にしててね?」
しかし、星奈はそれに気付かずそう言い残して部屋を出ていった。
「……今しかな、い、~~~ッ!?」
響は星奈が出ていって一分後、妹達を探すために立とうとした。が、まだ傷が癒えておらず、激痛が響を襲う。
「……くそっ…!」
そのまま動けない響だった。
◇
「入るよ?」
ドアの向こうから少年の声が聞こえたのは出ていってから20分後の事だった。身構える響。沈黙が了承の合図ととったのか、星奈が部屋に入ってきた。
「お待たせ。お腹空いた?」
「……?」
少年が持っていたのは、一枚のお盆だった。それに何か乗せているようだ。そこからいい香りがする。
「雑炊を作ったんだけど…食べる?」
どうやらその香りの正体は雑炊だったようだ。
だが、それが危険なもの…薬物が入っているのではないかという警戒が解けず、黙っていた。
その時だった。
くぅ
そんな可愛らしい声が響のお腹から聞こえた。体は正直である。
「………////」
「……自分で食べられる?」ニガワライ
「……」フルフル
少し動いただけで激痛が走った響にとっては無理なので、素直に首を横に振った。
「こればかりはしょうがないね……ちょっと待って…」
星奈はスプーンで雑炊を一杯よそい、ふー、ふー、と雑炊をある程度冷ましてから響と口に差し出した。
「はい。これで食べられるでしょ?」
「……っ!?/////」
響は動揺した。とてもじゃないが、ここまで優しい人間…男に会ったことが無いのでこういうのに免疫がなかったようだ。いつも冷静な響が珍しく顔を赤くして動揺した。
「……////」アーン
響は恥ずかしく思いながらも、その小さな口を開けた。
「……はい。」
「……///」パクッ
美味しい。なんて美味しい雑炊なんだろう。
食べた時、響はそう思った。こんなにも美味しいものを食べたのは、いつ以来だろう。そうだ、間宮さんが指令官に内緒で作ってくれた、カレーだ。私が建造されて初めて食べた美味しいもの。それにも劣らない、美味しい雑炊だ。
「……っ!!」ポロポロ
いつの間にか、響は涙を流していた。
「……!」
星奈はそれに気付き驚いたが、何も聞かず、静かに微笑みながら響に雑炊を食べさせ続けた。
次回《第六艦隊と少年》