艦これ ~Bullet Of Fleet~ 作:クロス・アラベル
星奈がこの無人島鎮守府に来てから一週間以上経った。
第六艦隊の四人は相変わらずだが、星奈はこの世界での生活に着実に慣れてきた。ここは無人島、人工物がこの古い鎮守府だけなので食料を確保するだけでも大変なのだ。
「……」
今、星奈は鎮守府の司令室にいる。いや、思われると言った方がいい。最初に来た時は中がぐちゃぐちゃになっていて、何の部屋から分からなかった。今、整理しているところだ。
「……書類だらけだね。整理し終わったら読んでみようかな?」
書類、前提督の私物(恐らく)、本などをまとめていると、本の隙間から、ばさっと音をたてて何かが床に落ちた。それを拾い見てみると、
「これ、新聞……?」
新聞だった。
「これなら何か良い情報が書いてありそう」
この新聞や書類、本などは星奈にとってはかなり重要なものだ。この世界についての情報が事細かく書いてある。特に、新聞は。
「……2030年、7月の……3日、火曜日。」
僕がいた世界は2025年の五月の中旬。この新聞は何年前かは分からない。が、この年以降だということは確定だ。そして、僕のいた世界の約5年後の記事。新聞名は『海扇新聞』。
「……深海棲艦についての記事もある…」
書いてあるのは元の世界と変わらぬ日常の記事。そして、見出しには『深海棲艦、再び襲来 〜人類、万事休すか〜』とでかでかと書いてある。要約すると、どの軍事基地も壊滅的な被害を受けて使い物にならなくなっていて、成す術がないらしい。第二次世界大戦であれほどの力を見せていたアメリカやイギリス、ロシアでさえ手も足も出ないという異常な
「……謎の怪物、深海棲艦出現から、一ヶ月…?」
この記事には一ヶ月と書いてある。という事は、人類はたった一ヶ月で、追い詰められたということになる。
もっと知りたくなって部屋を漁ってみると、案の定、いくつか新聞があった。
「……あ、また新聞…」
そして、次の新聞の日にちは2030年7月24日。
「さっきの記事の20日後か…」
その記事の見出しは『希望の光がこの国を照らす〜その正体は、女の子⁉︎〜』と書かれている。
「……この時初めて艦娘が姿を現したんだ…」
その記事の写真には五人の少女が写っている。真ん中の子は黒髪セミショートにセーラー服。その左の子はピンク色の髪をツインテールで纏め、真ん中の子と同じくセーラー服に身を包んでいる。その左には腰まである毛先の切りそろえられたモイストシルバーの長髪に、赤の強いオレンジ色の瞳の少女。この子もセーラー服だ。そして、一番右側には地面まで届きそうになるまで伸びた透明感のある青髪と青い瞳のこれまたセーラー服姿の女の子。そして、その左隣にいる一際小さな女の子。茶色い髪をアップヘアーにして束ねていて、瞳は金色。見たことのある子だ。
「……まさか…電?」
そう、その子はこの無人島にいる電そっくり…いや、そのまんまなのだ。
「……始まりの、少女…か」
記事にはそう書かれていた。
次の新聞は2031年の7月14日。艦娘が現れてから一年が経ってからの記事だった。その記事の見出しは
『○○○鎮守府、半壊。○○鎮守府、全滅。緑の悪魔、『リ級
「……悪魔の、リ級?」
リ級と言えば、重巡だ。確かに戦艦には届かぬものの耐久、火力共に高く手強いが、それは最初の時だけ……そう、元の世界の攻略サイトで見た。そして、廻fragshipという深海棲艦はいなかった筈だ。だが、何にせよ恐ろしく強いのだろう。
「……7月、か…」
今は夏。響によると今日は7月の14日。その悪魔のリ級が現れた日と、偶然にも重なる。
その時、星奈は嫌な悪寒を感じたのだった。
◇
星奈が司令室を掃除している頃、響たちは外にいた。
「……?」
青空の向こうから黒い雨雲が流れてくる。天気が悪くなりそうだ。そう思った響は海辺ではしゃいでいる姉妹に声をかけようとした、その時、常に持っていた電探が一つの敵艦が来たことを知らせたのだった。
次回《第一次鎮守府防衛戦》