艦これ ~Bullet Of Fleet~   作:クロス・アラベル

7 / 9
第6話《第一次鎮守府防衛戦》

 

「……ッ!」

 

響は鋭い目で海の向こうを見た。その向こうからは敵がやって来ている。数は一つ。

 

「みんな、敵艦が来たよ……ッ!」

 

「「「⁉︎」」」

 

その一言に3人は目に見えて怖がる。

 

「……敵艦の数は一つ。速度はそこまでだけど、油断は出来ないよ」

 

「…一つって事は、はぐれ深海棲艦?」

 

「……多分、ね」

 

「なら、私達でも…」

 

「……普通に考えてみて。私達の練度は20にも達していないんだよ?そんな私達が今敵艦と交戦しても、勝てるかは……」

 

響の冷静な推測で3人は震えだす。

 

「……ここはやり過ごすか、戦いながら逃げるか……その二択だよ」

 

「……い、一応艤装は出しておきましょう。こっちに向かって来てるのなら、戦闘になる確率は高いと思うから…」

 

3人は怯えながらも偽装を展開。そして、資材や燃料の残量を確認する。

 

「……どうだい?」

 

「……弾薬とか、攻撃に使うものは結構あるけど…」

 

「逃げるには、燃料が足りないのです……」

 

「……私もよ、響」

 

「……私も似たような状態だよ」

 

逃げるには燃料が少なく、戦うには丁度いい程資材が残っている。ここから導き出される選択は一つ。戦う事だ。

 

「……やるしか、ない」

 

響は3人にそう告げて覚悟を決めようとした、その時。

 

「みんな、早くこっちへ!鎮守府に逃げるんだ!」

 

この無人島で唯一の人間、星奈が走ってやってきた。

 

「……人間、そんなことをしても無駄だよ。多分私達は捕捉されてる筈。鎮守府の中に隠れても見つかるのは時間の問題……戦うしかないんだ」

 

「……で、でも戦闘は出来るだけ避けるべきだよ!」

 

「……人間、逃げるなら早く……」

 

その時、リ級の小さな影から米粒程の小さな影が出てきた。いくつもの偵察機を飛ばしてきたようだ。

 

「……ッ!来たよ、皆!偵察機を撃ち落として敵にこっちの弱さを悟られないようにする!」

 

「わかっているわ!」

 

「な、なのです!」

 

「…こういう時に限って…ッ!」

 

4人は一斉に武器を構える。響、電、雷は右肩に取り付けられた主砲12.7連装砲を、暁は右腕に装備している同じ12.7連装砲を。

影から察するに敵は恐らくリ級。そして、偵察機を出しているという事は、改fragship。もう、勝ち目は無いに等しい。

それを響と暁は分かっていた。だが、隠れるなどという選択肢は眼中に無かった。

暁は史実、第六艦隊の中では一番初めに沈んでいる。長女であり、守るべき妹たちがいる。もう、置いていきたくは無いのだ。最愛の家族を。

響は四人の中で唯一生き残った艦だった。電に関しては目の前で失った。彼女にとって、暁達は自らの命を賭してでも守りたい家族。もう、一人にはなりたく無い…そして、もう失いたくないのだ。最愛の家族を。

正反対の史実を持っている彼女たちの想いは一つだった。

 

「……そうだ!あれが完成していれば……少し待ってて‼︎」

 

星奈が何かを思い出したのか鎮守府の横、工廠に向かって走っていった。

 

「……(逃げるの(それ)が一番の選択だよ、人間。それでいいさ。私達は、どうせ沈んでも新しく建造すればまた生まれる。)」

 

「それじゃあ、対空射撃、開…」

 

その直後、30メートル先に迫った偵察機を撃ち落そうと暁の声で対空射撃を始めようとした、その時。

 

 

激痛が四人を襲った。

 

 

「………ッ⁉︎(な、何が起こって……あれは偵察機の筈…)」

 

響はその痛みに整った顔を苦痛に歪めながらも耐え、考えた。

 

「皆、大丈夫っ⁉︎」

 

暁が全員の状況を確認する。

 

「……雷は、中破しちゃったわ」

 

「電はまだ小破もしてないのです……っ!」

 

「……私は大丈夫。小破まではしてないよ」

 

状況は悪化した。だが、響はそれよりも先ほどの射撃はなんだったのかを考える。

 

「……(リ級は持っていても偵察機ぐらいで空からの攻撃は来ない筈……もしあれが艦載機だとして……何故リ級が?)」

 

少しずつ、答えに近づいていく。

 

 

 

 

「……あ、あれって、機銃?でも、リ級って空からの攻撃は…待って、あれ……本当にリ級?ただの改fragship?」

 

鎮守府の工廠への道中、星奈も先ほどの攻撃を見ておかしいと気づく。

 

「…あのリ級、何色の光を持ってる?」

 

星奈は小さなポーチから小型の双眼鏡を取り出し、敵艦の光の色を確認する。

eliteは赤、fragshipは黄、改fragshipは青色。空からの攻撃はその三種では不可能で、かろうじて改fragshipが偵察機を持っている程度なのだ。では何故響達は攻撃を受けているか。答えは単純、あれは艦載機だという事だ。では、何故リ級が艦載機を飛ばしているのか。

 

「……相手は…み、どり色?」

 

そのリ級から滲み出ている光の色は木の葉のような翡翠色。

星奈はその時、先程見ていた新聞の内容をはっきりと思い出した。

 

「……ま、まさか…あれは…」

 

 

 

 

 

 

「響!ど、どうしたの⁉︎」

 

時を同じくして響もそれに気付いた。

 

「……翡翠(みどり)色……⁉︎じゃあ、あれが……」

 

響は元の鎮守府で提督が読んでいた新聞を隠れて読んでいた。外の知識も他の艦娘よりはある。そして、当然昔の新聞も読んでいた。2036年7月14日の記事を。

この時、皮肉にも二人の声は重なった。

 

 

「「リ級(かい)fragship……ッ‼︎」」

 

 

そう、本物の化け物がやってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

「…みんな、不味いわよ……私は小破だけで済んだから響とペアで行くわ。電は雷を守りながら二人は援護射撃をして!」

 

「……了解!(なのです!)」

 

「……行こうか、姉さん」

 

「ええ。なんとしてでもあいつを沈めるわよ!」

 

四人は覚悟を決めて艦載機を撃ち落としにかかる。

 

「……ッ!」

 

思ったより艦載機の動きが速く当たりにくいが、着実に撃ち落として行く。

 

「…やった!全部撃ち落とせた!」

 

「やったのです!」

 

ようやく全ての艦載機を撃ち落とし、喜ぶ雷と電。

 

「……まだよ!本体が残ってる!」

 

だが、元凶がまだ残っている。距離は残り50メートル。距離的にまだ余裕はあるものの、能力(ちから)は向こうの方が格上。

 

「……何故こっちに来ないんだ?さっきからろくに動いてないけど……」

 

あのリ級は全く動いていない。普通なら突っ込んでくる筈。

 

「……やっぱり、おかしいわよね?響」

 

「……うん。異様に静かだ。大人し過ぎるよ」

 

「……あれで終わる訳無いから……まさか、様子見?」

 

「……いや、違う。それと似てるけど……あれは、まるで……」

 

『まるで、狩りを楽しむ狼のようだ』そんな言葉を

その目は獲物(ターゲット)を見据えてどう追い込むかを考えている……そんな風に響は感じられた。

 

「……動き出した…っ!」

 

「来たわね……二人とも、援護射撃を頼むわよ!」

 

いよいよリ級は動き始めた。ゆっくりとだが、こちらに前進してくる。

 

「………(あの噂のリ級廻fragshipなら、普通の改fragshipよりも性能が高い。本来持っているはずのない艦載機を飛ばして来たことも踏まえて、他にも持っていないはずの装備や能力(ちから)を持っていると考えれば……相手の潜在能力は未知数、と考えたほうがいい。あの新聞にも、他の報告書にもアレの持ってる装備(ちから)については何も書いていなかった…)」

 

「……響、あのリ級のこと…どう思う?」

 

「……あれはあるところの鎮守府を壊滅させた異常存在(イレギュラー)…と考えた方が良さそう。多分、火力(ちから)耐久性(かたさ)速度(はやさ)も……改fragshipより大きく上回っている筈…」

 

「……全く…こういう時に限って……勝てる可能性はほとんどない、わね」

 

「……ダー(ああ)

 

「……さあ、死闘を始めようじゃないの………‼︎」

 

 

 

 

 

 

四人の練度は低く、全員が10を下回っている。駆逐艦は一番建造されることが多い。言い方は悪いかも知れないが、種類も豊富だ。

駆逐艦は回避、雷撃、対潜に優れており、前衛にもってこいだ。だが、短所として火力と共に装甲……耐久力が低い。改や改二は改造前を一回りもふた回りも性能が良くなり、戦艦と肩を並べる化け物(チート)級の駆逐艦もいる。火力に関して言えば夕立が有名だろう。だが、それでも耐久力が他の種艦より下回る。

だからこそ、駆逐艦は沈むことが多い。いや、必然的に増えてしまうのだ。

練度の低過ぎる彼女達にとってこの戦いは、死刑宣告をする事に等しかった。

 

「う……ッ⁉︎」

 

風切り音を奏でながら砲撃がすぐ真横を通り過ぎ、海面が爆ぜる。異常な程に。

 

「……ば、化け物地味てるじゃないっ⁉︎」

 

近づくことすらままならない、圧倒的な技術量。あの噂のリ級が初めて出現したのは10年前。あれからずっと生き続けていたのか。

 

「……くッ‼︎」

 

10メートル程距離が開いているのにこの精密な砲撃。魚雷で攻撃しようにもすぐさま牽制され、不発に終わる。今まで放った魚雷、3本はが全て牽制された。逆に響達は敵の攻撃を避ける事に必死だった。

 

「……埒があかない…ッ!」

 

魚雷は一人6本ずつ装備している。響の魚雷は6本残っているが、暁達はすでに一本ずつ使ってしまった。

 

「きゃあっ⁉︎」

 

「い、電っ⁉︎」

 

電が相手の砲撃に掠り、被弾。

 

「…た、大破なのです……っ⁉︎」

 

「「「⁉︎」」」

 

四人は驚愕した。砲撃を掠っただけで、小破さえしていなかった電が()()()大破したのだ。いや、ギリギリ轟沈していないと言うべきか……なんたる火力。

 

「……っ、みんな!魚雷一斉発射っ‼︎」

 

そこで冷静さを欠いた響がみんなに魚雷による総攻撃を促す。放たれる魚雷。その数、15本。いくら強くても牽制しきれる物量ではない。牽制したとしても少なくとも7発は当たる、そう響は予想した。

だが、リ級はその予想を遥かに超えた行動をとった。

 

『……』

 

「「「「_______ 」」」」

 

リ級は牽制せず、避けることさえせずに真正面が受け止めようとしていた。

爆発音。上がる水飛沫。

驚きが抜けきっていない四人はまた恐るべきものを見て、時を止めた。

 

『……ハァ…』

 

主砲をこちらに向ける、小破さえもしていないリ級廻fragshipを。

 

「……ブリン(ヤバイ)ッ‼︎」

 

「みんな、下がってぇぇッ‼︎」

 

暁が警告した時にはもう遅かった。狙われているのは、不幸にも電だった。電は自分の轟沈()を幻視し、涙を流しながら目を瞑った。

だがその時、響が咄嗟に電の前に出て、左腕の装甲を盾に砲撃を庇った。

 

「がッッ_______ 」

 

小さく溢れる悲鳴、吹き飛ぶ響、砕け散る装甲、散る暁達の叫び声。

 

戦いは最悪の終焉(バッドエンド)に向かっていた。

 

 




次回《不死鳥と狙撃手》
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。