青蘭島のうたわれるものたち   作:辻 逆月

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うたわれるもの要素が割と強いんで、うたわれるものを知っている人か、特にそこは考えないって人向けになるッス。


青蘭島1日目、キママゥと踊るもの

夢を見ていた。得体のしれない私を、迎え入れてくれた、村の皆が、どうなったか、知る前の、おやっさんの、最期の姿を。

 

『あんちゃん。負けんなよ。』

 

……私は、何故、気づけなかった。

おやっさんの背中に、刺さった、矢を。

 

「気にすんなよ、あんちゃん。元々見せて手ぇ煩わせる気なんざ無かったからよ。…それにだ、お前らには辛い思いさせちまったが、あの後、あんちゃん達は俺を村に還してくれた。てことは、覚えてたんだろ?」

 

「あの村で育ち、あの村の土に還る。ヤマユラの、あの集落に…。」

 

「そうだ。かあちゃんや村の皆も、あの日が来る前から、その覚悟で村を守ってたんだ。」

 

「…。」

 

「だからよ、「村長」。しょげた顔すんな!俺らがあんたを見守ってる。」

 

おやっさんは、あの頃と一切変わらずに、大きく笑った。

 

「おやっさん…。」

 

 

 

 

 

 

ハクオロ「ハッ!?」

 

ハクオロが夢から覚めると、そこは見たことのない。

いや、昨日初めて見た部屋だった。

 

ハクオロ「そうだ…ここは青蘭島だった。」

 

ハクオロはそれを認識すると同時に、戻るべき場所に帰るすべを探しに来た目的も思い出す。

 

ハクオロ「5時か、ちょうどいい。」

 

寝床から出て、朝の支度をする為に部屋を出る。

そして、別の部屋から聞こえる寝息を聞く。

 

ハクオロ「やれやれ。この分だと、また起こすハメになりそうだな。」

 

ハクオロの同居人、日向美海は中学同様、寝坊しそうだ。

 

 

 

 

 

2時間後、洗濯物、食事の用意などをしてからハクオロは美海を起こす。

朝飯の最中に美海がぼやく。

 

美海「また起こされちゃった、今日こそはって思ったのにー。」

 

ハクオロ「習慣はそうそう変えられないから早くに直しておくようにと、この前も言ったはずだぞ。」

 

美海「そうだけどさ…。」

 

美海が口をへの字に曲げて箸が止まる。

 

ハクオロ「あまりゆっくりしている時間は無いぞ。今日は入学式だ、早く登校しないといけないんじゃなかったか?」

 

美海「あ、いっけない!」

 

美海はすぐに朝食を食べ洗面所に向かう。

 

ハクオロ「さて、私も準備を整えないとな。」

 

 

 

 

 

 

美海「行ってきまーす!ハクオロも頑張ってね、故郷探し!」

 

美海は青蘭学園の学生服を着て、外に出ていった。

ハクオロも予定があったため出ることにした。

 

ハクオロ「確か、指定されていた時間は…。」

 

美海の言った「故郷探し」。ハクオロはそれを目的に青蘭島に来た。

7年前に青の世界の海水浴場で、たった一人倒れていたハクオロは、美海に発見される。

別に記憶を失ったということは無い、彼がいた場所、オンカミヤムカイに封印されていたのにいつの間にかそこにいたという認識になっている程度だ。

だが、何故そこにいるかはもちろんのこと、帰る方法が分からなかった。

日向家に拾われたハクオロは途方にくれた。

青蘭島や世界のことも調べたが、青の世界以外の3つの世界全てが、微妙に、又は大幅に違うのだ。

 

黒の世界は彼の世界の術法に似た類の術が存在したが、一年中暗いと言うし、キママゥが居ないという時点で違う。

 

赤の世界も民の神への信仰が根強いと聞いたが、神が身近に、しかもたくさんいると聞いた。しかしオンカミヤリューはもちろん、キママゥも存在しないため違う。

 

白の世界に至っては、科学が発達した結果電子化された世界だという。キママゥのことは知りもしないという、違う。

 

ハクオロ「確か、Dr.ミハイルの研究所は…。」

 

調べたいこともあったが関係者でもないので青蘭島には行けない。手詰まりかと思われたが、ハクオロは自分がα・ドライバーという存在だと3ヶ月前に言われた。

ハクオロ自身α・ドライバーが何かよくは分かっていない。

しかし数が少ないため、α・ドライバーは青蘭島に行くことを強く勧められることは知っていた。

故郷の世界を探す為に、それと少し前から青蘭島行きが決まっていた美海のことも心配だったので、付き添いという形で青蘭島に来た。

その際、美海の両親に面倒がないという理由で日向の名字を与えられ、現在の名前は日向ハクオロとなっている。

 

ハクオロ「ここか。…ごめんください!アポを取っていた日向ハクオロです。」

 

そして今、世界について調べている研究者、ドクター・ミハイルに会う約束を取り付け、今その人物の研究所の前に居る。

 

?『ああ、入ってくれ。』

 

インターホン、のようなモノから女性の声が聞こえる。

入るとすぐに声の主らしき女性、見た目は20代前半といったところだった。

 

ミハイル「アナタが日向ハクオロか。本当に仮面をつけているのだな。」

 

ハクオロ「コレの事はあまり気にしないで下さい。それよりも。」

 

ミハイル「ああ、本題に入ろうか。」

 

 

 

 

 

 

私は、ミハイルに自分が居た世界のことを話した。

どの世界も自分の暮らしていた世界とは違うこと。

住人にはほぼ全員が、耳やシッポが生えていること。

 

ミハイル「つまり、今繫がっている4つの世界以外に、あなたの暮らしていた世界があるということだろうか?」

 

ハクオロ「はい、おそらく。どの世界も、私の居た世界とは一部が似ているだけで全く違う世界だと思います。」

 

ミハイルは顎に手を当てる。

 

ミハイル「ふむ…。分かった、少し調べてみよう。」

 

ハクオロ「ありがとうございます。」

 

ミハイル「そんなに堅苦しくしなくていい、アナタの方が年はそれなりに上だろう。」

 

ハクオロ(……ん?)

 

ハクオロ「いや、同じ20代くらいでは?」

 

ハクオロの場合は実際には何百年と生きるハメになっているのだが、見た目に年齢を合わせ、大体27歳ということになっている。

 

ミハイル「…私は、17歳だ。」

 

ハクオロ「何!?」

 

ハクオロは改めてミハイルを見つめる。

17歳。年齢が美海とあまり変わらない事実に驚愕する。

 

ミハイル「……別世界の件は、こちらで調べる。だから。この話は、深く掘らないでほしい…。」

 

ハクオロ「…分かった。」

 

踏んではいけないものを踏んだことをハクオロは後悔していた。

 

 

 

 

 

 

 

ミハイルとの話が終わり、ハクオロは少し青蘭島を探索してみることにした。

商店街が建ち並び、ショッピングモールがある、そのすぐ近くに森があった。

少し休んでいくことにした。

 

ハクオロ「……良いところだな。」

 

美海達と暮らしていた所も、悪くはないと思っていたが、ハクオロは緑の多い場所を気に入っていた。

 

ハクオロ「トゥスクルのはずれにも、こんな森があったな。」

 

娘のような存在であるアルルゥと蜂蜜を取りに行ったのを思い出す。

 

ハクオロ「そういえば、こんな感じの森でも。」

 

キママゥ、猿にソックリな動物達。

幾度もなく戦いを繰り広げ、キママゥ皇などと呼ばれたのも、ハクオロにとって今ではいい思い出だ。

 

ハクオロ「…ん?」

 

商店街の方が騒がしい。

学生達が来たにしては早い。

 

?「ウギィーー!」

 

……この、鳴き声は。

流石に違う、はずだ?

とにかく行ってみよう

 

 

 

 

 

 

ハクオロ「な!?」

 

商店街に着くと、『キママゥ』が、暴れまわっていることが眼に映る

何故キママゥがここに居るのかとハクオロは混乱する 

 

商店街の人「ウチのコロッケが!」

     「ちょっ、売り物取るなあ!」

     「誰かあ!」

 

キママゥ「ウギギィ!」

    「ヌッホォーー!」

    「イ〜ギー!!」

 

ハクオロ「これは、討伐しようにも用意がない…。」

 

キママゥを討伐することは簡単というわけではない。

一応キママゥたちを壊滅させる方法はハクオロ自身持っている。

しかしそれは商店街ごと壊滅させてしまう。

そもそもキママゥ達は殺すより、追い返すか、一網打尽にして捕まえたほうが効率がいいのだ。

 

ハクオロ「どうすれば…。」

 

?「お困りでしょうか。貴方は、ハクオロ皇とお見受けしましたが。」

 

どうしようかとキママゥへの対処を考えていたとき、突然後ろから声がかかり、一瞬体が飛び上がりそうになる。

 

ハクオロ「誰だ!?」

 

後ろを振り向く、そこには。

 

ハクオロ「チキナロ!?何故ここに!」

 

チキナロ「お久しぶりでございますです、ハイ。…何故ここに居るかは、お答えしかねますです、ハイ。」

 

チキナロ、異様に品揃えの豊富な行商人。この世界に何故居るのかと疑問に思うが、それよりも今はキママゥだと振り向き直そうとするが。

 

ハクオロ「すまないが、今は品物を買っている余裕は…!」

 

チキナロ「いえいえ、本日はこちらをサービスでお届けにあがった次第です。」

 

ハクオロ「?何を届けに来たんだ。」

 

ハクオロとしては届け物が何かというより、あの世界の住人であるチキナロから、「サービス」なんていう横文字が飛び出たことが驚きだった。

 

チキナロ「これにございます。」

 

チキナロが渡してきたのは小さな箱。それを開けると中には。

 

ハクオロ「コレは…!?」

 

中に入っていたのは、扇。

金属でできたそれは、金属で出来ているのに、持ち手が随分と擦り減っている。

かなり使い込まれているが、それでいて手入れが届いている。

ハクオロの鉄扇、間違えようがない。

 

ハクオロ「チキナロ、お前はコレをどこで!」

 

しかし、一瞬扇に目を向けていた間に、チキナロは消えていた。

 

ハクオロ「……仕方ない。」

 

気にしている暇はなかった。

ハクオロは鉄扇を握り、少し近い所に居たキママゥを鉄扇で叩く。

 

ハクオロ「ッハ!」

 

キママゥ「ギュイィ〜イ!?」

 

仲間がやられたのを見て、キママゥ達が集まってくる。

これで被害が一箇所に集中させられる。

数にして15匹。

 

キママゥ「ウッギイーー!!」

 

キママゥ達はハクオロを取り囲み、敵意を向けてくる。

 

キママゥ「キギウー!」

 

かかれ、と言うように一匹のキママゥがハクオロを指差す。

 

キママゥ「キキィー!」

 

ハクオロ「く、ハァッ!」

 

扇で攻撃をいなし、突撃するキママゥを避ける。

思ったより動きが単調だった。

 

ハクオロ(…だが、キママゥはこんなに単純にしかけてくるような奴らだったか?)

 

そう思ったとき、後ろから風を斬る音が聞こえる。

 

ハクオロ「!、ハァッ!…石!」

 

後ろにはキママゥが1匹、石を持っていた

ハクオロがキママゥたちに攻撃され移動できない間に、先ほどハクオロを指差した司令塔のキママゥが後頭部めがけて、石を投げるという作戦のようだ。

 

キママゥ「ウッギッギ〜。」

 

石を持ったキママゥは優越感に浸った顔をハクオロに向ける。

 

ハクオロ「…。」

 

ハクオロ(石を投げるキママゥを叩いた上で、残りを…。無理だ。こっちは飛び道具も毒の類も持ち合わせていない。せめて誰か、人が居れば…。)

 

かつて自らに付き従ってくれたものたちを思い出しながら石を避け、しばらく防戦一方となる。

 

キママゥ「ウッギャ!」

 

ハクオロ「ぐっ!?」

 

ついにキママゥがハクオロに攻撃を当てる。

辺りからもキママゥの増援が駆けつける。

 

ハクオロ「まずい、このままでは…。」

 

あわやハクオロがキママゥ達に飛びかかられようとした時。

ゴスと鈍い音が響き、キママゥの悲鳴が響く。

 

キママゥ「ウッギギギィーー!?」

 

商店街の人「仮面の人、加勢するよ!」

 

商店街のパン屋さん「何度追い返しても来るから困ってたんだ!今日こそ帰ってもらうぞ!」

 

商店街の揚げ物屋さん「邪魔だったかい?」

 

キママゥに襲われていた人達が箒などを持って加勢してくれるようだ。

 

ハクオロ「いいえ、助かります!全員、キママゥ、あの猿達を全力で叩きのめしてください!ここが危ない場所だと教え込めば!」

 

商店街の人達『あいよ!』

 

キママゥ達『ウギギャッハーー!?』

 

そうして、突如現れたキママゥは、商店街の人々に討伐された。




ちょっと展開が早すぎたかな?
けど、ハクオロの初戦闘はどうしてもキママゥにしたかったです、ハイ。
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