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プロローグ 『タライ』で死んだ男
「おい、そこのイケメン! ここは何処だ?」
「ここか? ここは俺の世界だ」
「は? 何痛い事言ってんだ? 早く俺をここから出せッ!!」
辺りは暗く、何も見えない場所で檻に入れられた男と黄金の玉座に座るイケメンが言い争っていた。
「まず最初に言っておく事がある。お前は死んだ」
「…………は? 完璧に頭がイカれているのか?」
「自己紹介がまだだったな、俺は死神だ。状況を整理しよう。お前は昼飯を買いに行くため道を歩いていた。そして死んだ」
「ちょっと待て!! なんかおかしいだろ!! 全く状況が掴めねぇ!?」
「補足しよう。お前は道を歩いている時に運悪く、空から降ってきたタライに当たり死んだ」
「……何か思い出してきた。そうだ!! 俺は飯を買いにコンビニに行こうとして……ん? どっからタライが落ちてきたんだ!? 俺が歩いていた場所はビルもマンションもなかったはずだ!!」
「俺が故意に当てた」
「殺人事件じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ちなみに当てたタライは超合金で出来ていたぜ☆」
「無駄にかっこつけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
しばらくして、檻に入っている男はタライで死んだ事実を受け入れずにぐったりとした。それを見た黄金の玉座に座る男は話を切り出す。
「ところで人間よ。お前、転生とかに興味ないか?」
「転生……? 生き返らせてくれるのか?」
「ん、まぁな。元々それが目的でお前を殺したしな」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!! そんな理由で人殺すな!!」
「だってぇー、最近面白くないんだもん。これぐらい、いいだろ?」
「よくねぇーよ!! お前のせいで……」
「とにかくだ。お前には危険あふれるテキトーな世界に転生してもらう。3つ程、特典もつけてやろう!!」
檻に入れられた男はこのままで話が進まないと思い、しぶしぶ頷いた。
「よし、では特典だが何がいい? 特別に聞いてやろう」
男は考える。本当に、危険のある世界に転生したのであれば、自分の身を守る為の力が欲しい。では何がいいか? 色々考えるがふと、いい案が思い浮かび口を開ける。
「なら『必殺仕事人』、中村主水の……」
「『必殺仕事人』? お前なかなか渋いもの選ぶな! つまり、殴って殺す奴か」
「ちょっと待て!! 何故そうなる!? てか人の話し聞け!!」
確かにそのような仕事人は存在するが、好き好んで選ぶ奴はいないだろう。
「えぇー良いじゃん。顔殴ったら、ぐるんと一周するんだぜ」
「怖すぎだし、トラウマになるし、使いたくなくなるし!! 別のにしてくれっ!!」
「そうかぁ……なら鉄パイプで良いや」
「最早、『必殺仕事人』関係ねぇーし!! 何で鉄パイプだよ!! 俺の意見聞いてねぇ!!」
「では、2つめは何がいい」
男は考える。このイケメン、自分が良いと思った能力つけようとしていると、人の意見をこれっぽちも聞いてない。ならば、意見を聞かざる得ないものを要求すれば良いと。
「――身体能力を上げてくれ」
「成程、つまり一般人よりもちょっと凄い身体能力だな」
「何!? その微妙なチョイス!?」
「よしこれで2つだな。では最後何がいい」
男は考える。もう手っ取り早く、抽象的に言ってこの話を終わらせようと、そもそも本当に死んでいるのかイマイチ分からないこの状況。もうやけくそだ。
「最強の力が欲しい」
「別に良いが、どうしようか――よし薬をやろう」
「薬? それのどこが最強の力だ?」
「この薬は適合しなければ、1回きりの大技になる」
「? 何でだ?」
「詳しくは薬と共に説明書を送る。それを見ろ……管理には気をつけるんだな」
「お・・・おう」
男はイケメンの真剣な表情を見て少し間の抜けた返事になったがイケメンは気にしていない様子だった。
「よし、特典が決まった事だし早速転生してもらうか……では、勇者よまた会おう!!」
「おっ!! やっとここから出してくれるか……」
この時、男は油断していた。頭上に迫る物に気付けなかったのだ。そして、男の頭にそれが当たり、金属音が鳴り響く……。
「が……またタライかよ」
「勿論、超合金だぜ☆」
「そんな事聞いてねぇ――――」
こうして、男は意識を手放していくのだった。