壊し屋 俊秀   作:遼明

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 あけましておめでとうございます。今年もこの作品を読んでくださる皆々様、どうぞよろしくお願いします。


第13話 後篇 不退転

 俊秀が5機目を破壊した頃、海鳴市上空では白いバリアジャケットを身に纏ったなのはの姿があった。今日もジュエルシードを探しているようだが、それとは別に探しているモノがあるようで焦っているようにも見える。

 

「(ユーノ君、見つかった?)」

「(いや……ジュエルシードの反応はないよ。それに、岩井さんも見つからない。なのは、そっちはどう?)」

「(どっちも見つからない。下校の時ははっきりわかったのに今は残留魔力の欠片もないよ……)」

 

 なのはは下校時、俊秀からジュエルシードの魔力を感知したのだが生憎近くには彼女の友達がいた。本音を言えばすぐに渡して貰いたかったが、俊秀は魔力のまの字もないため念話ができない。だからと言って口に出せば友達を巻き込んでしまう可能性が出てくる。その為にあの場では言い出せなかったのだ。

 

「(ユーノ君、俊秀先輩……死んでないよね)」

「(なのはっ!? 縁起でもない事、言わないでよ。彼がそんな簡単に死ぬはずないじゃないか)」

「(うん、私もそう思う。でも俊秀先輩は魔導師じゃないんだよ。あの時みたいに怪我を負っていたら、私……)」

「(……大丈夫だよなのは。彼は僕らよりも戦い慣れているようだし、そうそうやられたりしないよ)」

「(そうだよね)」

「(じゃあ、なのは。最近現れたあの子の事もある。僕はもっと北の方を探してみるからその辺はよろしくね)」

 

 ユーノはジェルシードの捜索に集中する為、なのはとの念話を切った。なのはも捜索に戻ろうとするが頭の中に雑念が浮かんだ。

 

(……あの子は、何でジュエルシードを集めているんだろ。私、あの子の事がもっと知りたいな)

 

 なのはは、最近会った魔導師の事を考えながら、捜索に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ…………くぅうう、駄目だ。うまく力が入らん」

 

 同刻、俊秀は先ほど破壊した5機目のプロトタイプに内蔵されているジュエルシードを取り出す為、解体していた。しかし、戦闘でダメージを受けすぎたせいで作業が難航している。

 

(やはり利き手をやられたのが一番痛かったな)

 

 俊秀はおもむろに自身の右手首を見た。手首には鉄球が食い込んでいるが、それを止めるかのように特殊な金属でできた枷が砕けながらも鉄球を止めている。どうやら不可視の枷が右手首にも付けられており、それがプロトタイプが使ったと思われる鉄球の攻撃をある程度、防いでいたようだった。

 しかし、防いでいたと言っても所詮は力を抑制する為に付けられてた物、衝撃までは防げなかったようで、恐らく俊秀の手首は折れているだろう。まるで硬球を刺し込まれて打った時のように手が痺れている上、全く動かせなかった。

 

(……左上膊(じょうはく)の切り傷、そして恐らくイカレている肋骨と内臓。腕の方は問題ないが体の方がヤバイ、まともに戦闘できるかわからん。…………と言ってられん)

 

 俊秀は解体しながら、負った怪我を確認していく。怪我だけで言えば重体患者と言っても過言ではないが、ここでこの挑戦を怪我が酷いと言う理由で降りるわけにはいかない。

 俊秀の代わりがいるのなら話は別だが、残念な事に適任者はいないので己の手で解決しなければならない。

 

(……怪我の状態を確認するのはやめよう。とりあえず、今は最後の1機の性能を予測したほうがいいな)

 

 俊秀は自身のダメージチェックを止め、次の戦いで後れを取らないよう戦略を練ることにした。そこで今日破壊したプロトタイプの順番を思い出しながら、ゆっくりと思考をまとめていく。

 

(今まで出てきたプロトタイプの種類は武装搭載型、高速反応型、長距離移動型、強襲型と思われる。まぁ内2機は推測でしかないが……問題はないだろう。これらに通じて言える事は1つだけある、まだどれも試作段階であることだ)

 

 俊秀が今まで破壊したプロトタイプは何かしら欠点がある。1機目に関しては機動力、4機目は機動力に力を注ぎ過ぎたのか装甲が紙だった。そして、5機目は攻撃に加担し過ぎると熱を機体に溜め込んでしまい、一時的に身動きが取れない。

 これを考えるとどうも完成品とは思えない。

 

(例外として2機目と3機目は問題点が不明だが、何処か引っかかる。まるで手の平で遊ばれているような感覚になるな。……そもそも、わざわざ俺の実力を測るためにここまで手の込んだ事をする必要があったのか。あの男、何を企んでいる?)

 

 俊秀はプロトタイプの問題点を挙げていくうちに、別の疑問が浮かび上がってしまった。そもそも身の回りで何か問題が起これば、彼なら間違いなく首を突っ込むだろう。わざわざ通信という手段を使って挑戦を叩きつける必要はない。更に言えば俊秀の戦闘データは恐らく直接戦った紫苑が持っている、テスト(戦闘データの回収)をする必要がない。

 

(この戦闘であのイケメンは何をテストしているんだ。……もしかして、あの男の狙いは俺じゃない?)

「おっと!? ……やっと装甲が剥がれたか」

 

 俊秀を思考の海からから戻したのは解体している装甲が剥がれ、地面に落ちた時に辺りに響いた金属音だった。その下には青く光るジュエルシードが埋め込まれており、これ以上の解体は必要ない事がわかる。

 

(さて、ここから離れる前に軽い処置をしておこう)

 

 俊秀はジュエルシードを回収した後、ポケットに突っ込んでいた鉄パイプを入れる麻袋を取り出し鉄パイプをそれに入れる。次にポケットから取り出したのは、なのはの友達に渡されたハンカチだった。

 

(使うつもりはなかったが、この際しょうがないか)

 

 俊秀は右手首に付けている砕けかけている枷と鉄球を無理やり外し、ハンカチで手首を固定。その後に鉄パイプを入れた麻袋についている紐を使い、鉄パイプを右手に握りこませるように巻きつけた。

 

(これで簡単に抜ける事はない。時間は……時計はぶっ壊れてわからん。ならば腹時計で……って内臓イカレてるし無理か)

 

 俊秀は全身に走る痛みに歯を食いしばりながら1歩踏み出そうとした時、後ろから聞き覚えのある鳴き声が耳に入る。足を止めてその方向を見ると子狐がこっちに向かっているようだった。

 

「くぅーん」

「ん? あれはカスミ……。確かあいつは壊し損ねたプロトタイプを追って――――まさか近くにいるのか!?」

 

 カスミがこの場にいなかった理由を思い出し、辺りを見渡すがそのプロトタイプらしき影は見えない。見えない敵ほど人間は恐怖を覚える。自然と俊秀の心拍が上がり、身構えさせた。更に俊秀は息吹を探り、相手の位置を特定しようとする。

 

(息吹が感じられない。どうやら逃げられたってところだな)

 

 俊秀は構えを解き、カスミがいる場所に向かおうと1歩踏む出す、その時だった。足元が轟音と共に大きく割れ、俊秀が探していた最後のプロトタイプが地面から姿を現した。プロトタイプは出てきた勢いでそのまま俊秀に襲い掛かる。

 左の鋏からすでに大刃の剣のようなものが飛び出しており、それがまぶゆい光を放ちながら俊秀を切り裂こうする。しかし、その(やいば)は俊秀には届かず、左の脹脛にかすっただけで終わった。

 

「ぐぅ……!! ――――地面に、潜っていただと!?」

 

 プロトタイプに虚を突かれる形となったが足元の地面が崩れたおかげで、俊秀は刃を避ける事を成功する。しかし、大きく体勢を崩してしまったために追撃する事もかなわず、プロトタイプは物凄いスピードで走り去ってしまった。

 

(何だ、あの速さは……!? 他の機体と比べて桁違い過ぎる。アレだけ別格だ!!)

 

 俊秀は焦りを覚えながらも、息吹を頼りにプロトタイプの後を追ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 23時36分。

 あれから何時間経過しただろうか俊秀は走り続けていた。体から流れる血は少ない、だが体内の方はもうボロボロだ。時折、意識が朦朧となり何故自分が走っているのかと言う理由を忘れそうになる。遥かに一般人より頑丈な彼がそれほどまでに追い詰められていた。

 本来なら走れる状態ではない。しかし、走る続けた。彼がかつて生きた世界で、前世で培った精神がそうさせるのかもしれない。

 

(もう、残り30分もない……後1機、後1機だ! 何としても見つけて破壊しなければ……)

 

 彼の衣服は汗が染みて体に張り付き、右手に無理やり握っている細長い麻袋も汗で濡れている。迫る時間制限に焦りを隠せなくなってきている。

 

(くそっ……今の状態じゃあ、息吹を探る事はまず無理。だが、この住宅街に隠れているのは間違いない。根気よく探せば、まだ間に合うはずだ)

 

 俊秀はプロトタイプを住宅街で見失っていた。ならばどこかに隠れていると思い、隅々まで探すがもう何周もしている。これ以上の捜索は無駄に思えるが、まだここのどこかに隠れているんではと心の片隅で思ってしまう。

 

(もう1周して、いなかったら他の場所を探そう)

 

 そう決めた俊秀は再び、住宅街を走り始めた。辺りはもう人っ子人1人もおらず、静けさが辺りを支配する。道路を照らす街灯には蛾が集っていた。

 

(ここにはいないのか? ……ん? あれは)

 

 走り始めて数分、住宅街の曲がり角を右に行くと大きな影が蠢いているのが見えた。一瞬、身構えてしまう俊秀であったが目を凝らして観察した後、俊秀の目に火が燈った。

 

「見つけたッ!! 今度こそ絶対逃がさん!!」

 

 そう大きな影の正体はプロトタイプだった。俊秀が正体に気付いたと同時にプロトタイプは物凄いスピードで俊秀から離れていこうとする。しかし、プロトタイプのスピードに俊秀が喰らいついており離される事はなかった。

 

「見す見す逃がすつもりはないッ!!」

(確かこの先はオフィス街があった場所がある筈……上手く誘導してそこでぶっ壊す)

 

 俊秀は自身の体に鞭を打って、最後の追い込みに入った。

 

 

 

 

 

 オフィス街跡地。

 俊秀は上手くプロトタイプを誘導する事に成功した。いや、むしろそう選択するしかなかったと言う方が正しいだろう。こちらの方が追っていた筈なのに、いつの間にか追われているのだ。とは言えどんな形でもオフィス街に誘導できたのは良かった。しかし……。

 

「ちっ……!! 迂闊に近づけん」

 

 プロトタイプは右の鋏から砲身のようなものを覗かせ、常に俊秀を狙っている。その砲身からは弾丸ではなく、光が飛び出し俊秀を撃ち抜こうとするのだ。戦闘に入ってから俊秀はそれを避け続けていた。

 

(攻撃の初速度が速い。気を抜いたら最後、喰われる)

 

 プロトタイプが光を撃ち出す時、砲身の周りが光の粒子で僅かに光った後、光が放たれるのだ。これに集中していれば、避ける事はそこまで難しくない。だが、近付く事が出来ないのだ。俊秀が近付こうとするとプロトタイプの周りに浮かんでいる鉄球が道を阻むのだ。

 

(くそっ……もう時間がない。玉砕覚悟で突っ込む!!)

 

 もう時間がない事を懸念した俊秀は腹を括る。もう時計が壊れてしまって時間がわからないが、もう数分しかないだろう。タイミングを窺って破壊するチャンスを待っていたら、間に合わない事は明白だった。

 

(飛び込むタイミングはあの砲身から光が見えた時!! そこに全てを賭ける!!)

 

 俊秀は気持ちを落ち着かせる為、深く深呼吸をする。鉄パイプは俊秀の精神に共鳴するかのように熱を帯び始め、チリチリと麻袋が燃え鉄パイプが姿を現した。

 俊秀は左手に鉄パイプを持ち変え、ゆっくりとプロトタイプに近付くがそれを阻む為宙に浮いている鉄球が襲い掛かった。俊秀はそれを打ち払う為、鉄パイプを振るう。

 鉄球と鉄パイプが激突し、高い金属音が辺りに響き渡る。俊秀が迫ってくる鉄球を避けたり打ち払う事で少しずつプロトタイプとの距離を詰めた。

 

(…………来る!!)

 

 プロトタイプの砲身の周りが一瞬光るのが見えた。その瞬間、俊秀はスライディングをして回避を行う。光が俊秀の頭上をすれすれで通過し、回避は成功した。プロトタイプの周りにはもう鉄球はない。俊秀は賭けに勝ったのだ。

 

「貰ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俊秀はそのまま突っ込む。熱を帯びていた鉄パイプは俊秀の精神に共鳴するのか如く炎を纏い、今までの戦いで最高の一撃をプロトタイプに突き出した。

 

「!? 嘘だろ」

 

 辺りに独特な金属音が鳴り響く。熱と炎を纏った鉄パイプはプロトタイプの装甲を貫いた筈だったが、俊秀の目の前に広がる現実はその逆だった。傷1つなく完全に防がれている。俊秀のコンディションは今までで最悪だが、最高の一撃を完全に防がれた事の衝撃が大きすぎて、その一瞬がゆっくりと流れていく感じがした。

 

(もう一度、もう一度だ!!)

 

 俊秀はもう一度、プロトタイプに鉄パイプを突き出すがその攻撃は当たる事はなかった。プロトタイプが放った光が俊秀の持っている鉄パイプに横から直撃し、その反動で手放してしまったのだ。丸腰になった俊秀をプロトタイプは左の鋏で思いっきり殴り飛ばし、距離を空けさせた。

 

(横から光が飛んできただと、一体何が……!?)

 

 俊秀は光が飛んできたほうに目を向ける。そこにはプロトタイプが出した鉄球しか浮いていない。しかし、それだけで十分理解できた。

 

(まさか……あれは光を反射する事ができるのか。それじゃあ、あの時プロトタイプの周りに鉄球がなかったのは――――やられた)

 

 そう俊秀は嵌められていたのだ。俊秀はあの鉄球を近付く敵を撃退するものだと考えていた。しかし、実際はプロトタイプの撃ち出した光を反射するものであった。少し考えればわかりそうなものだが、このプロトタイプと戦う前に同じような装備を持ったプロトタイプに遭遇していた為に先入観が邪魔をし、その考えまで至らなかったのだ。それだけではない、俊秀は体力的にも精神的にも疲れが蓄積しており、正しい判断ができる状態ではなかった。

 

(くっ……鉄パイプは、そんなに遠くにはない。上手く立ち回れば、回収できるはずだ)

 

 俊秀は別方向に飛ばされた鉄パイプを回収すべく、立ち上がろうとした。しかし、左足に突然の痛みが走り、すぐに地面に伏してしまった。

 

「ぐぅうううううううう………………ぬぁぁああああああああ!!」

 

 足を焼かれるような痛みが、俊秀を襲う。無理して立ち上がろうとすれば足が千切れそうになるほど激痛が全身を走り、ただ立つだけでも困難を極めた。

 

『頑張っているようだね、岩井君。 荷電粒子刀の副作用の力はどうだい』

「お前は……!!」

 

 突如、プロトタイプから映像が映し出された。映っているのはこのプロトタイプを造ったと思われる男である。何が目的で出てきたのかは不明だが淡々と話し始める。

 

『君がただのかすり傷だと思っている脹脛の傷、ただの傷じゃないよ』

「…………」

『その感じじゃ、うすうす気付いていたみたいだね。君が受けたプロトタイプの刃は見た目通り特殊なものだ。刃が纏う光は切り裂いたものをスマートに切るためのものだが、それだけではない。切り裂いた部分に光の粒子がゆっくりと進入し、じわじわと焼いて死に至らすものだ。言わば、毒が必要ない暗殺兵器。それが今となって君に影響を与え始めたって訳だ』

 

 得意げに話す男の顔はまさに子供、人の命をなんとも思っていないそんな表情だ。

 

『その刃を受けたものはゆっくりと死に近付き、恐怖を抱かせる。そうはっきりとわかるんだ。自分の体が焼かれているのが、それで最後にはどんな人間でも醜い姿で死ぬ。肉体は爛れ、誰が死んだのかもわからない。君もそうなるんだよ……。誰にも君が死んだ事に気付かない、ニュースでは行方不明で片付けられ、自然にみんなから忘れられるんだ。そう君は世界から忘れられる。今君が置かれている立場はそこだ恐ろしいだろう?』

 

 男の問いかけられた俊秀は一呼吸をおいてゆっくりと答え始めた。

 

「確かに、恐ろしいかもしれない。誰にも気付かれず、死んでいくそれほど寂しいものはない。でも俺がどんな死に方をしても誰かが覚えてくれる。そう信じれば多少の恐怖は打ち勝つ事ができる」

『……君は怖くないのかい。死ぬ事が』

「死ぬのは怖いさ……でも、この手を拳にしてから、武器を手に取ってから覚悟は決めている。それに死ぬ事が一番怖い事じゃない。俺の存在を、生きた証を忘れ去られる事が一番怖い!!」

 

 俊秀は左足の激痛を堪え、広い大地に足を立てる。これから先、何度も傷つき倒れることがあるだろう。それでも彼は立ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 

              『不退転』その言葉が心にある限り!!

 

 

 

 

 

 

 

「こいっ!! そんな間違ったもん、俺がきっちりとぶっ壊してやる!!」

『ふふふ……はっはっはっはっはっ!! すまない、私は君を見くびっていたようだ。流石は八雲姉妹が認めたことはある。しかし……』

 

 甲高く笑っていた男は急に真剣な表情になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『残念ながら時間切れだ』

 

 突如、プロトタイプを中心に大爆発が起こる。その風圧により俊秀は遠くに吹っ飛ばされた。爆心地を中心に青い光が天に上り、轟音と共に地面が裂け始める。

 

「これが次元震!! 間に合わなかったのか!? …………いや、まだだ。まだ間に合う!!」

 

 俊秀は気持ちを奮い立たせる。鉄パイプを拾っている時間はない。しかし、諦める訳にはいかなかった。この次元震を止められなければ、全てが終わってしまう。

 

「もう一度、足を大地に突き立てろ!! そして、踏み込め、そこから運命は切り開かれる!!」

 

 俊秀はゆっくりとジュエルシードとの距離を詰めた。近付くにつれジュエルシードが暴走した魔力の余波が俊秀の体を傷つけていく。それでも俊秀は歩みを止めない。

 

「後少し、あと少しで届くっ!!」

 

 ゆっくり歩み続けた俊秀はジュエルシード目の前まで迫っているが、これ以上進む事ができない。ジュエルシードの暴走が強制暴走が原因なのか、周りに魔力殻が出来上がっていた。それが俊秀の侵入を阻み、これ以上近付く必要がない。しかし、俊秀は無理矢理魔力殻に左手を突っ込み、ジュエルシードを掴み取った。

 

「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 俊秀は賭けに出ていた。俊秀は魔導師でもない、勿論魔力もないから封印なんてできない。ならば止める方法はただ1つ、魔力が無い人間のジュエルシードの止め方、それはジュエルシードの魔力を自身の体に逆流させる事で暴走を抑える事だ。

 かつて、ある男が言っていた。『ジュエルシードは膨大な魔力を制御できずに願いをかなえると言う形で暴走する』とならば、その魔力を別の場所に逃がす事ができれば暴走を抑える事ができるないかと考えたのだ。

 しかし、かなり危険が伴う。自分が持たない力が逆流してくるのだ、魔力が流れた分だけ体が傷つく。現に俊秀の全身は傷つき、鮮血によって染められている。流しすぎた血は俊秀の意識を徐々に朦朧とさせた。しかし、ジュエルシードを掴んだ手は緩む事はない、むしろ強く握られていった。

 

「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!」

 

 俊秀が自身を奮い立たせる為に叫ぶ、ジュエルシードはそれに共鳴したのか更に輝きを増した。青い光が俊秀を包み込みだけでは終わらず、海鳴市を包み込んだのだった。




 次回もよろしくお願いします。
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