壊し屋 俊秀   作:遼明

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第1話 『鉄パイプ』を持った少年

「次からは気を付ける様に」

「はい……すいませんでした」

 

 月明かりが美しい夜。とある交番の前で1人の警察官に頭を下げる少年がいた。彼の名前は岩井俊秀、転生者である。彼が警察にお世話になった理由を少し説明しよう。

 彼が転生前、死神から貰った『鉄パイプ』持って町を歩いていた。だが運悪く通報されたのだ。内容はこうだ。

『近くに鉄パイプを持った不審な男がいます』

 これを聞いた警察官は交番を飛び出し現地に向かったら、鉄パイプを持った少年こと俊秀がいたのだ。非行少年だと思った警察官はとりあえず補導する為、交番へ連行そして説教。俊秀は否定するが、聞いてもらえず、そのままズルズルと3時間説教が続き、警察官が俊秀の弁解を聞き入れる頃には、辺りは真っ暗だった。

 

(はぁ……やっと開放された。これからは何か袋に入れたほうが良いな)

 

 もう二度とこんな目には会わないと心に誓いつつ家に帰る為、歩き始める。時間が時間なので出来る限り、人目に付かないように道を選び、通報されない事を祈った。

 

 

 

 歩き始めて15分、俊秀の耳に何かが壊れる音がかすかに聞こえる。最初は誰かが物を落として壊れた音だろうと気にしなかったが、家に帰ろうと歩くたびに音がだんだん大きくなっていく……。

 

(かなりヤバイ気がするんだけど―――気のせいか? ……これは、何かが飛び回る音、獣じゃない叫び声、子供の悲鳴!! 音のする方は……あっちか!!)

 

 俊秀は音のする方に駆け出した。音だけでは何が起こっているか分からないが、悲鳴が聞こえたのなら何かよくないことが起こっているに違いない。早とちりなら良いが、もし本当によくない事が起こっているなら、早く助けに行かなくてはならない。焦る気持ちを抑えながらもスピードを落さず角を曲がる。すると、先にはこちらに向かって1人の少女が何かを抱えて走っている。周りを見てみるが特に危険はなさそうだった。

 

(なんだ……早とちりだっ――――上!?)

 

 上空には黒い何かがうごめき、走っている少女目掛けて勢いよく降りて来ていた。

 

「止まれーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「え?」

 

 突然聞こえた大声で少女の動きが一瞬止まり、黒い何かが少女の真上に降りる事はなかったが、降り立った時の強い衝撃で吹っ飛ばされていた。

 砂埃が舞い相手の正体は全く分からないが俊秀は地上に降り立った黒い何かに渾身の力で鉄パイプを振り下ろす。しかし、鉄パイプを振り抜いた時に当たった感触が無い。おかしいと思った俊秀は距離を取ろうとバックステップをするが、その動作中に視界外から何か攻撃がくる。その攻撃に俊秀は気付くが防ぐ事できず、そのまま何かになぎ払われ、少し飛ばされる。

 

「くっ……いてぇな……」

「だ……大丈夫ですか」

 

 俊秀のもとに少女が駆け寄ってくる。どうやら運よく少女の方へ飛ばされたらしい。

 

「少女……早く逃げろ、俺が足止めする」

「え!? でも怪我が…………」

「俺の事は良いから早く行け!!」

 

 俊秀は立ち上がり鉄パイプを持って構える。頭には先ほど飛ばされた時に負った切り傷があり、血が流れているが、この程度で戦意など消失する彼ではなかった。

 まずは相手の正体を見定めなくてはならない。砂埃が晴れるまで俊秀は黒い何かがいると思われる場所を睨んでいた。

 少しずつ正体が判明していく、雲のように形が変わる黒い体、体から触手のような物が何本も伸びて、くねくねとしていた。さらに目は赤いルビーのように赤いが、見るものを威圧するほど鋭かった。

 

「――何じゃこりゃ、アイツは化け物か」

 

 握っている鉄パイプをさらに強く握り締める。イケメンの死神からは危険があるとは聞いていたが楽観していた。

 

「すいません。ちょっといいですか」

「少女、お前は早く逃げろと……てか声が違う?」

 

 俊秀は後ろを向けば、杖を持つ少女と少女に抱えられた小動物がいた。

 

「まさか……動物が喋った!?」

「そんなことより、僕はアイツを封じる事が出来ます。協力してもらいませんか」

「協力も何もさっきから逃げろと――――ってあぶね!!」

「きゃあ!!」

 

 化け物が触手で攻撃を仕掛けてきた為に俊秀は少女を押し退ける。

 

「これじゃあ、落ち着いて話も出来ねぇな……先に、この危ないのを壊させてもらう」

 

 俊秀は化け物に向かって走り始めた。化け物は向かってくる彼を触手で攻撃を仕掛けるが、完全に読まれ全て避けている。自分の攻撃範囲に入り込めた俊秀は、化け物に向かって鉄パイプを振り抜く。

 

「捉えた!! って何ぃ!?」

 

 化け物の頭に当てた筈だった。だが、当てた場所は綿飴を裂いたように分かれ即再生したのだ。完全に虚を衝かれた俊秀はそのまま触手で左腕を刺される。

 

「ぐう……見つけたぜ。お前の弱点」

 

 化け物を逃がさない為に左腕に刺さった触手を左手で掴み引き寄せる。右腕は鉄パイプを持ち一番振り抜き易いフォームで構える。そして、化け物に言い聞かせるように話し始めた。

 

「お前はどうやら、体内にある青い何かで身体を保っているようだな。まさか、さっきの攻撃で見えるとは思わなかったがな。ラッキーだった」

 

 そう偶々見えたのだ。身体を引き裂いた先に黒い雲を生み出している青く光る本体。本当に運がよかった。正直、見つけられなかったら防戦一方で済ませられる話ではない。化け物は触手にいる攻撃を止め、突進を仕掛けてくるが、俊秀はたんたんと話す。

 

「そうそう俺、野球やっていたんだよね……。最近、硬式のボールも打ってないし―――ちょうどいい!!」

 

 左手に持っていた触手を放し、鉄パイプを両手で持つ、その構えはどっしりと構え堂々とした姿であった。

 

「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 振り抜かれた鉄パイプは、突進して来ている化け物は避けられるはずもなく体を裂かれる。そのまま、鉄パイプに本体であろう青く光る本体にジャストミートする。本体は肉体から引き剥がされ壁にめり込む、本体をなくした化け物は少しふらふらと歩いてから姿が灰の様に消え去ってしまった。

 

「まあ、こんなものか」

「凄い、魔力を使わずにジュエルシードの暴走を止めた……!?」

「しかし、これがアイツの本体とはねぇ」

 

 俊秀の目線は先ほど打ち込んだ青い宝石があった。所々ひびが入っているようだ。よく原形を保てたもんだと感心しつつ、俊秀は手を伸ばす。

 

「触らないでください!! また暴走するかもしれません」

「? よくわからんが……まあいい」

「それじゃあ、よろしくおねがいします」

「あ……はい!! ジュエルシード封印!」

 

 青く光る宝石は少女の持つ杖の赤い玉に吸い込まれた。

 

「ほぉー、面妖だな」

「えっ……と助けてくれてありがとうございます。その、怪我は大丈夫ですか」

 

 少女が俊秀にお礼を言ってくるが問題ないと言った後、俊秀は辺りを見て顔が真っ青になっていく。

 

「本当なら色々と聞きたいことがあるんだが……とりあえず、この場から離れないか」

「え? ……そうですねっ! 早く行きましょう!!」

 

 辺りの道路は抉れ、電柱は倒れひどい有様だった。俊秀的には先ほどまで警察官に補導されていた為、一刻もここから離れたかった。恐らく捕まれば少年院確定である。

 少女は小動物を抱え、俊秀は左腕を抱えてこの場から去るのだった。




オリキャラ紹介
 岩井俊秀 (いわい としひで)

 この小説の主人公、彼の名前は考えるのがめんどくさいと言う事で既に『小説家になろう』で連載している主人公の名前を取ってきた。



 以後、オリキャラが登場した時のあとがきに軽い説明を記入予定。

 それでは、次回もよろしくお願いします。
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