壊し屋 俊秀   作:遼明

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第7話 泥棒

「やっと、家に戻ってきたか」

 

 俊秀は今日無事に病院を退院し、自分の住む高層マンションの目の前に立っていた。俊秀の右手には麻袋に入った鉄パイプ、頭の上には先ほど町で見つけたカスミが乗っていた。着ている服は半袖のTシャツに長ズボンだが、Tシャツと長ズボンには継ぎ接ぎだらけで何とか原型を保っている。さらにあちこち黒ずんだ色がついていた。何故このような服を着ているのか、それは身内が見舞いに来なかったからだ。

 両親は行方不明、祖父祖母は本業で国内にいない為、恐らく俊秀が怪我したことも知らないだろう。服がない事に困った俊秀はとりあえず着ていた服を返してもらおうと、担当医に言ったら血によって黒ずみ引き裂かれたTシャツと長ズボンが返って来たのだった。

 服がない俊秀には選択権がなく、しょうがないので自分で縫ったわけだが裁縫が得意でないので何とか原型を保っている状態だった。

 

(ここまでの道程が長かった。町の人の視線が痛くて痛くて……もうこの服は捨てよう)

 

 小さな決断と共に俊秀はエレベーターに乗り、自分の住む階のボタンを押して今日する事を考える。すぐにエレベーターのドアが開き、家のドア前まで来てしまったのでポケットから鍵を取り出し鍵穴に差し回すが、鍵を開けた手応えがなかった。

 

(鍵が全部開いている……まさか、誰にも見つからず短期間でこの鍵、全て開けたと言うのか!?)

 

 俊秀の家の鍵は10個付いており、それぞれ開けられる方向が違う。その為防犯面ではかなり優秀な物となっている。ちなみにこれを取り付けるのは俊秀の父だった。

 仕事柄、家に両親がいない時が多かったので心配になった俊秀の父は鍵を1個取り付けるのだが、その時、母がいない事をいい事に心配性な父は日に日にまた一個また一個と鍵を取り付けていき、鍵を10個取り付けた頃に帰ってきた母がそれを見てぶちぎれたのは言うまでもない。

 

(理論上、1024通り開け方があるこのドアを空ける奴がいるなんて……どんな暇人なんだ)

 

 俊秀は恐る恐るドアを開けるすると、玄関には見慣れない小さい靴が置いてあった。俊秀は泥棒の癖に律儀に靴を脱いでるなんてなぁと思うがリビングに続く廊下を見ると泥が上がっていた。

 

(…………ドロボーはなに考えてるんだ? 靴を置いているのに泥が上がってる? わけわからん)

 

 俊秀はリビングのドアまで近付いてからゆっくりと開け覗いて見る。リビングの床には泥があちこちに撒き散らされてフローリングに傷、絨毯は泥まみれだった。少し怒りを覚えながらも冷静になってリビングを観察する。

 

(…………金庫の前に誰かいる)

 

 俊秀の位置からではソファーの影になって少し見辛いが、そこに置いてある金庫の前に誰かいる事がわかった。俊秀は玄関に置いてあるロープがあった事を思い出し、頭に乗っているカスミをその場に下ろしてからロープを持ってきて再び覗く。

 

(相手がどんな奴か知らんが……縛り上げてやる)

 

 俊秀は覚悟を決め、ゆっくりと忍び寄る。金庫の前にいる泥棒はまだ俊秀の存在に気付いていない。攻撃範囲(?)に入った俊秀は一気に飛びかかる。俊秀に飛びかかられたのに気付いた泥棒は必死に抵抗するが、あっさり俊秀に縛り上げられてしまう。

 

「さぁ、捕まえたぞ!! 大人しく観念しな!! って少女!?」

 

 俊秀がぐるぐる巻きに縛り上げてから、何者か確認すると黄金の絹のように美しい金髪で瞳の色がルビーのように赤い少女だった。

 

「あ……貴方は誰ですか!?」

「は? 訊きたいのはこっち方だ! 人んちで何やってた?」

「………………」

 

 少女がだんまりするかと思ったら、今度は突然ベランダの窓ガラスが破られ、赤い毛の犬のような生物が現れた。その生物は鋭い牙を剝き出しにして俊秀を威嚇する。一般人ならビビッているだろうが俊秀はびびるどころか、変なやる気スイッチが入りテンションが上がっていた。

 

「ほほぉ……俺とやる気なのか? 色々と突っ込みたいところだが……よかろう! 相手してやる!! そして、俺が病院で無駄に惰眠を取っていたわけではない証明をしてやる!!」

 

 色々と溜まっていたストレスを解消するかのように俊秀は家の中で犬のような生物と戦闘を開始した。生物は勢いよく俊秀に飛び掛るが、俊秀はクロスカウンターの如く生物の腹部辺りに左の拳を打ち込み吹っ飛ばす。生物は再び立ち上がって同じように飛び掛ろうとしているが、少し躊躇っていた。

 

(このような狭い空間では、その戦い方は向かない事はわかっている筈だ……さてどう来る?)

 

 俊秀がゆったりと構えていると生物は突然光を放ち、人の姿に変わる。赤い長髪にタンクトップのようなものと半ズボンを着ており、額には赤い宝石がある。そして、特に特徴的だったのは頭に耳が生え、腰辺りから尻尾が生えていた。手には手甲、足には足甲をつけている。体格は締まっているが女性らしく出るところは出ていた。

 

「な!? 面妖な、獣娘だったのか?」

「お前、その子から放れな! 次は本気で行くよ」

「少女の仲間か……生憎、少女を渡すわけにもいかないし動物なら請求しようがなくて困ったが、人型になれるなら割ったガラス代請求するからな。覚悟しとけ」

 

 そして、両者は再び激突する。獣娘は仲間の少女を救うため突っ込んでくる。それを予想していた俊秀は回し蹴りで牽制するがひらりと葉っぱが落ちるように避けられる。攻撃を避けられた俊秀はそのせいで大きな隙ができ、獣娘はここぞと突っ込んだ勢いで俊秀の顔面を殴り飛ばし、床に叩きつけられる。しばらく獣娘は俊秀を観察していたが起き上がる気配がなかった。

 

「以外に呆気なかったねぇ。今助けるよフェ――」

「……ちょっと油断しすぎだろ」

 

 獣娘が警戒を解き背を見せた瞬間、俊秀は起き上がり獣娘の背中にタックルを仕掛ける。完全に油断していた獣娘は対処できるはずもなく、床に倒れてしまう。さらに俊秀は獣娘の右足を素早く捕ってから両脚を使って挟み込んだ。

 

「ほい! 膝十字固め」

「いでででで!! イタイイタイ!!」

「暴れても無駄だ、完全に極まっている。観念するなら止めてやるが?」

「誰があんたなんかに……いたたたたたた!!」

「すいません、降参します。だからもう止めて下さい」

「フェイト、駄目だよ! そんな事!! あ――――!?」

「……いいだろう。やめよう」

 

 俊秀は非常に危険な技である膝十字固めを手加減しているとは言え、流石にこれ以上やると骨がいかれたり、靭帯がいかれたりするのでどうしようか困っていた所に少女の要求は渡りに船だった。

 俊秀は技を解いてやると、獣娘は少女の後ろに足を引きずりながら行った後、俊秀を涙目で睨みつける。

 

「よし、まず質問に答えてもらう。お前等は何者だ?」

「……信じてもらえないかも知れませんけど、私たちは異世界から来ました」

 

 少しの静寂が部屋を支配し、俊秀は頭を抱え込んだ。どこかで聞いたことがある(くだり)だったからである。俊秀はとりあえず核心に迫るため質問を続ける。

 

「えっとな……何の目的でこの世界に?」

「実はジュエルシードと呼ばれるものを探しに来たんです」

(ジュエルシードを探しに来たという事は少女は魔導師……ユーノの関係者か?)

「じゃあ何でこの家に?」

「最初はジュエルシードがこの部屋の金庫にあるとわかって金庫を持っていこうと思ったんですけど、どうやってもピクリとも動かないし、壊そうとしても壊れなくて……いつの間にか気付いたらここを拠点にして活動していました」

「あー……成程ね」

 

 俊秀は思い出したように呟いた。国守山で手に入れたジュエルシードは金庫の中に厳重に保管していた事をすっかり忘れていたのだった。本来ならなのはに渡すつもりだったが色々とあったため失念していた。

 

「……とりあえず大体はわかった。つまりユーノの手伝いに来たのか?」

「…………私は母さんを――」

「フェイト、それ以上言う必要ないよ」

 

 少女の発言は獣娘によって遮られるが、俊秀は勝手に推測し始める。

 

(ふむ……今の反応ではユーノと少女の母親は関係者で、勝手に出て行ったユーノを手伝う為に少女を送ったがユーノの名前は知らされてない……と考えるほうが自然だが、何か引っかかるなぁ。なんで名前を伝えなかったんだ? まさか権力争いをしているのか!? …………それはないか。でもユーノを知らないんだったら、鉢合わせたらジュエルシードの奪い合いが起きそうだな)

「あの……ジュエルシードを渡してもらえれば、すぐにここから出ます。なので――――」

「虫が良くないか?」

「え?」

 

 少女はわけもわからず腑抜けた声を出すが、俊秀は気にせず言葉を続ける。

 

「わかってないようだな……お前らが犯した罪を!!」

「罪ですか?」

「そうだ。まず少女、なぜ土足で家に上がっている?」

「え? 何か問題が……」

「大アリだぁ!! この世界の日本という場所はなぁ、一般家庭では玄関で靴は脱ぐものだ。なのに土足で上がったせいでフローリングは傷だらけ、絨毯はどろどろ……これをほっといて出て行くのか?」

「そ……それは――」

「そして、獣娘お前もだ!!」

「あたしも!?」

「お前はやっていないとは言わせんぞ。俺の目の前で堂々と!! 気持ちがいいくらいに!! ベランダの窓ガラス割って入りやがって、修理代払ってから出て行け!!」

「フェイトー……」

 

 俊秀に正論を言われ、少女に抱きつく獣少女の目は潤んでいた。少女はどうすればいいのかわからず、おろおろしている。俊秀は深呼吸をしてから再び口を開いた。

 

「後、これは善意で聞くが異世界から来た人間がここを出て行くあてはあるのか?」

「それは……ありません」

「なら、ここにいてもいいぞ」

「え? 何でですか」

「両親は行方不明だから部屋は余っているし、何よりここにいた方が修理代を払う時に楽だろ?」

「でも、私がここにいれば、この先今まで以上に迷惑をかけますよ」

「俺も打算がなくて言っているわけではない。実は……1人は寂しいんだよ。長い間、家ではいつも1人だったしな」

 

 俊秀は苦笑いしながら、少女の方を見る。少女の瞳は寂しげな雰囲気があり、どこか危なさを感じる。このまま彼女を野放しには出来ない、そう判断したのが少女を引き止めた大きな理由だった。

 ふと俊秀はズボンが引っ張られるような感じがしたので下を向くとカスミがそこにいた。

 

「くぅん!!」

「そうだったな。お前がいたから1人ではなかったか……でどうするんだ? ここにいるのか、出て行くのか」

「フェイト、折角ここにいても良いって言われてんだ。好意に甘えようよ」

「…………そうだね。色々と迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします――――ところでジュエルシードは渡してもらえないでしょうか、暴走したら危険なものなんです」

「修理代を払っていないのに渡すとでも?」

「え?」

「ジュエルシードを渡して、トンズラされたら困るしな? まぁさすがにそれはしないと思うが」

「お願いします、私はそれの回収に急いでいて……」

「急いでいるのか……なら俺を出し抜いてみな」

 

 そう言って俊秀は食器棚の引き出しから一枚のカードを取り出した。カードには紐が通っており首に掛けられるようになっていた。

 

「これは、金庫のIDだ。カードの液晶に表示されている8桁のパスワードは1分ごとにが変わる為、これがないとまず開けられない。出し抜いて奪ったらお前らの勝ち、どうだ? 勿論2人協力してもいいぞ。ただし、魔法は使うなよ」

「(魔法の事を言ってないのに何で使えるってわかったんだろう)……わかりました、その勝負受けて立ちます」

 

 俊秀はニッと笑って少女に近付き巻きつけたロープを解いた後、聞き忘れたことを言う。

 

「お前らの名前は?」

「私はフェイトです」

「あたしはアルフだ」

「フェイトにアルフか、俺の名前は岩井俊秀だ。部屋は好きに使っても構わない……それと、今から俺はスーパーに行くがその間、掃除頼む。用具はそこの中に入っていからドロとかガラスの破片とか取っといてくれ」

「わかりました。じゃあアルフ早く始めよ」

「あいよフェイト」

 

 俊秀は掃除を始めたフェイトとアルフを見てから、服を着替えてスーパーへ出かけていった。

 

 

 

 

 

 

 俊秀が出て行き、5分ほど経った頃、フェイトは口を開いた。

 

「アルフ、どうやったら出し抜けるかな? さっきの戦闘力を観ると簡単には出し抜けないと思うんだけど」

「うーん。そうだねぇ…………フェイト、あたしにいい案があるよ。これを使おう」

「アルフそれは何?」

 

 フェイトはアルフの手に持っている物を見る。紫色で長方形の形をしている。触ってみると見た目よりも意外に硬かった。

 

「この戸棚の中にいっぱいあったんだよ。これを使って罠を作ろうよ」

「本当だ。いっぱいある……でも罠を作るって何を作るの」

「そりゃ、飛ばすに決まっているだろ?」

「飛ばす?」

 

 フェイトは首を傾げながらアルフの話を聞くのだった。

 そして、時間は進み……。

 

「ただいまー。すまん誰か運ぶの手伝ってくれるか?」

「おっ帰ってきたね! こちらも準備完了だ。フェイト絶対に前に出るんじゃないよ」

「うん、じゃあ手伝ってくるね」

 

 フェイトはリビングのドアを閉めて、俊秀の元にいく。アルフはドアの入り口前にあるものを持って行き、ドアの前に仕掛けを置いてからドアノブの方にも仕掛け、にたりと笑う。

 その頃フェイトは、俊秀が持っていた荷物を少し持っていた。

 

「すまんな。重いだろ」

「いえ、これぐらいは大丈夫です」

 

 そして、俊秀は荷物をリビングに運び入れようとドアノブを回す。

 

(よし、かかった!!)

 

 フェイトとアルフは確信するが、岩井家に住まう1匹を忘れていた。どこかでスタンバイしていたカスミは勢いよく俊秀の腹に体当たりを仕掛ける。

 

「くぅん!!」

「ごふぁ!?」

 

 俊秀は予想外の攻撃が腹に直撃し、俊秀を床に倒した。その時握っていたドアノブは離してしまう。その瞬間ドアは勢いよく開き罠が作動する。

 紫色の何かはドアが開いたと同時に、凄い勢いで俊秀に向かって飛んでいくはずだったが、俊秀は床に伏している。

 

「え?」

 

 フェイトが気付いた時には既に時遅く、アルフがセッティングしていた物が大量に飛んできてフェイトを襲う。

 

「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

「フェイトーーーーーーーーーーーーーー!?」

 

 紫色の物は容赦なくフェイトを襲う、アルフは罠を止めようとするが止まらなかった。そして・・・。

 

「ゴフ!?…………ぶっ」

「フェイトーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 運悪く、フェイトの口に入ったと思ったらその後、鳩尾辺りに当たり意識を刈取るのだった。アルフは急いで駆け寄るが、その時に俊秀に恐ろしい力で肩を掴まれる。アルフは恐る恐る俊秀の方を向くが、俊秀から邪気があふれ出ていた。

 

「アルフ……これはお前がやったのか?」

「……う、うん。少し遊び心が過ぎたよ」

「アルフ、俺はどうしても許せない事がいくつかあるんだ。そのうちの1つが食べ物を大切にしない事だ」

「へー……そうなんだ……」

 

 アルフは全て棒読みで俊秀に返答をする。アルフは感じていた。嫌な予感しかしないと。そんな事を感じている事は全く知らない俊秀は淡々と話す。

 

「お前のいたずらに使ったこれ、食いもんなんだよ。ようかんって言ってな……日本の伝統的なスイーツなんだよわかるか? お前は態々ようかんを飛ばす為に石弓みたいなの作りやがって、確かに出し抜けとは言ったが食べ物を粗末にしろとはいっとらん!! 少しお前に食のありがたみを説明をする。そこで正座ァ!!」

「はいぃ!!」

 

 そして、アルフは俊秀の講習(せっきょう)を1時間ほど受けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 日も暮れ始め、もうすぐ夜になろうとしていた頃、フェイトとアルフはなにやら少し揉めていた。

 

「フェイト……食べ物は駄目、絶対に駄目だって!! ばれたら今度こそ不味いからぁ!!」

「アルフ……魔法なしで出し抜くなんて、これぐらいしか思いつかないよ?」

 

 フェイトの仕掛けを必死に止めようとするアルフ、そのフェイトの手には容器が握られていた。その容器にかかれているのは……?

 

「だからって、下剤は不味いって! さっきあたしが説教受けてたの聞いただろ。食べ物は駄目だ!!」

 

 フェイトは『超強力下剤』と書かれた容器を握り締め、今なべで煮込まれているシチューに入れようとしていた。

 先ほどの作戦は岩井家に住まう謎の子狐、カスミにより回避されてしまった。それどころか仕掛けた張本人は正座で講習(せっきょう)を受けることになり、アルフは精神的にも足的にも限界が来ていた。特に足は膝十字固めによるダメージと正座でかなり堪えていた。それを見かねたフェイトは一矢報いる為、一計を案じるのだがそれが下剤(これ)だった。

 

「でも確実に出し抜く事はできると思うけど……」

「それでもその後ばれた時のリスクが高すぎるよ!!」

「アルフー、ちょっと来てくれないか?」

「わかったよー……フェイト絶対駄目だからね」

 

 廊下から俊秀に呼ばれたアルフはフェイトから離れる。それを見送った後、フェイトは下剤のふたを開け、シチューに注いでいく。

 

(ごめんアルフ……私はそれでも母さんのために早くジュエルシードを集めないと……)

 

 全て注ぎ終わったフェイトはすぐになべから離れ、平然とテレビの電源をつけて、チャンネルを回す。ちょっとすると俊秀とアルフがリビングに戻ってきた。

 

「つまり、お前等はベランダから潜入してあの鍵を開けたって事か」

「そうそう、開けるのには苦労したよ。まぁ開けたのはフェイトだけどね」

 

 俊秀とアルフはなにやら楽しく雑談をしている。あんな事があったのにたった1日でアルフが俊秀と仲良くなるとは思ってなかったフェイトは少し羨ましく思った。そこで自分からも話しかけようと思いテレビから視線を外す。

 フェイトの目の前に広がっていたのは味見している俊秀とその近くで様子を見ているアルフだった。

 

「うむ、少し味が薄いような気がするが……あっそうだ。アルフ少し、シチューの味見してくれないか?」

「おっいいよ・・・どれどれ」

「駄目ッ、アルフ!!」

 

 フェイトの静止もむなしく、アルフは味見をするのだった。

 

「どうしたフェイト?」

「えっ、いえ……なんでもありません」

「うん、確かに味が薄いような……でもこれぐらいが良いんじゃ――――うっ!!」

「どうしたアルフ?」

 

 突然アルフは腹を抱え込み、どこかに走り去っていった。わけもわからず呆然と立ち尽くす俊秀はフェイトに聞く。

 

「アイツどうしたの?」

「さ……さぁあ?」

(ごめんアルフ!!)

 

 心の中でアルフのに謝るフェイトだった。そして、夕飯の時間になってもアルフが帰ってこないので先に食べ始める俊秀とフェイトだったが、フェイトは夕飯を食べる俊秀をじっと見ていた。

 

「どうした? 食べないのか?」

「(どうして、シチューを食べているのに何も起こらないの!?)……すいません少し考え事をしていました」

 

 フェイトは下剤を入れたシチューを何食わぬ顔で平然と食べている俊秀に驚きを隠せなかった。一方、俊秀は箸をつけないフェイトを心配し始める。そこまで深刻になるような問題を抱えているのかと、そこで俊秀は気になっている事を聞くことにした。

 

「フェイト、お前は何の為にジュエルシードを求めるんだ?」

「一体何を……」

「お前がジュエルシードを俺から譲ってもらおうとした時、どこか必死さを感じた。それに、どこか寂しさかある。よければ話してくれないか」

「……すいません。これは私の問題、あなたに話すわけにはいきませし、頼るわけではいきません」

「そうか……もし困ったことがあれば俺に言ってくれ、魔法は使えんが手を貸す事はできる筈だ」

「……ありがとうございます」

 

 俊秀はそう言って再び箸をつけ始める。一方フェイトはまだ箸をつけずに考え込んでしまった。

 

 

 

 

 あれから5分ほど経過した時、不意にチャイムが鳴り俊秀は玄関に出た。どうやら郵便が来たらしく、四方形の箱を持ってリビングに帰ってくる。俊秀は差出人の欄を見るが何も書かれておらず首を傾げながら、箱を開けると四角い機械が入っていた。

 

「なんだ? ゲーム機にしては画面もソフトを入れる場所が無いが……?」

 

 色々と見てみるとボタンがあったのでそれを押すと、突然モニターらしきものが浮かび上がり映像が流れ始めた。映像が映しているのは、海鳴市にある湾岸倉庫だった。しばらく景色を写していると、マントを羽織った黒髪の少女が2人現れる。顔ははっきり見えないように細工されていたが、それでも綺麗な顔立ちをしている事はわかった。

 

『ハロー!! 岩井君、退院おめでとう。あれほどの怪我を短期間で治すなんて正直、僕は驚いているよ!』

『私はゴスロリ女の作品を破壊した事に驚いているわ。そこで、病み上がりのところで申し訳ないけど私たちはあなたに勝負を挑みたい!』

『勿論、君には拒否権はない。早く来ないとこのジュエルシードを暴走させる』

「何ぃ!?」

 

 右にいる少女の左手に青く光るジュエルシードを2個握り締めていた。

 

『後、同居人もついでに着てね。じゃないとここにいる獣娘が痛い目にあうわよ?』

『んー、んー!!』

「嘘……アルフ!!」

『ちなみに念話をしようとしても出来ないように妨害しているからね。僕はそこまでしなくてもいいって言ったんだけど、妹が勝手に仕掛けちゃったんだよ』

『はぁ!? あんたは何私を悪人に仕立てようとしてんのよ! ねえさんだって――――』

『場所は海鳴市の湾岸倉庫、君が早く来てくれる事を楽しみに待ってるよ』

『私の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 ここで映像が終わった。映像が終わった瞬間、フェイトは家を飛び出そうとするが俊秀に手を掴まれる。

 

「放して下さい! 早くしないとアルフが!!」

「落ち着けフェイト、とりあえずこれを食え」

 

 俊秀は積み上げられていた段ボール箱からドリンクゼリーを取り出し、フェイトに渡す。

 

「何も食わずに行ったら、途中でガス欠するかもしれん。それとあいつ等は俺も呼んでいるんだ。1人で飛び込む必要もない。少し深呼吸をしろ」

 

 フェイトは俊秀に言われたように深呼吸をする。少し落ち着いた雰囲気になったのを確認した俊秀は玄関に立て掛けて置いた鉄パイプを麻袋に入れる。

 

「よしフェイト、いくぞ」

「はい」

 

 俊秀とフェイトはマンションを出て闇夜に駆けていくのだった。




 次回もよろしくお願いします。


11月4日、修正入れました。
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