白い鳥と金の籠   作:桃次郎

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やっぱり小説を書くって時間がかるなぁと痛感。


不信

 

フランスで織斑一夏に次ぐ第二のIS男性操縦者、シャルル・デュノアが発見されたとの情報が千冬の耳に届いたのは、IS学園1年生クラス対抗トーナメントへの無人機襲撃による一連の騒動が収束した頃だった。

第一の男性操縦者と共に、IS学園への編入をIS委員会が打診しているとの話を学園長から聞いた時は一難去ってまた一難かと考えていた。

学園長はシャルル・デュノアの生い立ちを説明する。

 

「デュノア社の御曹司だそうだ」

 

「デュノア社といえば、IS制作会社の…」

 

「フランス共和国政府は”発見”された男性操縦者を代表候補生に就任させ専用機も与えるそうだ、首輪つけて管理しやすいようにする為だろう」

IS学園学園長、轡木十蔵が千冬への説明の為に自身のデスクへの招いたのは朝の教員集会が終わった直後の事だった。

 

「千冬くんの受け持つクラスに編入して欲しいとの通達だよ、全く、一箇所に置いた方が何か問題があった際に対応しやすいだろうとの”配慮”だそうだ」

 

学園長が千冬に対して申し訳なさそうに告げる。この人も気苦労が耐えないなと、千冬は十蔵の話を聞きながら思う。年々増える十蔵の白髪が彼女をいたたまれない気持ちにさせた。

 

「私は構いません」

 

「ところで千冬くん、これを見てもらえるかい?」

 

十蔵はデスクの上に広げられたノートPCを千冬が立つ方向に半転させる、ノートPCの液晶にはある映像が映っていた。

 

「これは…」

 

「IS委員会から送られてきたものだよ、シャルル・デュノアの練習風景だそうだ」

 

映像にはISを纏ったシャルル・デュノアが射撃訓練を行う、ドローンを標的とし、シャルルはそれを的確に撃ち抜いていく。

映像の場面が切り替わる、どうやら模擬戦の光景のようだ。相手はフランスのIS制作会社『デュノア社』が誇る第2世代ISの名機『ラファール・リヴァイブ』だった。

顔はバイザーで覆われ表情は見えなかったが何処か余裕を纏っていた、自分の技量に自身を持つのだろう。

模擬戦開始のブザーが鳴る、シャルルはアサルトライフルによる射撃で牽制を行いながら相手との距離を詰めたかと思うと、今度はISを急速旋回させ距離を離し、相手を翻弄していく。

 

中々勝負が決まらない事に業を煮やした相手は、シャルルへの有効打を与えるためにシールドを展開しつつ被弾をものともせず強引に距離を詰めていく。

 

そしてシャルルは相手の接近を許してしまう、相手はシャルルの懐へ潜り込むと近接戦闘用のナイフを展開する。シャルルの腹部にナイフが迫るその瞬間だった。

「!?」

 

相手の頭部にショットガンの銃口が突き立てられる、銃身を切り詰め、有効射程距離と引き換えに取り回しを容易にしたタイプの物だった。

シャルルの手元にある武器はアサルトライフルだったはず。

何故?相手の動揺がバイザー越しにも伝わる。シャルルは躊躇なく引き金を引く。至近距離から発射された散弾がバイザーを砕く。

絶対防御は発動していない様子だった。しかしシールドエネルギーは半分を切り、相手もショットガンの威力に怯み。詰めた距離を引き離そうとする。

それがいけなかった、シャルルはショットガンを捨て、相手の肩を掴み、拘束すると近接戦闘用装備を展開した。

 

「ま、待てッ!」

 

『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』盾殺しとも呼ばれるそれは、第2世代ISの装備可能な武器としては最高クラスの威力を持つ物だった。相手もその威力は知っているようで堪らず両手を挙げ降伏を示す。

 

模擬戦終了のブザーが鳴る。

 

「ありがとうございました」

 

シャルルは武装を解除すると何事も無かったかのように相手へ握手を求める、相手はその切り替え様に冷や汗をかきながら握手に応じた。

 

 

 

「どうだい千冬くん?彼の技量は」

 

「…ラピットスイッチ」

 

ラピット・スイッチ、高速で武器を切り替えるISの高等操縦技巧の名を千冬は呟く。「高等」と名が付くには理由があり、習得には膨大な練習量と時間が必要なものだ。

 

「…シャルル・デュノアは発見されてどれ程時間が経つのでしょうか」

 

「1週間だ、で、どうだい?」

千冬はIS操縦者として、IS黎明期からISに携わった人間として彼の技量への評価を下した。

 

「少なくとも代表候補生を名乗るに不備のない実力はあるようです」

 

「そうか…」

 

「故に違和感が拭えません、彼がこれほどの技量を身につけるには、あまりに時間が足りない」

 

千冬が感じた違和感、それは彼がIS操縦者として高い技量を持つことだった。まだ発見されたばかりにも関わらず、だ。

 

「デュノア社は彼の存在を秘匿していたのではありませんか?それを一夏の発見から公表に踏み切ったのでは…」

 

「憶測の域は出ないが…概ねそうだろうね、全く白々しい」

 

 

 

千冬は学園長の部屋を出ると、出席簿を持ちながら自分が受け持つ一年一組の教室へと向かう。

 

「シャルル・デュノア、か…」

千冬は新たな混乱の種に頭を悩ませる。最初に学園長から話を聞いた時は、周囲に女しか居ないこの環境で弟に貴重な同性の友人が出来るかもしれないと、弟の気苦労を共有出来る存在が現れたと内心喜んだが。学園長から得た情報は千冬に彼への不信を募らせるものだった。

「一体何者だ?」

 

そうこう考えているうちに千冬は教室へとたどり着いた、彼女を最初に出迎えたのは弟の呑気な顔だった。

 

「おはよう千冬姉!」

 

私がお前の為にこれだけ悩んでいるのにコイツときたら…

 

一夏の頭に千冬の出席簿が振るわれる。

 

「ここでは織斑先生、だ」

 

乾いた音が教室に響いた。

 

 

 





2話から既に難産でヒーヒー言ってる。

シャルル転入は次回かな?
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