実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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新たなる変態が爆誕


61話 櫛田桔梗:ライジング

 最初は彼のことを顔がいいだけのオタク野郎だと思っていた。

 入学当初の私は、彼がクラスを引っ張る存在になるとは微塵にも思っていなかった。

 

 クラスメイト全員と仲良くしようとした私だけれど、彼とは積極的に関わらなかった。

 なぜならすでに帆波ちゃんが彼に手を出してたから。

 入学して一週間でBクラスの友人が出来た。その友人から、帆波ちゃんと彼は恋人に近い関係だと聞いた。

 なので私はBクラスのリーダーである帆波ちゃんと友好的な関係を結べるよう彼と関わらないようにした。

 なぜ帆波ちゃんが彼を好いてるのか疑問に思ったが、あまり考えないようにした。

 その時は同じ中学出身の堀北鈴音のことで頭が一杯だったからだ。

 

 彼に強く興味を持ったのは、須藤くんがCクラスの人たちと揉めて事件を起こした時だ。

 私と須藤くんたちが、綾小路くんの部屋で、事件について話し合いをしている時に、彼が訪れてきた。

 そんな彼に須藤くんが悪態をついてしまった。

 帆波ちゃんのことを悪く言われ、彼の様子が豹変した。

 普段は温厚なのに、あんな冷たい表情をするんだと、彼に見惚れてしまっていた。

 恐らく彼の二面性に自分と似たようなものを感じたんだと思う。

 この頃から、私は彼に強い興味を抱くようになった。

 

 無人島に向かう船上でも彼のもう一つの顔が見れた。

 Aクラスの生徒が、綾小路くんと松下さんを倒してしまい、それに切れた彼が、Aクラスの生徒をねじ伏せたのだ。

 彼の放つ異様な雰囲気に、怖がる女子もいれば、うっとりと見惚れていた女子もいた。

 ちょうどこの頃だったと思う。

 みーちゃんが腐女子であることをオープンにしだしたのは……。

 

 Aクラスの生徒たちがデッキからいなくなった後、私は彼に話しかけた。

 彼は旅行中に何か試験が行われるのではないかと予想していた。

 そんな彼の予想は見事的中した。

 

 無人島試験が始まってからも積極的に私は彼に絡んだ。

 私が彼に絡むと堀北が嫌な顔をするので余計絡みたくなってしまった。

 まさかあの堀北が男に惚れるとは。

 でも彼には帆波ちゃんがいる。

 堀北じゃ帆波ちゃんには勝てない。

 私はずっと「ざまぁみろ」と心の中で思っていた。

 

 堀北を馬鹿にしていた私だったけれど、彼の一言で、私も堀北と同じ立場になってしまった。

 彼は私のことをクラスで一番可愛いと言ってくれた。

 嬉しかった。

 私のことを可愛いと言ってくれる人は沢山いた。でも"一番"可愛いと言ってくれた人は誰もいなかった。中学の時に告白した人も、高校でちやほやしてくれる人も、私を一番可愛いとは言わなかった。

 でも仕方ない。

 実際そうなのだから。

 私は自分の容姿に自信がある。けれど私より可愛い子なんて沢山いる。Dクラスにだって、堀北、佐倉さん、長谷部さんと私より可愛い人が沢山いる。

 でも彼は私がクラスで一番可愛いと言ってくれた。

 彼の中で一番は帆波ちゃんだってわかってる。クラス内という小さな枠組みの話だってこともわかってる。

 けれど嬉しかった。

 久しぶりに私を一番にしてくれた彼に私は恋に落ちてしまった。

 なんて単純な女なんだろうと思う。

 でも仕方ないじゃない。

 好きになっちゃったんだから。

 

 彼に恋愛感情を持つようになってからは、彼の前では今まで以上に、可愛く振る舞った。

 水着姿で彼にアピールしたり、一緒に料理を作ったり、精一杯彼に自分の存在をアピールした。

 

 私の高校生活を大きく左右した無人島試験が終わりを迎えた。

 結果は私たちDクラスの勝利だった。

 この無人島試験から彼がクラスを引っ張るようになった。

 

 無人島試験が終わり、船に戻ってからも、特別試験は続いた。

 私は堀北を退学させるため、Cクラスの龍園くんと手を組むことにした。

 そんな暗躍をしながら、私は彼との距離を縮めるべく、努力した。

 二人でお茶したり、娯楽施設を見て回ったり、プールで遊んだりした。彼は人並みに性欲はあるらしく、私の胸ばかり見ていたのを思い出す。

 体育のプールの授業で、私をいやらしい目で見てくる男子たちに吐き気をした私だっただけれど、彼にいやらしい目を向けられても、嫌な気持ちはまったくなかった。

 むしろもっと私を見て欲しいと思った。

 もしかしたらそれが"今の"私に繋がってるのかもしれない。

 

 彼との二人の時間を満喫した私だったけれど、一番楽しかったのは、二人で夜空を眺めたことだ。

 彼とデッキで会ったのは偶然だった。なぜなら本当なら私は龍園くんと落ち合う予定だったから。

 この時は少しばかり運命を感じてしまった。ずっとこの時間が続けばいいと思った。

 彼が帰ろうとした時は、寂しくなってしまい、彼に抱きついてしまった。そしてあろうことか、自分がクラスを裏切っていることを、告白しそうになってしまった。

 彼なら暴走する自分を止めてくれるかもしれない。

 ううん。

 きっと彼に止めて欲しかったんだと思う。

 

 龍園くんに優待者の情報を与えたけれど、船上試験もDクラスの勝利で終わった。

 無人島試験に続いて、圧勝だった。どうやら彼が他のクラスの優待者を見抜いたらしい。

 ますます彼に惚れてしまった。

 本当恋する女って単純だ。

 

 特別試験が終わり、残りの夏休みが二週間になった。

 私は彼に料理を教えてもらった。

 二人で台所に立って、料理してる間は、人並みの幸せを感じた。きっと同棲したらこんな感じなんだろうなと思った。

 彼に教えてもらって作った肉じゃがは、私が作った料理の中で一番の出来だった。

 私の肉じゃがを美味しそうに食べる彼の顔は今でも鮮明に覚えている。

 

 気持ちが高ぶった私は、クレープ屋に向かう途中に変な理由をつけて、彼の腕に抱きついた。

 人前でこんなことしたら目立ってしまう。きっと帆波ちゃんの耳にも入るだろう。面倒事になる可能性は高い。

 それでも私は止めなかった。

 他の人たちに私が彼と親しいんだとアピールしたかった。もちろん彼にも、私を意識してもらえるよう、胸を押し付けた。少しだけ顔を赤くしていたので、アピールは成功したと思う。

 

 夏休み最終日。

 私は惨めな思いをした。多分堀北も同じ思いをしたと思う。

 彼と含めたDクラスの人たちとプールに行こうとしたところ、帆波ちゃんたちと偶然会ってしまった。

 流れで帆波ちゃんたちと一緒に遊ぶことになったのだけれど、これがいけなかった。

 彼と帆波ちゃんが二人で話すのを見るたびに胸が痛くなった。あんな楽しそうな彼を見るのは初めてだった。

 帆波ちゃんといる時はあんな顔をするんだ、と思った。

 私といる時と全然違う。

 帆波ちゃんには敵わない。

 わかっていたことだけれど、胸が痛くて仕方がなかった。

 

 2学期になるとすぐに体育祭の準備が始まった。

 私は船上試験に続いて、龍園くんにCクラスの情報を提供した。今回提供したのは参加表。各種目の出場する生徒や順番が記載されているものだ。

 けれど予想外のことが起きた。彼が参加表を提出する前に紛失してしまい、順番を変えて参加表を提出したのだ。

 その時は焦った。

 結局、それが原因で、体育祭で堀北を潰す予定だったけど、見送ることになってしまった。

 体育祭の結果は赤組としては負けたけれど、クラス単位では学年で1位だった。

 龍園くんは船上試験に続いて彼に負けたことになる。

 

 体育祭の翌週は球技大会が行われた。

 2学期はスポーツのイベントが続いた。

 球技大会でも彼は活躍していた。

 ……ううん。活躍しすぎていた。

 彼が率いた男子バスケチームは全試合圧勝で大会を終えたんだけど、強すぎてみんな引いてた。それに彼を含めて、試合に勝ってもメンバーの人たちはあまり喜んでいなかった。

 勝って当たり前。

 そんな雰囲気を醸し出していた。

 試合中の彼は怖かったと思う。時折見せる冷たい目を、試合中はずっとしていた。私を含め、何人かの女子は見惚れていたのは内緒。

 

 球技大会の翌週。

 私は高度育成高等学校に入学してから最大のピンチを迎えてしまった。

 龍園くんが私を見限り、協力関係を結んだ時の音声データを掲示板にアップしたのだ。

 私がそれを知ったのは掲示板にアップされた日の翌朝だった。

 教室に入ってすぐにみんなの様子がおかしいことに気づいた。挨拶をしても誰も私の目を見てくれない。疑問に思ってると軽井沢さんに、私がクラスを裏切ってることを問われた。すぐに否定したけれど無駄だった。

 だって音声データがあるんだもん。

 結局、私は裏切り者のレッテルを貼られてすぐに孤立していった。

 普段私をもてはやす男子たちも、仲が良い女子たちも私を信じてくれなかった。まぁ本当に裏切ってるから仕方ないんだけど……。

 

 私はこの状況を打破するために、彼に助けを求めることにした。

 彼はその日、風邪で欠席していたので、直接部屋に出向いた。けれど彼の部屋から出てきたのは、私が一番嫌いな女子だった。

 堀北鈴音。

 私と同じ中学出身の生徒。

 堀北は彼の彼女面して、私を追い返した。

 この時は本当にムカついた。いつか仕返ししてやるんだからあの貧乳女め。

 

 彼は風邪が長引いたようで、彼と接触できないまま日曜の夜を迎えてしまった。

 私は焦った。

 このまま月曜を迎えてしまったら、手遅れになると思った。だから彼から連絡が来た時は、ほっと胸をなでおろした。

 

 彼に助けて貰う。

 ただそれだけでよかったのに、欲張りな私は悪手を打ってしまった。

 

 彼の部屋に出向く、事情を説明した。

 意外なことに彼は私を助けてくれると言ってくれた。思いのほか、事がうまく運んだことにより、私は調子に乗ってしまった。

 私を助けてくれる対価として、肉体関係を結ぶよう提案したのだ。

 彼も思春期真っ只中の男子。

 私みたいな美少女を好きに抱けるんだから断るはずがないと思った。彼には帆波ちゃんがいるけど、それでも自信があった。

 けれど彼は私の提案を断った。

 プライドを傷つけられた私は、なりふり構わず、彼に迫った。カッターナイフでパジャマを自ら切り裂き、彼に私を抱かなかったら、レイプされそうになったと周りに言うと脅迫した。

 自分でも馬鹿なことをしてると気づいていた。でも暴走する私を理性は抑えてくれなかった。

 

 彼はやっと私を抱いてくれることを了承してくれた。

 下着姿まで曝けだしたんだもん。当然だよね。

 けど違った。

 彼は私を浴室に連れていくふりをして、廊下に放り出してしまった。

 下着姿の私を。

 その時の私を見下ろす彼の目は一生忘れることはないと思う。

 まるで生ごみを見るような目で私を見下ろしていた。

 

 私はすぐに彼に部屋に入れるよう懇願した。

 けれど彼は入れてくれなかった。

 逆に他の部屋に駆けこむよう進言してきた。

 確かに脅しで言ったけれど、そんなこと出来るはずがない。

 下着姿を彼以外に見せるなんて嫌だ。

 

 彼にドアを開けるようお願いをしてると、エレベーターが上がってるのがわかった。

 私は必死になって懇願した。

 このままじゃ他の人に、私のあられもない姿を見られてしまう。

 

 今思うと、"このこと"が、今の私に繋がってるんだろうね。

 

 結局、私は素直に彼に助けられることを約束し、部屋の中に入れてもらった。

 部屋の中に駆けこむと、すぐに彼を非難した。

 けれど彼は謝るどころか、私を非難した。そして彼は、蹲る私の髪を掴んで、無理やり顔を上げさせたうえで、あの冷酷な目で私を見下ろしながら言った。

 私を助けるのは提案でも、お願いでもなく、命令だと。

 私は彼に恐怖を感じ、涙を零してしまった。この時の彼は本当に怖かった。

 男の子にあんな恐怖を感じたのは生まれて初めてだった。

 

 彼の恐怖が拭い去れない私は泣き続けたんだけど、そんな私に彼は苛立ったようで、ゴミ箱を蹴飛ばしてきた。

 そして早く部屋から出るよう私に言ってきた。

 私は謝ったんだけど、彼は私を無理やり立たせて、再度部屋の外に放り出そうとした。

 なんて酷い人なんだろう。

 結局、私は彼のジャージを借りて、泣きながら自分の部屋に戻った。

 

 部屋に戻ってからも、私は泣き続けた。

 彼に対する怒り。

 辱められた悔しさ。

 色んな感情が混ざり合って涙を零し続けた。

 そして気がついたら、私は泣きながら自分の秘部を弄っていた。

 彼に酷い仕打ちをされた自分を思い出しながら、あそこを弄り続けた。

 私は初めて自分の性癖に気づいた。

 

 私ってドMの変態なんだ。

 

 どちらかというとS寄りだと思ってたけれど違ったみたい。

 自慰にふけってるうちに、彼への怒りはなくなっていた。

 かわりに彼にもっと虐められたいと思うようになった。

 

 翌朝。

 私は普段通り彼と接した。彼は意外そうな顔をしていた。あんな仕打ちをされた女が、明るく接してきたら驚くに決まってるよね。

 彼と一緒に登校をして、教室に入った。そして約束通り、彼は私を助けてくれた。

 彼のおかげで、私は今まで以上に人気者になった。私を利用したということで、彼は男子たちから非難された。ちょっとだけざまぁみろと思った。

 そして私は彼に爆弾を投下した。

 昨晩彼に借りたジャージを返した。クラスメイト全員が見てる前で。私が彼のジャージを寝間着にしたことが明らかになり、クラスメイトはみんな驚いていた。

 彼はすぐに私を廊下に連れ出した。

 当然私は彼に問い詰められた。私はわざとあざとい動作をしながら答えた。

 もちろん彼を怒らすためだ。

 普段の彼は温厚なほうだけど、本性は違う。平気で私を睨んだりするし、中傷したりする。教室に戻る際なんて、私を蹴ってきたんだから。

 口では非難したけど、本当は気持ちよくて仕方がなかった。

 

 それから私と彼の歪な関係は始まった。

 彼は私の誘いを断るので、彼の部屋に何度も押し掛けた。

 時折下着姿になって、彼に迫ったりするんだけど、全然抱いてくれない。

 どうやら彼の帆波ちゃんへの思いは本物らしい。

 まぁ、抱いてくれなくても、説教と合わせて頭をはたいてくれるからいいんだけど。

 一度だけ彼に頬を引っ叩かれたことがあった。

 私が下着姿で抱きついても、彼はアニメに夢中で私の相手を全然してくれなかったので、ムカついてテレビの電源を切った。そしたら彼はいままで一番声を荒げて怒りだした。そして説教をしてから、私の頬を引っ叩いた。最後に「その幻想をぶち殺す」とか意味わからないこと言ってたけど、痛くて気持ちよかった。

 引っ叩かれてすぐにあそこが濡れてるのがわかった。

 

 多分、彼は私のことをクズだと思ってるんだろうね。

 だから平気で私に手をあげることが出来るんだと思う。

 彼と恋仲になれないのは悔しいけれど、今はこれでいいや。

 彼は私を叩いてストレス発散するだろうし、私は性欲を満たせる。

 とてもいい関係を結べてると思う。

 

 そんな変態になった私だけれど、彼のせいで、目覚めた性癖がもう一つある。

 

 露出狂。

 

 きっかけはもちろん彼に下着姿で廊下に放り出されたことだ。

 あの時は他の人に見られるんじゃないかと本当に焦った。

 それでもその日の晩。

 廊下に放り出されたことを思い出しながらオナ○ーをしてる時に、嘘みたいに胸がドキドキしてしまったのだ。

 恥ずかしく思う気持ちとは裏腹に開放的な気分になってしまった。

 

 それから3日後。

 体育がない水曜日に試しにノーパンで学校に来てみた。

 誰かに下着を穿いていないとばれてしまうというスリルを感じて、すごく気持ちよかった。

 もちろん彼以外に見せるつもりはない。

 けれどそのスリル感が病みつきになり、ノーパンで学校に通うのをやめられなくなってしまった。

 彼の部屋で下着姿になるのも、私のあられもない姿を見て欲しいからだ。もちろん説教されて叩かれたい気持ちもあるけど。

 

 どうしようもない変態になった私だけれど、変態行為にメリットはあった。

 ストレスがすぐに発散できるようになった。

 今までは部屋で叫んだりしてストレスを発散していたけど、それは十分じゃなかった。

 でも今は違う。

 彼に叩かれたり、ノーパンで通学すると、嘘みたいにストレスがなくなっていく。

 もう発散ってレベルじゃない。

 ストレスが完全にゼロになるのだ。

 これならもっと早く変態に目覚めればよかった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「界外くん、界外くん、いい加減エッチしようよ」

 

 私は彼の部屋に押しかけ、下着姿で彼に迫っている。

 彼は面倒くさそうな顔をしながら、ラノベを読み続けてる。

 

「ほらほら、今日はオレンジ色の可愛い下着だよ。今なら中身も見れるよ」

 

 今日も私は彼に怒られるため。

 そして彼に叩かれるため。

 恥ずかしい姿を晒しながら。

 彼を求める。

 いつか本当に抱いてくれる日を夢見て。




原作の一之瀬押しが凄いですね

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