あと3時間…
その時、オレは純白の衣装を身に纏い、【月下の奇術師】となっているだろう。
『只今、21:00になりました。
怪盗キッドの犯行予告時間まで、残り3時間です!』
付けっぱなしにしていたテレビから、予告現場から中継するアナウンサーの声が聞こえてきた。
画面がスタジオに戻り、キャスターが話をしている。
『さて、怪盗キッドの犯行は、この丸2年の間途絶えていましたが、今週火曜日の深夜、突然予告状が送りつけられてきたんですよね』
『そうですね。『クリスマスイヴが始まる瞬間、〈紅の涙〉を頂きに参ります』とのことでしたが、この〈紅の涙〉、正式名〈スカーレット・ティアドロップ〉は、世界最大級のダイヤモンドです』
『怪盗キッドが過去に狙っていたのも、いわゆる【ビッグジュエル】と呼ばれるものばかりでしたし、今回も同じことでしょう。ですが気になるのは、最後の一文にある『ショーはフィn…』
唐突に、青子がテレビの電源を切った。
「…お風呂、入ってくるね」
「ああ」
「覗いたりしたら張り倒すからね!」
「わーってるって」
さて。
世界中にあるビッグジュエルで、パンドラかどうかを確認していないのはもはやスカーレット・ティアドロップだけだ。
ニュースキャスターが言いかけていたのは、おそらくオレが予告状に添えた最後の一文、『ショーはフィナーレを迎えます』だろう。
オレ、すなわち怪盗キッドは、この盗みを最後に引退する。
だが、その前にやらなければならないことが…
風呂から上がった青子に、オレは話しかけた。
「あ、あの、さ。
一つ、青子に聞いておきたいことがあるんだけど…
もし、オレが今までお前を欺き続けてたとしたら…
青子は、どう思う?」
「………
そりゃ、傷付くよ。
でもね快斗、
それがあなたの正義に基くものなら、私はそれを責めたりはしない。
それに……
私も快斗に黙ってることがあるし、お互い様だよ」
青子がオレに黙ってること…?
「目、閉じてて」
言う通りにすると、両手首にガチャリと硬く冷たい感触。
目を開けると、オレの手には手錠が嵌められていた。
「21時34分。
怪盗キッド、確保」
それからオレの目を見て、
「私知ってるんだよ、快斗がキッドだってこと。
幼馴染で、あんなに長く一緒の時間を過ごしてきたのに、気付かない訳無いじゃない…!」
涙を浮かべて言った。
「……
知られてるとは思わなかった…
オレがさっき言ったのはそのことだ。オレがキッドだってこと。
だから本当は、
本当は…
オレは、青子の隣にいる資格はないんだ。
でも、な。
虫のいい話だとオレも思うけど、オレは青子と一緒にいたい。もちろん、ダメ元で言ってるんだk「嫌」…だよn「なんて、言うと思った?」…!!」
「私も快斗と一緒にいたい。
掛け値無しの本音。」
「…でも、オレは「引退するとは言え怪盗キッドだったんだぞ、でしょ?
もう、自分で私と一緒にいたいとか言っときながらそれ言うの?
確かに、快斗がキッドだって気付いたときはどうしてって思ったし、傷付きもしたよ。
でも、それには快斗なりの正義があるんでしょ?
世界を欺いてでも貫くと決めた、揺るぎない正義が。
それなら、私はそれを受け止めて、あなたを支え続ける。それが私の決意」
「青子…」
今まで、まるで気付いていなかった。
オレの全てを理解し、信じてくれる存在が、まさかこんなに近くに居たなんて。
「あとできっちり説明はしてもらうけど…」
青子が言う。
「終わらせるんでしょ?最後ぐらい応援してあげる」
「ああ…そうだな。
ありがとな青子。
さてと…そろそろ支度しねぇとだな」
そこで言葉を切って、ベランダへ続くドアを開ける。
そして、着ていた普段着を剥ぎ取り…
「改めて見たらなかなかカッコイイじゃん」と青子のコメント。
オレは大学生の黒羽快斗から
「しばしのお別れです、お嬢さん」
「カッコつけちゃって。
…頑張ってね、マジシャンさん」
その言葉を背に受け、オレはハングライダーで夜空へと飛び出した。
さあ…ラストショーの始まりだ!!
初めまして、Wizzです。
この作品を読んで下さり、ありがとうございました。
タイトルネームが全然思いつかずに今のようなそのまますぎる題に…(2020年6月8日追記:タイトルを少しシンプルにしました)。
こんな感じの「ただ単に自分が読みたいだけ」な小説を気が向いたら投稿していくつもりですので、温かく見守って頂ければ幸いです。
ありがとうございました!