マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

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朝、テレビをつけて冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップに注ぐ。朝は米派なので、昨夜予約タイマーしていた炊飯器からアツアツほかほかのご飯を茶碗につぐ。わかめとお豆腐が入った味噌汁をよそい、「いただきます」と手をあわせた。我が家は麦味噌を使っている。しっとりとしてコクのある味がなんともたまらない。

 

《昨日の昼頃、バスジャック事件が発生しました。警察によりますと、同乗していた小学生が怪我を負い、―――――》

 

おれは素早くテーブルの上にあったリモコンを握り、テレビの電源を切った。

 

速報 赤い彗星が来日したようだ。

 

 

 

 

***

 

 

コンビニ(kazoku Mart)で今週のジャンプを立ち読みしていた。どこのコンビニへ行っても売り切れで、やっとみつけた一冊である。ファンファンとサイレンが鳴り響き、顔を上げ、窓の外をみる。黒のバンが店の前を通り過ぎた。そのとき、運転席にいたのは美女。助手席には保護者の同僚仲間の男。彼らにしては地味な格好をしていた。その後ろを猛スピードで赤のマツダ車が追いかけていた。野次馬の言葉に耳を傾けると、新橋のスーパーへ強盗に入り、売上金を奪って逃走したらしい。赤のマツダ車と激しいカーチェイスを繰り広げていた。

 

 

……………おれは持っていたジャンプをパタンと閉じた。

 

 

休み明けに学校へ行くと、少年探偵団の子どもたちから土産話をきいた。神海島を訪れ、財宝探しに集まったトレジャーハンターと出会ったらしい。神海島は、古代遺跡の海底宮殿が発見された島だ。また、300年前に2人の女海賊アン・ボニーとメアリ・リードが遺したという財宝伝説も語り継がれていて、その筋では有名な話である。何故こんなに詳しいかというと、保護者の同僚仲間の男が家に来ていたからだ。彼は「オレ、仕事と恋にはよ、マメマメ~マ~メなの」と、ボヤいていた。あの運転をしていたのは彼らじゃなかったようだ。安心したおれは、あの日読み損ねたジャンプのページを開いた。

 

 

 

 

***

 

日売テレビの人気女子アナ・水無怜奈が休養し、そのままテレビ界から姿を消した。画面には水無アナの後任のアナウンサーが写っている。

 

《来葉峠で車が爆破し、中には男性と思われる遺体が発見され―――――》

 

………プチ。おれは迷わずリモコンのボタンを押し、電源を消した。

 

 

 

 

今朝みたニュースは頭の隅に追いやり、外を見ると雨がザーザーと降っていた。帰りのホームルームがおわると、少年探偵団のみんながおれのところに押しかけてきた。

 

「テム君!一緒に帰ろう」

 

彼らとの付き合いもかれこれ長くなる。始めは入間君とよそよそしく呼んでいたが、いつの間にかナチュラルにテムと呼ばれている。子どものコミュ力、半端ない。おれは首を縦にふり、馴染んだキャラメル色のランドセルを背負った。もう体感年数6年はすでに経っているのに未だに一年生であることには不満がある。おれも、江戸川君も、少年探偵団も一年生のままだ。いったい、いつになったら卒業できるのやら…………

 

下駄箱から靴を取り出していると、元太君が不満そうな声を上げた。彼の下駄箱には、【難事件 大募集!! 1年B組少年探偵団】という紙が貼ってある。

 

「ナンも入ってないや」

「今日も依頼は0ですか………」

「つまんないの」

 

光彦君、歩美ちゃんも落胆している。それをみた灰原さんは「それだけ平和ってことでいいんじゃない?」とクールに宥めていた。そうそう。平和が一番だよ。事件なんて求めないで、ラブ&ピースに生きよう。おれの心の安寧のために。

 

江戸川君の提案で博士の家でゲームをすることに落ち着いた。ゲームと聞いて、おれの耳がぴくりと動いた。前世から廃人並みの生粋のゲーマーだったおれにはうれしい提案だ。

 

それから江戸川君の携帯に連絡が入った。通話を終えると、しばらく灰原さんとこそこそ話していたので、おそらく例の組織関係だろう。

 

携帯をしまった江戸川君は何か別のことに気がかりな様子だったが、そんな時に少年探偵団に久々に依頼が入った。 歩美ちゃん、光彦君、元太君は「待ってました!」とでもいうように依頼人の子どもに詳細を聞き込んでいる。反対におれはさっきまでの余裕はどこへやら、舞い込んできた厄介事に心中、荒れた。

 

 

 

 

ガッデム!!

 

五飛、教えてくれ。おれたちはあと何回小学一年生をすればいい? 

 

おれはあと何回、あの体感年数とあの事件遭遇数を更新すればいいんだ……

 

 

 

おれはじわじわと自然に離脱を試みようとするが、子どもたちは「じゃあ、テムも入れて、少年探偵団出動だな!」「「おー!」」と、ノリノリである。いまさら「行けない」と言えない雰囲気だ。すでに外堀は埋められていた。

 

 

おれは少年探偵団と共にホワイトベースへ向かった。気分は特攻するジオン兵である。

 

 

 

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