マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

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雨が上がり、傘をたたむ。依頼人の1年A組杉浦開人君の話にまとめると、以下の通りである。

 

開人君のお父さんは小さなアパートの大家さんでそのアパートの住人は3人。その中の一人は夜な夜な怪しい行動をしていて、何をやっているのかを少年探偵団に突き止めてほしい。

 

 

 

……………うん、防犯カメラを設置したらどうかな?

 

小さなアパートといえども、ここは米花町。驚異的な犯罪件数で天下をとってる町だ。いくらなんでも防犯意識が低すぎる。

 

今回の場合ならボックス型の防犯カメラをお薦めする。見た目の存在感と不審者への威嚇効果が高く、高解像度、高倍率ズームなどの機能が豊富だ。さらにドーム型に比べてコンパクトだから設置の応用度が高い。だから、空き巣や不審者対策で威嚇効果を発揮できるし、固定の場所をはっきりと撮影したいときに有効だ。

 

 

………と言うのも、保護者の同僚仲間からの受け売りだがな。侵入する側からの視点が多いのは気にしない。独特の間延びした口調でおれの頭でも理解できるように解説をしてくれるし、着眼点がおもしろい。ただし、基本的に実習型講義であり、ほぼ毎回アクシデントが起こるから居眠りは禁物だ。もし受講したいのならば、生命保険と誓約書にサインした方がいい。おれはサインする暇なんてなかったが、確実に寿命が縮まった気がする。

 

 

おれがそんなことを考えてる間に子どもたちの話し合いは進んだ。

 

「じゃあよ、今晩こいつン家に泊まって皆でそいつを見張ってようぜ」

「うん。それがいいね。明日は土曜日で学校も休みだし。」

「ごめんね、今日はだめなんだ。お父さんとオセロをする日だから。」

 

 

ということで、開人君の予定があう明日のお昼に待ち合わせすることになった。つまり、明日のおれの予定は子どもたちのお守りだ。「クロミドリとクロシロ、…………じゃなくて入間君と江戸川君がいるなら安心だ!」と手を振りながら別れた。はて、クロミドリとはどういうことだ?おれが知らない間に何かあの子の気の障るようなことをしたか……………?

 

 

 

 

***

 

 

 

米花町2丁目23番地の木馬荘。BGMはカラスの合唱で、カァカァ鳴いている。試しに「カァ」と呼び掛けると、バサバサ羽をならしながら飛んでいった。カラスを手懐けるのは難しい。正面をみると、真っ黒焦げなアパートの焼け跡が広がっていた。黄色いテープが貼られ、刑事さんが忙しなく現場検証している。江戸川君の知りあいの刑事さんによると、開人君はやけどを負い、病院で治療を受けているらしい。大人に混じって捜査に参加する江戸川君は相変わらず異様だけど。捜査の過程で放火魔の手掛かりは開人君の日記だとわかった。開人君がいう黄色い人が怪しいらしい。

 

 

 

ところでさっきから灰原さんの顔色がわるい。まさか対組織レーダーが作動したのか?たしかにおれも視線を感じるが……………誰からなんて、考えたくない。(現実逃避)

 

 

そして、何故か灰原さんからも視線を感じるが............ぶっちゃけ穴があきそうだけど、気にしない。たぶんパニックになった彼女は怯えているだけだ。だから、おれに対してのそれは誤作動だ、きっと。おれの手は真っ黒に染まってないが、その類いの匂いが移ったのかもしれない。真っ白とも言いきれないが、オフホワイトだと思ってる。(真顔)

 

 

そして、江戸川君の推理ショーが始まった。赤い人は消防車から関連づけて毎朝水やりをしている糸目の眼鏡をかけた大学院生。白い人は救急車の特徴から絆創膏をくれた大工さん。残る黄色い人は………

 

「な、なにいってんだよ。この爪の土はサバイバルゲームで山の中をかけずり回って………」

 

「たしか、ペイント弾の色が落ちなくて服が駄目になったんだよね。日本でやっているサバイバルゲームで使われているのはBB弾を発射するエアソフトガン。ペイント弾を使うのはペイントボールっていう別のゲームだよ。それに迷彩服のネイビーグリーンがすきだって言ってたけど、迷彩服によく使われているのはオリーブドラブっていう緑だと思うけど――――――だよね?入間君」

 

なぜそこでバトンを渡す。急に聞かれたおれは「あぁ」と短く肯定する。江戸川君の言う通りだ。江戸川君から追及された犯人は犯行を認め、動機を語りだした。

 

 

「夕べ、映画から帰ってきたら大家さんに問い詰められてイラッときて突き飛ばしたら大家さんが階段から転げ落ちて………動かなくなって………もう怖くって………それで燃やしちゃえば何もかもリセットできると思って」

 

…………ん?プツンと頭の中で弾けた。「ちょっといいですか?さっきのもう一回いってくれませんか?」聞き捨てならない単語がきこえ、犯人にもう一度、動機を語るように言った。

 

「燃やしちゃえば何もかもリセットできると思って………」

 

「…………ヘェ、」

 

おれはスゥーと息を吸い、口から言葉のマシンガンを繰り出した。そのとき、顔は笑っているが、自分の声はいつもより低くなるのを感じた。

 

 

 

 

くらァ~~!!リセットするなってんのがわからんのかァァァァ!

こんな大声出したんめっちゃ久しぶりやわ。頭クラクラするっちゅーねん。え~っと、ほな説明するからちゃんと聞いてや?さて、自分はポケ〇ンをしていました。何時間も耐え、自分が求める個体値かつ色ちがいのポ〇モンをゲットしました。ハイッ!ここでどうする?ん?なんやて?「レポート」のボタンを押す。ハイ、正解!

 

ええか、自分が過ごしてる時間は、1秒1秒がかけがえのないものなんや。そのたいせつな時間はちゃんと残しておきたいやないか。なかったことにしてしまうなんてもったいない話やで。

 

普段の生活の中にリセットなんてあるか?おかず焦がしたから巻き戻って作り直しとか、アカンかったから時間戻してやり直すとか、ないやろ?やり直しがきかんのが人生っちゅーもんや。思い通りにならんでそれがどないしたっちゅーねん!

 

まぁ、エエわ。ちょっと飛ばしすぎてしゃべり疲れてもーたし。シンドイやろから今日はこの辺にしとこか!ほな!刑事さん、あとはよろしゅう。」

 

 

 

犯人は涙目になり、腰を抜かしていた。

 

 

…………やべェ。心労に負担がかかりすぎて、つい“発作”がおきてしまった。唖然とした顔で慌てて刑事さんは犯人をお縄にした。江戸川君の知りあいの刑事さんが犯人の胸ぐらを掴み、お灸を据えている様子をみて、スッキリした。

 

 

さて、と。やらかしたなァと頬をかきながら子どもたちを見回すとポカーンとした顔をしていた。普段はクリクリした大きな瞳が、点になっていた。「どうしたの?」と首を傾けると、ハッとしたように江戸川君はおれに尋ねた。

 

「い、入間君って、関西出身なの?」

「いや、鳥取生まれだよ。関西弁は勉強し始めてね、…………ほら、第二言語ってやつだよ」

「そ、そーなんだ………(関西弁が第二言語って、聞いたことねーよ!相変わらず読めねー奴……)」

 

 

 

 

江戸川君が呆れた目をしていると、糸目の眼鏡をかけた大学院生がおれたちに近づいた。子どもたちは得意気に自分たちを少年探偵団と名乗っている。灰原さんは、そっと子どもたちの背に隠れている。いますぐその場所変わってほしい。大学院生は「彼も?」とおれに視線を向け尋ねた。

 

「テム君も歩美たちの仲間だよ!」

「すっげーンだ!…タケノコ党だけどよォー」

 

頼む、余計なことは言わないでくれ……………「ホォー」と相槌をうつ、この人の視線がビシビシと刺さる。

 

 

すると、思い出したように光彦君が声をあげた。

 

「コナン君がパトカーからとって、クロシロというのはわかりましたけど、なんで入間君はクロミドリって呼ばれたのでしょう?」

 

 

冷静な口調で灰原さんと江戸川君がそれに答える。

 

「自衛隊車両じゃないかしら。黒や緑を基調とした車両が多いから、“クロミドリ”。」

「あぁ、入間君のかくれんぼの腕はまるで軍隊みたいだからな」 

 

 

ぐ、軍隊…………だと。

 

…………たしかに覚えがある。サバゲー好きが沸点を飛び越え、一度子ども相手に大人げなく遊んだことがある。さすがに銃は使ってないが、移動は匍匐前進、葉っぱでカモフラージュしたり、アグレッシブな動きをしたりした。たかが、かくれんぼに。もう一度言う、たかが、かくれんぼに。いま、思い出すと恥ずかしい。…………そうか、たまに「教官」とか「軍曹」と呼ばれるのはそのせいか……………ガッデム!!

 

 

 

 

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