マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

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銃撃音が聞こえてくる。あぁ、いつから日本はこんなに物騒になったんだろう。おれは東都タワーの非常口から夜景を眺めていた。

 

 

 

***

 

 

 

学校から帰ると、保護者が外食に行くというので「ひゃっほーい!」と喜んでついていった。保護者曰く、しばらく外国で仕事が入っているため、家を開けるとのこと。おけおけ、了解と頷きながら、頭の中はすでにディナーのことで頭がいっぱいだった。

 

 

店に着くと、保護者の同僚仲間が揃っていた。赤ジャケットを羽織り、堂々とオーダーしている。もう一人の男は着物に袴、さらしを巻いて前を大きくはだけている。食後のデザートにいちごパフェを堪能していると、見覚えのある男が「逮捕だァ!」と追いかけてくる。赤ジャケットの男が「あばよ~、とっつぁ~ん!」と言ったのを合図に一目散に逃げだした。そうなると当然おれも巻き込まれるわけで、保護者に首根っこを捕まれ、なくなくパフェを諦めた。

 

 

ドイツ製のベンツ車に乗り込み、街を駆け抜ける。前から、横から、後ろから。あちこちからものが飛んでくるので、ゴーグルを装着し、目の保護をする。うしろの方では巻き込まれたパトカーや一般車が玉突き事故を起こしていた。.........これ、請求書とか始末書とかどうなるんだろ......被害総額でみると車を買えるんじゃないか.........?

 

 

 

このまま出国するらしく、おれは途中で降りることになった。車の外枠のフレームが外れ、車体が浮き、そのまま離陸。保護者に「留守は頼んだぜ」と言われ、彼らは闇夜の空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

おれを東都タワーのトップデッキに降ろして。

 

 

 

何故ここに降ろした!?もっと違う場所あったよね!?せめて地上がよかった......

 

地上からの高さはおよそ250m。おそるおそる窓を覗くと、何人か倒れこんでいる。イヤな予感がする。明らかに何かありました、と物語っている。しかしこのままここにいても、風に煽られたら一溜まりもないので、中へ入れる通路を探し、移動した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

コツコツと足音が聞こえてくる。耳を澄ませると、それはだんだん近づいてきた。この声は江戸川君だ。彼は「形勢逆転だな。メモリーカードを渡してもらおうか」と両手で奪った銃を男に向けていた。筋肉質な男は立ち上がりながらにやりと笑った。すると、そこにヘリが現れ、ライトの光で目が眩んだ江戸川君から男が拳銃を奪い返した。 

 

「形勢逆転だな」

 

江戸川君の眉間に銃口を当て、男は江戸川君を押さえ込んだ。本当に物騒な国になったよ。これ以上はみていられないと思い、彼らの前に飛び出した。

 

 

 

「おれもいるんだな、これが。――――さて、形勢逆転だね」

 

 

漆黒の空の下で江戸川君と男が驚いたように振り返る。タワーのネオンに照らされたおれのしんだ魚のような瞳がちょっとだけ煌めいた気がした。

 

 

 


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