マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

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「おれもいるんだな、これが。――――さて、形勢逆転だね」

 

突然の乱入者――おれ――に驚いたらしい。男――アイリッシュ――は江戸川君から距離を取り、おれをみた。

 

 

「何故ここにガキがいる?.........あの空手の少女といい、今日は想定外ばかりだ。」

 

 

ゴクンと唾を呑みこみ、アイリッシュへと視線を向ける。

 

 

「何やってんだか知らないけど、好き勝手やられちゃ困るよ、オッサン。江戸川君はおれのクラスメートなんでね。

 

それとここは

 

    (フィールド)

おれの 国 だ。とっとと出ていくことをすすめる。」

 

 

睨みあっていると、prrrと電話が鳴り、おれたちは動きを止めた。アイリッシュは、メモリーカードを空にかざしている。 

 

だがその途端、アイリッシュは左胸を撃たれてしまい、その場で崩れ落ちた。江戸川君は、「オイ!しっかりしろ。大丈夫だ。急所は外れてる!」と、アイリッシュを助け出そうとこの場を切り抜けようとする。

 

サイレンの音が聞こえ、ちょうど下を覗くと、東都タワーの下には多くのパトカーが止まっていた。.........なるほど。奴らはアイリッシュがもう逃げ切れないだろうという理由で彼を見捨てたらしい。

 

「………下をみてみなよ、江戸川君」

 

おれはゴーグルを外して江戸川君をみた。彼は「サイレン......パトカーか!」と安心したように声をあげる。その拍子でガクッと彼の身体のバランスが崩れた。

 

「もうお巡りさんが駆けつけている。おそらく彼は逃げ切れないって判断されたんだよ」とヘリを横目に、江戸川君が支えている方の反対側に動いた。右を江戸川君、左をおれがアイリッシュの腕を自分の肩にまわした。

                 

「………こいつは驚いた。おれは、そのツラに………よく似たヤツを、知っている......」

 

重体のアイリッシュはおれの顔をみて、短く言葉を区切りながら話す。.........一瞬よぎったのは、おれそっくりのヤツの顔。......この顔に見覚え、か......なんか文字におこすと指名手配犯みたいだな.........おれの反応をみたアイリッシュは生ぬるい視線で何か言葉を発しようとした。だが、江戸川君が口を開くのが早かった。

 

「もうしゃべんじゃねェ!あいつらをかたづけたらッーーーー」

 

ーーーーーーアイリッシュが撃たれた。

 

それでも彼はおれたちの身代わりになって銃弾を浴び続ける。 それが致命傷となって、「いつまでも、追い続けるがいい…………」と言い残し、目を閉じた。おれは唇を噛んで、ギュッと拳を握った。咄嗟に江戸川君の腕を引っ張り、アイリッシュが落とした拳銃を拾い、物陰に隠れる。

 

 

目撃者がいることに気づいた奴らは、始末しようと東都タワーに向けてマシンガンを乱射した。 おれたちは身を潜めてやり過ごそうとするが、このままでは下の階にいる人々の命も危ない。 江戸川君は集中砲火の隙を突いて飛び出し、銃撃をかわしながら上のほうへと駆け上がる。おれもその後ろに続いた。 展望フロアに逃げ込むが、マシンガンの集中砲火を受け、催涙弾を打ち込まれる。 

 

 

たまらずそこを飛び出してさらにタワーを駆け上がるが、その終着点は逃げ場の無い行き止まり。 江戸川君は、銃撃で散乱しているライトをみつけた。彼は阿笠博士の発明品・サスペンダーを取りだし、ガチャガチャ作業し始めた。何か思い付いたみたいだ。ならば、とおれは腹を括り一か八かのカケに出る。

 

「おれが隙をつくる!」

「どうやって!?危険すぎる!!」

「生憎、この状況は慣れているんだよ、不本意だけど。」

 

 

ヘリは上空まで移動し、かなり近い距離までいた。この距離ならいける.........!銃刀法違反がなんだ。いまは人命が最優先だ!ヘリのパイロットの操縦の腕はわからないが、多少の時間稼ぎになるはずだ。おれはゴーグルをつけ直し、拳銃を構える。そしてヘリの羽に照準を合わせ、引き金を引いた。

 

「ヘリコプター、羽がなければ、ただの鉄クズ.........う~ん、字余りか。」

 

ヘリは羽の回転が鈍くなり、煙を出していた。ちょうど準備ができたらしい江戸川君に呼ばれた。.........エッ!?まさかのバンジー!?ちょ、心の準備がまだ.........!

 

 

「いくぞッ!!」

 

 

 

問答無用に服にサスペンダーを引っ掛けられ、

ヘリがバランスを崩している間に江戸川君の伸縮サスペンダーを使いながらタワーの頂上からダイブする。二人分の体重を支えられるか心配だったが、丈夫にできていてその心配は杞憂だった。 江戸川君の手にはライトが握られており、サスペンダーを使い、着地した後でその手を離す。すると、上空へと放たれ、ちょうど真上にいたヘリに命中した。 その衝撃がとどめになったのだろう。ヘリは爆発を起こし、コントロールが利かなくなり、不時着した。 

 

......まったく、クリーニング代が高くつくな、こりゃ。

 

 

 

***

 

 

 

江戸川君の頭には包帯が巻かれ、治療が終わるなりすぐさま蘭さんの無事を確認しにいった。さて、おれも帰りますかね。救急隊員にお礼を言い、その場を去ろうとしたら、おれに気づいた江戸川君がこわい顔で聞いた。

 

「入間君って何者?それにアイリッシュ......、あの男と知りあいなの?」

 

 

............まさかとは思うが、おれってそっちサイドの人間だと疑われているゥ!?ちがう、ちがう、えん罪だ!!ア゛~!!それもこれも、やっぱりヤツのせいだ!こんなややこしくさせて!!

 

.........そうか!やっと合点がいった。おれが黒の組織のメンバーと疑ってたから、灰原さんに警戒されてたのか.........!いったい、いつどこで灰原さんの対組織レーダーに引っ掛かったんだ!!!?こっちは、善良な一般市民だ!!

 

 

ガッデム!!

 

 

今すぐこの誤解を解かないと、今以上にややこしくなる!!おれは髪をグシャグシャとかき、ゴーグルを取り外した。

 

「おれは マジで平和 第一主義な お上りさん。.........略して『マダオ』だからね!ほら、この失われた目の輝きが何よりの証拠だよ。日本経済の失われた20年より深刻な色をしているだろ?.........パトラッシュだかウェットティッシュだか知らないけど、あの男とは初対面だよ。おれからみれば江戸川君の方が彼を知っているようだけど?君こそ何者?」

 

江戸川君はともかく、いい歳した精神年齢のおれ。お互い小学生やってると大変だよね.........

しかし、略称って便利だな。まるで だめな おっさん (マダオ)が言い方変えれば、どうにでもなる。

 

 

おれの返答に江戸川君はキョトンとしながらも、やがて「江戸川コナン、探偵さ」とドヤ顔をきめていた。

 

 

 

 

ちなみに言うと、お約束の展開で.........

 

「入間君、どこで銃」「ゲーセンでガンシューティングしたことがあってね」

 

コンマ一秒の速さで答えた。想定内の質問である。

 

 

 


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