マダオ戦士Goddamn 作:はんがー
Side 白鳥警部
先日、東都タワー爆破事件が起こった。今日はその関係者であるコナン君と入間テム君に事情聴取することになった。入間君は保護者が不在らしく担任の小林先生が同伴している。佐藤さんとあまりにもそっくりで失礼ながら挙動不審になってしまった。
コナン君は毎度のことながら、入間君は3回目だったな。たしか、ツインタワービルと豪華客船「アフロディーテ号」、そして今回の東都タワー。これだけの爆破事件に巻き込まれているなんて、早々ないため記憶に残っている。
「それで、君たちがみたことを話してもらいたいんだが、.........」
「入間君、居眠りしないで、ほら、起きて。白鳥警部が困ってるよ」
いざ、事情聴取をしようとしたら、テム君はウトウト眠りに入ろうとしている。コナン君によると、テム君は無類のゲーム好きで夜遅くまでゲームをしていたらしい。たしかに目の下にうっすら隈がある。ユサユサとコナン君に肩を揺らされ、テム君はぼんやりと話し始めた。
「瞑想してたんだよ、江戸川君。失礼なこと言わないでよ。」
くわぁぁと大きく伸びをしているテム君をみて、「あくびをしながら言われても説得力ないよ」とコナン君は呆れたように呟いた。たしかに。.........堂々としたふてぶてしい態度は肝が据わっている。もしかしたらこの子は将来大物になるかもしれない。「すみません、授業中もこんな調子で.........ほら、いちごオレあげるからちゃんと白鳥さんにお話しして、入間君」小林先生も苦労しているようだ。いちごオレ、と聞いてテム君は目をキリッとさせて語りだした。僕は手帳とペンを取り出し、テム君の話に耳を傾けた。
「すっごい大変だったんだ。柄の悪そうな二人が揉めてて、やめさせてください、簡単にやめれると思うなよ、やめさせてください、そうかそれなら命を持ってしめせ!……………ブスッて………ナイフで刺したんだ。うわ、殺人現場かよ!っておもったらそいつがぱっと振り返って、おれの方をみて、ガキ見たな?って…………ナイフ持って追いかけてきたんだ。」
静かに語るテム君の話にこの場の全員が引き込まれた。「ッ!そこでどうなったの?」と、コナン君が身を乗り出してテム君に尋ねる。ゴクリと唾を呑みこみ、僕もテム君に続きを促した。
「どうなったかって、...............
そこで目が覚めたんだからおれにもわからないよ。」
「おめーの居眠りの夢の話じゃねーか!!」
スパアアンとコナン君がテム君に吠えた。僕と小林先生は机にスライディングした。テム君は「そんなカリカリすんなよ、カルシウム摂ってる?」と首を傾けている。口の端がヒクヒク引きつる。相手は子どもだ。冷静に落ち着いて………一つ息を吐いて、改めてテム君に問いかけた。
結局、テム君は東都タワーへ彗星を探すために来ていたらしい。おそらく子ども特有の好奇心だろう。小林先生は「.........まだ探してたのね......」と小さく言った。詳しく聞くと、テム君の日記によるとその彗星探しは日常的であったという。なるほど。遊びのようなものか。このくらいの年齢の子どもの間で流行っているのだろうか。コナン君に聞いてみると、「え゛!?ボ、ボクもた、たまーにやるかも………」と言った。今時の子どもって………………小林先生、ご苦労様です。
事情聴取がおわり、テム君はいちごオレを片手にぺこりとお辞儀した。小林先生に貰ったらしい。遠く離れたところでコナン君もジュースを飲んでいた。
ふと、テム君の持つボトルに目にとまる。それはストローでつくった花びらが飾ってあった。あれはどこか見覚えが……………。気になってテム君を呼び止めた。
「テム君、その花びら、どうしたんだい?」
「あぁ、これは小林先生がやってくれたんだ。なんでも、強くてやさしい、正義の花なんだってさ。」
はい、これ。さっき助けてくれたお礼。ストローの包み紙でつくったからきれいにできなかったけど。桜は警察の人がつけているマークだよ。強くてやさしい、正義の花なんだから!
ーーーー強くてやさしい、正義の花
そうか。あのときの女の子は、 小林先生 だったのか。
僕がまじまじとストローでつくられた花びらをみていると、テム君はにんまりといたずらっ子のように「見つかった?」と笑った。なんだかこの子には見透かされているような気がした。
Side テム
某大ヒット映画でいえば、こんなモノローグが入るだろう。ずっとなにかを、誰かを、恋い焦がれている。そう言う気持ちに取り憑かれたのは、たぶんあの日から。 あの日、本屋さんに万引き犯が出現した日。立ち向かう女の子は、まるで、まるで、桜の景色のように、それは、強く、美しい眺めだった。ってなところか?
おれは東都タワー爆破事件に巻き込まれたので、事情聴取に向かった。あれから結構、日数が経っているので正直いまさらという気分だ。米花町は事件件数が格段に多いため、後始末もそのぶん大変らしい。ましてや劇場版ならなおさらである。ご苦労様です。
白鳥警部は小林先生をはじめてみたときから挙動不審だった。知り合いにそっくりな女刑事さんがいるらしい。彼いわく、その人は初恋の人だそう。本屋さんで万引き犯に立ち向かった女の子らしい。そういえば前の事情聴取のとき佐藤刑事にぞっこんだったな。
おれの日記を読む小林先生はおれの適当な占いを本気にしたらしく、ストローを常備していた。小林先生はわりと乙女チックなところがある。そして偶々、事情聴取に呼ばれしたときに小林先生が同伴することになった。オトンは職業柄、警視庁にいくことは無理なので選択肢から除外している。
事情聴取のときにちょっと冗談を言うと、「紛らわしいことするなよ......」と江戸川君に呆れたように言われた。ごめん、そればかりは約束できない。おれがしなくても、もっと紛らわしいことが起こるよ。ハハハ.........(遠い目)あぁ、そのときがきたら全力でにげたい。
さて、問題はどうしてあの場所にいたのか説明するか、だ。
思い出してほしい。あの日オトンたちはとっつぁんと街中で追いかけっこした挙げ句おれを東都タワーに降ろしてトンズラした。これをそのまま言ってみろ。大変なことになる。江戸川君に「で、ほんとはどうしていたんだ?」と言われ、「オトンが.........」というと察しのいい彼はうまく白鳥警部を誤魔化してくれた。ちょうど思い浮かんだ「彗星を探してたんだ」という言い訳をいうと、「.........まだ探してたのね......」と小林先生が口を挟んだ。教師という社会的身分がある先生が白鳥警部におれの日記の話をしたおかげで、俄然信憑性が増した。ありがとう、小林先生。明日は起きて授業受けます。
事情聴取の後で、小林先生からいちごオレを貰った。手先が器用な小林先生はおれのいちごオレのボトルにストローの包み紙でつくった花びらを飾った。ストローをくわえると、口の中に甘いいちごの香りが広がる。白鳥警部を見かけたのでぺこりとお辞儀をすると、声をかけられた。
「テム君、その花びら、どうしたんだい?」
「あぁ、これは小林先生がやってくれたんだ。なんでも、強くてやさしい、正義の花なんだってさ。」
そして白鳥警部はまるで愛おしいものをみるかのようにそれを見つめた。......その表情をみてピンときた。前回の事情聴取できいた本屋さんの女の子がわかったらしい。見つかってよかったな。だが、これはおれのいちごオレだ。やらんぞ。
なんて話していたら、小林先生と江戸川君が戻ってきた。「用も済んだし帰りましょうか」と小林先生が言うと、白鳥警部は「よろしければ、僕の車で!」と、早速、小林先生にアプローチし始めた。おい、まさかこの二人の空間におれも混ざれと?あぁ、これがほんとのリア充爆発しろってやつだ。巨大隕石が墜落しますよー………なんてな。隣で江戸川君と共に乾いた笑みで白鳥警部をみていた。