マダオ戦士Goddamn 作:はんがー
博士が誘拐されたかもしれない。おれと沖矢さんは、すぐさま博士を救出すべく行動に移した。今日は授業が4時前に終わったから、いつもよりはやく帰宅できるはず。それなのに灰原さんがまだ帰っていないということは、少年探偵団も巻き込まれている可能性が極めて高い。と考えると、博士の居場所は江戸川君たちの近くと絞られる。
おれはポケットから探偵バッジを取り出した。この探偵バッジ、小学生が持つにしては超高性能だ。超小型トランシーバーが内臓されてあり、メンバー間の交信に使用できる。さらに江戸川君のメガネと連動して、万が一の紛失したり失踪したメンバーを探したりするときのお助けアイテム。つまり今の状況にぴったりの優れものだ。
七歳児の指でつまめるサイズ。重量関係なく半径20kmという絶大な通信可能距離。劇場版お馴染みのコンクリートジャングルの中をスケボーで疾走しながらであっても平気で通信できる。通信マナーを無視した、少年探偵団がペチャクチャ喋っても混信しない。阿笠博士の科学力には舌を巻く。温和な爺さんだが、その気になれば世界征服も夢じゃない。...............こんなハイテク機器、軍隊に売り込めば即行で買い手がつくだろうな。 本人はその気がないだろうが、かなりの要注意人物じゃないだろうか。そのうち、警察に技術提供する機会があったりして...............
ちょうど沖矢さんが予備のメガネを持ってきていたので、スイッチを入れる。1つは阿笠邸にレーダーが点滅している。これは、おれの探偵バッジの位置情報。そうすると残りは、やはり予想通り、1ヵ所の場所に点滅していた。
***
沖矢さんの車に乗り込み、メガネの追跡位置情報を頼りにたどり着いたのは、とある廃ビルだった。シャッターを開け、中へ入る。......え?侵入はできるんだよ。早速、ルパン直伝のピッキング使うとは思わなかった。ガッデム!!
《ドカッ》
......ハイ、沖矢さんの重い一撃が犯人に入りましたー。(目を反らす)
《ボキッ》
.........ハイ、犯人の骨にヒビが入りましたー。
《ガッシャーン》
.........ハイ、二次災害で窓ガラスが割れましたー。ガラスの破片が夕日に照らされてきれいだなァ。(逃避)
もう一家に一台、沖矢さんを備えていればいいんじゃないか?煮込み料理のオンパレードだけど。セ⚪ムとア⚪ソックと並ぶセキュリティと強さを兼ね備えてる。人間やめてるな、これ。(失礼)
おれは倒れた犯人に「南無阿弥陀仏」と手を合わせ合掌した。おれが念仏を唱えると、犯人はさらに顔色を悪くし、泡を吹いて気絶した。
さて、ピーチ姫じゃないや、博士と少年探偵団のキッズを救出だ。
「よぉ。」
奥の扉を開けると、こちらに腕時計を構えた江戸川君と、その後ろに子どもたちが隠れていた。ラスボスクッパは江戸川君だったわけだ。洒落になんねー。ハハハ.........(棒読み)
まずは取り敢えず、その物騒な腕時計(麻酔針)をしまってくれるか?
江戸川君が「危ないッ!」と叫んだ。おれの背後にはもう一人の犯人が殴りかかろうとしていた。おれはサッとしゃがみ、犯人の足を掴む。軸をとられた犯人は体のバランスを崩した。その瞬間をあの人が逃すわけがない。
「ナイス」
「いえ、礼には及びませんよ.........」
あの人――沖矢さん――は、犯人の腕をひねり、そのまま手刀を入れる。江戸川君からガムテープを受けとり、確保した。子どもたちに容赦なくガムテープを貼られてる。哀れ。「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えると、ますます犯人は顔色が悪くなった。「......入間君、電話口で念仏唱えてた?」と江戸川君に半目で問われる。......うん、心当たりは、大有り、だな。コクりと頷く。「まぁ、おかげで助かった。ありがとう」.........そう素直に礼を言われるとなんだか、こそばゆい。らしくないな、とフイッと顔を背け、ロッカーへ向かう。ロッカーを開けると、こんな状況にも関わらず、スヤスヤ眠りこけたじいさん――阿笠博士――がいた。
***
「それにしても、珍しい組合せね」とジトリと灰原さんに声をかけられる。たしかにおれと沖矢さんは仲良しという間柄ではない。一方的におれが避けていたし、ここ数日は少年探偵団の活動に欠席していたから会うタイミングがなかった。おれは「......そうか?」と一拍あいて答える。
「.........まさか甘いものに釣られてノコノコついていったんじゃないでしょうね」
さらにジトリと追い込まれる。なぜ、わかったんだ!?こわ。灰原さんのレーダーと勘。おれの顔に出ていたのか、ますます灰原さんの顔が険しくなる。
「このボウヤを見ていると、少し昔を思い出しまして.........顔馴染みだから見間違えるわけないんですがね.........」
沖矢さんが会話に加わると、警戒するようにおれの背後へ隠れる。......おい、コラ。おれを盾にするな。裾が延びる。服を掴むな。......後ろへ顔を向ける。あまりにも怯えた表情で震えた手でぎゅっと掴むから、そんな文句は唾といっしょに呑み込んだ。
ん?.........昔を思い出す?............顔馴染み?.........ハッ!となって沖矢さんを凝視する。沖矢さんはおれの視線に合わせるように少しかがんだ。
「ボウヤには大変興味が湧くが、ここから先はこちらのエリアだ。君の領分じゃない.........」
一方的に線引きされた気がした。まさか誰かさんと重ね合わせているのか?.........その誰かさんってまさか.........沖矢さん、その誰かさんと面識あったっけ.........イヤイヤイヤイヤ。事実確認してないし、まだ誰もそうだと断定していないし。おれはパンピー(一般人)なはずだ。オトンもオカンもぶっ飛んでるけど.........うん。一般人は無理があるな。イヤイヤ、しかし、誰がなんと言おうとおれは善良な子どもなはずだ!!
その日、おれ独自のブラックリストが更新された。
【沖矢昴】
おれの中のブラックリストに【要警戒】と新たに付け加えた。これ以上、おれの心労を増やしてくれるな。頼むから!