マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

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暇潰しにパスワードのロックを解除することが最近のマイブームである。この前は、適当な数字とアルファベットでたまたまヒットしたが、そんなことは滅多に起こらない。パスワードを特定するにも“方法”があるってことだ。

 

 

パスワードは任意の文字列で構成されるが、ランダムなものはほとんどない。むしろ覚えやすい文字列が多い。それを利用して、辞書に載っている単語や人名を入力して、パスワードを発見できる。

 

―――例えば、江戸川君はホームズ関連の単語を。

 

 

キャッシュカードや携帯電話の暗証番号は4桁だけしかない。ということは、0000〜9999の、最大10000回根気強く試せば、暗証番号を発見できる。。ただし桁数の少ない暗証番号は、照合時の入力可能回数に制限があることがほとんどだ。

 

―――例えば、毛利探偵ならば、覚えやすい語呂合せを。

 

第三者のパスワードを推測するには以上のような手段が用いられる。

 

 

だが、それ以外に個人情報の一部を入手して、そこから推測するというのが、一番手っ取り早いことがある。生年月日や車のナンバーが例にあげられる。

 

 

金庫のロックを解除したルパンが得意気にそう話す。ただし、ルパンの講義は現場型なので、お宝を手にしたあとは警備員が待ち構えていた。「ほんじゃ~、テム、よろしく~」と監視カメラに向かってピースする映像にイラッとしながら、逃走経路をつくっていく。シャッターを下ろしたり、スプリンクラーを作動させたりした結果、現場は混乱に陥っていた。隣の運転席にいるオトンはルパンが後部座席に乗り込むのを確認すると、急発進させる。バックネットに佇むオカンが迫り来る銃弾を斬っていき、おれはやっとひと息ついた。問答無用に仕事現場に連れていかれたと思えば、こんな状況だ。こうしておれは一般人として大切な“なにか”を失っていくのさ............ハハハ......米花町は爆弾地帯だが、ルパンの行く先は銃撃戦を覚悟する。ひとつ言うなら、そうだな............火薬の匂いにはもう慣れた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「最近、元気ないし、ポアロに誘っても先に帰っちゃうし......テム君だって、少年探偵団なのに一緒になかなか遊べないし......」

 

シュンとした歩美ちゃんは思い詰めたように口を開く。ポアロか............それはおれでも灰原さんが断る理由がわかる。お互い顔をあわせたらまずいからなァ............

 

 

「哀ちゃん、何か隠してるの......なんか無理してる......間違いないもん!」

 

 

おれは「......根拠は?」と訊ねる。カチューシャをつけた頭をぴょこぴょこふり、やがてドーンと自信満々に歩美ちゃんは宣った。

 

 

 

「女の“かん”!!」

 

 

 

............勘、ね......そんなこと勘じゃなくても丸わかりだ。

 

 

「............灰原さんは何考えてんのかわかんねーけど、自分で選んでいったんだろ?それに江戸川君だって、歩美ちゃんだって灰原さんについてる......だったら、いつもの澄ました顔で......」

 

 

心配ないと元気づけさせるが、途中で引っ掛かりを覚えた。

 

 

 

―――時々、心ここにあらずというように遠くをみる顔。

 

沖矢さんをみると、警戒するようにおれの背後へ隠れる。

 

怯えた表情で震えた手でぎゅっと服の裾を掴む様子。

 

 

 

いやなモン思い出したな............

 

 

よりにもよって、この描写では、沖矢さんのロリコン疑惑が浮上した。やばいぞ。お巡りさん、ここです。赤い彗星はララァのことでロリコン扱いされてたけど(逆シャア参照)......FBIがそんなことになったら一巻の終わりだ。世も末である。

 

 

「で、歩美ちゃんは何でそれをおれにいうの?」

 

「だって、歩美、知ってるんだから!

―――テム君、哀ちゃんと仲直りしてないんでしょ?」

 

 

てん、てん、てん............はい?どういうことだ?首をひねる。歩美ちゃんの口は止まらない。目に涙を浮かばせながら、顔が俯いていく。

 

 

「二人とも、あんまり一緒に喋ってるところみてないし、それにテム君なんかピリピリしてる......」

 

 

そ、それはわるかった。ただいま警戒体制なモンで............おれが肩をすくめて謝ると、歩美ちゃんはパッと顔をあげた。

 

 

「哀ちゃんはテム君のこと、嫌ってなんかないよ!よくテム君のことみてるんだもん!」

 

 

意外と鋭いし、子どもはよく周りをみている。現に歩美ちゃんは、僅かながらのおれと灰原さんの不穏な空気を感じ取っていた。もともと純粋で感受性の豊かな子だからなのか......おれと灰原さんがけんかしていると考えたようだ。実際は、おれが黒の組織の奴だと誤解されていたのだが......お隣に沖矢さんが居候したかと思えば、江戸川君の周りにはバーボン疑惑の人物がうろちょろいる。なんで知っているかって?子どもって、昨日何をしたとか、誰に会っただとかポンポンよく喋るから、大体の状況は把握できる。そう考えると、灰原さんはかなり心労にダメージがきているのでは......?

 

 

「......わかったよ。おれも列車の旅にいくから、落ち着いて......な?」

 

歩美ちゃんの勢いに押され、おれは断るはずの旅行に参加することになった。ヒートアップしそうな歩美ちゃんを宥め、おれはその事態に頭を抱えた。

 

 

 


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