マダオ戦士Goddamn 作:はんがー
謀ったな、江戸川君!!
そんなおれの糾弾をきっと江戸川君はこう返すだろう。「聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい。君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ。」彼なら蝶ネクタイに声をあてられるから、違和感はなさそうだ。
トラックから勢いよく犯人目掛けて飛び蹴りをかまし、視界に入ったヤツの顔を認識したおれの脳内ではそんな考えを巡らせていた。
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険しい表情で江戸川君はおれを見据える。ベルツリー急行からこんな調子だ。覚悟はしていたが、とうとう厄介な状況になってしまったらしい。江戸川君の写真を引き伸ばして演説したときより、怒っていらっしゃる。怒りと心配と疑いの眼差しが混じったような複雑な面持ちだった。
ネチネチした追及は寿限無並みに大変長かった。嫌気がさして途中から「バーロー」の回数を数えていたのは内緒だ。だが、おれだってひと言いわせてほしい。貨物車で爆弾がカチカチとカウントダウンするなかで、最後の止めのように手榴弾を投げ込むなんて、鬼畜すぎる。まったく泥棒に容赦ないよね............生きづらい世の中だ。そして手榴弾を投げ込んだ男には後で制裁を加えることを宣言する。ガルマの無念はおれが果たす!最後に江戸川君は今まで通り、帽子を被っていろと締めくくり、お説教もとい取調べは一旦幕を閉じた。
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さて、季節は何度目かわからないが冬が近づいている。子どもは風の子だとはいうが、肌寒いこの時期にサッカーするとはな............博士の家でケーキを食べるというので、ケーキが届くまでの間、サッカーしようぜ!となった。そろそろコナンワールドはスポーツ漫画に路線変更するのかと期待するが、残念。今日も米花町ではパトカーがサイレンをならしていた。
ピピーとホイッスルを鳴らしながら、江戸川君にイエローカードを出す。彼は今、右足シュートをしたからだ。そんなルールはないが、特別にハンデが設けられているので、この場合、アウトになるのだ。
久々に少年探偵団で遊ぶ嬉しさと、江戸川君の無双シュートに歩美ちゃんはピョンピョン跳ねていた。試合再開しようとしたときに、ポアロの飼い猫・大尉がコートに乱入した。ピピ~ッ!とホイッスルを鳴らすと、大尉はトラックのなかへ潜り込み、それを追いかけたおれたちもトラックの中へ乗り込んだ。大尉を保護して、降りようとすると、バン!と閉められた。
冷蔵車のなかに閉じ込められたおれたちに「次に業者の人が扉を開けたら出してもらうぜ」という江戸川君に同意をする。
コートを引っ張られ、横をみると、見た目小学生なのに何故かお色気担当した灰原さんが座り込んでいた。「ダレトク......」というボヤキが聞こえていたらしく、「......それ温かそうね」とマイナス零度の声色で冷ややかに睨まれた。コートを掴んだ手に《お前のコート貸せよ》という副音声をのせて。逆らってはいけないと判断したおれは、コートを灰原さんの頭に被せた。その時間、僅か0.5秒。灰原さんは、キョトンとした表情から「......まあまあね。さすが子ども体温ってところかしら」と口角を上げる。「かわいくねェガキ......」と悪態をつくと、「そっくりそのまま貴方にお返しするわ」と返される。くっ!語彙力の差がここに......!江戸川君に「灰原もテム君も落ち着けよ」と宥められ、歩美ちゃんに「駄目だよ、テム君。哀ちゃんと仲直りしたばかりなのに!」と訴えられたおれは引きさがるしかなかった。口で灰原さんに勝とうなど百年早かった......
江戸川君が遺体を発見するまでの間、おれは子どもたちから世間話という近況報告を受けていた。簡単にまとめるとこうだ。
ベルツリー急行でね、安室さんにテム君のこと聞かれたんだ!
............What?なんだって?
子どもは正直者とはよく言ったものだ。そして残念なことにおれはこの子たちの素直さとお喋り気質を見落としていた。彼らからの話で「コナン君が誘拐されたんだって」やら「ポアロのお兄さんが警視庁にいたんだ」やら、状況を把握したのは他でもないおれだったのにな......その情報源がまさかあちらさんにも伝えていたとは......策士、策に溺れるとはこういうことか......
ガッデム!!
あぁ、なんということだ......現実逃避したい。そういえば、博士が宅配でケーキが届くとか言ってたな......もしかしたら、ここにあるかもしれない。持ち物確認の輪から抜け出して、【阿笠博士様】と書かれた箱を発見。しっかり【ケーキ】と記載されていて、にんまりする。その最中に元太君に見つかって、一緒にケーキを食べた。すでにカット切りされてあり、苺やブルーベリーで彩られたそれを堪能する。
すると、たんこぶをこさえた江戸川君に見つかってしまった。
「テム君も持ってるものをオレの前に出して―――って、何サボってんだ、おめーら。」
「サボってんじゃねェ、むさぼってんねん。腹が減っては戦はできひんがな」
ガゴン!
共犯者の元太君とともに制裁を加えられた。ブライトさんにも殴られたことないのに......
「二人とも食意地が張りすぎですよ」と光彦君にまで呆れられた。残りのケーキを皆に配って、ゴソゴソ作業している江戸川君をみて、おれはやっと重い腰をあげた。