マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

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ふわ~あ。大きなあくびを手で覆い隠す。やれやれ、やっと授業が終わった。ここしばらく作業に追われてたから、寝不足気味だな......窓の方へ視線を向けると、江戸川君がベンツに乗り込んでいた。しかも運転席には知的眼鏡の外国人が座っている。白昼堂々と、誘拐か?と疑うが、高級車を所有する誘拐犯(仮)がお金に困っている様子に見えない。

 

 

ウチは一般家庭とは言いがたいが、母さんはマーキュリーのコメット乗り回してたし、かの有名な泥棒一味に至ってはカーチェイスの末、乗り捨てだ。阿笠博士の愛車はビートル、この前なんてポルシェを目撃した。......まったくコナンワールドの大人たちは何処にそんなポンポンと車を買うお金があるのやら......金銭感覚にびびる。あのベンツの所有者、ろくでもない仕事をしているのだろうか?

 

 

周囲を警戒するように乗り込んだ江戸川君は、まるで密会するような......ここまでの様子を見て、ハッ!となって気付いた。これ、センテンススプリング砲の現場なのでは!?密会現場と車のナンバーを証拠に抑え、スマホをしまう。今時のスマホガメラはシャッター音が聴こえないんだよな。わるいな、江戸川君。先に謝っておく。

 

 

ガヤガヤとする教室のなかで少年探偵団のキッズが「車でお迎えでしょうか?」「きっと探偵事務所のおじさんだね!」と窓ぎわに集まっていた。あの車でお迎えなんて帝丹小学校に金持ちの坊ちゃん学校疑惑が浮上する。それに眠りの小五郎さんは迎えに来るというより、パチンコをする姿が想像できる。

 

子どもたちに混じって、灰原さんが言う。

 

「違うわ......あの車はベンツ......あの探偵がそんな高い車レンタルしないんじゃない?」

 

 

灰原さんがそう指摘するならおれの見立ては間違いない。怪しい人物と江戸川君の組み合わせなんてろくでもない事案だな!!沖矢さんしかり、西の高校生探偵しかり、経験則でわかる!!

 

灰原さんは意味深におれに問いかけた。

 

「江戸川君、貴方に引っ付いてお喋りしてたのにね......それどころじゃない状況なのかしら」

 

その通りだった。あのルパンのなんちゃって沖矢さんの件からヒヤヒヤと身構えていたのに、拍子抜けするくらいスルーされた。探偵の言葉遊びに付き合わされると思い、過去の江戸川君の黒歴史を漁って対応しようと動いていたが、それは使うことがなかった。

 

【口癖はバーロー】

【困ったときは『ちょっとトイレ』】

【自己紹介で『探偵さ』からのどや顔】

 

書き出したらキリがない。工藤新一が高校生探偵として名を世間に馳せてからの新聞を取り出すと、でてくるでてくる、黒歴史。この無駄となったメモたちはオトンにでも流しておこう。いじり程度にはなるはずだよ、パパ(笑)

 

そんなこんなで、ここ暫くの江戸川君は焦った顔で何かを隠そうと躍起になっているみたいだった。まるで、バレてはいけないことが見つかって慌てているみたいに。江戸川君は授業中に小林先生に注意されるくらい追い込まれている。キッズたちもタイミングがわるいせいか、なかなか接触できなかった。

 

そうした経緯で近頃の少年探偵団の活動もできていない。だから歩美ちゃんたちはむくれた顔をしていた。そして、今日は光彦君が【ルパン日本上陸か!?】という雑誌の切り抜きの記事を見つけた。だが、肝心の江戸川君はざっと記事に目を通したと思えば、「おめーら、遊びはほどほどにしろよ」と帰ってしまった。

 

あの江戸川君が。

 

泥棒を前にして。

 

 

いつもなら信じられないことだ。よほど、危険事態であると察せられる。黒の組織関連なのか......でも、この記事に書かれてるのはおおよそガセだから、早々に見切りをつけたのかもしれないな......どういう思考回路なのかわからないが、記事をみて問題ないと判断したのだろう。大きな見出しのわりに脚色をつけ、盛りまくったガセ内容にげんなりした顔をしていた。彼の中にも優先順位がある。

 

以上の江戸川君の行動から判断すると、おれは避けられているというかむしろ――――

 

「......遠ざけられてる?」

「そうみたいね......貴方も、私も。......あの人が言ってた“領分”から外れたところで起こっている何かから......」

 

 

ボウヤには大変興味が湧くが、

ここから先はこちらのエリアだ。

君の領分じゃない.........

 

 

いつだったか、そう沖矢さんに告げられた言葉が脳裏に浮かぶ。フッと思い出して笑うと灰原さんは怪訝そうな顔をする。

 

廊下を歩く先頭の三人はというと、

 

元太君は「またコナンのやつ、一人で」と不満そうに、

 

光彦君は「そうだ!僕たちでルパンを捕まえましょう!」といいことを思い付いたとばかりに、

 

歩美ちゃんは「コナン君なんてしらないんだから!!」とやる気に満ちていた。

 

三人のそんな様子をみて、何でもない、と肩をすくめると、灰原さんは静かな声で言った。

 

「あれは前に見たFBIの車。私に何も注意を促さないってことは......そうね。例えば、貴方の保護者の悪巧みだったりして」

 

......なるほど。遠目でよく見えなかったけれど、江戸川君の密会相手はジョディ先生ということか。そういえば、ルパンが騙された女の名前はジュディだったっけ。所謂、彼はかわい子ちゃんに目がない、簡単にいえば、女好きの癖がある。それが完全に裏目に出て、ジュディという美女に貢ぎまくった挙句、残ったのは 3億ドルという莫大なクレジット(ルパン名義)の借金。オトンと一緒に冷めた目でルパンを咎めたのは記憶に新しい。

 

悪巧み......灰原さんのレーダーはあながち間違ってはいない。それとも歩美ちゃんが言ってた女の”かん“なのか。おそろしいな......でも、江戸川君は、本当にそれどころじゃないらしい。これは想定していたよりもうまくいきそうだ。にやける口もとをおさえて、苦笑いにとどめる。

 

 

「ご忠告どーも」

 

「別に......ただ、あの子たちがルパン逮捕に躍起になっているみたいだから、余計な手間かけさせないで」

 

それは、灰原さんなりの「心配してる」という意味での解釈でよろしいのでしょうか?

 

 

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