マダオ戦士Goddamn 作:はんがー
車が走り出した方向からルートを計算すると、江戸川君とジョディ先生は神社へ向かったようだ。「ルパン逮捕するぞー!」「「おー!」」と言いながら子どもたちは手始めに情報収集を始めた。その手始めに、ジョディ先生に聞いてみよう!という持ち前の行動力で神社へ出発した。「ちょっと、あなたたち!」と慌てて追いかける灰原さんは彼らのお守り当番だ。
さすがに高級車相手に子どもの脚では分が悪く、あっという間に差が開いた。そこで以前拝借した追跡眼鏡を取りだし、「そっちを右、信号渡って」と指示を出す。
持っててよかった追跡眼鏡。(未返却)
脳内では盗んだ眼鏡で走り出す~と流れている。非行に走ったわけでもなく、グレたわけでもない。灰原さんの視線が突き刺さっているだけだ。ちゃ、ちゃんと後で返すから……!
遅ればせながら、神社に到着。江戸川君とジョディ先生は「「え?」」と二人して文字通り目が点になっていた。その二人を前にズラリと並んだ我らが少年探偵団。江戸川君は「おめーら、どうして此処に......?」と困惑気味である。その疑問に灰原さんが答える。
「公園や神社ってスパイとかがよく情報交換に使う場所だっていうし......まあ、それと同時に公安警察も目を光らせてある場所だからせいぜい気を付けるのね」
キッズたちは何のことやらピンときていなかった。灰原さんのその言葉にはどこか棘があるが、心配しているようにも聞こえる。なるほど。これが阿笠博士が言ってたツンデレか。
江戸川君たちが意味深な大人なやり取りをしている間、おれは少年探偵団と和やかに話をしていた。話題はペット。掴みはOKだ。
「公園で拾ったの?テム君」
「うん。ペットというより家族みたいな......なんか歳の離れた兄弟ができたっていうのがしっくりくる」
「今度みせてくれよ!」
「う~ん......家は犬飼えないからほぼ放し飼いだしなァ」
「公園で飼ってるんですか?」
「初代は一時期、家でね。でもいなくなっちゃって......二代目は公園で見かける」
「そっか......名前は何て言うの?」
興味津々と食いついてくる子どもたちにフフンと名前を告げた。
「マダオ」
対する子どもたちの反応は......
「えー!センスないよ!」グサッ。
「それはちょっと可哀想です......」グサッ。
「まだ【てむてむ】がマシだったぞ」グサッ。
ガ、ガッデム......!
正直すぎるリアクションに雷に射たれたような衝撃を受けた。おれのネーミングセンスは母さん譲りだったらしい......
***
話が落ち着いた様子を見計らって、少年探偵団はジョディ先生に突撃する。
「え?ルパン三世?......たしかに以前から日本で目撃情報が相次いでいるけど」
三人寄って集まってコソコソ話し合ってる。「やっぱり!」「博士ン家行って、作戦会議しよーぜ」「そうですね!」......思いっきり筒抜けだけどな。そんな彼らをハァとため息をついている幼児化組。帰り際にチラリとジョディ先生に視線を向けられた。
「......あの子が組織の......」
「うん。バーボンの関係者かもしれないんだ。だから――」
「OK. COOL KID.」
後方では和気あいあいとするおれたちをながめ、そんな会話がなされていた。......思いっきり筒抜けだけどな!(2回目)この眼鏡でズームアップすると口もとの動きからだいたい察することができる。こんな機能までつけなくていいのに阿笠博士......バーボンと聴こえて一瞬、ブルッと寒気がしたのは気のせいだと思いたい......
***
ここ最近ルパンは沖矢さんの姿で銀行の視察を繰り返し、その最中に銀行強盗に巻き込まれたらしい。そのときに江戸川君と少年探偵団のキッズ、それからジョディ先生の姿を見かけたそうで......その経緯はおれがオトンにこの前のセンテンススプリング砲の写真を見せたときに発覚した。そう言えば元太君がお年玉の行方を確認しに行ったって言ってた......なるほど、合点が行った。
......まじか。そのときから沖矢さんの姿になっていたのか......あんぐりと口を開けるおれはとんだマヌケだ。大学院生という肩書きは、昼間からブラブラしてても変じゃないから好都合と歩き回っていたらしい。学生をなんだと思っているのやら......
宝の保管設備や逃亡の経路を踏まえ、狙いの銀行を決定した。依頼者に盗品を渡して任務完了という流れ。いたってシンプルだ。
おれがすることは、厄介な名探偵の注意を引くこと。これに限る。ヴェスパニアで事件吸引機こと江戸川君と神出鬼没の泥棒が出会って好き勝手した結果、ヴェスパニア国内王室は荒れ、腐敗貴族はお縄つき、ミラ王女が即位した。それは良いことなんだろうけども......
怪盗キッドの予告のたびにお祭り騒ぎになる始末なのに、ルパンと江戸川君だぞ?正直、何が起こるかわからない。これ以上の大惨事には御免だ。首都機能全滅なんて困る。
「米花町は江戸川君のホーム。アウェイはおれたちの方だ。わざわざ自分の存在を仄めかす真似しなくても」
「それでいいんだ。ルパン三世が本当に動くのか大概の人間は半信半疑。誰も本気にしちゃいねェさ......あのキッドキラーだとかいうガキンチョだってな」
余裕を含めた口調だが、怪盗キッドにちょっと対抗心燃やしてるのをおれは知ってる。切っ掛けは不二子さんのキッド様発言から。
「だいたい【可羅馬】なんてみるからに胡散臭い雑誌名だし、何処で買ってきたんだよ......」
雑誌を手に取り、パラパラめくってみる。
この【可羅馬】は所謂、知る人ぞ知るマイナーな雑誌。パッと目を通してみたところ、裏社会のゴシップネタが多く、業界誌っていうらしい。らしい、というのはおれはこれを初めて見たからだ。そしてこれは読者層も堅気の人間じゃないので、ページの後方には【暗殺請け負います】やら【この顔みたら〇〇へ】などと物騒な広告が並んでいる。ユーモアなのか知らないが、まったく笑えないから!!けれども、それがこの雑誌の売りだ。検閲をどう潜り抜けて出回っているのか不思議すぎる......
本来なら光彦君の手に渡るなんて、あり得ない。なら、どうして光彦君が持っていたのか?
おれが忍び込ませたからである。
江戸川君の反応を見るために利用させて貰った。おれが直接持ってくると、ほぼ100%怪しまれる。しかし少年探偵団ならば警戒心はぐっと下がる。
少年探偵団は専用の依頼ポストがある。元太君の下駄箱には【難事件大募集!! 1年B組少年探偵団】という紙が貼ってある。第一発見者の元太君は漢字が読めなくて断念し、代わりに読んだ光彦君が中心となってルパンの話題が広がった。こう言ってはなんだが、少年探偵団ならば子どものいたずらで済まされるだろうし、あわよくば江戸川君の反応を確認できる。
「馴染みの記者に宛があってよォ~」とヘラヘラ笑うルパンに彼の顔の広さにはいつも驚かされる。
ハサミで切り抜いた後のぽっかりと穴が空いた枠をなぞり、パタンと閉じる。
「まァ、これでハッキリした......肝心の江戸川君は手が離せないくらい忙しい。
事件が彼を呼ぶのか、彼が事件を引き寄せるのか......謎を追い求める姿は頭にぶら下がった人参を求める馬みたいだよ」
おれは人参きらいだけど。
***
翌朝、ゴミ出しをしていると、ご近所さんもぞろぞろ捨てにやってくる。無難に「おはようございます」と挨拶をしていると、一人のおばさんが昨夜工藤邸のまわりを複数の車が囲いこんでいたと話し出した。
「工藤さんのところ、何があったのでしょうね」
「ご子息が帰ってきたのかしら?」
「今は大学院生が居候しているそうよ」
「そういえばお隣の阿笠さんの防犯グッズを尋ねてきた男がいたわ」
「ウチにもきた。童顔の男が探偵の依頼(?)で......何か事件でもあったのかしらねェ」
「やだ、いつものことじゃない!それより、工藤さんといえば昨日のマカデミー賞みた?」
「あぁ、みたみた。だけど臨時ニュースでルパン三世が―――」
人が集まれば盛り上がる噂話。大量の弾丸を一斉に発射し続けるかのように噂は飛び交う。......弾幕薄いぞ!何やってる!もっと言ってやれ。(煽り)
おれが立ち去った後も井戸端会議は続いていた。ご近所の方は見ていないようで結構みているんだな......SNSの情報拡散の縮図だ。スマホのアプリで今朝のネットニュースのトップをみる。
おれの口は自然と弧を描いていた。