マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

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ヴェルファイアを挟んでむこう側には数人のマフィアがいる。奴らは、威嚇射撃に我武者羅にうちまくっていた。

 

残念ながら、不二子さんが持ってきた銃器――ロケットランチャーとかサブマシンガン――は取り出せない。いつの間にか、ちゃっかりハーレーとともに持っていってた。

 

 

......思い返せば、べつにこれがはじめてじゃない。あるときは、とっつぁんに情報を流されルパンに抱えられながら追いかけ回され......

 

またあるときは、不二子さんに連れられた先で大金持ちの富豪相手に詐欺紛いのことをして(不二子さんは富豪の婚約者、おれは富豪の養子に)......言葉たくみに男を手玉に取る姿はおれの情緒教育にいろんな意味で影響をあたえた。

 

 

いつまでもグチグチ言っても仕方ない。

 

 

なるべく音をたてないようにそっと所持品を取り出す。ドアに身を隠し、セッセッと作業を進めていく。ドドドドという銃撃音をBGM代わりに身をかばう。まったく夜中だというのに近所迷惑だな。

 

 

 

取り出すのは、ミネラルウォーターと、灰原さん特製なんちゃってアポトキシン(睡眠薬)

 

灰原さんに回収されたはずのそれは、ここに到着したときのゴタゴタの混乱の際に拝借いたしました。

 

プロテイン作りの要領でボトルの中に薬を入れて、キャップを閉める。シャカシャカと揺らしていくと、みるみるうちに薬は水に溶けていった。

 

 

 

そして、取り出したのは、阿笠博士と共同開発したウォーターガン!

 

ただのウォーターガンではない。博士とモデル設計から機能性まで、議論しあい、ついこの間、完成した水鉄砲である。建前上、ルパンを捕まえるために少年探偵団に召集されたが、阿笠博士からこれの完成を聞いたため、受け取りに来た次第なのである。

 

 

限りなく原作モデルに近づけたビームライフル型。引き金式なのでウォーターガンの機能としてはシンプル。黄色いスコープとフォアグリップが動くのが特徴だ。少年心をくすぐる一品だ!

 

 

水(睡眠薬入り)を入れて、準備万端!

 

 

奴らの銃撃が止んだのを見計らって、奴らの位置を確認!

 

 

「ひとつ」

 

シュタッと身をのりだし、口もと目掛けて発射。ごくんと喉が動いたのを確認して

 

 

「ふたつ」

 

 

そのままヤツの隣に向けて発射。

 

 

「みっつ......」

 

 

仲間の異変に気づいた三人目がこちらを振り返ったと同時に、ヤツの口にはすでに水が勢いよく吸い込まれていた。

 

 

 

血は流さず、穏便に解決。はじめて使ったにしては、なかなかの功績だ。

 

このビームライフル型ウォーターガンは片手連射しやすく、水鉄砲サバゲーでは半身になりながら高機動力で相手に肉薄できる。ちなみに言うとだいたい15発で弾切れになる。

 

 

ひとまずこの場の制圧を終えた。工場のある建物を見ると、そうそうたるメンツが並んでいた。無抵抗のFBIのジョディさん、キャメルさん。やれやれと言った様子でケースを差し出すルパン。オカンとオトン。そして、人質にされている江戸川君......

 

 

おれの場違い感が半端ない。

 

アラン・スミシーと名乗る男は江戸川君に銃を突きつけ、車へ乗り込んでいた。

 

様子をみると、どうやら、車のタイヤはパンクさせられ、おまけに人質をとられ、誰も動けないらしい。

 

 

マフィアのリーダー格のふくよかな男は、挙動不審に目を血走らせている。

 

 

その男の背後から鋭い視線を感じた。スコープで確認すると、赤井さんがライフルを構えていた。だが、この状況で撃とうにも撃てない。

 

 

ちらりとルパンを見ると、ウインクされた。......はいはーい、わかったよ。まったく今日はなんて騒々しい一日なんだ。

 

ふくよかな男の前におどりでて、ウォーターガンの照準を合わせる。その隙にアラン・スミシーが江戸川君を人質に車へ乗り込んでいった。それに気づいた男が「おいッ!」と声を荒らげるが、彼は取り残されてしまった。「クソ......アイツも“探り屋”も俺を騙しやがって......!」と悪態をついている。

 

「COOL KID......!」とFBIの連中が切羽詰まったように発する。......江戸川君の方はルパンがついてるようだし、あっちの方面はたしか不二子さんと灰原さんがいたはず......うん、大丈夫、大丈夫。江戸川君だし。まずはこのルチアーノからだな。

 

 

「......ガキが一丁前に持ちやがって......!“ガンマンごっこ”か?」

 

「じゃあ、オジサン、ごっこ遊びしようよ」

 

明るい声で「おれからね!」とおれの背後に近づこうとした残党()に撃ち込む。残党はパタリと膝をつき、崩れていった。ルチアーノは目を見開いて、口をパクパクさせながら、「ほ、ほんものなのか......?死んだのか!?12人の部下をこんなガキが殺したのかッ!?」と声を震わせている。それにおれはただただニッコリ微笑む。

 

 

 

 

「安心しなよ。なんにも苦しくない。よくぐっすり眠れるだけだ......あのお仲間たちみたいに......」

 

 

 

 

男――ルチアーノ――は倒れている(眠っている)仲間をみて、ますます顔を青白くさせた。察するに、こんな子どもが仲間を殺したと勘違いし、おれに恐れを抱いている。

 

おれはニヤァと気味悪く笑い、わざとビームライフルの音をたて、最終通告を告げた。

 

 

 

 

 

 

「永遠に」

 

 

 

 

 

 

 

ルチアーノは気絶してしまい、泡を吹いてたおれてしまった。口からは水が溢れている。

 

 

 

「―――なんてね。そう簡単に楽になれるわけないだろ。喜べ、目覚めたら豚箱ン中だ。って聞こえないか」

 

 

 

 

パチパチとルチアーノの頬を叩いていると、同時に控えていた捜査官が「か、確保ー!!」と、雪崩のようにワッと取り囲む。潰されないように距離をとる。捜査員の足をすり抜けた先には、双発ジェット輸送機がすでに飛び立ったあとだった。

 

 

 


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