マダオ戦士Goddamn   作:はんがー

8 / 40


おれがスタート地点へ戻ると、なんと殺人未遂事件が発生していた。......よかった、今回は未遂なんだな......ホッと一息ついて、この物騒な物をどう処分するか考えていた。

 

 

そして導きだした答えは海へ放り投げることだ。さすがに人前でそんなことをするのは憚れるので、さっきのかくれんぼでみつけたボートが設置している場所へ向かった。ついでにこのままトンズラしようかな.........(遠い目)

 

 

おれがエンジンをかけようとすると、上からドタバタと音が聞こえる。いきなり、男が階段をかけおり、「どけ、ガキ!」と、おれを後ろのボートへ放り投げた。おれは咄嗟に体をひねり、怪我をしないように着地する。着地の拍子でグラッとボートが傾いた。「何すんだ、オッサン」と文句を言おうと向き合ったら、ヤツはそのままボートを発進させた。

 

おれは憤慨しながらエンジンをかけ、ハンドルを握る。すると、今度は江戸川君が階段をかけおり、そのままおれの隣に乗り込む。

 

えェェ!?なにごと!?

 

江戸川君は切羽詰まった様子で、おれは「犯人を!」と急かされる。後ろには少年探偵団が「お前らだけにいいとこ持っていかせねェぞ!」と乗り込んできた。灰原さんは「まぁそういうことよ。.........誰かさんは何か隠し事しているみたいだけど」とチラリとおれに視線を向けた。こわ、灰原さんの謎のレーダー。対黒の組織にもそうだが高性能すぎる。

 

おれは冷や汗を流しながら「君たちはおれを少々誤解している......!」と、弁明しておいた。だって、ここで無言だったら肯定したも同然。そりゃあ、さっきまで盗聴器を海に捨てようと企てていたけど.........別にやましいことじゃない、よね?これはおれの心労を低減するためだし!?

 

必死になりすぎたせいか、眉を吊り上げ、開き気味の瞳孔で凄んでいたらしく、江戸川君は「う、うん」と若干引いていた。灰原さんは、「それより、早くしないと見失うわよ」と前方の犯人に視線を向ける。

 

そのまま子どもたちの気迫に圧され、言われるがままにおれはボートを操縦した。 

 

犯人は何とかおれらを振り切ろうとスピードを上げ、掘削施設の合間を縫って逃走する。だが、こちらも退くわけにはいかない。波の動きを注視し、卓越した操縦テクニックを駆使する。前回の反省で子どもたちが振り落とされないようにギリギリのラインで方向転換をする。そうして、遂に犯人に追い付いた。

 

 

犯人は俺たちに向かって、自白(逆ギレ)しはじめた。

 

 

「全ては計画通りだと思った!あとは証拠を消せばよかったんだ!おれが604号室へいったらすでになくなってたんだよ!!

 

おれが仕掛けた盗聴器が!!」

 

 

盗聴器と聞き、おれは「あ。」と思い出す。

 

それ、おれが回収しました。よかれ(物騒だ)とおもって。

 

 

「探し物はこれ?」

 

 

おれは片手でハンドルを握りながら回収した盗聴器を見せびらかす。江戸川君は「でかした!」と言わんばかりにさらに犯人を追い詰める。

 

江戸川君がボールを蹴りこむと盗聴器に動揺した犯人の脳天に直撃。最後に麻酔針を打ち込まれて気を失った。 容赦ねェ、江戸川君......犯人を気の毒な目でみて、心のなかで合掌しておいた。

 

 

その後は駆けつけた目暮警部たちに確保された。おれたちは「危険なことをしてはいけない!」と叱られた。そうだよ、大人はそういう注意するのが普通なんだよ.........事件現場にホイホイ子どもを入れさせずにちゃんと注意してくれ。光彦君に「ところでテム君はどこで運転を覚えたんですか?」と聞かれ、「ゲーセンのラピッ〇リバーにハマってたんだ」と誤魔化した。実際は保護者と同行したときに命の危険を感じて、必死に操縦方法を覚えた。その当時、後ろから「待ァてェェ!!」と手錠を振り回すベージュのトレンチコートを着た男がいたのは気にしないことにした。おれは、ナニモミテイナイ............

 

 

事件は終わりを迎えた。......かに思えたが、客船に仕掛けられた爆弾は次々と破裂し、被害は拡大していった。 最後には船はもう沈没を免れない状況にまで陥ってしまい、乗員乗客は避難を余儀なくされる。爆弾を仕掛けた犯人が判明し、事件はやっとこさ終息を迎えた。

 

 

すべてが終わっておれは気づく。これは劇場版だということに。なんでよりにもよって爆弾という普通よりも危険度が高いものに巻き込まれるのだろう。空を見上げながら考えても、誰も答えを返してくれやしない。日常に戻るかと思いきや、教室では江戸川君が待ち構えていた。

 

「どうやって盗聴器みつけたの?」

 

あぁ、それはこれを使って.........ガサゴソと取りだし、机の上におく。

 

「それって、FMラジオ?」

 

コクりと頷く。

 

「今時ラジオってアナログで古くさいかもしれないけど、ラジオって馬鹿にできないんだ。船の上じゃ、携帯電話使えないけど、ラジオは電波拾えるしね。震災のときなんて重宝されて、日本語がわからない被災者はラジオを使って情報を共有したんだ。わざわざラジオ局までつくってね」

 

珍しく、おれが流暢に喋るのを江戸川君は「へぇ、詳しいんだね」と感心した声で聞いていた。

 

「.........まぁ、母さんがジャーナリストだったから情報の重要性は口癖のように言っていたし、それに.........」

 

言葉をつまらせたおれに「それに?」と江戸川君が続きを促す。視線が下がり、口数が重くなるのを感じて、できるだけ無邪気な子どものように明るい声で言った。

 

 

「......それに、応用すれば盗聴器だって見つけられるんだ。江戸川君も気を付けてね」

 

 

ここで【何に】と言わないのはおれのやさしさである。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。