ゲゲゲのふしぎ通信   作:教室の主

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旧校舎の教室

 旧校舎の3階から、仲間の妖怪のみんながいる失われた4階へと、小学校を卒業してから初めて来た俺と美子は数ヶ月ぶりとはいえ、やっぱり会えなかった期間があったせいかそれなりに嬉しいと感じた。

「あんたたち、小学校を卒業したからもう来ないもんだと思ってたわ」

 大きなマスクをした女の人――アネゴさんからはそう言われたけど、俺たちが答える前に人の顔をした犬――人面犬のおっちゃんがすかさず口を挟む。

「ハッ、おいおいおい、んなこと言ってていいのか? 大輝、いいこと教えてやるよ。アネゴはな、おまえらが来ない間妙にそわそわしながら教室の入り口を見てはため息をついてたんだぜってうおおっ!? やめろアネゴ! 俺の首はそれ以上曲がらな――……」

「あんたたちも、なにも聞かなかったわよね? ねぇ?」

 アネゴさんが笑顔を浮かべて俺たちに聞いてくる。あ、おっちゃんが捨てられた……逆らっちゃいけないやつだなこれ。

「もちろんなにも聞いてないって! なあ、美子?」

「う、うん!」

 二人して頷くと、アネゴさんも納得したのか一歩後ろに下がってくれた。久々に出会った頃のような危険性を向けられた気がする。ま、まあ戯れっていうか、たぶん照れ隠しなんだよな。

「でも、確かに久しぶりだよね。僕たちからすればそうでなくても、二人にとっての数ヶ月は長いものだよね」

 人体模型のジンタは嬉しそうに話しかけてくれる。

 思えば、最初から友好的だったのはジンタとラビだけだったっけ。今も変わらず、初めて会ったときと同じ笑顔を見せてくれた。

「やっぱりうちの学校の人体模型とは違うんだね。ジンタくん見るとホッとするよ」

「そう? なんか嬉しいなぁ」

 照れ笑いを浮かべながら頭を掻くジンタ。

 この照れ屋なところも、褒められるとすぐに出るのは変わらない。

「ところで」

「翔太の姿が見えないんだけど」

「今日は来ないの?」

 トー・テム・ポールの三人が上の顔から順番に声を発する。

 俺と美子のように人間でありながら、妖怪のみんなと仲間でいる友達のことで、トー・テム・ポールを生み出した張本人。

「来ないよ。っていうか、翔太は学校終わってすぐ帰っちまってさ。今度は連れてくるよ」

「そうか」

「なら仕方ない」

「また家に行ってみようか?」

 いや、家に直接行くのは――周りの人たちにバレなければセーフか? いいや、翔太に任せよう。

 美子は美子で、二宮金次郎像の金ちゃんと仲良く話していた。

 あの二人はあの二人で、美子によって心が宿ったのが金ちゃんだからか、やっぱり仲がいい。金ちゃん自身、俺たちのこともよく守ってくれるし。

 って、あれ?

「ベンちゃんとリリムはどうしたんだ?」

 この場にいない二人の妖怪のことが気になったので聞いてみたら、

「二人はここ最近やけに妖怪が活発に動いているのが気になったみたいで、街の捜索に行くっていっちゃったんだ。リリムが乗り気になっちゃって、ベンちゃんがそのストッパーでついていくってね」

 ラビがそのように教えてくれた。

「ベンちゃん自らって、珍しいな」

「うん。なにもないといいんだけどね」

 そうか、二人とも……リリムがいるならきっと何事もなく帰ってくるに決まってる。

「だいじょうぶだろ。リリムとベンちゃんだぜ? あの二人がいて負けるかよ!」

「いや、戦いになるってことじゃないんだけど……まあ。大輝だしね。仕方ないかな」

 なぜだろう、ラビにバカにされた気がする。

 いや、きっと俺たちの知らないところで動いているんだろうし、多分、思っている内容と違うからなんだろうな。

「それにしても、ここは相変わらずって感じだな」

「あはは、ここはそう変わることがないからね。

 ラビが言うように、初めてここに来たときから大して変化が見られない。

 やっぱり主がなにかしら変えない限りは変わらないんだろうな。

「あら? 向こうから連絡なんて珍しいじゃない」

 教室内を見回していると、アネゴさんがスマホを取り出した!?

「アネゴさん、スマホ持ってたの!?」

「妖怪なのにハイテク!?」

 俺と美子が驚いていると、アネゴさんは手に持つスマホを掲げてくる。

 うわぁ、もしかしなくても誰かと連絡を取り合ってるよ。

「もしかして、人と連絡を取り合ってるの?」

「まさか。人と連絡なんてしないわよ。この子は……まあ、友達かしら? もちろん、妖怪のね。私がここに来る前からの知り合いよ。機会があったら紹介してあげるわ。機会があったらね」

 それは言外に機会がないって言ってるようなもんじゃないのかな。

 妖怪の間でも連絡を取り合うっていうか、スマホで連絡ってことはその相手も持ってるんだよな、スマホ。

 妖怪って一体……。

「なんだか、妖怪の印象変わっちゃうね」

「だよな。いや、身近に感じれていいことなのかもしれないけどさ」

 美子もこの展開には追いつけていないのか、呆然としながら会話が続く。

「アネゴさんが持っているってことは、もしかしてみんなも?」

「花子さんも!?」

 みんなと日頃から話せるかとちょっとした期待を持って聞いてみたところ、花子さん以外のみんなが首を横に振った。

 トー・テム・ポールは確かに使えないかもしれないけど……全滅?

「花子さんは……」

 窓際に座っていた反応を示さなかった花子さんは、

「持ってないよ」

 短い一言でバッサリですか。

 アネゴさん以外とはダメか。いや、この中の一人でも連絡が取れるとわかったのは大きいことなんだけど。

「アネゴさん、連絡先交換しましょう!」

「はあ……わかったわよ。ま、まあ? あんたたちと連絡できるのも悪くはないし」

 美子が既に行動に移してるし。

 なんだかんだいって、いいことだよな。

「ほれ見ろジンタ! あいつの特技、ツンデレだぞツンデレ!」

「なんですって!?」

「あ、やべ……」

 おっちゃん……懲りてないなぁ。

 でも、前のように、みんなで話せる日々が続きそうでよかった。

「って、あら? 本当に今日は珍しい相手から連絡が続くわね。3階から4階に続く階段での怪異? そんなものあったかねぇ……ん? 3階から4階って、ここなんだけど。まったく、どういうつもりだか。」

 おっちゃんへの制裁が終わったらしいアネゴさんが、おっちゃんの上に座りながらスマホを弄る。

 珍しい相手って、そこまで頻繁に話してない人ってことだよな。アネゴさんの友達……うん、正直すごい気になるな。

「ねえ、アネゴさん。その相手って誰?」

「んー? なに大輝、大人のお姉さんの秘密が気になるってこと? それなら、私と一緒に今度会いにでも行ってみる?」

「え!?」

 思ってた反応と違うんですけど!? アネゴさんならもっとこう、関係ないでしょくらいは言ってくるものかと!

 これどう反応するのが正解なんだ!?

「うふふ、慌てちゃって。成長してるかと思えば、まだまだこどもね」

「おいおいおい、あんまりからかってやるなよ」

 アネゴさんとおっちゃんの言葉で、からかわれたことに気づかされた……。

「まあ、言ったことは本当だから、気になるなら紹介だけはしてあげるわよ。妖怪でよければね」

 でも、そっぽを向いたアネゴさんが、最後に小さく呟いた言葉は、俺の耳にしっかり届いていた。

 

 

 

 

 私――犬山まなは、猫姉さんに連絡してからあとは待つだけって思って旧校舎の前で来てくれることになった鬼太郎とねこ姉さんを待っていた。

 スマホを握りしめていると、来てほしかった人たちは、カラスに運んでもらいながら空から来てくれた。

「鬼太郎! ねこ姉さん!」

「まな、どういうこと? 旧校舎に妖怪がいるって」

「そう、大変なの! 旧校舎の3階から4階に繋がる階段を登ったと思ったら二人とも消えちゃって!」

「落ち着くんだ、まな。それで、その子たちは旧校舎のどこにもいないのか?」

 鬼太郎とねこ姉さんの二人に落ち着くように言われて、深呼吸をしてから続きを話す。

「そうなの。旧校舎も見て回ったんだけど、どこにもいなくて。学校の七不思議の中には階段に纏わる話はなかったと思うんだけど……」

「学校にいるのは、なにも七不思議の妖怪たちだけじゃない。学校には多くの妖怪があるんじゃよ、まなちゃん」

 鬼太郎の髪の中から出てきた目玉のおやじさんがまたひとつ教えてくれる。

 七不思議以外と言ったら、学校の怪談かな。その中なら階段に関わる話もいくつかあったはずだけど……。

「3階から4階に繋がる階段……なんか、誰かから聞いたことがあるような」

「知ってるのか、猫娘」

「教えて、ねこ姉さん!」

 なにかを思い出そうとしているねこ姉さんは、うんうんと唸りながら難しい顔をする。

「あ、そうだわ!」

 けど、なにかを思い出したのか、途端にスマホを操作し始めた。

 ま、また妖怪の知り合いかな?

「古い知り合いにまなの話と似たようなことを言っていた相手がいるの。あいつならなにか知ってるかも。連絡してみる!」

「さすが、ねこ姉さん!」

 良かった、これで手がかりが掴めるかも!

 

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