遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS
<< 前の話 次の話 >>

17 / 22
日本ダービーの恩恵

 

 

 

 さて、日本ダービーも終わり、ひと段落ついたチームアンタレス。

 

 日本ダービーを制したミホノブルボン先輩を祝して祝勝会も今回はしっかりと行った。

 

 

 祝勝会という名の地獄トレーニングをな!

 

 

 あるわけないでしょう、祝勝会なんて、あったら奇跡ですよ。代わりに坂路を軽く四桁登りました。

 

 千から先は覚えていません、とりあえずひたすら汗を流したのはうっすらと記憶には残っています。

 

 祝勝会なんてあるわけないよねー、期待してもやっぱりそうだよねーと私は思っていました。

 

 しかしながら何と今回は万に一つ起こりえない奇跡が起きたんです。

 

 それは、なんと、ミホノブルボン先輩の日本ダービー制覇を記念して、チームアンタレスは慰安旅行に行く事ができるようになりました。

 

 それも南国のリゾート地という、素晴らしい場所にバカンスに行く事になったのです。

 

 というわけで、私は姉弟子であるミホノブルボン先輩を連れてショッピングモールに買い物に来ておりました。

 

 ウマ娘になってから、もう何年にもなりますが、まさかこんな日が来ることになろうとは思いもよらなんだ。

 

 私も普通のウマ娘デビューをする日がやって来たのですね! ヌイグルミという役職の他にようやくウマ娘として可愛い水着を選んだりショッピングを楽しめる日が!

 

 私はミホノブルボン先輩の手を引きながら上がりまくるテンションを抑えられないでいた。

 

 

「さあ! 早く行きましょう! 早く!」

「…そんなに慌てずとも無くなりませんよ」

 

 

 そう言いながらあまり乗り気ではない姉弟子。

 

 普段から女子力に関してそこまで関心がないからだろうか? 確かに姉弟子は大体トレーニングしてるか、坂路登ってるのだが、それにしてももうちょっと女子力はつけた方が良いと私は思う。

 

 少しはナリタブライアン先輩を見習ってください、とはいえ、あの人もお化けを怖がるのと私をヌイグルミ代わりにして寝るくらいだけども。

 

 そうこうしているうちに私達は水着コーナーへやってきた。

 

 可愛い水着が色とりどり、ほうほう、これは選び甲斐があるというやつではないだろうか?

 

 さて、早速水着を選ぶとしましょう、どれにしようか悩みますねぇ。

 

 と、私がここで姉弟子にどの水着が可愛いかと聞こうとして振り返ると、そこには、既に姉弟子の姿が見当たらなかった。

 

 そして、私はテクテクと隣にある筋肉トレーニング用品のコーナーの前まで歩いて行き、目を輝かせている姉弟子の姿を見つけてしまった。

 

 ちゃうねん、そっちやないねん、もう筋力トレーニングはええねん。

 

 ここで、いい感じの荒縄を見つけたとばかりに軽く引っ張るミホノブルボン先輩の姿に私は顔を引きつらせるしかなかった。

 

 そして、姉弟子はいい笑顔を浮かべたまま、水着コーナーにいる私にこう告げはじめる。

 

 

「妹弟子よ、これを窓に張り付けて腕の力だけで登るトレーニングなんてどうでしょう! 画期的だとは思いませんか?」

「WBCの世界チャンプでも目指す気ですか貴女は」

 

 

 そう言いながら、私は荒縄をビシビシと引っ張っているミホノブルボンの姉弟子に突っ込みを入れる。

 

 それ、ボクシングの世界王者とか消防士とか軍隊の人がやってるトレーニングでしょうが。

 

 レース中にでも隣を走るウマ娘にボディブローをかますつもりなんですかね? 貴女の筋力で殴られたら本当に轟沈しますよ。

 

 私は荒縄に目を輝かせている姉弟子にため息を吐くしかない、駄目だこの人、早くなんとかしないと。

 

 すると、姉弟子はまた新しく何かを発見したのかすぐにそれに近寄るとキラキラと目を輝かせてまたそれを私に見せてくる。

 

 

「見なさい! 妹弟子! これは素晴らしい! レッグプレスマシンですよ! これは欲しい…店員さんこれください」

「いや何しに来たんですか?! 私達、水着買いに来たんですよ!? 姉弟子!」

 

 

 そう言いながら、だんだんと水着コーナーから遠ざかっていく姉弟子の腕を掴んで再び回収する私。

 

 あー! とか姉弟子が声を出していたが、知りません、脳内は相変わらず筋肉モリモリマッチョウーマンなんですねこの人は。

 

 私はとりあえずミホノブルボン先輩を水着コーナーへと引き戻した。

 

 さて、今日は水着を買いに来たのだ。クッソ重いダンベルとかを買いに来たわけではない、そういうわけで、水着を選ぶわけなんだが、これまた姉弟子のチョイスは酷かった。

 

 まず、姉弟子が私に見せて来たのはこれだ。

 

 

「妹弟子よ、この水着はなんとあの競泳選手が使っているという競技水着みたいですよ! ふむ、遠泳にはこれは丁度良いですね」

「ダメです」

 

 

 遠泳用のスポーツ水着である。可愛さもクソもあったもんじゃなかった。

 

 慰安の為のバカンスやぞ? 遠泳ってどこ行くねーん。

 

 無人島にでも泳ぎ行くつもりなんでしょうかねこの人は。

 

 私は即刻却下した。当たり前である。

 

 そういえば、多分だが、私が知ってる中で姉弟子が着ている可愛い服や衣装というのは今の今まで見たことがない。

 

 だいたい、ジャージか身体が動きやすいスポーツ着ばかりである。

 

 唯一、可愛い衣装かな? と思ったのはあのSFチックなシン○ォギアみたいな勝負服くらいなもんだろう。

 

 誰がデザインしたのかはしらないが、私がそれをネタにして姉弟子をからかったらプロレス技をかけられて身体中が軋み、悲鳴という名の絶唱をしたのは記憶に新しい。

 

 見た感じ適合者っぽいんですけどね、よくレースに勝ってウイニングライブしますし、姉弟子。

 

 でも、歌わず筋肉言語で何事も鎮圧しそうだから不思議、歌とはなんだったのか、もはや、付録みたいなもんですね、はい。

 

 そんな感じで、ミホノブルボンの姉弟子と買い物を楽しんでいると、ここで、私に声がかかる。

 

 

「おー、アフちゃんじゃないか、奇遇だな」

「ん…?」

 

 

 そうして、聞き覚えのある声を掛けられた方に振り返る私。

 

 私は目の前に現れた私服姿の二人のウマ娘の姿に目をまん丸くした。一人は分かる、そうナリタブライアン先輩だ。

 

 もう一人の眼鏡を掛けているウマ娘は初対面だ。芦毛の綺麗で長くふわふわした髪にいかにも真面目そうなウマ娘である。

 

 すると、ミホノブルボン先輩は眼鏡を掛けているウマ娘に話をし始めた。

 

 

「ビワハヤヒデさん、こんにちは」

「あぁ、ミホノブルボンさん。今日はお買い物ですか?」

「まぁ、そんなところですね、貴女達は?」

「似たようなものです。この娘がバカンスに同行するので水着を買いに来たんですよ」

 

 

 そう言いながら、笑みを浮かべて話をするミホノブルボンの姉弟子とビワハヤヒデと名乗るウマ娘、その瞬間、私は固まってしまった。

 

 えっ!? ビワハヤヒデってあれだよね! 顔がデカイ事で有名な! ブライアン先輩と一緒に歩いてたからもしかしたらとは思ったけれど!

 

 ビワハヤヒデ先輩の世代と言えば、『BNW』というビワハヤヒデ先輩を入れた三銃士的な人達が有名だ。

 

 

 クラシック三冠路線では、ウイニングチケット先輩、ナリタタイシン先輩と共に、それぞれの頭文字から「BNW」と呼ばれたライバル関係を築き、ビワハヤヒデは三冠のうち最終戦の菊花賞を制した事は有名な話だ。

 

 最強馬として確固とした地位を築き、天皇賞(春)、宝塚記念といったGIをも制覇している。

 

 

 かつての『天馬』トウショウボーイ。『流星の貴公子』テンポイント。『緑の刺客』グリーングラス。

 

『TTG』と呼ばれたその伝説のウマ娘の三人を彷彿とさせるビワハヤヒデ先輩達の世代『BNW』は学園内外では、かなりの知名度と人気を誇っている。

 

 ちなみにその中でもビワハヤヒデ先輩は私の知識が正しければ、かなり顔がデカイはずだったのだが、見たところ小顔な上にかなりの美人だ。

 

 ナリタブライアン先輩と並ぶと様になっている。二人から漂う強者のオーラはやはり違うなと改めて感じた。

 

 それと対面しているミホノブルボンの姉弟子からも確かにオーラ的なものは出てるけれども。

 

 とはいえ、ナリタブライアン先輩がここに来るきっかけは多分、私達と一緒だ。

 

 というのも今回のバカンスにナリタブライアン先輩も私が誘ったからである。

 

 それは、私の併走に付き合ってくれたり、ミホノブルボン先輩の最終調整に付き合ってくれたり、私をヌイグルミ代わりにして寝る間頬ずりしたりといろいろとお世話になっているからだ。

 

 最後のだけは要りませんでしたね、はい、私もそう思います。

 

 すると、ナリタブライアン先輩はため息を吐いてやれやれといった具合に私にこう話をし始めた。

 

 

「姉貴は頭でっかちだからなぁ、バカンスに行くのなら可愛い水着くらい買っていけだと、私は学園指定の水着でいいと言ったんだが」

「随分前にヒシアマ姉さんに女子力云々言ってたのはどこの誰でしたっけ?」

 

 

 そう言いながら、私は姉弟子とおんなじ事を言っているナリタブライアン先輩に思わず突っ込みを入れる。

 

 この人達、女子力高いのファンの前で歌ってる時くらいではないだろうか?

 

 あ、私は基本、ミホノブルボン先輩の女子力は全部筋肉になってるって思ってるのでそこは問題無いです。

 

 すると、このナリタブライアンの言葉を聞いたビワハヤヒデ先輩はムッとした表情を浮かべるとこう言い返しはじめる。

 

 

「誰が頭でっかちだ! 誰が!」

「んー? で、アフちゃんはミホノブルボンの付き添いで来たのか?」

「さらっと私の背後に回ってハグしてこないでくださいよ…もう」

 

 

 そんなビワハヤヒデ先輩の言葉を受け流すように私の背後に回り、いつものようにハグして頬ずりしてくるナリタブライアン先輩。

 

 話を流すのが相変わらず上手いなこの人は、ビワハヤヒデ先輩相手でも相変わらずである。

 

 私は背後に回り、ハグしてくるナリタブライアン先輩にこう話をしはじめた。

 

 

「私達も一緒ですよ、私は姉弟子に水着を選んであげようと思いましてね」

「へぇ、なら手間が省けるな、ついでにアフちゃんのセンスというのを見せてもらおう」

 

 

 そう言いながら、私にニヤリと笑みを浮かべたまま告げるナリタブライアン先輩。

 

 えっ? 何この流れ、私が選ぶの? ただでさえミホノブルボン先輩のも選ばなきゃいけないのに。

 

 へたに変な水着選んだら、私、トレセン学園で変態ウマ娘の名を得る事になるんですけども。

 

 すると、ビワハヤヒデ先輩は呆れたように首を左右に振るとナリタブライアン先輩にこう話しをしはじめる。

 

 

「はぁ…またお前は勝手に話を進めて…」

「いいじゃないか、たまにはこういうのも、なぁ?」

「私は構いませんが」

「姉弟子ェ…」

 

 

 ということで、姉弟子も許可したところで私達はナリタブライアン先輩達を交えて水着を選ぶ事になった。

 

 ビワハヤヒデ先輩もいることだし、センスがない水着を選ぶ心配はなさそうだ。競泳水着でもいいんですけどねぶっちゃけ。

 

 というか、ぶっちゃけ二人分の水着を選ぶのがめんどくさい。着せ替え大好きなウマ娘ならまだしも、私はそういったキャラではないのだ。

 

 こんなことならライスシャワー先輩も連れてくれば良かったなと後悔する。

 

 ライスシャワー先輩も一時期はダービーで負けてしばらく落ち込んではいましたが、同じチームのミホノブルボン先輩の勝利を快く受け入れて、もう立ち直っています。

 

 ライスシャワー先輩は自前で以前買った水着があるみたいなので、必要ないという事で今回はついてきてないけれども。

 

 

 というわけで、小さい規模ながら水着姿パドック開始!

 

 私はなるべく、布面積が多そうなのを選ぶように見ていく。意外と最近の水着というのは布面積が多くても可愛い水着は多いのだ。

 

 悩みながらもしばらく水着を選ぶことだいたい五分くらい、すると、私の元にブライアン先輩が水着を持って来た。

 

 私はその水着を見て顔を引きつらせる。

 

 

「こんなのはどうだろう? 意外と可愛くないか?」

「返して来なさい、これ布少なすぎでしょ!」

 

 

 そう言いながら、私はブライアン先輩の持ってきた水着に突っ込む。

 

 色は水色で無難そうに見えるが、明らかに胸のあたりの布面積少な過ぎィ! こんなん選んだらもうえらい事なりますわ。

 

 私の言葉に首を傾げるブライアン先輩、彼女的には割と悪くないチョイスだったらしい。

 

 水着のデザインは百歩譲って可愛かったからまだいいだろう、まだね。

 

 まあ、ブライアン先輩の場合は晒を胸に巻くのでそんなのでも問題はない気はするが。

 

 すると、ブライアン先輩は私にこう告げ始める。

 

 

「そうか、私は案外似合うと思ったんだがな。お前に」

「って私の水着かーい!」

 

 

 私は持ってきたブライアン先輩に盛大にツッコミを入れる。

 

 自分のを選んで来なさいよ! なんで私が着る前提で水着選んで来てるの? こんなもん着れるか!!

 

 そうか、トレセン学園に居れば水着を選ぶ機会なんてないもんな、そうなれば、そうなるか、水着を選ぶのはやはりこの人達は危うい気がしてらならなかった。

 

 その次に、私の肩を叩いて来たのはミホノブルボン先輩だった。

 

 そして、姉弟子が持ってきた水着を見て私は顔をゲッソリとさせる。

 

 

「これなんてどうでしょう、妹弟子よ」

「姉弟子、それ男性用のブーメランパンツです」

 

 

 そう、姉弟子が持ってきたのは男性用のブーメランパンツ。しかも、ボディビルダーが良く履いているやつだ。

 

 予想の遥か斜め過ぎて私もこれにはなんて言ったらいいかわからない。上半身何にもつけないつもりかな? この人。

 

 私は速攻で却下し、戻してくるように姉弟子に告げる。せめてそこは女性用にして欲しかった。

 

 こんなもん履くのは男性でも元コマンドーかランボーみたいな筋肉隆々の男性くらいなもんですよ。筋肉選手権にでも出るのかな?

 

 すると、姉弟子も残念そうな表情を浮かべると私にこう告げ始める。

 

 

「そうですか、残念です。貴女に似合うと思ったのですが」

「貴女には私が何に見えてるんですか」

 

 

 私はシュンと耳を垂らし落ち込んでる姉弟子に冷静にそう告げる。

 

 いや、おかしいでしょう。なんで二人とも私が着る前提で水着を選んでるんですかね? 姉弟子のなんてもはやギャグでしょう。

 

 私はとりあえず、ビワハヤヒデ先輩と相談して私達の独断と偏見で似合いそうな水着を見繕う事にした。

 

 ちなみに私の水着は青い可愛いフリルが付いているやつにしました。

 

 え? 髪が青鹿毛だし、水着も青だとお前、海と同化するぞ、ですって? いやいや、やめてくださいよ、いくら青だからって私が海と同化するなんて…。

 

 名付けて、オーシャンアフトクラトラス。

 

 オーシャンなのは、テイエムオーシャンさんだけで良いと、だからといってテイエムオーシャンさんも海と同化しているわけではないですけどね。

 

 

 こうして、日本ダービーを祝してバカンスに向けての準備を着実に進める私達。

 

 余談にはなりますが、この後、ミホノブルボンの姉弟子がアウトドア製品にやたら詳しかったのでそちらの方は苦労せずには済みました。

 

 なんでミホノブルボン先輩がサバイバルに関してそんなに詳しいのか私はやたらと気にはなりましたが、突っ込んだら負けかなと思い敢えてのスルーです。

 

 本当にこれが息抜きのバカンスになるのかどうか私は疑心暗鬼になるのでした。








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。