兎美「バーストリンカーである有田春雪は!有田兎美の記憶を取り戻す為に、悪の組織『ファウスト』に迫っていた!」
美空「だがその途中!黒雪姫にバーストリンカーとして選ばれ!謎のバーストリンカーを追うことになってしまったのでありました!」
幻「春雪は、追っていく途中。黒雪姫と一緒に自分を襲うスマッシュに狙われてしまうのです」
ニコ「絶体絶命の春雪達だったが!春雪が決意をして!仮面ライダーに変身!」
千百合「なんとかスマッシュを倒した春雪だったが、その後、自分が追っていたバーストリンカーが自分の幼馴染の1人だと気付いた!」
黒雪姫「春雪は幼馴染と加速世界で自分達の思いを伝え合い!幼馴染の目を覚ます事に成功するのでありました!」
兎美「長い!後しれっと幻やニコまで登場してんじゃないわよ!」
ニコ「いいじゃねぇかよ別に。私ここから出てくんだから」
幻「私も出番欲しいもの」
黒雪姫「それに第1章が終わったんだ。今までの振り返りも必要だろ」
兎美「まさか1章終わるごとに、こんな長いあらすじやるわけじゃないわよね!」
黒雪姫「そうなるだろうな。さてどうなる第1話!」
兎美「なによその強引なカットイン!私の話を聞きなさいよー!!」
第1話
ある路地裏。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
「うううううっ!」
1人の女子高生が、スマッシュに追われていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、きゃあ!」
彼女は段差に躓いてしまう。
「うううっうおおおおお!!」
「くっ...」
スマッシュが襲い掛かり、彼女は覚悟を決めて目を閉じる。
「はあ!」
その時、誰かが彼女の上を飛び越え、スマッシュに一撃を入れる。
「え?」
彼女が目を開けると、そこには杉並を守る戦士、仮面ライダーの姿があった。
「仮面...ライダー...」
彼女がそう呟くと、クローズは声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
突然の出来事に呆けていた彼女だったが、話しかけられ我に返る。
「もう大丈夫です!危ないんで早く逃げてください!」
クローズが逃げるように促すが、彼女は立てないでいた。
「もしかして腰が抜けて...」
彼女の状況に、クローズは直ぐに気付いた。
「うううぅぅぅぅぅ!」
「ひっ!」
スマッシュが立ち上がった事に、彼女は恐怖する。
「大丈夫です!僕が必ず守ります!」
クローズは彼女にそう声を掛けると、スマッシュに攻撃を仕掛ける。
「はあ!」
スマッシュに、右パンチを繰り出す。
「フン!」
「ふっ!はあっ!」
クローズは攻撃を受け止め、回し蹴りを繰り出す。
「うおおおお!」
クローズは、ドライバーのレバーを回す。
「今の俺は!負ける気がしない!」
『Ready Go!』
クローズの後ろに、青いドラゴンが現れる。
『ドラゴニックフィニッシュ!』
ドラゴンの炎を纏って大きく飛び上がり、キックを打ち込む。
「はあああああ!!」
「ぐあああああ!!」
必殺技が決まり、スマッシュは大きく吹き飛ばされる。
「ふっ!」
クローズはエンプティボトルをスマッシュに向け、成分を抜き取る。
「凄い...」
戦いを終えたクローズは、彼女に近づく。
「大丈夫ですか?立てますか?」
「は、はい」
彼女は立ち上がろうとするが、まだ腰が抜けているようだった。
「あ、無理しないでください。でもどうしよう...」
クローズは、彼女をどうするか迷っていた。
「あ!そうだ!すみませんが、少し我慢しててください」
「え?」
クローズは彼女に近づくと、お姫様抱っこをする。
「え!ええ!」
「しっかり掴まってて下さい」
そう言うと、クローズは翼を広げて裏路地から大通りに移動する。
「おい!あれ仮面ライダーじゃないか!?」
「本当だ!すげー!本物だ!」
突然現れたクローズに、通行人は興奮する。
「ここまでくれば、もう大丈夫です」
「あ...、あの...」
「それでは!」
クローズは、彼女をその場に残してその場を飛び去る。
「さっきの台詞は...あの子と同じ...」
☆★☆★☆★
梅里中学。
授業が終わり、俺はチユと一緒に帰りの準備をしているタクムを迎えに来た。
「タッ君、一緒に帰ろう!」
「うん」
帰りの準備を整え、俺達は帰路に着く。
「どう?タッ君。もうこの学校には慣れた?」
「まぁ、ぼちぼちかな」
「なんだよそれ」
他愛のない話をしていると、前方から幻先輩が歩いてきているのに気付いた。
「あら?今帰り?ハルユキ君」
「え?は、はい」
先輩から話しかけて来るとは思いもしなかったので、ハルユキは驚く。
「何か用ですか?」
以前のように、チユリはハルユキの前に立つ。
「あら、只話しかけるだけで用が必要なのかしら?」
「あなたの様な人が、わざわざ1生徒であるハルに話しかけるなんて、可笑しくないですか?」
すると今度は、チユリに続いてタクムまでも前に立つ。
「おい!チユ!タク!」
ハルユキは2人の行動に驚く。
「あら?何が可笑しいのかしら」
幻先輩はくすくす笑いながら答える。
「あなた、ハルを使って何を企んでるんですか?」
「企んでる?」
「違うんですか?」
2人が幻先輩に詰め寄る。
「あの!俺達これで失礼しますので!さようなら!」
「え?ちょ!?」
「ハル!?」
ハルユキは2人の手を掴み、その場を急いで離れる。
「あらあら...」
☆★☆★☆★
「もう!何考えてんのよハル」
「本当だよ...」
2人はハルユキが邪魔した事に対し、文句を言っている。
「でも...俺、あの先輩が悪い人には見えないんだよな」
ハルユキの呟いた言葉に、2人はため息をつく。
「まったく...君は相変わらずだね」
「それが、ハルらしいんだけどね」
「いやー、それほどでも」
ハルユキは頭を掻きながら、照れる。
『褒めてない』
すると、2人して否定する。
「でも...もし彼女がナイトローグだったらどうするのさ」
「それでも、俺は...」
言い掛けたハルユキだったが、ナイトローグの言葉に引っ掛かりを覚える。
「ハル?」
「どうかしたのかい?」
黙ったハルユキを、2人は疑問に思う。
「いや、ナイトローグの言葉に引っ掛かって...」
「引っ掛かる?」
「ハルの事だから、何か忘れてるんじゃないの?」
忘れてる?何を?
考え込むハルユキだったが、不意に初変身時にナイトローグが言っていた言葉を思い出した。
「あー!」
「ちょ、何よいきなり!」
いきなり叫んだハルユキに、チユリは驚く。
「何か思い出したのかい?」
質問するタクムだったが、ハルユキはそれ所ではなかった。
「やばい、すっかり忘れてた...」
「やっぱり...」
「いったい何を...」
☆★☆★☆★
「まったく...3人してそんな大事な事忘れるなんて」
「いやー、シアンパイルの事ですっかり忘れてたんだよね」
ハルユキ達はマンションのエレベーターに乗り、ハルユキ宅を目指していた。
「それって、バックドアの事を教えてくれた時でしょ。あれからどれぐらい経ったと思ってんのよ」
「返す言葉もありません」
チユリの言葉に、ハルユキは言い返せなかった。
「でも、調べるってどうやって?」
「その話は後だな。まあ俺達が調べる訳じゃないんだけど」
「それって、どう言う事?」
「見れば分かるよ。本当はやりたくないんだけど...」
そう言って、ハルユキは憂鬱になりながらも自分の家のドアを開ける。
「ただいまー」
『お邪魔します』
ハルユキは2人を連れ、居るであろう兎美達の元に向かおうとしたその時。
「おかえりなさい、お兄ちゃん!」
「ただいま」
1歩、2歩進み、3歩目でキキッと急ブレーキが掛かった。
「は?」
今の、何?
ハルユキの認識では、兎美達の声は今聞こえた声とは違かったはずだ。
ふと声がする方向を見るとそこには。
赤い髪をツインテールで纏め、制服の上にエプロンを着けた小学生くらいの女の子がいた。
「えへっ、今クッキー焼けるから、ちょっと待っててね!お兄ちゃん」
女の子はそう言うと、キッチンの方へ向かう。
『誰?』
思わず3人の台詞が重なってしまう。
「ハル、あの子が誰だか知らないのかい?」
「全然知らない...」
「いやいやハル!ここあんたの家でしょ!なんであんたが知らないのよ!」
「そ、そう言われても...」
突然の事にハルユキは驚く。
「まったく、お義母さんの言う通り全然見てないのね」
「え?」
すると今度は、さっきの女の子と入れ違いで兎美が現れる。
「ハル、お義母さんからの伝言メッセージ読んでないでしょ」
兎美の言葉を聞き、ハルユキは急いでホームサーバーを確認すると、確かに母親から伝言メッセージが届いていた。
ハルユキは現状を理解する為、メッセージを再生する。
【ハルユキ、悪いんだけど、親戚の子供を2、3日預かる事になっちゃったから。知ってるでしょ、中野のサイトウさん、私のイトコの。急な海外出張だっていうんだけど、言ってあった通り、私も今日から
母親の有田沙耶は、アメリカに本社のある銀行のディーリング部門に勤めている。
毎度0時を回るまで帰宅しないし、海外に飛んで数日留守にする事などしょっちゅうだ。
ゆえにハルユキは、小学校の頃から、同じマンションの2階下倉嶋家――チユリの家に預けられる事が頻繁にあった。
今は兎美達がいるから少しはマシになったが、もし兎美達と会っていなかったら、今の何倍イジケた子供に育っていたかもしれない。
「私達のメッセージには、ハルが見てないだろうから説明を頼むって残されてたのよ」
「な、なるほど」
さすがは母親と言った所か、自分の性格を把握している。
そんな事を考えつつ、ハルユキはキッチンで忙しそうに動き回るサイトウさんちの子を眺めた。
オーブンのタイマーが軽やかな音を放つや女の子は扉を開け、金属のトレイを引き出した。
甘く香ばしい匂いがいっそう強く漂う。
どうやら、芳香の源はクッキーだったらしい。
クッキングペーパーを敷いた大皿に、慎重なトングさばきで10数個のクッキーを移動させると、女の子はほっとしたように息をついた。
両手で皿を持ち、くるっと向き直ると、上目遣いにハルユキを見上げてくる。
「あの...、兎美お姉ちゃんに許可は取ったんですが、勝手にお台所使っちゃってごめんなさい。ハルユキお兄ちゃんが、お腹空かせて帰ってくると思って...でも...まさかお友達の方もいるとは思わなかったので...」
女の子はちらっと、2人の方を見る。
「あっ!別に僕達の方は気にしないで大丈夫だよ!」
「そうそう!」
先刻よりも随分小さな声に、2人は遠慮する。
「あ...、ありがとう。お腹、ぺこぺこなんだ」
すると、女の子も、氷が溶けるようににっこりと笑った。
「あの、あたし、サイトウトモコです。小学5年生です。もう何年も会ってないから、忘れちゃったと思うけど...お兄ちゃんとは、ハトコ同士になるんだと思います。あの...ふ、ふつつか者ですが、どうぞ宜しくお願いします」
皿をささげ持ったままぺこりと頭を下げる。
「有田春雪です。こちらこそ、宜しく、サイトウさん」
即座に「トモコでいいですよ!」と微笑まれ、くらっと遠ざかりかける思考をハルユキは必死で引き戻した。
中野のサイトウさん、に関しては正直そんな親類がいたような気がする程度の記憶しかない。
親のイトコなんて普通そんなものだろう。
「それにしても、2人が来るなんて珍しいわね」
兎美が2人を見ながら、そう言った。
「あ!そうだ!美空ってまだ寝てるのか」
「美空?もう起きてるけど、何かあるの?」
ハルユキの言葉に、兎美は疑問符を浮かべる。
「いや、実は...」
そう言って、ハルユキはナイトローグの件で思い出したことを兎美に告げる。
☆★☆★☆★
ハルユキ達はトモコをリビングに残し、兎美達の部屋に移動する。
「ああ、そういえば情報を集めるの忘れてたわね」
「あの時は、そいつのせいでそれ所じゃなかったしね」
「あ、あの~兎美さん達は、何で僕の事をあいつとか、そいつって呼ぶんですか?」
タクムは、前から気になった事を聞く。
「当たり前でしょ。ハルは許してるかもしれないけど、私達はまだあんたの事を信用してないから」
そう言う兎美のタクムを見る目は、凄く冷たかった。
「それより、調べるってどうやるの?」
やばいと思ったのか、チユリが兎美に質問する。
「やるのは私じゃなく、美空よ。もう既に準備も出来てるわ」
そう言って、兎美は美空の方を見る。
「美空が?引篭もりに何が出来んのよ」
「意義あり!」
「はい兎美!」
チユリの言葉に兎美が挙手し、ハルユキが指名する。
「ふふふ、家の美空の力をなめたら...いかんぜよ!」
『ダイレクト・リンク!』
兎美の言葉の後、ハルユキと美空はフルダイブする。
「なんでフルダイブするの?」
「これを見れば分かるわよ」
そう言って、兎美はサイトのURLをタクム達のニューロリンカーに飛ばした。
『はーい!みんなのアイドル!みーたんだよ!ぷんぷん!』
すると、そのサイトには美空がヘッドホンを着けたようなアバターが映っていた。
「な、なにこれ?」
いきなりの出来事に、チユリ達は呆然とする。
「美空は大人気のネットアイドルなのよ」
「ネットアイドル!?嘘でしょ!!」
「えー...」
『そして今回はみーたんのお友達、ぷーたんも一緒だよ!』
すると美空は画面外に消えて、ハルユキのブタアバターを連れて戻ってくる。
『ハル!?』
美空の登場以上に、2人は驚く。
「どうゆう事!?」
「ハルはね、みーたんのマスコットとして登場してたんだけど。思ったより女子の人気が高いのよね...」
兎美は複雑そうに答える。
「あー...、一部の女子がハルのアバターに対して、熱の篭った目で見てたのはそういうことね...」
「こればっかりは荒谷様様ね」
『さて!今日のお願いを発表するよ!じゃーん』
美空がそう言うと、サイトにデカデカと【葛城 巧未について】と書かれていた。
『私達の為に!この人の情報を死に物狂いで集めてね!』
すると、美空が画面からいなくなってしばらくすると、また画面に現れる。
『うー、お・ね・が・い!』
『お...お願い、します...』
美空は目を潤ませてお願いをして、ハルユキは上目遣いでお願いをする。
『う...』
上目遣いのハルユキを見て、兎美とチユリが胸を押さえ倒れるが、タクムは気にしない事にした。
『あ!さっそく情報が!ぷーたんラブさんありがとう!ほら!ぷーたんもお礼を言って!』
『あ、ありがとう、ございます』
恥ずかしいのか、涙目になりながらもハルユキはお礼を言った。
ドラグニックフィニッシュ!
『ぐはっ!』
ハルユキの言葉によって、兎美達に止めが刺された。
☆★☆★☆★
「じゃあ、集まった情報を纏めるわよ」
そう言って美空は、ニューロリンカーを操作する。
「葛城 巧未。港区にある、私立エテルナ女子学院に在籍する中学1年生。成績優秀で、中学生でありながら科学者としても有名みたいね」
「へー」
「そんな事まで分かるんだ。さすがみーたん&ぷーたんパワー」
情報の多さに2人は感心する。
「やめてくれよ!マジで恥ずかしいんだからな!」
ハルユキはタクムに向かって叫ぶ。
「恥ずかしいなら、なんで出演してんのよ」
「え?そ、それは...」
チユリの言葉に、ハルユキは言い淀む。
「悪いけど、その話は後にしてくれない」
「あ、ごめん」
美空の言葉に、チユリは謝る。
「じゃあ続けるわよ。葛城は誰もが認める天才だけど、仲間内には悪魔の科学者と呼ばれていたみたい」
「悪魔の科学者?」
チユリが、鸚鵡返しに呟く。
「そう、学校でも無口で何を考えてるのか分からないって事で、他の生徒からも不気味がられてたみたいね」
「でもそんな人が、ビルドを開発した張本人だなんて...」
「それで?次はその葛城 巧未に会いに行くの?」
チユリが美空に質問する。
「それが...、どうやら彼女は随分前から行方不明みたいなの」
「行方不明?」
「なんで?」
美空の言葉に、ハルユキとタクムが疑問符を浮かべる。
「理由は分からないけど、急に消えたみたい」
「取り合えず、その葛城 巧未がファウストに関係するのか調べるのが先ね」
「じゃあ、当分の目的は葛城 巧未について調べる事だな」
「そうね。じゃあそろそろ戻らないと、トモコちゃんを1人にしたら可哀想だし」
そう言ってハルユキ達は、リビングに戻る。
リビングに戻ると、トモコちゃんはソファに座っていた
「あ!お兄ちゃん達お話終わったんですか?」
「うん、ごめんね。せっかく来たのに放置しちゃって...」
トモコはハルユキ達に気付くと、駆け寄ってきた。
「うふふ、大丈夫ですよ」
「それじゃあこれからどうしよう。ゲームでもする?山ほどあるよ、40年前くらいのからごっそり...」
「ハル...、さすがにあのゲームをこの子に進めるのはどうかと思うよ」
ハルユキの提案を、タクムが指摘する。
しかし幸いな事に、トモコは微笑んだまま軽く首を振った。
「あの、あたし、ゲームあんまりやらないんです。フルダイブがちょっと苦手で...」
「へ、へぇ」
言われるまま視線を向けると、ブラウスのボタンがブラウスのボタンが1番上まできっちり止められた細い首に、現代の必須生活ツールである
確かに、小学校のうちは常時装着を避けさせる家庭も少なからず存在する。
拡大無辺のグローバルネットは、ありとあらゆる犯罪の温床でもあるからだ。
ペアレンタル・コントロール機能はあるにせよ、有害情報を100%遮断する事は難しい。
日頃、学校の授業で視聴覚モードを使うだけなら、現実の5感が全て遮断されるフルダイブを怖がる気持ちは解る。
ならばどうしたものかと懸命に思考を巡らせ、ようやくリビングの壁に貼られた大型パネルモニタに視線を留めると、ハルユキはそっちを指差した。
「じゃあ、あれで映画でも
だが、トモコは今度も小さくかぶりを振り、恥ずかしそうに言った。
「あの...、それより、お話しませんか?お兄ちゃんの中学の事とか、教えてほしいな」
そう言ってトモコはハルユキの手を取り、テーブルに連れて行き座らせる。
そんな2人の様子を見て、兎美達は面白くない顔をする。
「あの~3人とも、さすがにあんな小さな女の子に嫉妬するのはどうかと思うけど...」
『ああ゛!!』
タクムの言葉に、兎美達は物凄い冷たい目でタクムを睨む。
「な...なんでもありません...」
あまりの恐ろしさに、タクムは黙ってしまう。
「......」
兎美は、何か思いつめるような顔で2人の様子を見る。
☆★☆★☆★
「ハル~、お風呂空いたから入っちゃいなさい」
「あいよ~」
兎美の言葉に、ハルユキは答える。
風呂場に向かおうとするハルユキに、兎美はすれ違い様にぼそっと呟く。
「ハル...トモコちゃんに気をつけなさい。あの子何か隠してるわよ...」
「え?」
そう呟いた兎美は、そのまま部屋に戻っていった。
意味が分からないハルユキだったが、考えても仕方ないので風呂場に向かった。
ぶくぶく、と自分の口から泡が立ち上がる音を聞きながら、ハルユキはいっそう深く浴槽に体を沈めた。
母親の拘りで、有田家のバスルームはやたらと広い。
バスタブも大きく、ハルユキの巨体でもさして窮屈感なく手足を広げられる。
入浴剤の香りがする湯気を、鼻から大きく吸い込み、肺に溜めて、細長く吐き出す。
あの後タクム達は帰り、兎美とトモコが作ってくれたカレーライスの夕食を挟んで、なんと4時間も喋り続けた計算になる。
よくもまあそんなに話すネタがあったものだと妙な感心をしたくなるほどだ。
結局ハルユキは、兎美達の話から始まり、梅里中学校の各種システムやら、幼馴染2人との色々なエピソードやら、黒雪姫先輩に纏わるアレコレまでを、殆ど洗いざらい話しつくしてしまった。
話題にしなかったのは、数ヶ月前まで続いたイジメの件と仮面ライダーの件と――そして《あの世界》に関する事だけだ。
危うく仮面ライダーの事も話しかけたが、なんとか誤魔化す事が出来た。
その、さして面白いとも思えない話を、トモコは真剣に聞き、時には声を出して笑ってくれた。
「妹がいるって、こういう感じなのか」
ハルユキはしみじみ噛み締めたが、同時に先程も兎美の言葉を思い出した。
何か隠してる...。
「確かに兎美の言う通り、あまりにも出来すぎだろう。本当にあんなハトコ居たっけ?」
ある日学校から帰ってきたら、突然妹がいて、クッキーを焼いてくれたりカレーを作ってくれたり、止めに『お兄ちゃんにお話してほしいな』と来たもんだ。
その上、3日間も1つ屋根の下で暮らすだって?
これを、降って沸いたレアイベントだと受け入れられる程、ハルユキは素直な育ち方をしていなかった。
しかし、この1件に何か裏面があるのだとしても、いったい誰が何の為に仕掛けた事なのか?
そしてそれをどのように確認すればいいのか?
少し考え、ハルユキはお湯から上体を出すと、傍らのコーナーラックからアルミシルバーのニューロリンカーを取り上げた。
生活防水仕様であるものの念を入れて首筋の水滴を払い、後ろから装着する。
U字型の両端部分が軽く内側にスイングし、首をしっかりロックする。
電源を入れると、目の前に起動ロゴが輝き、20秒程の大脳接続チェックに続いて仮想デスクトップが展開した。
右手の指を素早く動かし、有田家のホームサーバーのウインドウを開く。
データストレージから、家族のアルバムに入ろうとして、ハルユキはやや躊躇した。
ここ数年で家族での写真は、兎美達との写真しか撮っていないが、この中にはハルユキがぷくぷく膨れる前の――父親と母親が仲睦まじかった頃の画像が山ほど埋もれているはずだ。
そんなもの、死んでも見たくない。
階層を戻り、ハルユキは代わりにホームサーバーに接続する外部ネットを開いた。
ぱぱっと立体的に幾つかのアクセスゲートが展開する。
これらは全て、有田家の親戚筋のホームネットだ。
勿論サーバーのデータを好き勝手漁れる訳はないが、メッセージを記録したり、親族向けに公開されているスケジュール等を閲覧できる。
しかし、アクセスゲートに《中野のサイトウさん》宅のものはなかった。
たいていの家はトップ画面に近況報告を兼ねた家族の集合写真を用いているので、それを確認しようと思ったのだが。
「駄目だ、何処にも写っていない...」
さすがに接続しているのは母親の実家と兄妹、数人の叔父叔母のみで、イトコまではカバーしていないようだ。
ハルユキはいったんデスクトップから視線を外し、浴室のドアの向こうに耳を傾けた。
リビングのパネルテレビの音声がわずかに聞こえてくる。
兎美達は既に部屋に戻っているので、恐らくトモコがまだファミリー向けのバラエティ番組を見ているのだろう。
再びデスクトップを睨み、ハルユキは中央に浮かぶアクセスゲート――母親の実家のホームネットを開いた。
山形の農村をバックに撮影されたのどかな家庭写真を無視し、ネットの内部へと繋がるゲートをクリックする。
当然のように認証窓が出現し、ハルユキの行く手を阻む。
ハルユキはそこに、母親に与えられているIDとパスワードを打ち込んだ。
このアクセスは先方のログに残る為、もし向こうが母親にログインの理由を訊いたりすれば、ハルユキが母親のIDをぶっこ抜いていることがバレて大目玉を食らうだろうが、そもそもサクランボ農家を営むお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが自宅ネットのアクセスログなどチェックするとは思えない。
だが勿論、仕事は手早く済ませるに越した事はない。
ハルユキは大急ぎで母親の実家のホームネットに潜り込み、アルバムを開いた。
数10年分も蓄積された膨大な写真の量にうんざりしながらも、時期と人数でフィルタを掛けてデータを抽出する。
確か、薄らかな記憶によれば、5年ほど前のお祖父ちゃんの喜寿のお祝いに有田家の一族がかなり集まったことがあった。
《中野のサイトウさん》ともその時挨拶したような気がする。
ならば、当時5歳くらいであろうトモコもその場にいたはずだ。
検索はすぐに終了し、数枚のサムネイルが重なって表示された。
それを指先で次々に弾いていく。
これじゃない、これでもない...あ、この辺か。
この次あたりに。
「おにーいちゃん♪」
突然、右側から歌うような声がして、ハルユキは反射的に首を捻った。
そして、右手の指先を空中に上げたまま凍りついた。
いつの間にか浴室のドアが細めに開き、その向こうに、トモコが顔と右肩だけを覗かせて立っていた。
赤茶色の髪をタオルで巻いた頭から、やや恥ずかしそうにはにかむ顔、そして細い首と肩のきめ細かい肌へと視線を下ろし――。
「なっ...な、なっ...」
口を高速ぱくぱく運動させるハルユキに、トモコがほんのり桜色の笑顔を向けた。
「お兄ちゃん、あたしも一緒に入っていい?」
「いっ...ちょ...そんっ...」
「だってー、お兄ちゃん長いんだもん。待ちくたびれちゃうよ!」
えへへと笑うと、トモコは返事を待たず、とててっと浴室に入ってきた。
ハルユキは慌ててばしゃっと体を湯に沈め、きつく両眼をつぶって叫んだ。
「ごめん今出るから!今すぐ出るからもうちょっと待って!!」
「大丈夫ですよぉー、ハトコ同士だもん」
全然大丈夫じゃね―――ッ!!
と脳内で絶叫した。
テンパっていたその時、ハルユキはトモコの首筋にニューロリンカーの日焼けの跡があるのに気付いた。
「だ...だからって、あんまり見ないで下さい!」
ハルユキは、視界の左側に表示された、5年前の有田一族大集合写真と見比べた。
前列には、自身を含む子供達がうじゃうじゃと並んでいる。
今となっては誰が誰だかさっぱり見分けられないが、幸い、この時代の写真にはもうデータ埋め込み技術が採用されている。
焦点をずらしていくと、子供達の前に次々と名前が浮き上がっては消える。
その名前は、6人目で現れた。
《
凝視すると、該当する子供の顔が自動的にズームされ、目の前のトモコと同じサイズになった。
当時5歳。
女の子は変わる、って言うから、5年間でこの顔がこうなることだって...。
あるわけねー。
ハルユキは大きく息を吸い、溜め、はああああっと吐き出した。
そして、きょとんとした表情のハトコを名乗る女の子に向けて、哀しい微笑みと共に呼びかけた。
「ねぇ...」
「なあに、お兄ちゃん?」
「...君、サイトウトモコちゃんじゃないでしょ?」
反応は即座かつ如実だった。
トモコの可憐な顔が、一瞬ぽかんとした素の驚きを見せ。
その頬が恐らく羞恥以外の理由で真っ赤に染まり、右の目元がぴくぴくっと痙攣した。
しかし感心な事に、年齢だけは間違いなく10歳前後であるはずの少女は、尚も可愛らしい声と共に首をかしげた。
「えー、お兄ちゃん、何言ってるんですか?私は正真正銘サイトウトモコですよ」
「日焼け」
ハルユキはぼそっと答えた。
「え?」
「首のとこ、綺麗に日焼け跡がついてるよ。僕と同じくらい。なかなかそこまでは、産まれた直後から常時装着してないとならないよ...ニューロリンカーを」
トモコ――では恐らくない少女の両手が、さっと首を覆った。
それに、とハルユキは続けた。
「お祖父ちゃんのホームサーバーに、5年前の写真が残ってた。そこに、サイトウトモコちゃんも写っているけどね...こう言っちゃなんだけど、君の方が10倍かわいい」
女の子の顔がぴくぴくと引き攣り、実に複雑な表情を浮かべた。
やがてその百面相は、これまでの純朴さとは1光年ほどもかけ離れた、不貞腐れたような渋面で固定された。
「ちっ」
バスタオルの両腰に手を当て、強烈な舌打ちを鳴らす。
「ここンチのアルバムは確認したのになぁ。まさかジーチャンちのネットまで掘り返すとは、あんた疑り深過ぎんぜ」
突如切り替わった口調に目を白黒させながらも、ハルユキはどうにか言い返した。
「君が無茶しすぎなんだよ。多分サイトウさんから家の母親宛のメールを偽造したんだろうけど、母さんが向こうに再確認したらどうする気だったんだ」
「あんたのママのニューロリンカーから発信されるサイトウさん宛のメールとコールは、全部インタラプトされてあたしに届くようになってんもん。準備に3日もかかったのによー!」
「そりゃあ...何ともご苦労様な...」
浴槽の縁にしがみついたまま、ハルユキは呆れ声を漏らした。
他人のニューロリンカーにウイルスを仕込もうと思ったら、ケーブルで直結するしか手段はない。
恐らくこの少女は、ハルユキの母親の動向をチェックし、よく行くスポーツジム辺りで更衣室ロッカー内のニューロリンカーに接触したのだろう。
無論、肉親にそんな事をされて気分がいい訳はないが、ハルユキはそれより先に感心してしまった。
この世にハッカーやらウィザードを自称するリンカー使いは多いが、安全な自宅から出て現実世界で《ソーシャル・エンジニアリング》――他人に成りすまし、オフラインでセキュリティを破る究極のハッキング――を仕掛けられるツワモノはそうは居ない。
ハルユキの声に含まれた賛嘆を聞き取ったか、少女の顔にフフンという強気な笑みが浮かんだ。
「君は一体何者なんだ?何の目的で僕に近づいた」
ハルユキは警戒しながら、女の子に質問をする。
先程、兎美に忠告された事もあり、クローズドラゴンを何かあったときに突撃するように命じて、外に待機させている。
「はあ...、バレちまったらしょうがない。アンタには力づくで言う事を聞いてもらうぜ。この《スカーレット・レイン》様にな!ニューロリンカー取ってくるからそこで大人しく待ってろよ!!」
右手の人差し指を仕舞いつつ親指を突き出し、それを下に向けてぐいっと横に動かしてから、女の子は勢いよく振り返った。
そして、1歩右足で踏み出すが床が濡れていた為、ずるっと滑った。
「にゃあっ!?」
甲高い悲鳴。
殆ど後方伸身宙返りのような見事さで落下してくる女の子を見上げ、ハルユキも叫んだ。
「危ない!!」
咄嗟に両手を広げ、女の子が浴槽の縁に激突する前に受け止める。
しかしお湯の中ということもあり、ハルユキも足を滑らせてしまい、後ろにひっくり返ってしまった。
どばっしゃーん。
という盛大な音と共に高く水柱が立ち上がり、その横を大判のバスタオルがひらひらと舞った。
後ろの壁に軽く頭をぶつけたハルユキは、ぎゅうっと目をつぶって痛みをやり過ごしてから、薄く瞼を持ち上げて状況を確認した。
広い湯船の中で、尻餅をついた格好の自分。
ぷくぷくしたお腹をクッション代わりに乗っかる赤毛の女の子。
その細い胴体に、ぎゅーっと回された自分の両腕。
そして、双方ともに全裸。
「う、うわああああ!?」
というハルユキの叫びを、
「うぎゃ―――――――っ!!」
という女の子の絶叫が上書きした。
じたばたもがいてから、ハルユキのお腹にどすっと足を踏み下ろした反動でひと息に湯船の外に脱出する。
床のバスタオルを拾いつつ、ぎゅんっと超高速で脱衣所に飛び出し、再び顔だけを見せ。
「...ぶっころす」
どたたたた、という足音がリビングに去っていくのを聞きながら、ハルユキは呆然と考えた。
「スカーレット?もしかして...赤のレギオンのバーストリンカー?」
最初はファウストの刺客かと思ったが、さすがにあんな小さな子を差し向けるような連中ではなかったようだ。
先程の発言からして、恐らくこのあと対戦を吹っかけてくるはずだ。
ならば、ニューロリンカーを外してそれを防ぐか?
しかし、恐らく今後本格的にぶつかるであろう敵ならば、早めに情報を入手しておくに越した事はない。
まだやっとこレベル4の自分ならば、1度負けたくらいではそうそうポイントは減らないし、それに――さすがに相手が子供なら、そうおめおめ負ける気がしない。
しかし、もう少し情報が欲しい。
女の子がニューロリンカーを装着し、OSが起動し、量子接続チェックを終えるまでにはあと数10秒あるはずだ。
ハルユキは湯船に座り込んだまま、音声命令を呟いた。
「コマンド、ボイスコール、ナンバーゼロファイブ」
途端、目の前に【登録アドレス05番に音声通話を発信します。いいですか?】というホロダイアログが浮かぶ。
即座にイエスを押す。
ちなみに01は兎美、02は美空、03は千百合、04は拓武、そして05は黒雪姫の登録アドレスだ。
コール2回で、黒雪姫が出た。
『私だ。どうしたハルユキ君、こんな時間に』
しっとりと滑らかで、かつ音楽的な抑揚のあるその声の背景に、ちゃぷんという水音が重なった。
あー、先輩もお風呂かなぁ...などと一瞬考えながらハルユキは黒雪姫に話しかけた。
「遅くにすみません。ちょっと教えてほしい事があって...」
『ほう、何だ?』
「その、先輩は、《スカーレット・レイン》ってバーストリンカーを知ってますか?」
質問の答えは、少々長めの沈黙だった。
「あの...どうかしましたか」
『そういえば、通称ばかり使って、名前を教えた事はなかったな。しかし《シルバー・クロウ》、君は少々不勉強だそ?』
「え...?それは、どういう...」
首をかしげたハルユキの聴覚に、どたどたどたっと廊下を走ってくる足音と重なって、黒雪姫の涼やかな声が響いた。
『――《スカーレット・レイン》。そいつは、かの《
.........はい?
ぱかりーん、と両眼及び口を丸くして、ハルユキは思考を停止させた。
直後、浴室のドアを引っ叩くように、赤毛の女の子が再び姿を現した。
「ちょ...君、赤の王?」
「フッ」
にいっと凶暴な笑みを見せた女の子は、可憐かつ威圧感たっぷりの声で叫んだ。
「バースト・リンク!!」
ああ...本当に殺されるかもしれない...。兎美...美空...先輩...、どうぞ僕を馬鹿と罵って下さい...。
バシイイイイッ!!
という聞きなれた音を聞きながら、ハルユキは胸中で涙を流した。
はい!如何だったでしょうか!
やっと第2章が始まりました。
今回、ビルド側の話を進める為悪魔の科学者について調べさせました。
あのハルユキのキャラも、後にさらに役立つときが来るでしょう。
ちなみに、最初に出てきたのはアクセル・ワールド側のキャラです。
原作を知っている人は直ぐに分かると思いますが。
取り合えず、そろそろ加速世界にもスマッシュを出そうかなとも思ってます。
今後の展開をお楽しみにして下さい。
では次回!アクセル・ビルド第2話、もしくは激獣拳を極めし者第17話でお会いしましょう!
それじゃあ、またな!
文字数の調度いい長さを教えてください!
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7000~10000 第3章第3話参考
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10000~15000 第2章第8話参考
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15000~20000 第3章第2話参考