アクセル・ビルド   作:ナツ・ドラグニル

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兎美「仮面ライダービルドであり、天才物理学者の有田兎美は科学者の葛城巧未を兎美が殺害したと知り冤罪を晴らす為に真相を追っていく」

美空「やがて葛城が悪の組織、ファウストを作った事が判明し兎美は彼女が母親に残したデータを手に入れたのだった」

チユリ「ねぇ、兎美ってハルが付けた名前でしょ?」

兎美「そうよ、兎に美しいで兎美よ」

チユリ「ラビットを少しもじっただけじゃない!!」

兎美「美空の考えた候補よりマシでしょ」

チユリ「どんな候補よ」

美空「戦車の『戦』に兎で戦兎」

チユリ「それこそラビットタンクを漢字にしただけじゃない!!てか女子につける名前じゃないでしょ!!」

美空「過ぎた話だからいいじゃない、もう第9話行っちゃって」


第9話

葛城巧未が残したデータ『PROJECT BUILD』の中身を、ハルユキ達は確認する。

 

 

兎美が中身を確認すると、1つの動画を見つけた。

 

 

『私は葛城巧未』

 

 

動画を再生すると、ガスマスクを着け白衣を着た葛城巧未が自己紹介する所から始まった。

 

 

その姿は、ファウストのアジトで作業している科学者たちと同じ格好だった。

 

 

『これから話すPROJECT BUILDとは、究極の防衛を目的としたライダーシステムの事だ!!』

 

 

視点が変わり、左からビルドドライバーと1枚のカードを手に持った葛城が現れる。

 

 

『これはその源になるビルドドライバー!!ある条件を満たして装着すれば仮面ライダービルドに変身できる』

 

 

そう言って、葛城は持っていたカードをカメラに見える様に映す。

 

 

そのカードには、ビルドのラビットタンクフォームの絵が描かれていた。

 

 

葛城は、カメラの下にカードを差し込む。

 

 

すると、上から映像が照射され仮面ライダービルド ラビットタンクフォームの立体映像が映し出される。

 

 

『これがビルド、創る、形勢するって意味のビルドだ』

 

 

すると視点が変わり、部屋全体が映し出されビルドの前に2体のガーディアンが映し出される。

 

 

ガーディアンが武器を構え、ビルドに攻撃を仕掛ける。

 

 

『ビルドは、このドライバーに挿すボトルによって能力が異なる』

 

 

そう言って葛城は、2本のボトルラビットボトルとタンクボトルを手に持ち説明を始める。

 

 

『ボトルは、パンドラボックスが落ちた場所から噴出してるネビュラガスをベースに作られていて、組み合わせ次第では必殺技を繰り出せる』

 

 

葛城の説明と共に、映像ではビルドが必殺技を放っていた。

 

 

『ボルテックフィニッシュ!!イェーイ!!』

 

『こんな風に』

 

 

また視点が変わり、最初と同じ視点に変わる。

 

 

『更にボトルを変えれば、様々なフォームチェンジが可能になる。たとえばこのウルフボトル』

 

 

そう言って、葛城は狼のレリーフが刻まれた一本のフルボトル、『ウルフフルボトル』を取り出す。

 

 

『そしてスマホボトル』

 

 

もう一方の手には、スマホのレリーフが刻まれた『スマホフルボトル』が握られていた。

 

 

『この2本をベルトに挿すと、この様なライダーになる』

 

 

葛城が取り出したカードには、W/Sのマークが掛かれた『スマホウルフフォーム』が描かれていた。

 

 

『これらはホンの一部に過ぎない、ビルドは無限の可能性を秘めている!!以後、お見知りおきを...See you!!』

 

 

その言葉を最後に、映像は止まってしまった。

 

 

「まさかこのベルトを葛城が作ってたとはね...」

 

「マジで鬼ビックリ何だけど!!ガチでヤバい!!」

 

すると突然、いつもとは全く違う喋り方をするニコ。

 

 

「何よその苛つく喋り方!!?」

 

 

我慢できなかったのか、ニコの喋り方をチユリが指摘する。

 

 

「あたしの知り合いがやってる店のバイトの娘に教えて貰ったんだよ、マジイケてるっしょ?」

 

 

頭の悪い話し方をするニコに、全員が呆れる。

 

 

「それより、このベルトはファウストから奪ったんでしょ?」

 

「えぇ、ボトルやパネルと一緒にね」

 

 

チユリの質問に、兎美が答える。

 

 

「そしてこのドライバーはハザードレベルが基準値を超えないと、使う事ができない」

 

 

チユリの質問に、兎美が答えた。

 

 

「ハザードレベル?」

 

 

疑問符を浮かべるチユリに、兎美はホワイトボードを使って分かりやすく説明をする。

 

 

「ネビュラガスの耐久力を、いくつかの段階に分けたものよ。まだ私達は見た事がないけど...ネビュラガスを注入された後、まもなく死に至るケースがハザードレベル1」

 

 

その説明を受けたハルユキは、まだ自分達が見てないだけでいままでの実験体の中にはハザードレベル1の人もいたのではないかと、最悪な事を考えてしまう。

 

 

「異形な怪人、スマッシュになるのがハザードレベル2。そして、ハザードレベル2を超える極少数がネビュラガスを注入されても人間の姿のままでいられる」

 

「それがあなた達って事ね」

 

 

そう言って、チユリは兎美とハルユキを指差す。

 

 

「そう言えば、スタークが言ってたな...」

 

『ハザードレベル3.6、3.7!!どんどん上がっていく!!こいつは面白い!!』

 

 

ハルユキはメモリーを奪い返す為に戦った時、スタークが言っていた事を思い出す。

 

 

「葛城のデータによれば、ビルドドライバーはハザードレベル3以上で変身可能になるらしい」

 

「この他に何か言ってなかったの?」

 

 

動画を再生していたパソコンを指差しながら、チユリが質問する。

 

 

「現段階で分かっているのは、ネビュラガスを使った人体実験でライダーシステムの資格者を探していたって事だけよ」

 

 

ガァンッ‼‼

 

 

ハルユキが柱を殴り、その音が部屋に響く。

 

 

「許せねぇ...何の罪もない人達をモルモットにして...葛城は人を人だと思ってねぇんだよ!!!」

 

「確かに...ネビュラガスの副作用を無視して、人体実験に踏み切ったのは問題よ。けど、科学の発展という観点で言えばこれだけのシステムを構築した功績は大きい」

 

 

兎美の言葉に、ハルユキは言葉を失う。

 

 

「何言ってんだよ...そいつは多くの犠牲者を出したんだぞ‼‼仮面ライダーだってお前がパクんなきゃ、只の殺人兵器だったかもしれねぇだろ‼‼」

 

「科学を軍事利用しようとするのは周囲の思惑よ‼‼科学者の責任じゃない‼‼」

 

「悪魔の科学者の肩入りをするのか?大体今回の事と何にも関係ねぇじゃねぇか‼‼さっさと事件を...」

 

 

バァン‼‼

 

 

「うおっ!!?」

 

 

どんどんヒートアップしていき、誰にも止められないと思っていた2人の言い争いは、ボトル生成器の扉が勢いよく開く音によって止まった。

 

 

「ひゃっほー!!」

 

 

ボトルが生成が完了した事によってテンションが上がった兎美は、生成器に駆け寄った。

 

 

「疲れたし...眠いし...寝るし...」

 

 

生成器から出てきた美空は、そう言ってベッドに横たわる。

 

 

「今度は錠前ボトルか...最高ね!!」

 

 

兎美の1部の髪の毛が跳ね、テンションが上がっていく。

 

 

いつもだったら一緒にボトルが出来た事を喜ぶハルユキだったが、そのまま何も言わず部屋から出て行ってしまう。

 

 

ハルユキが出ていく様子を、ベッドに横になった美空も、ボトルが出来てテンションが上がっていた兎美も...そしてチユリとニコも黙って見つめていた。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

ハルユキは怒りで熱くなった頭を冷やすために、自室で適当な服に着替えて玄関から出た。

 

 

エレベーターで1階まで降り、エントランスを早足に突っ切る。

 

 

マンションの敷地は、隣接するショッピングモールは訪れる家族連れで賑わっていた。

 

 

ハルユキは、マンションのゲート目指して走り始めた。

 

 

熱くなった頭を冷やすために、ハルユキは誰かと《対戦》しようとする。

 

 

杉並で戦えば、万が一タクムが観戦待ち受けをオンにしていた場合フィールドにギャラリーとして呼び込んでしまうので、ハルユキはエリアを変えることにして環七通りまで歩いた。

 

 

高円寺陸橋交差点のバス停で、内回りと外回りどちらのバスに乗るか少し考え、渋谷行きの方を待つ。

 

 

やたらと車輪を連ねた丸っこいEVバスが停まると、ハルユキはタラップを登った。

 

 

視界の端で、電子マネー残高から運賃がちゃりんと引き落とされる。

 

 

隅の空き座席に体を押し込み、流れていく夜景を眺めながら、ぼんやりと考える。

 

 

なぜ...葛城巧未はネビュラガスを使った人体実験を強行したのだろうか。

 

 

彼ら、人体実験の被験者達は、いったい今なにを感じているのだろうか。

 

 

実験による恐怖で涙を流しているのか、ただ助けを求め祈っているのか――それとも怨嗟に身を震わせているか。

 

 

もし...今この瞬間にも、ナイトローグやスタークが何かを企んでいるかもしれない。

 

 

あの2人、そして葛城の意図とはいったい何なのだろう........?

 

 

そんな思考を巡らせているうちに、バスは甲州街道を左折して、緑のレギオンの領土である渋谷区に入る。

 

 

レギオンの支配領土では対戦を挑まれない、という権利はこの時点で解除されたはずだ。

 

 

ハルユキ――シルバー・クロウの名前はマッチングリストに登録され、いつ乱入されてもおかしくない。

 

 

......誰だっていいさ、この熱くなった頭を冷やすためなら。

 

 

ハルユキは眼を閉じ、背もたれに深く体を預けてその瞬間を待った。

 

 

夜8時という、平日でもっとも《対戦》が盛んな時間帯だけあって、雷鳴にも似た加速者が聴覚いっぱいに響いたのはほんの30秒後だった。

 

 

暗闇に放り出されたハルユキは、デュエルアバターに変身しつつわずかな距離を落下し、地面を踏みしめた。

 

 

やはり真っ先に背中を確かめてしまったが、金属翼は影も形もない。

 

 

ぎゅっと1度眼をつぶり、改めて周りを見渡す。

 

 

相変わらず夜の甲州街道だが、びっしりと道路を埋めていたはずの車列は、乗っていたバスを含めて消滅していた。

 

 

路面はひび割れ、陥没し、そこかしこで瓦礫が山を作っている。

 

 

《世紀末》ステージかと思いながら、対戦相手の名前を確認する。

 

 

そして驚愕する。

 

 

なぜなら対戦相手の名前が《アッシュ・ローラー》だったからだ。

 

 

アッシュローラーは、ハルユキが半年前にこのブレイン・バーストをインストールして最初に戦った相手だ。

 

 

そういえば...あの時も《世紀末》ステージだったなと、生まれて初めての加速対戦と、相手もステージも同じだった為に懐かしみながら広い道路の真ん中で待つ。

 

 

敵の方向を教えるガイドカーソルは、東を指して震えている。

 

 

やがて――暗闇の奥から、どこどこどこという太い駆動音が聞こえてきた。

 

 

ぴかっ!と丸型ヘッドライトの光が眼を射た。

 

 

前後のブレーキローターから赤い火花を撒き散らしながらド派手なスピンターンを決めたアメリカンバイクが、クロームパーツに周囲のかがり火を反射させて停止した。

 

 

「へいへいヘェ―――――――イ!!」

 

 

シートにふんぞり返ったスカルフェイスのライダーが、両手の人差し指をびしっとハルユキに向けた。

 

 

「メガ・ヒサッシーじゃねぇかYOU!なんだぁ、俺様が恋しくてビター・ヴァレーまで来ちゃったのかYOOOOU!?」

 

「.........は?」

 

 

あっけに取られ、ハルユキは挨拶も忘れて訊き返した。

 

 

「び、びたーばれーって何?」

 

「オイオイオーイ、解れよ、アンダスタれよ!ヤーシブに決まってんだろヤーシブぅ!」

 

「.........」

 

 

更に1秒ほど考えてから、ようやく渋谷のことかと察する。

 

 

「......あの、アッシュさん。ビターは《渋い》じゃなくて《苦い》だと思いますけど......。シブヤじゃなくてニガヤになっちゃいますよ、それじゃ」

 

「............マジリアリー?」

 

「............マジリアリー」

 

 

アッシュローラーのノリに引き摺られ、さっきまで怒りで頭が熱くなっていたのについ入れてしまった突っ込みに、道路沿いのビルからギャラリーの笑い声がどっと沸いた。

 

 

アッシュ・ローラーはそちらを見上げると両手の中指をぶんぶん振り回した。

 

 

「LOLってんじゃねぇメ――――ン!てめぇらすぐぶっとばすから待っとけ!!」

 

 

すぐにハルユキに骸骨顔を戻し、声を低める。

 

 

「......で、渋いって英語でなんつうの?」

 

 

「え、ええと......ラフ、かな」

 

「ほほう。つまりラフ・ヴァレーね。......って、ンなこたぁ、どうでもいんだよ!!」

 

「そ、そっちが訊いたんじゃ......」

 

 

アッシュ・ローラーとのやり取りのお陰で、頭が冷えてきたハルユキは理不尽だと考える。

 

 

そこでアッシュ・ローラーが、ある事を思い出す。

 

 

「そういえばシルバー・クロウ!お前いつのまに《子》を作ったんだ?」

 

 

1秒...2秒...と先程よりも考える時間を要し、ようやくアッシュ・ローラーの言ってる事を理解する。

 

 

「えぇぇぇぇぇ!!!何でアッシュさんが僕に《子》が出来た事知ってんですか!?」

 

 

ハルユキは自分に《子》が出来た事など、どのバーストリンカーにも伝えてない。

 

 

知ってるのは同じレギオンの黒雪姫達、そして赤の王であるスカーレット・レインだけなのだから。

 

 

サファイア・ラビットは、まだ領土戦にも出ていないからそこから情報が漏れたとは考えにくい。

 

 

「お前の《子》、サファイア・ラビットが俺に勝負を挑んで来たんだよ!!」

 

「えぇぇぇ!!」

 

 

サファイア・ラビットは最近バーストリンカーになったばかり、だからもちろんレベルは1だ。

 

 

しかし、目の前のアッシュ・ローラーはレベル4。

 

 

いくら何でも無茶すぎる。

 

 

そこでギャラリーから、簡単に負けちまったけどな~、流石はシルバー・クロウの《子》だな!という野次が飛ぶ。

 

 

その野次のお陰で、対戦がどうなったのか早々に予想がついた。

 

 

「だまらっシャラップ!」

 

 

ギャラリーに向けて、もう一度両手の中指をぶんぶん振り回した。

 

 

両手の人差し指を、びしっとハルユキに向けた。

 

 

「《子》の不始末は《親》に責任取って貰わないとな!!」

 

「何その理不尽!?」

 

 

今度は我慢できず、声に出してハルユキは突っ込みを入れる。

 

 

「だまらっシャラップ!通算でちっと勝ち越してっからっていい気んなってんじゃねぇぞYOU!」

 

 

声と共にハンドル脇のボタンが押されると、フロントフォークの両脇に装着された謎の筒から、じゃきりと真っ赤な円錐が顔を覗かせた。

 

 

まさか、と思うが、どう見てもソレ以外ありえず、ハルユキは呆然と呟いた。

 

 

「そ......それ、ミサイル?」

 

「イエスアイドゥ!ミッソゥだぞ、ホーミングつきだぞこのフライング野郎!」

 

「で、でも、アメリカンバイクにミサイルってデザイン的......というか、美学的にどうなんです......?」

 

「あんだと!世紀末的にメガ・ク―――――ルだろうが!!おらさっさと飛べ!そして泣け!!」

 

 

そう喚いたところで、アッシュ・ローラーは、ようやくシルバー・クロウの異変に気付いたかのように首を伸ばした。

 

 

「.........って、おめぇ、なんで羽根しまってんだよ。もう対戦始まってだろうが、とっとと出しやがれ」

 

 

ハルユキは小さく首を振り、早口に言った。

 

 

「ちょっと事情があって。今日は地面で相手さしてもらいます」

 

「.........へー。まぁ、好きにすりゃいいけど......ナメてんだったらマジ泣かすかんな!」

 

 

ちらりと残り時間表示を確認し、スロットルを一煽りしてから、甲高く叫ぶ。

 

 

「レッツ・ダァァァ――――ンス!!」

 

 

後輪から激しく白煙を上げ、右側にダッシュするバイクを、ハルユキはじっと見つめた。

 

 

ここしばらくの対アッシュ・ローラー戦は、垂直の壁面を自在に走行するバイクに、ハルユキがいかに急降下攻撃を命中させるか、という展開で伊多している。

 

 

だがもちろん、もうその戦法は使えない。

 

 

こちらが向こうの突進を躱し、背面から少しずつダメージを与えていくしかない。

 

 

バイクは離れた場所で鋭角にターンし、一直線に突っ込んできた。

 

 

腰を落とし、その軌道を見極めようと意識を集中する。

 

 

「............くおっ!」

 

 

ぎりぎりまで引き付けてから、気合とともに右に飛ぶ。

 

 

前輪のトレッドがチッと脚を掠める。

 

 

――ここ!

 

 

ハルユキはそのまま体を回転させ、ライダーに拳を打ち込もうとした。

 

 

しかし。

 

 

「トオオオゥッ!」

 

 

声と共に、突然横から飛んできたブーツが、ハルユキのヘルメットを捉えた。

 

 

吹き飛ばされながら眼にしたのは、シートの上に直立し、蹴り脚を振り抜いたアッシュ・ローラーの姿だった。

 

 

すぐにすとん、と腰を下ろし、再加速していく。

 

 

20メートルほど先でターンし、またしてもシートに立ち上がる。

 

 

どうやらアクセル操作は右足で行っているらしい。

 

 

「見たかYOOOOU!これぞ俺様の新技、Vツイン拳だぜぇ!!」

 

 

ネーミングはともかく、見事な技術だ、と立ち上がりながらハルユキは感心した。

 

 

巨大なバイクを、まるでサーフボードのように2本の脚だけで操っている。

 

 

車体による突撃だけでなく、ライダー本人も攻撃力を持つことで、回避された後の隙を消しているのだ。

 

 

......それでも。

 

 

と、ハルユキは胸の中で呟いた。

 

 

ハルユキは倒れる身体を起こし、自分の脚でしっかりと地面を踏みしめる。

 

 

ダッと駆け出したハルユキは、グッと拳を握りもう一度アッシュ・ローラーに拳を打ち込もうとする。

 

 

「無駄ァ無駄ァ!」

 

 

アッシュ・ローラーはもう一度、Vツイン拳でまた相殺しようとする。

 

 

このまま顔や胴体を狙えば、さっきの繰り返しだ。

 

 

ハルユキが狙うは、自分を蹴り飛ばそうとしてくる脚、一点のみ。

 

 

「うおおおおおぉっ!!!」

 

 

もしここで負けても、ハルユキが失うのはポイントだけだ。

 

 

それでも、仮面ライダーとして戦っているハルユキにとって、負ける訳にはいかなかった。

 

 

自分自身の為じゃなく、誰かの為に戦う。

 

 

レベル10になる為に戦う黒雪姫の為に...

 

 

ハルユキを心配し、隣に寄り添おうとするチユリの為に...

 

 

仲間として...そして家族として一緒に戦う兎美や美空の為に...

 

 

そして、自分の犯した罪を償うために必死に頑張るタクム()の為に...

 

 

それがたとえ、負けると分かってる戦いだとしてもハルユキは戦い続ける。

 

 

「今の俺は!!負ける気がしねぇ!!!」

 

 

気合の掛け声と共に、ハルユキは更に拳に力を籠める。

 

 

「何!?」

 

 

いつもより力強い戦い方に、アッシュ・ローラーは動揺する。

 

 

動揺して力が緩んだ隙を逃さず、ハルユキは思い切って拳を振り抜いた。

 

 

「おらぁ!!」

 

「ぶほぉ」

 

 

ハルユキに殴り飛ばされたアッシュ・ローラーは、棒切れのように宙を舞い、路面に激突して、更に二転、三転、大音響とともに瓦礫の山に突っ込み、ようやく停まる。

 

 

そして回転したままハルユキの横を通り過ぎたバイクは、壁に激突し大破した。

 

 

瓦礫から這い出てきたアッシュ・ローラーは、大声で叫びだす。

 

 

「ソ―――――――――――・バッドだぜ。おいクロウ、てめぇ、何で飛ばねぇ!!縛りプレイでもして楽しんでんのかぁ!!?」

 

 

ハルユキはスカルフェイスを捉えて、ギャラリーには聞こえないボリュームの声で答えた。

 

 

「羽根は...奪われました...」

 

「!!?」

 

 

ハルユキの言葉に、アッシュ・ローラーは言葉を失う。

 

 

しばらくの間、2人の間に沈黙が続く。

 

 

どれぐらい続いたか分からないが、アッシュ・ローラーがその沈黙を破った。

 

 

「奪われたって...誰にだ」

 

 

気を使ったのか、アッシュ・ローラーもギャラリーに聞こえない声で話しかける。

 

 

「すみませんが...それは言えません。あなたまで巻き込むわけにはいきませんから...」

 

 

ハルユキは自分の決意を、アッシュ・ローラーに話す。

 

 

「たとえ...このまま羽根が帰ってこなくても。たとえ...この先誰にも勝てなくなってしまったとしても俺は諦めません。最後まで戦い続けます」

 

 

ハルユキの決意を聞いた髑髏ライダーはぐいっと顔を突き出し、囁くような声で訊いてきた。

 

 

「おい。今、どこにいる」

 

「......え?」

 

 

突然の問いを理解できず、ハルユキは両眼をしばたかせた。

 

 

「どこからダイブしてんだ、って訊いてんだよ」

 

 

――対戦中に生身の体の位置を訊ねるなど、本来有り得ない問いだ。

 

 

しかしなぜかハルユキは、リアル割れの危険を一切考えず、吞まれるように答えていた。

 

 

「こ......甲州街道......バスに乗ってます」

 

 

ち、と短く舌打ちし、アッシュ・ローラーは更に意味不明の言葉をまくし立てた。

 

 

「じゃあ、これが終わったらすぐに家に戻れ。トイレ行って布団入って、《上》にダイブしろ」

 

「う......上......!?」

 

「アホ、声がでけぇよ、ギャラリーに聞かれんだろうが!上っつったら《無制限中立フィールド》以外あるか。ダイブしたら、もう一度環七と井ノ頭通りの交差点まで来い。潜る時間は......そうだな、9時ジャストな。1分たりともずらすんじゃねーぞ」

 

 

唖然とするハルユキにそう命令すると、アッシュ・ローラーは宙に指を走らせた。

 

 

ハルユキの目の前に、引き分け要請窓(ドロー・オファー)が開く。

 

 

「ほれ、とっとと了承しろ!」

 

 

その勢いに押され、ハルユキはわけに解らずOKボタンを押した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

《対戦》が思わぬ形で終了し、現実世界の道路を走る電気バスの車内に戻るや、ハルユキは即座にグローバル接続をキャンセルした。

 

 

ちょうど停まったバスストップで、タラップから転げ落ちるように降りる。

 

 

左右を見回し、最寄りの交差点まで走って、甲州街道の反対側まで渡ると今度は高円寺行きのバスに飛び乗る。

 

 

再び高円寺陸橋交差点のバス停に戻った時には、時刻は8時半を回っていた。

 

 

ハルユキは懸命に走って自宅に帰り着くと、玄関には既にチユリ達の靴は無くなっていた。

 

 

その事を確認したハルユキは、まだ兎美達と顔を合わせたくなかった為、言われた通りさっさとトイレを済ませ、ベッドに転がった。

 

 

デジタル数字が午後8時59分58秒になった時、ハルユキはぎゅっと眼をつぶり、大きく息を吸って、そのコマンドを呟いた。

 

 

「......アンリミテッド・バースト」




どうも!!ナツ・ドラグニルです!!


今回は、いつもより早く投稿することが出来ました。


それも部屋を大掃除してデスクを買ったお陰ですね。


小説を書く環境がしっかりしてるって、素晴らしい事だなっと改めて思いました。


今まではベッドの上で膝の上にパソコンを置いて、書いていたので...


さて、今回はビルドの第9話の最初とアクセル・ワールドの原作を掛け合わせた作品になりました。


原作のハルユキは能美に負け、全てを諦めていました...


しかし、私の作品のハルユキは兎美達と出会い仮面ライダーとして戦っている為、最後まで諦めません。


仮面ライダーとして戦っている以上、皆の明日を創るためにハルユキは戦い続けて欲しい所です。



そして、そろそろ3つ目の作品も投稿を始めようかと考えております。


一応、活動報告にも書きますがあと1話で1章の話を書き終える事が出来ます。


それを機に、3つ目の作品『LOVE TAIL』を投稿しようと思います。


それでは次回、第10話もしくは異世界より帰還せし激獣拳使いの幼馴染第36話でお会いしましょう!!


それじゃあ、またな

文字数の調度いい長さを教えてください!

  • 7000~10000 第3章第3話参考
  • 10000~15000 第2章第8話参考
  • 15000~20000 第3章第2話参考
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