魔法少女リリカルなのはACE   作:コエンマ

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第十九話  契約と約束

『女のウソは、許すのが男だ』

 

 

 ――――麦わら海賊団〝黒足〟サンジ

 

 

 

 

 

 時空管理局巡航L級型戦艦『アースラ』。進水―――というのかは定かではないが―――されてから長く任務についているが、その有能な働きぶりは本局の中でも顕著である。それは指揮をしているリンディや有能な部下によって支えられているところも大きい。

 

 そんな有名な艦内において、

 

「ふぇぇええええええ~~~~~~~っ!?」

 

 甲高い少女の悲鳴が上がった。現在いるのはブリッジに向かう通路の中間地点。メンバーはエースになのは、ここまで案内してくれたクロノ。そして、

 

「あの………なのは、エース?」

 

 フェレットから変身した金髪の少年であった。フェレットに慣れていたがゆえインパクトはでかいが、当の本人はきょとんとしていた。無論のことなのはの狼狽ぶりは言うに及ばず、エースに至っても驚いているようで呆気に取られている。

 

 エースによってコテンパンに打ち負かされたクロノが三人をこの船に連れて来たのは先刻のこと。道中は特に何も無かったのだが、そこでユーノの秘密を見抜いていた彼からの進言によりフェレット状態を解除。人間体になったユーノが原因でなのはが騒ぎ出し、今に至るというわけである。説明終わり。

 

「ユーノくんってユーノくんって、あのっ、そのっ、何っ!? えっ、そんな、嘘っ………ふぇえええええ~~~っ!?」

 

 混乱の極みというものを体現しているように、なのはは百面相をしながらあれやこれやと騒ぎ続ける。ユーノ自身もなのはの反応に混乱しているらしく、困り顔でオロオロしている。一方のクロノは訝し気に眉を寄せていた。

 

「………? 君達の間で、何か見解の相違でも………?」

 

「………ま、そんなトコだ。それにしても、こうして見るとホントに能力者みてェだな………」

 

 エースがしみじみとユーノを眺めながら腕を組む。目の前では、一度姿を見せたんじゃなかったかと問うユーノに「違う違うっ、最初からフェレットだったよぅ~!」と叫ぶなのはがいた。対するエースは驚きこそしたものの、何となくそんな節は感じていたのでそれほどではない。

 

 そもそも動物系(ゾオンけい)の能力者なら似たような感じであるし、種によってはユーノなど比較にならないほどの異質さを持つ者もいるのだ。いろいろと規格が違いすぎるアレと比べれば、そんなものか程度で済ませられるレベルだろう。

 

「コホン、ちょっといいか………君たちの事情はよく知らないが、こちらは艦長を待たせている。出来れば早めに話を聞きたいんだが」

 

「「す、すみません………」」

 

 少し不機嫌そうな顔で諭すクロノに、二人がペコペコ頭を下げた。エースはそれに苦笑し、やっとのことで歩き出す。クロノに僕より先に行くなと怒られながら、エース達はいくつか扉を潜っていった。

 

 そして、明らかに赴きの違う大きめのドアが現れる。その前に立つと、ドアに向かって声を掛けた。

 

「艦長、来てもらいました」

 

 クロノが直立不動で報告を口にする。すると重厚な扉がスッと静かに開いていった。その先に見えた光景になのはとユーノは言葉を失う。

 

 開口一番、ほとんどノーリアクションだったエースの口から出てきた感想は、

 

「花見会場みてェだな」

 

「艦長の趣味だ………」

 

 何ともこの場に似つかわしくないものだった。それはクロノも同じらしく、疲れたような顔を見せて溜息を吐く。目の前には予想していたのとは違う、極めて和やかな雰囲気が満ち溢れる場だった。棚に並べられた盆栽に茶道具一式、立てかけられた赤い和傘、舞い散る桜―――なんでこの中に木があるのかは謎だが―――が醸し出す雰囲気が室内を支配している。

 

 その中心で正座していたリンディが此方に振り向き、にこやかな笑みを浮かべた。

 

「さ、どうぞ座って?」 

 

「「は、はぁ………」」

 

「おう。そんじゃ遠慮なく」

 

「君はもう少し遠慮しろ。順応するのが早すぎる」

 

 クロノが呆れ顔で言った。リンディはそれを見ると、笑みを深めて茶を点てていく。

 

 どこで習ったのか、一挙手一投足はちゃんと茶道の作法に則ったものだった。エースはそれを興味深げに眺め、なのはは横においてあるミルクと砂糖に首を傾げている。

 

 そしてそれを人数分だけ用意すると、綺麗に切り分けられた羊羹を沿えてエース達の前に差し出した。

 

「どうぞ」

 

「あ、は、はい。ありがとうございます………」

 

 ぎこちない仕草で作法を気にしながら口をつけるなのは。ユーノも恐る恐るといった感じだ。エースは………普通に一気飲みである。

 

 そして早々に湯のみを置く。なのはとユーノは若干緊張気味だ。エースはそんな雰囲気などお構いなしに羊羹を頬張り、盛大に一息吐きながら口を開いた。

 

「むぐむぐ………ごっくん。あー、お茶請けは塩煎餅が欲しかったんだが」

 

「我侭を言うなら帰れ!」

 

「ふふ、ちゃんと用意してあるからちょっと待っててね」

 

「艦長っ!?」

 

 マイペースの二人に敵はなかった。リンディがリクエスト通りに差し出した塩煎餅を、エースはパリポリと胃の中に収めていく。クロノはいちいちツッコむのにも嫌気が差したのか、心底疲れたような顔をしてぐったりしていた。

 

 そんな彼を置いてきぼりにして、話は進んでいく。ユーノとなのはから事情の一端を窺い聞いたリンディは、笑みを少しだけ真面目な顔に戻す。その視線をエース、なのはへと移し、最後にユーノへと向けた。

 

「成程。あのロストロギア、ジュエルシードを発掘したのは貴方だったんですね」

 

「はい。だから僕が回収しようと………」

 

 俯くユーノに「立派だわ」と賞賛を口にするリンディ。だが、後ろにいたクロノは無謀だと苦い顔をしていた。おずおずとした様子でなのはが手を挙げる。

 

「あの………ロストロギア、って言うのは一体……?」

 

「ああ、遺失世界の遺産………って言っても分からないわね。えっと………」

 

 なのはの質問にリンディは言葉を選びながら説明を始めた。

 

 曰く、世界は一つではない。なのは達が住む世界を含め、次元空間内には世界が無数に存在している。その中には、進化しすぎたその技術ゆえに自ら滅びの道を辿ってしまった世界が存在する。滅びてしまった世界から零れ落ちた失われし遺産、それらの相承をロストロギアと呼ぶのだと。

 

 使用法などは不明。だが、ともすればその世界どころか、次元空間そのものを滅ぼしかねないという危険極まりない技術―――と。

 

「然るべき手続きを取って、然るべき場所に保管されていなければならない、危険な代物………貴女達の探していたジュエルシードはそんな中の一つ、次元干渉型のエネルギー結晶体なの。複数個集めて特定の方法で起動させれば空間内に次元震を引き起こし、最悪次元断層すらも巻き起こす危険物………」

 

「君とあの黒衣の魔導師がぶつかった時に起きた衝撃、あれが次元震だよ」

 

 クロノが補足的に付け加えた一言になのはがハッとした。同時にエースを傷つけてしまったことを思い出したのか、暗い顔で下を向く。それを静かに見ていたリンディはキリッと表情を引き締めた。

 

「これより、ジュエルシードの回収に関しては時空管理局が全権を持ちます」

 

「「えっ!?」」

 

 リンディの言葉になのはとユーノは目を見開く。同時にクロノからも、元の世界の元の生活に戻るように進言される。つまりは、事実上この件から手を引くようにとの通達だった。

 

「で、でもっ………」

 

 なのはは納得いかないように身を乗り出す。これまでなんとかやってこれた彼女達からすれば少し納得できない話である。だが、クロノは民間人が介入できるレベルじゃないと一蹴した。

 

 組織の人間、管理局に属する者ならば当然の対応であろう。真面目を地で行く彼の性格もそうだが、下手をすれば多大な被害を及ぼすであろうものに対し慎重になるのは当然である。少なくとも自分たちが関わろうとしているものがどれほど危険なものであるか、それを二人よりも深く理解しているのは間違いない事実だった。

 

 完全な戦力外通告を下され、俯くなのは達。納得できない、そんな心情がありありと浮き出ている。そんな二人に対し、リンディは努めて笑顔を見せながら口を開いた。

 

「まあ、急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう。今夜一晩、みんなでよく考えてそれから改めてお話しましょ?」

 

「そういうことだ。送っていこう、元の場所でいいね?」

 

 リンディの言葉にクロノが立ち上がり、先導するように扉へと促した。なのはとユーノもそれに従い、おずおずと立ち上がる。

 

 そして出口となる扉へと向かおうとして、

 

 

 

 

 

「なのは、ユーノ。悪ィがちっと待ってくれ」

 

 

 

 

 

 その足を止めていた。振り向くと、先ほどから微動だにしなかったエースが腕を組んだまま胡坐をかき、こちらに背を向けて座っていた。

 

 その口調も雰囲気もいつもと変わりないものだ。今の話しを聞いて焦燥感に苛まれているというわけでもなさそうだし、彼を取り巻く雰囲気にも何ら変化はない。だが、なのは達はその声に何か強い違和感を感じていた。

 

 視線を向けたまま、エースはゆっくりとその口を開く。

 

「リンディさん。会ってからまだほとんど経ってねェが、おれはあんたを好ましく思ってる。一人の人間としても組織の長としても、コイツの母親としてもだ。好意的に受け止められる人だってな」

 

「まあ、ありがとうエースくん。あなたからそこまでの評価をもらえるなんて思わなかったわ」

 

 思いがけない賞賛。いきなりの賞賛にリンディは少し面食らったようだったが、すぐに表情を元に戻す。人懐っこい笑顔でエースに笑いかけた。同時に扉近くのなのは達にも笑みを向ける。

 

「それじゃ今日はゆっくり休んでね。迎えは明日の朝に――「だから、一つだけ言わせてくれ」?」

 

 言葉を割り込ませ、少し長めに息を吐くエース。訝し気な表情の一同を尻目にゆっくりと、エースが顔を上げていく。そして開かれたその瞳に捉えられた瞬間、

 

「―――頼み事なら正面切って言いな。どんな物事にも筋はキッチリ通すもんだ。言ったはずだぜ? 約束を反故にしたら、おれにも考えがあるってな」

 

「っ―――!?」

 

 知らず、リンディは息を呑み込んでいた。別に睨まれたわけでも、凄まれたわけでもない。だが、ただ『見ている』だけのエースからリンディは何か空恐ろしいものを感じたのだ。

 

 目を逸らすのをやっとのことで抑える。動揺を心中に隠しながら、彼女はカラカラに渇いた口をゆっくりと開いて応じた。

 

「………何のことかしら?」

 

「恍けるのか? だが、誤魔化そうとしても無理だぜ。さっきからの会話でアンタの性格は大体掴めたし、それに何よりもアンタ自身がそれがウソだって証明しちまってる。アンタほどの人間が今のおれの言質に気付いてないワケがねェ。子供相手だと思って自分を出しすぎたな」

 

 淡々と、感情を交えない声色で話すエース。なのは達は二人の間に流れる空気に疑問符を浮かべたり、エースとリンディを見比べておろおろしたりしている。

 

 しかし、漂う緊張感は彼女達に割って入ることを許さなかった。

 

「いま言ったことに嘘はねェだろうよ、その態度も本物だ。けど、肝心なことを話してねェ。アンタが一番欲しいのは、おれ達の持つ〝力〟そして目的を遂行させるために動いてくれる人間だ。この先でどんな事態になるか分からねェ今、切れる手札は多いに越した事はない。いざと言う時に囮や捨て札にする事も考慮に入れれば、関わりが薄い人間の方が好都合だからな」

 

「………っ!?」

 

 捨て札と言う言葉に肩をビクッと揺らし、思わずリンディの方を見るなのは。リンディは彼女の視線に気付きながらも目を向けない。否、そんなことなど出来るはずもなかったのだ。

 

 この場を支配する目の前の少年から目を背けることなど。

 

「それに、なのははそっちの基準で相当稀有な才能の持ち主だって言うじゃねェか。それも、人手不足だろうこの状況を一気にひっくり返せるほどのな。そんなものを目の前にして、仮にも組織を束ねる人間が黙って見てるだけなんてことがあると思うか? そんな人間は上になんか立てねェよ」

 

 紡がれる無機質な口調。だがそれには強い確信が宿っている。エースは抹茶の湯のみを指先に器用に乗せ、お手玉のように弾きながら言葉を続けた。

 

「つまりこういうことだろ。今自分達が持つ戦力だけじゃ、この事件を解決するのには少々心もとない。こいつ………クロノはそれなりにゃやるようだが、どうしたって物理的に無理が出てくる。話から推測すりゃ、てめェらの上層部はこれ以上ここに戦力を割く気はないらしいしな。だから手っ取り早く〝使える人間〟が欲しい」

 

 エースは再び指を弾いた。打ち上げられた湯のみが空に放物線を描いて宙を舞う。そして落ちてきたそれを指一本で受け止めて床に置くと、なのはとユーノへ視線を向けた。

 

「そんな時、目の前になのはやユーノ、おれが現れた。しかも相手は時空管理局をよく知らない人間、知っていてもまだ子供(ガキ)だ。上手く自分達の力として引き込めれば、それだけで大きな利がある。けどそっちから頼めば体裁は悪ィし、万が一おれ達に何かがあろうもんなら、組織としても角が立っちまう」

 

「っ!? 待ってエース! それじゃまさか………」

 

 ユーノがハッとしてエースに視線を向ける。なのはは相変わらず首をかしげているが、ユーノはエースの言わんとしていることに気付く。だが、推測でしかないそれを口に出していいものか迷って言いよどんでいるようだ。

 

 エースはそれを裏付けるようにリンディに視線を戻す。相変わらず口調は変わらない。しかし、その瞳には鋭い光が宿っていた。

 

「情報を限定しちまえば、ガキが状況を判断する方向ぐらい簡単に誘導できる。わざわざこんなトコに連れてきて、おれ達を不安にしかさせない情報だけを一方的に与えて、その上で考える時間なんてものを寄越す理由なんてそれぐらいだろ」

 

 確信に満ちた声だった。その瞳に宿る光は紛れもなく戦士のそれ。リンディ達に対する静かな、しかし強い怒りと敵意を表す眼差しだった。

 

「危機感を煽って自分から手伝うように仕向けさせる、それがアンタの目的だ。その上で味方に引き入れて、この先も自分達の力として扱う………ってことも視野に入れられれば十分か。綺麗な顔して、やることは随分とえげつねェんだな」

 

「い、いい加減にしないか! 君の言い分は何の証拠もないただ憶測だろう! そんなもので場を混乱させるんじゃない! 言いがかりも甚だしいぞ! 艦長も何か「クロノ、少し待って頂戴」え、か、母さん………?」

 

 言葉を遮られ、戸惑うように自らの母を見つめるクロノ。思わず艦長と呼ぶことを忘れてしまっている辺り、その混乱の程度が窺える。だが、この場で一番動揺していたのは制止をかけた他ならぬリンディ本人だった。

 

(何者なの、この子………!?)

 

 侮ってなどいなかった。相手が子供だろうと抜かりなどはないように努めた。数え切れぬほどの経験で培った対話術だって用いた。交渉に関しても自然な形で提示できたはずだ。

 

 だから―――だからこそ信じられない。今日会ったばかりの相手に、それもたかだか十歳程度の少年に自分が翻弄されているという事態に。恐れを抱いているという事実に。

 

「小細工は止めようぜリンディさん。おれが聞きたいのはこの先でアンタ等がどうするつもりか、それにおれ達をどう関わらせるつもりかってことだけだ。こんな簡単な事も答えられねェてんなら話はここで終わりにする。こっちには元からアンタに付き合う義務も義理もねェんだからな。これ以上仁義を欠くようなマネをすれば、おれも一切容赦はしねェ。力づくで来るってんなら、この(ふね)ごと沈めて行くぜ?」

 

 黙ってしまったリンディにエースは静かに告げる。声色は先ほどと何も変わらない。だが、その中には有無を言わせぬ色がにじみ出ていた。

 

 彼は本気だ。冗談とするには空気が殺伐とし過ぎている。元より相手は子供、などという軽口で済ませられる状況ではなかった。

 

 チンピラのような口先だけの脅しなどではない。提示されているのは警告だ。それを理解させるだけの力が彼の言葉にはあった。もし約束を違えれば、エースは間違いなくこの船を潰しにかかる、と。

 

「………わかりました。言い方は少し乱暴ですが、此方も思うところがなかったわけではありません。あなた方の協力を仰ぐためとはいえ、浅はかな行動でしたね」

 

「か、艦長!?」

 

 クロノが信じられない、という風に目を見開く。執務官であるとはいえ、まだ幼い彼にとってはショックだったのだろう。その表情に一抹の寂しさと申し訳なさを覚えつつ、リンディは顔を上げた。

 

「でも一つだけ。捨て駒とか、そんなつもりで言ったのではなかったということは分かって欲しいの。純粋にこの事態を打開するためにあなた達の力が必要だと思ったから………いえ、これも言い訳ね。謝って許されることではないかもしれないけれど、本当に申し訳ないことをしました。約束を違えるような真似をしてごめんなさい」

 

 長い髪を揺らしながらリンディが頭を下げる。時空管理局の提督が年端もいかぬ子供に頭を下げるなど、通常なら絶対にありえないといっていい光景だ。呆気に取られる一同をよそにエースはしばらくリンディを見つめ、そして雰囲気を元に戻した。

 

「悔いる気持ちがあれば十分。アンタが真面目な人間だってのはよくわかった。そこにいるクロ坊たちを思っての行動だったってこともな。ま、以後よろしく頼むぜ」

 

 ニカッと笑うエース。先ほどまでの威圧感は嘘のように霧散し、穏やかな空気が戻ってくる。

 

 リンディは肩が軽くなっていく感覚に内心一息つきながら、改めてエースと時空管理局の契約を詰めて行った。

 

 内容は大まかにわけると以下の通りである。 

 

 

 

 一つ。なのはやユーノ、自分の力を接収しようとしないこと。

 

 

 

 

 一つ。事件が収束したのち、フェイト達と交渉する場を設けること。

 

 

 

 

 一つ。この事件に関して出来る限りの情報を開示すること。こちらに情報の開示を強制しないこと。

 

 

 

 

 一つ。エースの【力】に関しての情報はこのアースラ内に留め、『映像や書類など、あらゆる情報収集・保存』や『時空管理局、その他いかなる外部組織への情報開示』を禁止すること。

 

 

 

 

 一つ。もしも行動を共にする場合は、自分達の『戦力』は自由に作戦に組み込んで良い。ただし、方針には基本的に従うが、いざと言う時には己の判断で動かせてもらうこと。

 

 

 

 話し合い自体は十数分で終了した。リンディもその内容については大体の予想ができていたので、流れるようにして話が進んでいく。それが終わると、クロノがエースへと近づいた。

 

「君は一体………?」

 

 クロノが呆然としたように問いかけてくる。一大組織の提督相手に一歩も引かずにその策謀を見抜き、なおかつ対等な関係へと持ち込んだのだ。

 

 いや、対等ではない。負い目がある分、管理局のほうが不利になった。それを為したのはまだ自分より下の、十歳にも満たない少年。何かの冗談としか思えないような事実だ。

 

 エースは彼の様子に若さを感じつつ、ニヤリと笑って胸を張った。

 

「さっきも言ったろ。おれの名はポートガス・D・エース。しがない旅人にして翠屋の新人ウェイター、しかしてその実態は海――『ストップですマスター。この前テレビでやっていたような名乗り口上はいいですから、そこからは私が説明いたします』んお? エール?」

 

 自らの主の台詞を遮り、エールが声を発する。どうやら会話に参加する機をうかがっていたようだ。リンディ達は突然の介入に驚きながらも黙って彼女の言葉の続きを待った。

 

『リンディ女史は薄々お気づきかとは思いますが、マスターもあなた方と同様、この世界の人間ではありません。ユーノの言葉を借りれば次元漂流者というべきものです。ちなみに私の名はエール。マスターをサポートする専用のインテリジェントデバイス………ではありませんが、似たようなものです』

 

「管理局に登録されていないデバイス………エースくんに関わってから驚きの連続ね。あなたのことはまたゆっくりと聞かせて貰いたいのだけど、今は置いておくわ。ここで入ってきたのには理由があるのでしょう?」

 

 リンディの言葉にエールは淡く発光した。まるで苦笑しているような人間味溢れる反応に、クロノやエイミィも興味深く見つめている。全員の視線が集まる中、エールはリンディの言葉を肯定した。

 

『ええ。一度マスターを謀ろうとしたとはいえ、あなた方はそれを深く反省していると見える。そしてあなた方の謝罪にマスターは応え、信用するに値すると判断した。なればこそ、私もその仁義に応えなければならない。お話し致しましょう。マスターを取り巻いていた環境と世界、そして―――』

 

 一度区切って間を置き、だがはっきりと口にした。

 

『―――――〝海賊〟ポートガス・D・エースの事を』

 

 

――――TO BE CONTINUED...

 

 

 




以上です。続きはまたの機会に・・・
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