神様を殴る為に神を目指すのは間違っているだろうか 作:-恵-
北東のメインストリート――
「?バベルの塔には行かないの?
ヘファイストス・ファミリアの店ならそっちの方が近いよね?4階~8階の」
「へえ。もう把握しているのか」
「そこのものだと、多分…武器も防具も耐えられないと思う」
「え?」
「(くすり)君はもう少し自覚を持った方がいい。
君はもう上級冒険者で、人類史上初とも言える「Lv.8」だ。
店で売られている程度のものではきっと耐えられないし、壊れるに違いないだろう?」
「う~ん…なるほど、そういうことか!」
「(わかってくれたか)」微笑
手を打ち、理解を示す彼女に僕は黙ったまま頷き微笑んだ。
神に打ってもらうわけにも行かない。
しかし、だからと言ってすぐに壊れるものでは困る。
だからこそ、ある人物に依頼をしようと足を進めていた。
椿の工房
コンコンコン
「椿、居るかい?」
がたん
「おお。フィンではないか!」
「急に済まない」
「気にするな!おお、剣姫もか!」
「…どうも」ぺこ
戸に3度ノックした後、がたんと扉は開かれ、彼女は快活に笑いかけ、アイズは頭を下げた。
「息災であったか?
ん?見ない顔がおるの」
「彼女はケイト、僕の妻だ。ほら」とんっ
「あ!//
ケイト・ディムナです!よろしくお願いします!!//」
微笑みながらケイトの背に手を当てて案内を促すと、真っ赤になりながらも自己紹介を終えると共に深々と頭を下げた。
……どうやら初対面の人には必ず緊張するようだ。
霊感のことも考えて、
大丈夫だったかな?
説明と共に足を踏み入れただけで、元気そうに凄い凄いと興奮して叫んでいたけれど…
そう内心、不安になる中…
ケイトに尋ねると「大丈夫!//」と声が返ってきて、「それはよかった^^//」と頭を撫でた。
「妻?…妻!!?
おお!おおおお!!おおおおおおおおおお!!!」にやにや
「///」俯
「……なんだい?^^;」
「???」
にやにやと笑みを浮かべて、僕と真っ赤で俯くケイトへ交互に何度も何度も目を向けながら叫ぶ椿に…アイズは首を傾げた。
それを見た僕は椿の言わんとすることがわかって、話をする為に敢えて苦笑を浮かべながらも尋ねた。
「やりおったな!ついにか!!
どこまで行った!?キスはしたか!?抱き締めたか!!?もう寝所を共にしたか!!?」ぐいぐいっ
「生憎だけれど、教える気はない」
肘で何度も「このこのおっ」と小突きながら椿に尋ねられる中、何故こうも知りたがる?とばかりに眉を顰めて言い放った。
「おお!そう言えば手前はまだ名乗ってなかったな。
手前は椿・コルブランドだ。よろしく頼むぞ!^^」
「はい!//」こく
「それよりも、工房にこもりっきりで人肌の温もりが恋しいのだ、抱き締めさせてくれー」
そう笑う彼女にケイトは「わかりました!」と頷き、椿に歩み寄って自ら抱き着いた。
素直にも程がある!!
そんな想いと共に衝動的に壁を殴ってしまった。
「おお!!おおおお!!!おおおおおおおおおおっ!!
何じゃこの抱き心地は!!」
「…そんなに、いいの?」
「うむ!!!初めての感触じゃ!!
内の奥は固く、それでいながら外はぷにぷにで柔らかくマシュマロのように手に吸い付き、それでいながらべたつかず、白く、顔は凛々しい。
最高の抱き枕じゃ!!」
「最後の二つ、要らなくない?」きょとん
「私も抱き締める!!」ぎゅっ
「うむ!本当にいいぞ!!あったかいしの!^^」にこにこ
「(イライラ)で、本題に入ってもいいかい?」腕組
「そう怒るな、フィン。
お前も隅に置けん奴よのお。よもや妻を見つけるや否や結婚を申し込むとは」にやにや
「してないし即日というわけでもない」
「じゃがそれほど期間も置いておらんのじゃろう?」
「……」
「1日で告白していた」きっぱり
「!!アイズ!?(見られていたのか!?)」
「おお!そうかそうか…
ほほおおおお。そんなにか、そんなに気に入るような人間か。
うぅむ。益々知りたくなってきたぞ」にまにま
「ケイト、別の所の鍛冶師の下へ行こうか」
「済まん!悪ふざけが過ぎた!許してくれ!!半額に負ける!」
ぴたっ
「……二言はないね?」
「うむうむ!
それよりほれ!立ち話もなんだ、入れ!」
「えっと…お邪魔します」
「…失礼します」
「ほれ、フィン!主も来んか!」
「…はああっ。
不用意な詮索は遠慮してもらえるかい?」
「気分にも寄る」キラン
「出て行っていいかい?」じと
「ほお。妻を置いてけぼりにできるか?」にまにま
「……半額」
「うむうむ。わかっておるわ!」
かっかっと笑って頷く椿を睨みながら、僕は溜息交じりに入った。
そのまま椅子に座り、机を間に挟んで向かい合いながら話を進めていった。
武器と防具を作ってもらう前に、どうしても教えなければいけない情報がある。最初にそれを切り出した。
「彼女はLv.8だ」
「何じゃと!!?」ずいっ
「そして僕達主力でかかっても傷一つ負わなかった。当てれたとして3回、それ以外は全て外れた。
2時間半もかけて、それも全員でね」
「!!!それは誠か!!?」
「う、うん」たじっ
『実際の所、恩恵を刻んでLv.1になった直後にLv.8へ急激にランクアップした理由ですが、それは極めて簡単なものでした。
私の影響から力と敏捷がLv.8、耐久と器用がLv.10の身体能力を得ましたね?』
「?うん」
『元々あなたは、恩恵のある
私の力無くしてです。あなたの元々の身体能力がそれだったのです。
努力の賜物で得た身体操作技術と研鑽に伴う器用Lv.10、それに伴う力と敏捷の格上げ。あの暴力を受け続けてきた日々による耐久の上昇。
あなたの身体能力は恩恵抜きで、それほどのものだった。
それに恩恵を刻んだことで恩恵自身もまた影響を受けた。その身体能力の最低限のそれへ呼応し、恩恵自体が形を変えてしまったんです。
そして…恩恵抜きでそこまで辿り着いた、それまでの人生の【
その為に起こったことなのだろうと、朝にロキと意見が合致しました。
脳内通話できます♪いつまでも♪』ウィンク
「最後のさえなければ完璧だったよ、神らしき意見。はああ」汗
「あまり口を挟まなかったのはそれでか…」
「む?何の話じゃ?」
「???」
極東の言語を身に付けていない二人は解らなかったようで、とりあえず…簡単に説明しておいた。
「早い話が、Lv.8に匹敵する身体能力を持ち
なおかつ彼女の中に溜め込まれ続けていった【
だから最初からLv.8となってしまったと…そういう解釈でいいのかな?」
『ええ』頷
「ってことは…フィアナのせいじゃないんじゃ?
あ、でも力と敏捷とかLv.7だったものをLv.8に上げさせてもらったっけ。Lv.9のもLv.10に」
『それはその…【
「「本人の望んだ成長を促す」という記述はそれを示しているのか…
末恐ろしいね、Lv.10へ耐久を上げていたというのもそれによるものとは。
いきなり血を吐いた理由もそれかい?」
『ええ。耐久を上げる為そうなりました』頷
「でももう、その機能は使う気ないから(きっぱり)
けれど…」
「?」
「お礼だけはちゃんと言わせて。ありがとう。
でも…必ず、自力で神まで上り詰めるから」
『ええ!わかってますとも!』
「絶対、連れ帰す」
「その文法は少しおかしくないかい?普通なら連れ帰るで」
「故郷に帰すって意味で言ってるんだからいいの!
それを言うならフィンだって!」
「?」
「「それ以上に得た学びに、身を知って得たこの想いに…それまでの概念を振り払い、初めて感謝した」って言葉の」
「!?//」
「霊感で薄々感じ取ったけど、身を知って得たって何?」
「いや//それは…君という身を知ったからこそ得たという意味で//」
「ああ!なるほど…私の方が想いは上だ!」
「君は一体何と戦っているだろうね…//」苦笑
『ただ負けず嫌いなだけです』
「なるほど。ようやくわかった」
「う~む…しかしLv.8となると、やはり
「デュランダル?」
「知らんのか?
しかし値段が高いぞ?」
「う~ん」
「それで頼むよ」
「待って待ってフィン!!私の考えも聞いて!」
「?どうする気なんだい?」
「んー!」
「これ以上の金属はないよ?攻撃力は…少し、下がるけど…長く持つから」
「…じゃあ…使用できない廃棄物を下さい。オリハルコンも込みで。
鋳潰す前のでもいいし、私ならあれで」
「ああ…【自由自在《フリーリィ》】か」
「うん。それから新たな金属を生み出すぐらいできるかも。
発展アビリティに《神秘》もあるだけだし可能性は0じゃ
「ほお!未知の金属を生み出すか…それは面白そうな試みじゃの」にや
そう椿は笑みを浮かべながら口を挟み、キラリと目を光らせた。
「必要な金属を述べてくれ。
使い物にならなくなってしまったものがある。その素材の分はただにしよう」
「…いいのかい?いくら何でも」
気前が良すぎる、訝しく思いながら続けるその言葉を上から被せて妨げ、彼女は答えた。
「祝いの品だと思え!それに、これからもメンテナンスは必要となるしの」にやり
「……ふう。(言っても聞かないか)
わかった。感謝するよ」
「うむ!
第一…こちらとしても、神の領域に立ち入る為に協力してもらう側だ。
他ならぬ
ケイト、頼むぞ!」
「はい!」
本当に…彼女の職人気質は変わっていないなあ^^;
苦笑を浮かべながら、返事をしたケイトがどうするのかを椅子に座ったままアイズと共に見守ることにした。
「ミスリルに
これが手前の用意できる金属だ!!」
「…椿…済まないが、どう見てもそうは見えないのだが;」
「はっはっはっ!^^
うっかり失敗してしまっての。だが…戻せる術があるんじゃろう?」にや
「はい。復元」
ぽおっ
ただ魔力を集中させてかざしただけ…ただそれだけに見えた。
しかし…それは、今まで以上の性質へと進化させていた。
「おお!!」
「所で…これらの説明、お願いしてもいいですか?;」
「うむ!任せよ!
ミスリルは軽量の上等級金属で、魔法の伝導率が高いのが特徴だ。
モンスターのドロップアイテムに含まれていることもあって、多くの第一等級武装に使用されている。
最後に、
これは世界最硬の超希少金属で、全人類と亜人の技術の結晶!
様々な素材を元に精製される合金で、先程も言ったように不壊属性を持っており決して壊れん。
さて…どうしたい?」
「この分じゃ…まだ足りない。
少し…離れていて」
「む?おお」
「……もっと」
「む?」
「机の傍にいて」
「う、うむ。わかった」
有無も言わさぬ表情と態度に、椿は素早く走ってきた。
「何があったんだい?」
「わからん。だが…何かを始める気なんじゃろう」
『頑張れケイト、ファイトだケイト♪』
「???
あの…
『了解です♪』
机の傍でそんなやり取りが繰り広げられる最中、元より感じていた彼女の魔力の渦が…一層、激しさを増していった。
「魔力…解放」
「!!(あれで押さえていたのか!!?)」
ぼわっと、彼女が宙に浮くほどの魔力が周囲を埋め尽くしていった。
「…なるほど…確かにこれはっ」ごくり
「………今までので、手加減をしていたのか?」
考えてみればすぐにわかることだった。
影響を一切示さないようにしておきながら、マグマと化した。
つまりを言うと…彼女の魔法を実現させている魔力、それは…より凄まじいものだということになる。
「魔力よ…教えて?
…この金属達に、何を送れば…何をすれば、私の全力の魔法に耐えられる?」
その問いかけに対し、魔力は答えるかのように手を形作って伸ばし、あるアイテムを拾い上げて持ってきた。
「これ?」
こくこく
それに魔力の手は頷き、金属を大きくしさらに圧縮するようジェスチャーも加えながら説明を続けた。
「わかった…全部を均等に混ぜた上で、だね?ありがとう」
そう微笑みかけた後、金属がケイトの身体の倍ほど大きくなり、爪先程に圧縮され、また大きくなり小さくなりというのを繰り返した。
例のアイテムもまた同様に。
後に聞いた所によると、圧縮して小さくなったものを同密度のまま大きくして、その後でさらに圧縮して小さくし、また同様に大きくしていた。
つまりを言うと密度を高めることで質を高めようとしたそうだ。
次第にそれが光速で目で捉えられぬほどの速度で繰り返され、再び大きくなった時に分子レベルへと崩壊していった。
「分子配列を思い浮かべろ、金属結合を想像しろ。
その一つ一つを置き換えろ。等配列で交互に、3種が互いに影響し合うよう配置させろ。
その隙間にこの砕いた極小の石を敷き詰め、埋め尽くせ。決して外に漏らさぬよう押し込めろ」
そう呟く声と共に、小さな何かが前に差し出された左掌に集まっていき、再び倍並みの大きさへと戻った。
「ふぅー。終わった」
そう言いながら魔力が失せて消えていく中、ありがとうと言葉をかけるケイトに対し、僕達は歩み寄って声をかけた。
「あのアイテムが何か、君は知っているのかい?」
「ん?全然」
「それもそうだね。まだ教えていないわけだし」
「知らなかったのか!
あれはオブシディアン・ソルジャーの体石。
ドロップアイテムであり、魔除け石の如く「魔法」の効果を減殺させる。
つまりを言うと…魔法そのものに耐性を持たせるものというわけだ。
防具や盾によく使用しておる」
「そうだったんだ」
「その上!金属の全てが高品質になっておる!!
市場に出回っておるものの数百倍!いや、数千倍は下らぬぞ!!」
「「「!!」」」
『やった!やった!流石愛しのケイトちゃまん♪』
「ごめん、今シリアスな所だから邪魔しないで」
きっぱりとケイトがフィアナにツッコむ最中、椿はそれを気にする以上に興奮していたようで…
「高密度のミスリル、魔法の伝導率がより高く跳ね上がる!!
魔法の耐性を持ちながらもなお!魔法を金属に籠め、なおかつ通すことが可能となる!!
つまり…魔法を通し続けることでの摩耗が減殺されるということに他ならん!!!」
「へー」「「!!??」」
そのような金属は聞いた試しがない。
その衝撃と共に、僕達は揃って瞠目した。
「これは凄い!凄いぞ!!
これほどの密度でありながらもなお「ただ一つの金属」、すなわち合金となっておる!!
何と呼ぶ!?この至高の金属を何と呼ぶ!!!?」ずいずいっ!!
「えっと」
「手前はお主が気に入ったぞ!!専属鍛冶師にならせてくれ!!この金属を打つ職人を手前一人だけにしてくれ!!
何度でも作れるか!?」
「えっと…配置は覚えたから、後はもう同じものを思い浮かべるだけで作れるかと
「是非とも頼む!!!!!」
ずさあああっ!!!
凄まじい勢いで土下座をする椿に対し、ケイトはおろおろとするばかりだった。
どうやら僕達は…歴史に残る出来事を目にしてしまったようだ。
こうして…ケイトは椿と専属鍛冶師の契約を交わした。
専属契約を結んだ理由(2018年6月13日AM0:28,0:41,0:53追記)
その後もなお、椿の熱弁は続いた。
「よく聞けケイト!!
これは!この金属は!武器にも防具にも最適と言える、至高の金属だ!!
魔法に強く、それでいながらミスリルのように通すことができる!その上アダマンタイトの如く硬く、さらにはオリハルコンの不壊属性!!」
両肩に両手を添え、激しく何度も何度も椿は興奮交じりにケイトの肩を揺さぶり続けた。
「でででで、でも、敵の魔法まで強めて通すんじゃああああ?」ぐるぐる
「何を言うか!!その為の配列なのじゃろう!!?
外から内へは一切通さず!内から外へは通しやすくしながら強めるよう、綺麗に設計されておるではないか!!」
「え?え?そうなの?;そんなのまで視えるの?;
だとしても寝耳に水で
「当然じゃ!鍛冶師の目は誤魔化せん!!」
「でも多分、それは偶然かと。意識してやってなかったし…
魔力も私を助けようとしてくれたからこそ起こり得たものであって
「だとしても凄まじいにも程があるぞ!!
専属契約を交わしてくれ!是非とも頼む!!
してもらえるのならば!この金属で打つ武器と防具はタダでいい!!!」
「タダ!!?」ごくり
「頼む!!!!手前だけに打たせてくれっ!!!!」
再び土下座をする椿に…ケイトは最早何も言えず、専属契約を結ぶに至った。
「タダ」という言葉に釣られて専属契約を交わした、その様子を見て、僕は一つ思った。
「……(バーゲンセールに群がる主婦だろうか?)」
『ぶふぉっ!!』
「?」
どこぞの女神が吹いたように感じたが、敢えて気にしない振りをしつつ一人瞑目しながら溜息を零した。
それらにアイズはただ、?を浮かべるばかりだったのは言うまでもない。