神様を殴る為に神を目指すのは間違っているだろうか   作:-恵-

17 / 31
その金属の名は…

椿の工房――

 

 

「あのー、それよりも一つ謝りたいことが」

「何を謝ることがある!!?」

 

「いや、だって勝手にアイテムが必要だったからって許可も取らずに使っちゃったわけだし

今になって気付いたと言いますか…ごめんなさい;」ぺこ

「よいよい気にするな!それよりも手前は今猛烈に燃え滾っておる所よ!!!」

 

「…そうなの?」汗

「ならん方がおかしいわ!!!

 

外からはどのような魔法も無効、一切影響を受け付けん!

つまり、それ以外からでは難しくなる」

「外からかける回復魔法が効かなくなるというわけか」

 

「うむ!

 

だが、防具の内に滑り込ませるようかけさえすれば無事かけれる!

防御魔法をかけた場合でもなおそれを間違いなく強めてしまうだろう!」

「なるほどね。かけ方にコツがいるだけか」

「へー」

 

「ケイト…

君が作った金属なんだからもう少し関心を持ってもいいんじゃないかと僕は思うんだが…;」

「別に興味がない」きっぱり

がくっ!

 

淡白な反応に一言物申すと、ケイト本人は既に興味を失った後のようで我関せずといった態度は変わらずだった。

 

そう言えば…興味のあることにはとことんのめり込んでいた気が…;

 

 

「魔法を通すのと同様に、魔力もまた強めながら放出しておる!

ミスリルの密度が跳ね上がったことで、元々持っていた「魔法を通す機能」を高めるだけでなく、『込めた魔法を強めながら通す』という次元にまで性質が至ったのだろう!!

 

魔力伝導体…つまりは魔導師の杖にも向いておろう!!

 

たとえもし、攻撃魔法を内から通すよう付与したとしてもなお!

それは剣の内部を伝ってより威力を高めながら外へ放出、これまでにない威力を如何なく発揮するだろう!!」

「ケイト!私の武器もその金属に置き換えられる!?」キラキラ

「ちょっと落ち着いて!;お願いだから落ち着いてえええ!!;」

 

椿とアイズの二人から詰め寄られる中、ケイトは冷や汗交じりに落ち着かせようと両掌を向けて制しようとしていた。

 

 

「所で椿」

「む?」

 

「君はガレスと専属契約を結んでいたんじゃなかったのかい?

専属鍛冶師になるということは…」

 

その続きの言葉を察してか、椿はすぐに言葉を被せてきた。

 

「彼との契約を破棄するという意味か?」という問いに対して…

 

 

「ああ、それは冒険者との契約じゃろう。

主ら冒険者はそれほど細かくは知らんのか?

 

そもそも『専属契約』というのは、冒険者の武器や装備を作るという権利を結んだ鍛冶師一人だけのものにする為に結ぶものに他ならん。

そして結んだ相手、冒険者が強い者であればあるほど手前ら鍛冶師は箔が付くというものだ。

 

早い話、冒険者が利用できる鍛冶師がその者となるだけ。鍛冶師が仕事を選べなくなるわけではない。

でなければ他の冒険者からの依頼も受けられるわけも無かろう。仮にそうなってしまえばすぐ破産して潰れてしまうわ!」

 

「ああ…そういうことか」

 

「だから複数の冒険者と結ぶか結ばないかは鍛冶師の意思次第。

 

ガレスと結んだのは、ただあやつが手前以外の武器を使えんようにする。それだけのもの(専属契約)じゃ!

かっかっかっ!^^」

 

「…そう言えばそうだったね。

 

済まない。

ケイトの専属鍛冶師になって、ガレスとの契約が破棄されるかと早とちりしてしまった」

 

苦笑を浮かべる最中、椿は「破棄などするわけがなかろう!」と憮然と言い続けた。

 

 

「専属鍛冶師になるということは…私はどうなるの?」

 

「うむ!お主が持ち帰ったアイテムで、手前は鍛冶で強力な武具を造り格安で譲る。

 

今回は、主が造り上げた新種の金属、それを使って手前が打たせてもらう!!

そそるぞ、これは!///」うずうずっ

 

頬を緩ませながら手を震わせて叫ぶ椿とは裏腹に、フィアナはどこか神妙な顔で考え込んでいるのが見えた。

 

 

「……どうしたの?」

 

『それがですねえ……ええ。あーもう!』

「?何?」「??」

 

『……ロキが今、ギルドでもめているので…

理由の判明に努めて、ようやくわかって伝え終わった所です。

 

ケイト、あなたに言いましたよね?』

「何の話?」

 

『「一般人の中ではかなり強いですよ?ですがLv.1には値しません。

力と敏捷がLv.7と判断したのは、あなたの全身の動き、力を自在に操る技術によるもの。

耐久は元々こちらで言うLv.9で、器用はLv.10だった」と』

 

「うん。

身体能力自体がLv.7じゃなくってLv.1にも至ってない、あの技術を使用した時のがLv.7に至るってことなんでしょ?」

『その認識自体が間違いなんです。

ロキと話して、やっと認識の違いに気付きました』

 

「…どゆこと?;何が違うの?」

『そもそもですよ?身体能力が低い相手、Lv.1ですらない人がそんなLv.7並の力を引き出せると思いますか?』

 

「?」眉顰め

「ああ、そういうことか」

「え?」

「つまりを言うと、フィアナはLv.1ですらない身体能力を持つ人間が、Lv.7相当の力を出した瞬間にどうなるかを考えろということだ。

この場合、低い耐久だとその力と敏捷に耐え切れない。つまりは身体自体が耐え切れずに破裂する。絶対に無事では済まされないだろう。

 

それを伝えたいんだと思うよ」

 

「ああ!そういうことか!」

『その通りです!流石はケイトの夫さん!最初で最後の恋人さん!』

「囃し立てるのはやめてくれ//」目を伏せる

 

『ケイト、正直に伝えますね?

あなたの人間だった頃の身体、その元々持っていた身体能力が「Lv.7相当」だったんです!

 

だからこそ、こちらの世界の小人族(パルゥム)の身体へと構造を置き変えた時点でも「また」!Lv.7のそれになっていたと言っているんです!!

あのLv.1に値しない発言は、Lv.7相当だという意味で言っていたんです!そこの所、勘違いしないで下さいね!

 

そしてあちらで27年間という人生の中で得た【経験値《エクセリア》】、それを0にしていなかった。

それも当然です。そうでなければ赤ん坊からのスタートになってしまいますし…そもそもそれだと27歳にできませんから。

 

既にLv.7の身体能力を持っているというのに、Lv.1の身体能力にまで下がるわけがないでしょう?』

 

「なるほど…じゃあ技術を使えばLv.8+Lv.8の威力がって昨晩言ってたロキの仮説は外れってこと?」

『ええ。

 

何と言ったらいいんでしょう?

「【経験値(エクセリア)】がLv.1にしておくには余りあった」、「Lv.1の器に収まり切らなかった」という訳で、ギリギリ収まり切る器である『Lv.8』まで一気に上がったそうなんです。

 

あなたの【経験値(エクセリア)】がLv.1のそれとして置き換えることなど不可能だった。

結果として急激にランクが上がっていき、【経験値(エクセリア)】を使い果たしてようやく止まったのがLv.8…という流れです。

 

本来ならLv.7なんですが…あなたのあれ(上げた行為)でLv.8になったんです』

「すみません;軽率だった;」

『でもあの技術を使えば1つ上のLv.9相手でも軽く倒せますよ?Lv.10でようやく互角ですね。

魔力を使って自らの身体能力を強めながらだと、もっと遥かに上を出せる計算になります』

 

「凄い…」

「どんな壮絶な人生だ;」

「君には負けると思うよ。正直…僕なら逃げて、別の場所で新たな人生を歩む」

「ほお。そんなにか!」

『平和ボケしたことのないあなたとは隔絶されてますからね?毎日が生きるための戦いのようなものですし…』

 

「所で…神の力はまだ残ってる?」

『ええ。

しかしそれに今から変更を加えるなど不可能です(頭を振る)

 

少なくともこちらから干渉すること自体、普通ならできませんからね?』

「愛の力云々って言っていたのは…」

『それは無論、あなたを想うこの愛を形にしていて//』ぽっ

「うん。余計に使うわけにはいかないな」

『ええ!?;何でですか!!?;』

 

「神の力を失えば…お前はもう、神ではなくなってしまうだろう?

神の力を使って愛を示した所で、それを使えば使うほどに神界に居られる期間が短くなるってことだ。

 

だから絶対、今後は力を働きかけるな!間に合わなくなる!!」

『ですが無限大の魔力にしたのは』

「魔力であってもだ!!送るな!回復もせんでいい!」

 

『……わかりました。あなたの魔力量に応じて会話が可能とします』

 

「…ありがとう。無茶な要求をしてごめんね」

『いえ。他ならぬあなたの望みですから^^//

 

それに…嬉しかったです。本気なのが十二分に伝わってきましたから//♪』にこにこ

 

「…////

と、とりあえず武器と防具をどうするかだよね?//」ふいっ

 

照れ隠しか…頬を掻いた後、無言のままフィアナから顔を逸らして椿と向き直った。

 

 

「その前にこの金属の名だ。呼び辛かろう?」

 

「んー、でも何て名前にしよう…?

 

うーん。

ミスリルアダマンタイトオリハルコンオブシディアンソルジャー」

「ぶふっ//」「?フィン?」きょとん

『そのまんま過ぎですよ!!;』

 

「んーーーー;

つけたい名前でいいの?」

「当たり前じゃ!

お主が作った合金だろう!主にこそ命名権があるわ!!」

 

「んー…じゃあ……

要らない部分を省いていこう。

 

ミスリルアダマンタイトオリハルコンオブシディアンソルジャー

この中で重なっている文字だけを消すと…

 

ミスダマタイトハコブシディソルジャー

タもダ、イとィ、シとジも消すとしても…

 

ミスマトハコブデソルャー

さらに二文字以上重なっている行の文字も消しちゃおう。

えっと…マ行、サ行、タ行、ハ行、消してくと……

 

コルャー

ダメだ、短過ぎる!

 

じゃあ三文字重なってるものにしよう!

って何も消えんわ!!

 

 

あ、そうだ。素数だけ抜こう。

確か2、3、5、7、11…13は要らないな。12文字しかないし

 

ミスマトハコブデソルャーだから…

 

スマハブャ

…今一しまりがないなあ…一つ下にずらすかな?

 

スマハブャ

セミヒベイ

ソムフボュ

サメヘハエ

シモホヒョ

違う!

どれもこれも今一ピンと来ない!!

 

スミフハョ、シメフベャ

マヒボエ、セムヘヒ、サムヒブ、モヘボイ…

ミスリルやオリハルコンのようにカッコいい名前は……

 

セヒイサヘエ……別にこれだけでいいや?

って良くないわああ!意味分からーん!!!」

 

頭を抱えながら椅子に座って試行錯誤している内、どのような構造かについてフィアナが解析し、椿とアイズに説明していた。

 

ちなみに言うと…椿は極東の文字を理解しているが、何の話か付いてこれなかっただけだそうだ。

 

 

「ンー、そんなに深く考えずに第一印象で決めればいいんじゃないかな?^^;」

 

「黒耀のように黒く光を反射しながらも触感は白銀そのもの、鏡のように綺麗に映し光輝く金属!

黒耀…黒鉄?いや、なんか違う……だってあれはただの酸化鉄だし。

 

だが…これは……ヘマタイト?」

 

「お?決まったか?!」

「でもアダマンタイトが多目な印象を感じさせる!ダメだ!」頭を振る

 

「…軽く決めればいいと思うんだが…;」

「命名にはちゃんと特徴も踏まえなきゃね!」

 

「…この分だと、子の時に揉めるかな?はははっ^^;」

「…楽しそう」

「?//」ギクッ

『恥ずかしくないんですか?』じと目

「わざわざ言わないでくれ//;」

 

少しだけ…そんな懸念が僕の胸を掠めた。

そんな未来を想起と共に困ったように言いながら苦笑を浮かべるとアイズから見透かされ、次にフィアナから止めを刺された。

 

それらの言葉に、瞑目しながら肩を落としつつ言葉を何とか口に出す。

 

 

いつの間にか…楽しい未来を夢見てしまっている自分に、今更気付いた。

 

 

「んーう……

 

ディア・フォロン…優秀、最後までやり遂げるという意がある。

それにしよう。そんな金属になることを願って」

 

「ディアフォロンか!

 

では次に武器と防具の形態じゃな!

防具はフィン!!」

「ん?」きょとん

「主と同じペアルックにするからのお?」にまにま&ついつい

 

「……勘弁してくれ///(かあああっ)

はああああっ///」

 

目を伏せる中、椿はなおも肘で小突き続けてきた。

 

 

「安心せい。

色も調節して全く同じものになるようにしてやるわ!^^かっかっかっ!」にやにや

「…………有難いような苛立つような…

まあ…嬉しくもあるんだけれど//」ぼしゅうう

「うむうむ!嬉しいか嬉しいか!^^」

バシィン!バシィン!

 

2度頷きつつ僕の肩を叩く椿に、考え込んでいたケイトは口を開いた。

 

 

「じゃあ防具の形は任せるとして、武器のそれはこちらの要望でお願いしたいです。

一つは槍、そしてもう一つは刀。脇差でお願いします」ぺこり

「ほお!そうか…承知したぞ!」頷

 

「ケイト…同じ金属にできない?//」キラキラ

デスペレートを差し出しながらお願いされたケイトは困ったように、「既に完成されているものを全く別のものにはできない」と伝えていた。

 

「!!」ガーン!!

「でも…魔力で包み込んでお願いすればできるかもしれない」

「本当に!?//」ずいずいっ!&キラキラ

「う、うん。

けれどその剣を見てくれている鍛冶師の許可を取らないとでしょ?剣の磨き方や手入れの仕方も変わるかもしれないし」

「金属貸して!許可をもらってくる!!」ギンッ!

「あ、うん。魔力よ、お願い」

スパパン

 

次の瞬間、ディア・フォロンという名の金属がケイトの魔力によってインゴット並の大きさへと小さく斬られ

その一つがアイズの手に渡り、一目散に凄まじい勢いで走っていった。

 

目の色が変わっている…;

 

 

それを見た僕はアイズを追い掛けつつ、出所はばらさないようにだけ釘を刺してお願いしておいた。

 

 

「ではこのインゴットを使って、今までにない『第一等級特殊武装(スペリオルズ)』を造ってみせよう!!

フィアナよ、性質を事細かに教えてくれたこと、心より感謝する!」

『頑張って下さいね♪』

 

「よろしくお願い致します」ぺこり

「畏まる必要はない!!

お主と手前はもう持ちつ持たれつ、へりくだる必要もないからそのつもりでいろ!」

 

「わかりま…わかった!信頼して任せる!」ぐっ!!

「任された!!」ぐっ!!

 

サムズアップして椿へ突き出すケイトに対し、椿もまた同様にして返した。

 

 

「所でこれは何だ?」

「あらあ;」がくっ

 

そうして未知の金属への挑戦が始まる。

 

必死に奮闘する椿、そしてそれに対してフィアナがサポートに回り…それは完成を迎える。

 

 

後に「歴史に残る偉業」と称される最強の武器と防具が完成したとされるのは、今よりもまだ…数時間ほど先の話だ。

 

 

 

その間…ケイトは市場で買ってきた食材で料理をし、汗を拭い、体調を全快にし続けて疲れを無とし、精一杯サポートしていた。

 

そうでない時は写生に回り、元々はLv.9だったそうだがLv.10まで上げたからか…今にも動き出すほどの絵だった。

ちなみに料理もまた同じくLv.10らしい。同じLv.10には他にも瞑想、寝かしつけがあった。

 

 

12時までには帰らないといけないが…果たして間に合うだろうか?

 

そう考えた矢先、アイズが神ゴブニュと来て…そのタイミングで神ヘファイストスまで来た……

 

波乱の予感しかしないその光景を前にケイトを見やって視線を逸らすと、彼女は今にも目に入りそうな椿の汗を拭いていた。

 

 

 

「(さて……どうしようかな?^^;)」←内心、逃げ出したい気持ちでいっぱい

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。