神様を殴る為に神を目指すのは間違っているだろうか 作:-恵-
今日も夜中に母親から起こされて霊感を酷使させられた。
今日も過干渉は変わらず軟禁状態。愚痴もフルバースト、元気全開(母だけ)。
母からは愚痴の捌け口に利用され続け、そんな日常は変わらないものだと思っていた。
今日…AM7:15になるまでは……
落とされた理由
時刻を確認して起きようとした矢先、急に意識が薄れて崩れ落ちた。
ベッドの上、廊下でも起きるそれは最早日常茶飯事で、身体が動かなくなる感覚を最後に…意識を手放し、暗闇の中へと吸い込まれていった。
気付けば…何もない真っ白な空間に立っていた。
そして目の前にいるのは、腰まである黄金の髪を有した女性…神様だと感じた。
霊感って便利だな。
でも…あれ?幽現界に行って主護霊様に閻魔様の役割をする人の下まで案内されるはずじゃ?
主護霊様から死後どうするのかについては質問して事前に聞いていた。
しかし違う目の前の結果、神の前にいることに私は目を丸くするばかりだった。
「あなたは死にました」
「はっ!!?」
汗が頬を伝う最中、真顔で突如言い放った神様に食い気味に叫んでしまった。
「あなたがどんな人生を送ってきたかは既に見ています。
大変苦労してきましたね?」
「…貧困で飢えを凌ぎながら頑張ってきた人ほどでは…
いや…誰も助けてくれなかったっけ」
「ええ。
父から虐待やDVがあってもそんな法も無い時代だったし、今でも母からの精神的暴力は続いていたでしょう?
姉はうまく立ち回って逃げ、振りかかる火の粉は全てあなた一人に…」
「誰かがこんな痛い思いするよりはマシだと思うけどね」
ボソリと呟く中、ふと自分の人生を思い返すと…ろくなことはなかった。
大雑把に掻い摘んで話すと…
父からは物心つく前から暴力、暴言、仕事場で溜まった鬱憤の八つ当たり、高圧的な言動、
母からは先程も言ったように愚痴、暴言、成績が悪ければ暴力、
姉はできた友人と共に遊んだり勉強したり…
誰にも話せる人もおらず、信じてくれる人も助けようとする人も無く、逆にその環境からか一日を生きるので精一杯。
放心状態が多く、普通という基準が周囲から見れば大分と異なっていた。
自分からは決して話しかけないようにしていたが、皆から小中高といじめられ、友達は一人としてできずにいた。
大学は指定校推薦で比較的近場の薬学に。
しかし失業した父により激化したDVに3回生、4回生の時に1回ずつ留年した。その頃にようやく父が別居してくれた。
誕生日の3月20日、24歳の時に研究室でようやく心を許せる恩師と友人に巡り会った。
「自分というものを持っていいんだよ」と伝えられた時は「何言ってんだ?」と思ったのを未だ鮮明に覚えている。
その頃の自分は「自分など道具に過ぎない」「周りが助かればそれでいい」「さっさと死ねばいい、自分など」と思っていた。
25歳も間近に迫る頃、「母親が死んだらどうするの?」と言われ、ようやく考えるようになった。
その時から一月後、反抗期を迎えて倒れることが多くなった。
恩師曰く、「母と一心同体状態に陥らされていたのだろう」「愚痴を聞いて辛くなかったのはそのせいかもしれない」とのことだ。
しかし母からの祖父母の愚痴は収まりを知らない。実家だし同居しているのだから当然だ。
ストレスの捌け口も無く、聞かなければ無理やり聞くように耳元で叫ばれる。
外に話し、助けを求めた所で介入してまで助けようとされるわけもなかった。
しかし、父からのそれを苦に助けを求めて泣き叫んだ時と同じでないのはよかった。
あの時は嘘つき呼ばわりされ、いじめの発端となったのだから。
まあ、休憩時間は精神を休める為に放心していて会話もままならず、無視と感じたそうだから仕方がない。
それは把握してから事情を話して謝ったが、理解を得られたという感覚はなかった。
無論、そんな体調と疲弊した精神状態で受かるはずもなく、今度は冬にあった卒業試験に滑り…
26歳の夏に行われた卒業試験には根性で無事受かった。
しかし今度は薬剤師国家試験に滑り、勉強しながら働けと…資格は取っておくに越したことはないと言う。
だが一つ言いたい…言葉と行動が一致していない。
わざわざ夜中に起こしてまで感情を、愚痴をぶつけてくるそれで逆にどうやって集中しろというのか。
勉強に集中していたとして所構わず時構わず聞け聞けと喚いてくるのに、逆にどうしろというのか…
そのことについて話したとして…
「じゃあ誰に話せと言うの!」
「その台詞そのまま返す!」
「私に死んで欲しいんやろ!?お婆ちゃんやお爺ちゃんの方が好きなんやろ!!」
「誰もそんなこと言ってないやんか!!」
そんな会話になってない言葉を投げかけられるのは日常茶飯事。
母も霊感を持っていたが今はほぼほぼ無く、不安なことがあれば2歳から霊感を宿していた自分に尋ねることが多い。
「私を都合のいい診断機のように使うな!」
「物とは思ってない!」
「ホンマにそうなら行動で示してや!」
「愛してるわ!」
「説得力ないわあ!!」
結果…諦めて霊感を酷使し、愚痴を聴き入り、家を出ようにも必ずついてくる。
姉が逃げているからか、逃がすまいと必死だ。
御飯も食べられるだけ有り難い、自分はまだ恵まれている方だ、自分という意思さえ持たなければ大丈夫だ。
そう何度も言い聞かせていく内、感覚も感情も麻痺していった。
が…やはり怒りはある。激情に駆られて叫びそうになるも必死に堪え、暴力に出たこともなかった。
第一…父親のDVから護る為に鍛え上げてきたから、それに使うことが私自身許せない。
姉と父は元々折り合いが悪く、生みの父から全力で殺そうとされる程で…どれほど酷使してきたか、正直言って…もう数え切れない。
「はっ、はっはっはっ」
思い返すだけで、ただ考えるだけで頭が痛くなった。
それと共に精神が重くなっていくのを感じ、天を仰ぎながら深々と溜息を零した。
笑い声が上がったのは、ようやく解放されたことが嬉しかったからだろうか?
そんな父と母に姉が相容れるはずもなく、その仲介役(伝書鳩)を必死に頑張っていたのだが…
姉は友達の家に泊まるし、結果として私一人に押しかかってくるわけだし……
ダメだ、考えるのやめよう!これ以上はどんどん気分が最悪になっていく。
考えないようにしてたのにごめんなさい!って言うかもう最悪だ!!
冷や汗交じりに頭を勢いよく振る中、女神は私へ微笑みかけた。
きっと思考も読まれているんだろうな…
「される側の気持ちを考え、よく耐え忍びました。
自らを常に殺し続け、人の痛みを考え、その心に寄り添い続けた。
そんなあなたに、私から個人的に贈り物をしたいと思います」
「?」
「ヘビーな人生を歩んできたケイトさん。
そんなあなたが行きたい世界はどこですか?」
「ダンまち!ソード・オラトリアで!」
思わず反射的に答えてしまった。それも挙手しながら…
いや、まあ…だって、自分らしくいられる場所って言ったらロキ・ファミリアしか思い浮かばないし?
あくまで自分の中ではだけど。
他に知らないしそんな合間があるんなら勉強勉強って言われ続けてたし…
アニメを久しぶりに見れたのは26歳になってからで幼い頃は隠れながらだったし、漫画は見てたけど。
他は勿体ないって…全部ダメって言われてたっけ?そう言えば服もズボンも3着ずつしかなかったな。
というかヘビー?…女神から見ればそうだったのか。
でもそれが日常だったから何とも言えん…
「ではその世界で思う存分、生を満喫して下さい^^」
「え?」
にっこりと笑みを浮かべながら言われた言葉に、私は頭がついて行かなかった。
「あ、ちなみに元の世界に帰す仕様はありません」
「はあっ!?」
あれ?
幽界で閻魔様の所で人生を思い返してから「転生」か「霊界に帰っての修業」か選べるんじゃなかったの!?
何で?え?まさかの別世界への転移及び転生!?
「過労死したのでお気遣いなく」
「知るか!それよりもちゃんと教えてよ!!」
「もうお気付きの通り異世界への転移、及び転生となります。
あ、入りやすいように小人族にしておきますね」
「って言うか選ばせてよ!!」
「ではいってらっしゃーい」
「わあああああああっ!!!」
有無も言わさず手を振る女神。
と同時に突如消えた足場、背から落下する感覚。
「0歳からではなく、実年齢の27歳からになっておりまーす。
楽しんで下さいねー♪」
「待ってろ…
いつか、いつか!絶対ぶん殴ってやるううう!!!!」
満面の笑みを浮かべて楽しそうに手を振る女神。
それに伸ばした左手で拳を握り締め、私は決意した。
しかし…耳に聞こえたのは風を切る音と、楽しそうに笑う神様だけだった。
誰も助けてくれない環境からか『フィアナ騎士団』を信仰していたとはいえ、それが異世界に配属された女神フィアナだったなどと…誰が思っただろうか?
その日、助けられないことが日常だった私の価値観は…一変することになる。
親切心からだとはわかる。
しかし、言いたい言葉は一つだけ。
「落とす前に一言了承取れよおおおお!!!」
拒否権なしか!!
そう思った最中、ダイダロス通りのある一角の通りに落ちた。
そして私は出会う…金髪の剣姫に。
これは…人に振り回されるばかりだった一人の女性が、のびのび神を目指す物語である。
しかし、何故にパネルが出る?(女神と会話可能)