神様を殴る為に神を目指すのは間違っているだろうか   作:-恵-

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遠征(6月11日~13日)
出立


6月11日、朝

 

黄昏の館

 

 

ケイト視点――

 

私達は、遠征に向けて最終確認が行われていた。

 

 

その中で没にされたものを言おう。

水が無限に湧き出る袋、空気をもとに食べ物を造り出す箱、中に入れたものをコピーして無限に増え続ける入れ物。

 

それまでのアイデアの中でも許されたのは…

無限に収納できるリュック(中は時間停止、重さ変化無)、異空間風呂、異空間トイレだった。

 

流石に異空間部屋というものは普段ならテントを立てていたことからすぐ気付かれるだろうと説明された。

他にも見つかれば目立つ、厄介事の種となるといった理由で、リュックと異空間の風呂とトイレを持ち歩くことに。

 

 

ただし、ポーションについては無限に湧き出続けるように魔力を送ったこともあり、瓶はそのままで飲んでから蓋をした後に再び中身が戻る。

割れない限りは無限にそれが続くというものを生み出してしまった。

 

そして保険の為にも、「一度だけ望んだ願いを叶える道具」というものを魔力を下に作ってフィンに渡しておいた。

発動条件は、それを強く握り締めながら高らかに叫び、念じること。

 

 

 

準備は万端。しかし…私は今、大変なことに気付いていた。

 

(私……遠征の予習で夜遅くまで時間を潰しちゃった…全然寝てない!;)

 

そんな思いの中、フィンからバベルの塔への移動の指揮が下される。

 

そして私は頑張ってふら付きながらもバベルの塔まで歩いて行った。

 

 

フィンの号令、掛け声、第一部隊が迷宮へと入っていく…それらが頭の中を流れていく。

 

(まるでちくわになったみたいに言葉として理解できない。何でだろう?)

 

ふらふらと考えながらも前に進んでいく中、フィアナが見送りはここまでだと言わんがばかりに必死に宙を浮いたまま寄ってきた。

 

 

 

『ケイト、頑張って!!』

 

「お、おー。

あれ?」

 

ギクッ!!

『ど、どうしました?』

 

ギクシャクと揺れるパネルに、私は薄々と何かを感じた。

 

 

「減っている?」

 

目に見えるほどに…私との繋がりが、減っているように感じた。

 

迷宮に居る時も、潜って37階層まで行った時も…彼女との繋がりは、より深く感じていた。

 

 

そして不思議なことに、神愛加護に『ステイタスの自動更新』なるものが付け加えられていた。

 

『時間はもうないぞ』『迷宮内でも更新できるから、頑張れよ』とでも、まるで言い聞かせるかのように…

 

 

 

最初来た時に霊視で見えていた深く、太い糸…フィアナとの繋がり……

 

それが、見るからに減っていた。まるで綱引きの綱から、細いタコ糸へとなっているかのように急激に…

 

 

最近になって昔の夢をよく見て、名字まではっきりと思い出せるようになりつつあった。

 

おかしい…不思議と、そんな思いに駆られていた。

 

 

 

『あの…ケイト?;』

「待て!何でそんなに遠いんだ!?」

 

『いや、その』

「何で…今までなら、はっきりと通じて!!顔まですぐ近くにちゃんと見えてた!」

 

必死にパネルを揺さぶる中、フィアナはそっぽを向きながら答え出した。

 

あ、やばい…徹夜したからかふらつく。

 

 

『世界と世界の境目、それらは普段ならば断絶されていて連絡を取り合うこと等できません。

あなたは迷宮に居ても私の存在を感知できていますが、それは神愛加護が私とケイトを繋げているに他なりません。

 

そして…世界と世界の繋ぎ目に空いた穴を利用して繋げているだけ。

そのパイプも徐々に日数を経る毎に狭まり、徐々に無となっていきます。

 

背に感じる温かさは、私の愛の証です。それが冷え、切れた時…あなたと私の繋がりは切れ、世界は再び断絶されます』

「!!やっぱり…力が弱まって」

 

『ええ…

 

本当は…もっと、あなたとの時間を楽しんでいたかった。

もうちょっと話していたかったんですけどね?

 

でも…きっと、これが最後の会話になるでしょう』

「フィア

ざーざー

 

フィアナへ呼び掛けようとしたその瞬間、雑音が入った。

パネルの画面に、まるで昔のテレビにあったスノーノイズだけが浮かぶ…

 

テレビの砂嵐のような音が辺りに響くばかりで、それは何も言い出すこともなかった。

 

 

「…フィアナ?」

 

何も言わず、動かないパネルを前に…私は再び、ポツリとその名を呼ぶ。

 

しかし…何も返ってこないばかりか、その画面は徐々に…文字通り暗闇を示した。

 

 

バベルの塔の周囲では辺りが騒がしく、見送りに来る者が数多くいた。

その人達の笑顔が視界に入る度、胸は痛んだ。

 

大切なものとの繋がりが徐々に消えゆくのを感じた。

 

 

 

何故…フィアナはあんなにはしゃぐかのように、私へ何度も何度も話しかけていたのだろうか?

何故、あんなにも楽しそうに共に居るだけで嬉しそうにしていたのだろうか?

 

何で…からかっては殴るというそれに、喜びを見出していたのだろうか?

 

ずっと疑問だったものに対する答えが、今になってわかった。

 

 

会話さえもままならなくなったパネルを前に…私は俯くばかりだった。

空間収納の機能もない。言語はちゃんと勉強のお陰で通じている。

 

それでも…虚しさと焦燥ばかりが胸を焦がし、第一部隊が先に入っていくのを見送る中…私は糸の先を目線で追いながら天を仰ぎ、叫んだ。

 

 

「言ってくれなきゃっ!!わかるわけねえだろおおおお!!!」

 

そのフィアナへ向けての私の叫びは木霊する。

 

 

 

「!ケイト?」

 

私と同じく後続隊である第二部隊に回されていたアイズが、何事かと歩み寄る。

 

その最中で…私はフィアナの行動を思い返していた。

 

 

いや…言っていた。

 

『しかし…必ず、終わりは来る』と…

 

 

生きていれば…別れは、必ず起こる。

 

知っていた…

生きている限り、どんな人達とも別れることぐらい…

 

わかっていた…

もう二度と、会えなくなる日が来ることぐらい!

 

でも…それは……今じゃないだろ!!

 

 

「早過ぎるよ…」

 

ポツリと呟く中、涙は止めどなく溢れては止まらない。

 

 

今思えば…彼女は必ず、私のことを常に念頭に置いた上で行動していた。

 

ロキ・ファミリアに必ず入れるよう私を煽って動かし続け、

皆に理解されるよう私の過去を見せ、ぶつかり合いでも邪魔せず、

一度切れば余計に穴が塞がる速度は速まるなのに一度繋がりを切り、

アスペルガー症候群も含めた異世界の知識を与え、フィンの過去を聞く際には邪魔しないよう必死に黙り…

どれも、これも…私を想っての行動だと、私が私で居られる為に行ったことだと…悟らされた。思い知らされた。

 

 

 

考えればわかること。

世界と世界は、本来ならば分かたれたまま…決して繋がること等、在りはしない。

 

神の力を持ってしても、ずっと繋げ続けることなどできはしない!

 

開けられた穴が塞がり切らない内に、フィアナを迎えに行かなければいけない。

 

 

そのタイムリミットは…最早、3日しかない!!

 

霊視した『背と天を繋ぐ糸』に僅かに触れ、それを手に【自由自在】で残された期間を読み取った。

 

 

 

「最初に言えよ…」

 

最早動かないパネルを前に、そう言葉と共にぺしりと叩く。

 

しかしそれは何の反応も示さない。何も動かず、何も…返事も、変化さえも、なかった。

 

パネルが反射して映す快晴の空が、自らの心とはあまりにも対照的過ぎて…ひどく、忌々しく見えた。

 

 

「っ(何で…何も言ってくれなかった!?)」

 

涙が溢れ出る中、私はこれまでの日々に思いを馳せていた。

 

幸せという幻想に取りつかれ、夢にまで見たその日々を心から堪能し、弱っていくフィアナの力に気付かなかった。

 

 

いや…弱っていく力には気付いていた。

 

でも…それが、こんなことになるなど、思いもしなかった。

 

 

 

「?ケイト?どうしたの?」

「ケイトさん!そろそろ出発の準備して下さいっす!あと5分で出るっすよ!」

 

歩み寄るアイズと、入り口近くで叫ぶラウルの言葉に、私は頷いた。

 

 

「……ロキに、渡してくる」

 

「う…うん?」

 

そう未だ目も合わさずに言ってから、バベルの塔にまで見送りに来ていたロキへと俯いたまま歩み寄る。

 

その道中の中もなお…涙は止まらなかった。

 

 

 

(何で、黙ってたんだよ。

 

お前が幸せでなけりゃ…幸せになんてなれるわけないだろ。

ましてや、その幸せを堪能できるわけもないだろう!)

 

そう考えながら、項垂れたままロキへ向けて一歩一歩近づいて行った。

 

その足取りは重く、心にも暗雲が立ち込めていった…

 

 

「(力が弱っていたのは…薄々気付いていた。

でもそれは…送った後で、なおも会話する為に、魔力を無限大にする為に力を送り続けているからだと考えた。

 

けれど…実際は、今もなお神愛加護として送り続けていることが要因だった)

 

あの時(『その金属の名は』参照)…何故、もっと深くに聞かなかったんだ?」

 

そう心の声が外へ漏れる中、私はロキの前でトボトボと力無く歩を進めていた足を止め、心を決めた。

 

 

 

「……ロキ」

 

「おお!遠征頑張りや?」

 

「…きっと、最後の会話になると思う」

「いきなりなんや!?;どないし…

 

!!お前…これ」

 

一切動かなくなり、真っ暗な画面だけを写すそれと化したパネルを前に…ロキはそれを凝視ながら指差す。

 

それに頷いてから、私は説明し始めた。

 

 

「あの馬鹿は…私の幸せの為だけに動いてる。

 

そして…神としての寿命を全うする気でいる。

神の力は普通に使えばまた回復する。けれど…誰かに分け与えれば、それは永遠に元には戻らない。糸を辿って…読み取って…やっと、気付いた。

 

あいつは……フィアナは…本当に馬鹿野郎だっ」

 

声が自然と詰まる中、涙が零れ落ちる中…私は歯噛みしながら嘆くように叫んだ。

 

 

「…ケイト」

「私を信じて話せよ!!

大事に想ってるってことだけ話されて…想いをどれだけ重ね合わせたって、失ったら何の意味もないだろ!」

 

涙を流しながら…そう叫び、荒れた息をその場で大きく空気を無理やり吸って整えた。

 

 

「ロキ…フィアナを頼む」

 

「お…おう」

 

パネルをロキに差し出す中、そっと受け取ってくれた。

 

 

「最後の会話って言ったのは、人としてって意味だ。

 

今回の遠征で、最下層まで行く!

そして…あの馬鹿を、ぶん殴りに行ってくる!!」

 

「………決めたんやな?」

「決めた!」

 

「そっか…」

 

ぎゅうっ

 

その言葉と共に、パネルを足元に置き…ロキは静かに抱き締めて後ろ頭をよしよしと撫でてくれた。

 

 

「苦しいなあ。辛いなあ…それ以上に、心が痛いなあ」

「ああ…だから…それごとぶつけに行く!!」

 

両の腕の中に閉じ込められ、抱き締めたまま紡がれるロキの言葉…

 

それを受けて、涙で声が震える。音程までもが引き攣る…その最中で、ロキはその答えに満足気に頷いて答えた。

 

 

「ん。わかった!

本当に…心からやりたいことなんやな。

 

責任持って預からせてもらうわ。もう…フィアナの力は感じられんけども」

「わかってる。そこにはもう、いない」

 

満足気に頷いていたのは納得したからだろう。

 

微笑し、そう言葉を続けるロキに…私は言い放ち、正面から未だ向かい合ったまま言葉を続ける。

 

 

「頼みがある」

「ん?

ってあと3分やって呼ばれてんで?」

「ロックを解除してくれ」

「い!?」

「自動更新されるようになっているだろう?

 

鏡で確認できるようにしたい」

 

「あー…そういうことか。

その場でLv.11になった瞬間に、天に昇って糸を手繰り寄せて殴りに行くと…そういうこっちゃな?」

「ああ…あの馬鹿を、全力で殴りに行く!」

 

涙が未だ浮かび、視界が白むと同時に揺れる。

 

その中…ロキは「わかった」と一言言ってから頷き、背に回って鍵を解除した。

 

 

そして…私の背に神の血を使って幾筋か指を滑らせる。

 

その温もりを感じながら、私はフィアナとの時間を思い浮かべる。

 

 

 

最初は…意味がわかんなかった…

 

わけがわかんなかった…

 

でも…確かに、意味があったんだ……あの時間には…!

 

 

あれがなければ、私は怒りのままに魔法を放てなかった。

 

あの叫びがなければ、感情を蘇らせられなければ…今のフィンとの関係はなかった。

 

大食堂でのぶつかり合いもなかった、全力で戦って皆から認められることもなかった!

 

 

フィアナがいなければ…感情も精神も…治した上で送られなければ……私はっ!

 

今までの楽しい時間も、日常がこんなにも愛しいものだとは気付くこともなかった!!

 

 

沸き上がる想いと共に、私は歯噛みしながらフィアナとの繋がりの糸の先を辿って天を仰ぐ。

 

 

 

「(絶対に…)」

震えが込み上げる、握り締めた拳にまでそれが伝搬する。

 

「(絶対に!!…是が非でも、辿り着いてやる!!)」

天を睨み据えながら、私は決意した。

 

背の部分をまくった服を元通りに下ろし、私の背を押しながら「できたで」と声をかけられる。

 

 

「……一言だけ、言っとくわ」

 

「?」

 

「必ず…生きて帰ってくるんやで?」

 

「ああ!約束する!!」

 

そう言ってから背を向けたまま迷宮の入口へと歩んでいこうとする中、腕を引っ張られて引き止められた。

 

 

 

「…ケイト、もう一つだけ言っとくわ」

「何?」

「お前…もう、Lv.10なっとるで?」

「…え?;」

 

そのロキの言葉に思わず振り返る中、ロキは真っ直ぐに私の目を見つめたまま言葉を続けた。

 

 

「今までに得た幸せ、それが続いて欲しいと初めて心から願った。

そしてまた初めて失いかけた時、深い哀しみに落ちた。

 

お前には…どれもこれも、それまでには一度として無かったもんや。

 

今まで抑圧されてきた精神が、自分で自分を抑えて人の為って雁字搦めに押さえ込まれてたそれが…ようやく解き放たれた!

感情もやりたいこともまた、自然と表に遠慮なく出せるようになったことにも起因してるんやろうなあ。

とっくに力と敏捷がLv.10相当の数値になっとったし」

 

そうロキから指摘を受ける中、ああ…それでかと納得し…頷いた。

 

そして…フィアナの言葉(閑話2)が脳裏に浮かんだ。

 

 

『あなたが心から強く望み、願い、人の為と自ら雁字搦めに縛り付けていた精神が解放されたその時こそ…真の力が解放される。

 

数値は既に、Lv.10まで満たされている…後は、あなたの心構え次第です』

 

 

『あなたにお願いがあります。

 

それを失いかけた時…精神を自由に解放してあげてください。

泣きたければ泣き、怒り、哀しみ…そのままに!』

 

 

「ケイトが人生で初めて心からこの幸せな日々を守りたい、失いたくない!

そう涙と共に心から願ったから、魔法と恩恵がその強い意志を汲んだんかもしれんな?

 

心の成長って奴や!^^//」

 

「……そうだね…随分と、刺激的だったようにも思うよ」

 

微笑しながら、皆との時間を思い浮かべた。

 

どれもこれも、人生で初めてのことで…付き合ってくれる人さえもいなかったから…余計に強く、刺激を感じられた。

 

 

「失いたないって、皆が言った気持ち…今なら、もうわかるな?」

「うん…痛いほど、わかる」

 

「ん。自分にも、向けたるんやで?」

なで

 

ロキの問いに即答しながら頷く中、再びロキは頷いてから問いかけ、私の両頬を両手で優しく撫でた。

 

それに対し、私は涙を滲ませながら再び頷く。

 

 

「わかってる。絶対帰ってくるからっ!フィアナと待っててくれ!」

「はっはっはっ!このパネルの中にはもう宿らんやろうけどな?」

 

「それでもいい…

私にとっては、大切なものだ!」

 

「ん!それでこそケイトや!!」

バシィン!!

 

真剣な面持ちで大切なものだ、だから頼むと訴えかけた。

 

それに対してロキが取った行動は、さも満足気に満面の笑みを浮かべながら背を叩くというものだった。

 

 

「いってき!ウチは黄昏の館(ホーム)で、いつまででも待っとるで!!」

「うん!!」

 

そう私へ向けてサムズアップするロキに、私は頷き…ロキと同様に笑みを浮かべながらサムズアップして答えた。

 

 

 

「ケイトさん!!もうあと1分で行くっすよ!」

 

「わかった!!」

だっ!!

 

あ、最後に伝えておかないと!

 

そう考えながら踏み止まって振り返り、ロキへ尋ねる。その距離は2Mほどに離れていた。

 

 

「あと、遠征に行く自動更新する魔法かけてもいい?」

 

「い…まさかっ!?;」

「ん。全員Lv.8にする!」

「はあああああああっ!!!?」

その問いかけに既に察しがついてか後ろへたじろぎ、わかった瞬間にロキは叫んだ。

 

「Lv.8だった時の自分を倒せない限り何年でも何十年でも出れない異空間に閉じ込める!

大丈夫!!皆互角に渡り合う域には達してたから!」

「~~~~~っ!

あーもうわかった!!

 

尻拭いしたる!骨も拾うたるわ!

(最下層行くには必要なことか…でも頭痛い!!;)」

 

ガシガシと乱暴に後ろ頭を掻きながら冷や汗交じりにそうロキは叫び、まるでやけくそだとでも言わんがばかりに頷いてくれた。

 

 

「その為に、ロキの血を貸して欲しい。媒体にする」

「ほいほい。とか言いつつ傷は治すんやろ?」

「当たり前だ!」

「ホンマにお前変わらんな」

そう正面から向かい合ったまま言い合い、最後に微笑み合った後、ロキは迷わずに指を傷付けて血を渡してきた。

 

それを、中に入れた瞬間から入れたものの時間を止めたまま保存できるカバンへと入れる。

《神秘》と【自由自在】で作ったものだ。

 

 

「ありがとう!上げた後は任せた!!」

「覚悟決めた!覚悟決めたで!!」

そう言いながらロキの傷を治す中、私へ向けてロキは拳を向けながら叫んだ。

 

そうして私は再び「ありがとう」と礼を言い、背を向けようとする。

 

 

「ケイト!」

「はい!」

「一緒に帰ってきいや!!」

「うん!!」

 

その最中でパネルを頭上に掲げながら叫びかけるロキに、私は振り返ったまま力強く頷いた。

 

 

「出発するっす!」

「今行く!!」

だっ!

 

そうして今度こそ私は、脇目も振らずに迷宮へと潜った。

 

待ってくれていた皆と一緒に…

 

 

 

「(フィアナ…待ってろ)」

 

「(頼んだで、皆…あの馬鹿を護ったってや…)」

 

足元にあるフィアナを持ち上げ、大事そうに抱えるロキの姿を最後に見やり…今度こそは、迷宮へと入っていった。

 

 




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