神様を殴る為に神を目指すのは間違っているだろうか   作:-恵-

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異端児(ゼノス)

6月11日、朝

 

『バベル』地下一階――

 

ダンジョンに通じる大広間で、床の中央では唯一である地下迷宮の出入口直径10Mの『大穴』が口を開けている。

円形の広間には長く太い柱が等間隔で並んでおり、頭上には本物と見紛うような美しい蒼穹の天井画が広がっている。

 

円周に沿うように緩やかな階段が設けられ、大きな螺旋を描いており…そこを共に歩いて行った。

 

 

「ごめん、寝てもいい?」

 

「駄目っすよ。せめて18階層に辿り着くまで我慢を…;」

「う…あ……うう」

 

ラウルの言葉を受けた後、私はふらふらと意識を今にも手放しそうになっていた。

 

うとうとと意識がまどろんでいき、次第に頭が舟をこぐ中…「ごめん、寝る」と言ったが最後、柱を背に一度眠りについた。

 

 

「ええ!!?」

 

即座に叫び声が帰ってくる中、強引にガレスに肩に担がれて降りていった。

 

第2部隊の中にはガレス、ラウル、アイズ、私が主な主戦力…らしい…

 

 

「う…あ…

(眠い…フィアナ…会いたい……)」

 

うとうとと再び頭が舟をこぐ中、1階層に着いてからガレスに「ほれ起きんか!」と小突かれながら起こされ、道中にでも寝ながら歩いていたらしい。

 

 

-------------------------

 

 

ラウル視点――

 

 

「大丈夫っすかね?今にも寝そうっすけど」

 

そう見つめる中、モンスターパーティーに遭遇した。

迷宮の壁から無数のモンスターが湧き出、俺達を囲んだ。

 

 

「迎撃準備!」

 

そう叫ぶ中、ケイトさんは事もあろうかそれを前にしてもなお前へ前へと進んでいた。

 

「い!!?」

 

それに狼狽する中もなお、ケイトさんは進んでいき…モンスターの攻撃を全て避け続けながら前へと進んでいった。

 

 

それも全方位から。それでありながら一発として喰らっていない。

 

一匹の攻撃を逸らして別のそれへとぶつけ、逸らした先に居るモンスターが雪崩式に崩れていく。

たった3度、その動きだけで全方位のモンスターの動きを崩し、無効としていた。

 

 

「囮?」

アイズさんが隣で呟く中、俺は納得した。

 

「(そうだったのか!)

ケイトさんが囮になってる間に攻撃!!」

「おお!!」

 

と俺はケイトさんの意図を組んで、引き付けられている敵を全て倒した。

 

 

「(フィアナ……待って…て)」

 

ぐーと眠りながらも遠征の道を行くケイトさんに、俺はただただ凄いなと…心から想った。

 

 

-------------------------

 

 

アイズ視点――

 

ケイトが今にも寝そう。それも仕方ないと思う。

 

5時に起きた私は、ケイトのいる部屋へと壁を伝って窓から覗いていた。

 

だから私が18階層まで背負っていく為に、その情報を全て開示した。

 

 

「徹夜で予習していたみたいだったから。

まずは遠征で使う道の復習、その次に全階層のモンスターの復習、次にパーティーでの自分の立ち位置や振る舞いの復習、こう動いてきたらこう動くという復習、こんな場面に陥ったらと想像を働かせながらその時はこう対処してこう動いてとずっとずっと考え続けていた」

「やり過ぎっすよ!!;

でもどこから見てたんすか?」

 

「窓から」

「え!?でもいつもなら廊下使ってるでしょう!?」

 

「その方が早いから」

「ケイトさんの思考に染まってるっすよね!!?;」

 

「えっと…めんどくさい?;」

「首傾げながらそんなこと言わないで下さい!!染まっちゃ駄目っすよ!;」

 

(何でそんなに必死に叫んでいるんだろう?)

 

そうラウルの言葉に思いながら、今にも眠りにつきそうなケイトを見つめた。

 

頑張って立ち続けているけれど、もう限界だと思う。

 

 

そう考えてから、私は寝るように促すことにした。

 

 

「ケイト、寝て」

「え!?」

 

「う…ぁ」

ぐらぐらと頭が揺れるケイトに対して、私はそっとその肩に手で触れて支えた。

 

それから程なくして、私の前方へとゆらりと倒れ込む。

 

 

「あり…が……」

その言葉を最後に、がくりとケイトは力を失って崩れ落ちた。

 

それをそっとおぶる中、不安そうな声が聞こえた。

 

 

 

「もし怪物の宴(モンスターパーティー)が来たら…」

「わかっとるわ。

その為にワシとアイズがおる。ケイトはもしもの時の保険じゃ。

 

まったく…興奮して眠れなかったわけではないじゃろうな?」

 

ラウルの不安そうな声に対して、ガレスは私の方を見つめながら問いかけてきた。

 

 

「えっと…0じゃないとは思う」

 

「そうか」

 

「…確かに、ケイトさんほどの戦力は今はまだ必要ないっすよね。

よし、アイズさんは中央に居て下さい。皆、一丸となって進むっす!」

「「「「おお!!」」」」

 

ラウルの指揮を受けた皆はすぐに、適した陣形を指示も無いまま自然と取って動き出した。

 

 

多分…ケイトの修業があってこそだと思う。

無駄のない動きを身に付けれるまで、散々に叩き上げられていたから。

 

それに、ケイトが出発前に加速魔法を皆にかけていたし、ランクアップしていることもあると思う…

 

そう考えを纏めながら、18階層まで降りていった。

 

 

-------------------------

 

 

19階層

 

 

フィン視点――

 

18階層で分けた部隊を合流させた時には、出発から2時間半が経った後だった。

以前の遠征よりも遥かに速い。ランクアップしたこと、修業もまた要因の一つだろう。

 

 

それからケイトを2時間半ほど寝かせた後、ちょうど睡眠時間が5時間になったことからケイトを起こし、1つの部隊としてちゃんと共に進むよう指示を出した。

 

どうやら熟睡できたようで、うとうととしていた当時の様子を見ていた者達からすればその時とは見違えるほどにキビキビと動けていたそうだ。

僕は第1部隊だったから見ていない。詳細は後で聞こう、今は遠征だ。

 

そう目の前の指揮に意識を向ける中、ケイトが異変を察知したのか不意に立ち止まった。

 

 

「ん?」

 

「どうしたんだい?」

 

「いや…それが、モンスターから攻撃されてるモンスターがいてさ」

「?」

 

ケイトが見た光景、それは異種でもなく同種のモンスターが同胞を傷付ける光景だった。

 

 

「倒してくる!」

 

そう言うが早いか、彼女は襲い掛かっているモンスターを文字通り一蹴した。

 

槍を一閃させ、魔石とドロップアイテムだけが残る。

 

 

「!!」

 

それを見たモンスターは一瞬狼狽し、後ろへと下がる。

 

 

「どうしたの?他のモンスターに襲われてたみたいだけれど」

 

その問いかけに対し、そのモンスターはただただ震えて後ろへと下がる。

 

そして次第に遠ざかっていくモンスターに、ケイトは武器を赤い迷宮の地面の上へと置いた。

 

 

「!!ケイト!」

「止めなくていい。

この階層のモンスターぐらい、武器が無くても倒せるだろう」

 

リヴェリアが止めようとする中、僕はそれを手で制して止めた。

 

 

「大丈夫!私は攻撃しないぞ!

武器もない!」

 

『本当?』

 

両腕を広げながら語るケイトへ向けて、頭の中へと直接声が響いた。

 

それはまだあどけない、少女のような声で…それに何事かと周囲は動揺し、騒然になった。

 

 

「ああ!」

 

『いじめない?』

「当然だ!」

 

その言葉に深く頷くケイトに、また声が響く。

 

そう言いながらケイトは笑みを浮かべながら笑いかけ、モンスターへと手を伸ばすのが見えた。

それから幾度か言葉を交え、手を取り合ってこちらへ進んでくるのが見えた。

 

 

奥の通路へと隠れていたモンスター、それがようやく姿を見せた。

 

それはバグベアー、外にいる熊のように大きく黒い体毛のはずが…亜種だからか、白く輝いていた。

 

それは彼女と共に二足歩行し、身体に防具を付けていた。

 

 

そして数度言葉を交わし合った後、僕達の下へとそのモンスターを連れながら近寄ってきた。

 

 

 

「私、テイマーになる!」

「「「「「!!?」」」」」

 

その言葉に、僕達は揃って驚きを隠せず瞠目した。

 

 

「この子、ずっと独りだったんだって。

モンスターからも冒険者からも攻撃されてたらしくってさ。

 

それが不思議なことに会話できるんだよ?

他のモンスターだったらまるで血に飢えてるかのように問答無用で襲い掛かってくるのにね?」

 

そう語る彼女に、僕は待ったをかけた。

 

 

「待ってくれ…それを指し示す意味が分かっているのか?」

 

「え?テイマーって職業もあるんでしょう?」

「あるにはあるが役割は基本重い荷物を運搬するものだ。

人を攻撃するものでもないし、言うことを聞かせるだけに尽きる」

 

「でも、この子は意思を持ってるよ?」

「その認識が誰しもに通用すると思うな!」

 

「…え?」

「モンスターに殺された者は数多くいる。

冒険者を志す者、なっている者の中には数え切れないほどに居る。

 

僕もまた、その一人だ。言っただろう?」

 

「(フィンの過去)…わかってる」

「それでも?」

 

「譲れない!

 

彼女は私だ!誰にも助けられなかった…そんな私だ。

それを切り捨てるなんて私には出来ない」

 

モンスターを一度見やり、それでもなお叫ぶケイトに…僕はなおも問いかける。

 

正面から真っ直ぐに向かい合ったまま、50Cほどの距離を挟んで…

 

 

「たとえそれで家族から切り捨てられることになろうとも、譲れないかい?」

「譲れない!

こいつの気持ちは…痛いほどに知ってる!!」

 

「………話にならないな。

一方通行の感情論だ。何の解決にもならない」

 

「…どうしても許されないのなら…私は、迷宮で暮らす」

「暮らしてどうする?」

「最奥まで行く。そしてこいつが生きていられる場所を探す」

 

「…探してどうする?君の人生は

「私が決める!自分で決めたことだ。

たとえどんな扱いを受けようと是が非でもフィアナを連れ戻す!こいつも守る!」

 

「僕達の共に生きたいという願いを踏みにじってもかい?」

「!!」

 

「……」

「…………全部…事を済ませた後で、いくらでも報いる」

 

真っ直ぐに向かい合ったまま、数十秒ほどの静寂の後に真剣な目で真っ直ぐに僕の目を見つめながら言い放った。

 

 

「…はあ。腹は決まってるか」

「折れない、絶対」

 

「わかった。条件付きで許そう」

「団長」

「ああまでなったら彼女は聞かないさ」

 

ティオネが口を挟んできてそう答える中、僕は条件を出した。

 

 

「条件は3つ。

1つ目、人を傷付けないこと、もし人を傷付ければその時点で殺す。

2つ目、動ける場は人目に触れない黄昏の館内。

3つ目、移動中はケイトの空間魔法の中に居てもらう。

 

いいね?」

「わかった」

 

その言葉の後、ケイトはモンスターを見やり、モンスターはそれに深く頷いた。

 

 

『一緒に…暮らしても、いいの?』

「ん?うん!」

 

「ただし、食い扶持代は働いてもらうけれどね」

『頑張る!』

 

しかし…納得し切れない者がいるのは、既にわかっていた。

 

 

-------------------------

 

 

アイズ視点――

 

 

(モンスターを、迎え入れる?)

 

次の瞬間、昔の光景が頭によぎった。

 

黒い渦、それに飲み込まれ…喰らわれ…大切な人達は、消えていった。

その元凶は…モンスターだった。

 

 

(そんなの、許せない!)

ぎりっ!!

 

歯噛みと共に、私は前を向いてケイトへと歩み寄った。

 

 

「どいて…私が斬る」

「!アイズ?」

抜剣しながらの私の言葉に、ケイトは尋ねる。

 

「モンスターは、人の命を奪う。後になってからでは、手遅れになる!」

 

「…嫌だ」

 

その言葉に…ケイトは真剣な面立ちで、はっきりと伝えられた。

 

 

「誰かが殺されてもいいの?!」

「この人は殺さない!!」

 

「モンスターは人じゃない!!」

「この子は違う!!!」

 

「どいて!」

「嫌だ!」

 

 

「お願い…

私は、モンスターに奪われた。増やしたくない!」

「違う!!この子はしない!私がさせない!!」

 

頭を振ってなおも立ちはだかるそれに、私はなおも叫んだ。

 

 

「どいて!!」

「たとえ殺されたってどくもんか!!!」

 

剣を向ける最中、モンスターの前に立ちはだかったままケイトはなおも叫んだ。

 

 

わかっている…本当は……

 

ケイトが抱くそれも私が抱くそれも、感情論でしかないことを…

 

それでも、私は叫んだ。

 

 

 

「どいて!!」

「嫌だ!!」

 

「どいて!!!!」

「嫌だ!!!!」

 

すぅ

 

最後の忠告…激流となる感情のまま、私は叫んだ。

 

醜いほどの黒い炎、悲願――それを前に、行動を移す前に叫ぶ。

 

 

「どいて――っ!!!!!」

「嫌だ――っ!!!!!」

 

両腕を広げながら、モンスターを背に回して仁王立ちするケイトに…その背に居るモンスターを倒す為、私は動いた。

 

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)!!!――(エアリエル)】!!」

だんっ!

 

後ろにある迷宮にある赤土の壁へとバック宙と共に両足で垂直に着地、そのまま足場とする。

 

 

「アイズ!」

「リル・ラファーガ!!!!!」

 

フィンの制止の声も聞かず、私は迷宮の壁を蹴って技を繰り出した。

 

 

 

個であるが故に、ぶつかり合う。

 

他とは違うが故――血が流れる…

 

 

 

渦巻く魔力と共に、白き閃光となって護る防壁を造り出す。

 

その最中で、暴風がケイトの背に居るモンスターへと迫る。

 

 

瞬間、ケイトの魔力の白い光が瞬く。

 

白く視界が染まる。

一点突破のそれに、ピシリと音を立てて崩れて行く白き防壁を前に…剣撃がケイトの顔面へと迫る。

 

 

 

『やめて!!!!!』

 

次の瞬間…両腕を広げながら、モンスターはケイトの前へと身を乗り出した。

 

 

「「!!」」

「っ!!(止められない!)」

 

私は咄嗟に軌道を変えることを試みた。

 

このままではケイトまで巻き込んでしまう。

だからこそ行った、左へと逸らすことを。

 

 

しかし…それは無惨にも、モンスターである彼女を貫いた。

 

 

-------------------------

 

 

ケイト視点――

 

 

白く瞬いて散りゆく白い光…それに白い体毛が混じって共に散る。

 

風と共に血が頬へと降りかかる。

仁王立ちしたままの状態から、目の前の信じられない光景に力無く跪く。

 

 

 

指が震える、手足が震える、目の前のそれが夢だと切に願う。

 

だがしかし…倒れ込んでくる温もりに、感触に、それは振り払われる。

 

 

目の前に、今にも倒れ込まんとするふわふわとした揺れる毛並…

 

そして受け止めた際に得た、毛皮の感触に…白い毛色に…

 

 

後ろへと倒れ込むそれに駆け寄り、両の腕で受け止めてその場に跪く。

 

そのさらに後方へ千切れ飛ぶ彼女の右腕に、私は慟哭する。

 

 

 

あらん限りに双眸を見開き、その両の目から滂沱の涙が溢れ出す。

 

「ぁっ…ぁぁっ…」

息を呑む中、目の前の光景は…感触は、訴えかけていた。

 

これは現実であると――

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

庇われたという人生で初めての経験…それがモンスターになるなど、誰が思っただろうか?

 

それを前に、腕の中にある温もりに…私はただただ泣き震える。

 

 

激情と共に沸き上がる奔流、その感情のままに魔力は解放される。

 

そこに含まれるものは、ただただ深い…哀しみ……

 

 

 

初めて現れた、身を挺して庇ってくれた存在――

 

それを前にして、ただただ涙が止められなかった。

 

 

「嫌だっ…嫌だっ!!

 

私を庇って傷付くな!死ぬなっ!

死んじゃ嫌だあああああ!!」

 

彼女を手繰り寄せるように抱き締め、魔力がその願いを叶えようと発光する。

 

魔力と共に降りかかる涙、それに目を細めながら…彼女は語った。

『無事で…よかった』と……頬を優しく、爪を収めた手で撫でながら。

 

 

「治れ。治れっ!治ってくれええ!!」

 

止めどなく溢れ出る涙、止められないそれに抗わぬまま…

 

張り裂けんばかりの金切り声を張り上げ、必死に覆い被さって魔力を送り込んだ。

 

 

-------------------------

 

 

フィン視点――

 

眩い純白の光に包まれ、ケイトの後方へ飛んでいた千切れ飛んだ腕が元通りになっていく。

 

その最中で、未だ僕達は動けずにいた。

Lv.10となった報告、それを受けていたからこそ…食らったとしても大丈夫だと考えていた。

 

しかし…目の前の結果に頭もついて行かず、身体もまた動かなかった。

 

 

「なん…で」

 

その最中で、呆然と立ち尽くしていたアイズが…ようやく言葉を零す。

 

それを皮切りに、周囲もまた反応を示す。到底信じられない、目の前の光景に対して。

 

 

「どう…して…?」

 

小さな声が…震えた声が、モンスターの彼女の耳にも響いていた。そして答える。

 

 

『初めて…だったから……

私には…いなかった。人は誰もが、攻撃してきた。

 

誰も…こんな風に話を聞こうとしてくれなかった。

 

寄り添ってくれたのも、受け入れようとしてくれたのも…全部が、初めてだった。

 

 

だから…私は、彼女に傷付いて欲しくなかった。

 

私の為に…戦って、くれたからっ』

 

ケイトと同じく涙を零しながら、彼女は想いを言葉として紡いだ。

 

ケイトの背へ腕を回しながら抱き締め、慈しむように笑みを浮かべ…頭を撫でた。

 

 

 

「…これで懸念材料はなくなった」

「でも団長!他のモンスターは」

「他のモンスターとは別だと考えた方がいい。

そんなモンスターがいるとは聞いたこともないし、防具を付けたモンスターなんて今回が初めてのことだ」

僕の言葉を受けたラウルが言い、再び僕は答えた。

 

「異常事態、か」

「ああ。それがモンスターに起こったんだと考えればいい。

彼女は態度で示した。下手をすれば死んでいただろうが…彼女を無事護り抜いた」

リヴェリアの言葉に頷き、モンスターを見やる。

 

(皮肉だね…

護りたい存在が、本来ならば傷付けてくる存在に護られるとは――)

 

そう考える中、リヴェリアは呟く。

 

 

「他とは違うモンスター、か」

「存在を知られていない、認知されていないということは…何者かが、この異常事態を隠蔽している可能性もある」

「となると、話は大きくなりそうじゃな」

リヴェリア、僕、ガレスと言葉を続ける中

 

「厄介事がどうしてこうも舞い込むかな;」

僕は両腕を組み、瞑目しながら苦笑すると…それもまた冒険だとガレスから答えられた。

 

その最中、アイズは行動に移す。ケイトの正面へ向けて、歩み寄る。

 

 

「…ごめん」

 

そして間近に迫った瞬間、アイズは言葉を放ち、ケイトは涙を未だ双眸から流しながらアイズへと背を向けた。

恐らく…モンスターに、自分と重ねてのことだろう。

 

モンスターを大事そうに腕の中に抱え、チラリともアイズを見やらないまま…まるで庇うかのように後ろへと引き寄せる。

 

 

ぎゅっ

「…ごめんっ」

 

その場に跪き、拳を握り締め…まるで懺悔するかのように、弱々しい声がアイズの口から絞り出された。

 

 

「…それでも…それでも、私はっ…

モンスターを、許せなかった」

 

声を詰めらせながら、向けられた背に手を触れる。それに対し…ケイトはようやく口を開いた。

 

 

「今は…違う?」

「…わからない。

でも…この子は違う。それだけは、わかる」

 

そうケイトはポツリと問いかけ、それに対し…

声を詰まらせながらも出されたアイズの言葉を皮切りに、ようやくケイトは振り返ってアイズへと向き直った。

 

 

「私は…あなたが受け入れられない。受け入れてしまったら…そうしたら…」

 

「…アイズ、受け入れるのはこのモンスターだけだ」

「わかってる!…でも…でも、私はっ!!」

 

折り合いが付かないのは仕方ない。それほどに…過去による傷は深い。

 

アイズの言葉に、僕は頷いた。

「モンスターを受け入れるのはこれっきりにしよう。後にも先にもこれだけだ。割り切るんだ」と…言おうとした時に、声が被せられた。

 

 

『いいよ』

「「「!!」」」

 

『…それほどの…何かがあったんでしょう?

 

なら…いいよ』

 

「………」

 

その言葉に目を細めながら笑いかけるモンスターに、アイズは瞠目しながら涙を滲ませた。

 

 

「……何でっ…」

『?』

 

「何でっ!あなたみたいなものばかりじゃないの!!?」

 

『…そんなこと、言われてもわかんないよ』

 

まるで悲鳴のような声をアイズは上げながら、いくつもの雫がその足元の地面へと落ちて濡らしていく。

 

そう眉を顰めるモンスターに、再びアイズは「ごめんなさい」と振り絞るような声で、震えた声で謝った。

再び『いいよ』という言葉が頭の中へと響く中、僕達は複雑な心境になるばかりだった。

 

 

「アイズさん…」

「ごめん…大丈夫、だから」

目元へと手を当てて涙を拭うアイズにレフィーヤは歩み寄り、アイズはそう言ってから独りで壁と向き合った。

 

整理が付くまで、やはり相応の時間が必要となるだろう。

 

 

モンスターとの確執…それを埋める存在になるなど、最下層に盟約があるなど…この時の僕達はまだ知らない。

 

 

 

そうして…僕達は50階層へ2日もかからず辿り着いた。

 

普段ならばどう急いでも5日はかかったのだが…加速魔法だけじゃなく、修業の効果もあってだろう、無駄な動きが皆無と化したお陰だとも思う。

 

だが、安全階層でもあるモンスターが湧かない50階層で、僕達はケイトから2回目の修業を受けることになる。

 

 




未知の復習→道の復習
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