神様を殴る為に神を目指すのは間違っているだろうか   作:-恵-

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帰還

見つけた瞬間には、既に遅かった。

 

どごぉっ!!!!!

右側から現れた階層主からの凄まじい魔力と共に放たれた一撃、それが防具へと炸裂した。

 

肩にかけていたカバンのショルダーベルトが切れ、通路側の前へ飛ばされる。

 

 

だぁん!!!!!!

「ごふっ」

そして…隠し通路の出口側とは反対側の壁へと減り込み、咳き込んだ。

防具も私も傷は一つとして入ってはいないが、衝撃が凄まじかった。

 

だが、Lv.10になるに従って得た発展アビリティ《物防》と《魔防》がある。

その両方が備わったことによって現われる効果《絶対防御》もあってか、どんな攻撃も効かないようになってしまったようにさえ感じさせる。

 

 

『ケイト!!』

「来るな!」

ハクから駆け付けようとされる中、私は壁を蹴って抜け出すと同時に、まるで滑り台のように降りてくる皆へ向けて叫んだ。

 

確かに…あれは階段ではなく滑り台みたいに向で手すりも無かったし。

 

 

「グルルルルルルルルッ…ウォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

階層主が周囲の魔力を取り込みながら自らを強化し、それと共に凄まじい咆哮が響く中、止めどない連撃を絶え間なく浴びせ続けられる。

 

光速とも思えるそれをしっかり防ぎ続ける中、残り時間まであと42分を切った。

一向に離れないそれに向け、私は覚悟を決めて槍を背から抜きながら手に持って天を衝くように構え、魔法円を展開させると同時に叫ぶ。

 

 

「【魔槍よ、血を捧げし我が身を焦がせ。フィアナの下に誓え。如何なる逆境をも打ち払い、長き戦に終焉を(もたら)さんことを】!!」

次の瞬間、血が湧き立つのを感じた。

 

「っ――【狂神化(ベルセルク)】!!」

血が通っている全て部位が赤く、血の色へと染まる。

 

煌々と赤く光を発し、全身が湧き立つ最中

私は周囲の魔力を使って【自由自在】を発動、プロミネンスをそのまま風へと置き換えたかのような暴風を生み出し、それを槍先に集中させながら地面へ深く深く足を突き立てる。

そして一足飛びで、暴風と共に一塊の槍となって宙を駆ける。

 

異空間の中で編み出した必殺技…一直線に相手へ駆け、そのままに貫く。その名も――

 

 

一閃(いっせん)!!!」

光速をも超える速度…音を置き去りにし、階層主の防御しようとした右腕ごと貫き、その胸を貫いた。

 

魔石が見える中、それは音も無く余波によって砕かれる。

全長25Mほどの大きな恐竜の化石を思わせる見た目、爪、牙が、灰となって崩れ落ちていく。

 

それを前に…私は天を仰ぎながら呟いた。

 

 

「【終焉は齎された】」

その言葉が喉から出たとほぼ同時に、魔法は解除された。

 

そしてようやく文字が刻まれた壁に歩み寄ってからウロウロと辺りを見渡すも核のようなものは一切なく、ダンジョンは死なないのだと悟った。

 

 

それから程なくして、ハクから盟約というものが文面を読み上げられることで示される。

 

どうやら…地上の光に焦がれるのは、元々迷宮そのものが地表にあったが故、そして…それを神が纏めて地下へと閉じ込めたが故だったらしい。

そして成り立ちが明かされた後、異端児と呼ばれる心を持ったモンスターとの共存について書き記されてあった。

 

だが…【狂神化(ベルセルク)】の反動に伴う『虚脱状態』で意識が朦朧とするばかりで、最早聞く気力さえも浮かばなかった。

どれほど頑張っても意識を保てるだけ、11年欠かさず頑張って発動させ続けても立ったまま会話できるようにするだけで限界だった。

 

 

「ケイト、予め君が用意していたポーションだ。

虚脱状態に効くよう作っただろう?」

「あ、ああ…カバン、拾ってくれたんだ」

 

「ケイト、魔石とドロップアイテム…拾ったよ」

「あり…がと」

フィンとアイズが駆け寄る中、ふら付きながらも会話を何とかした。

 

そしてそれを飲んだ後、感じていた虚脱感が一瞬で消し飛んだ。

 

 

「フィアナ…!!今何時何分!!?」

「あと20分しかない」

「い!!!?」

フィンのその言葉に、私の血の気が一瞬で引いた。

 

「嘘だ。残り時間がちょうど40分を切った所だ。

さて、これで我に返ったね。Lv.は上がったかい?」

「驚きで死ぬかと思ったよ!!;」

未だ淡々と向かい合ったまま言い放ってくるフィンに叫ぶ中、リヴェリアから服の背を捲し上げられた。

 

ぐいっ

「数値自体は無限大の域にまで達している。だがLv.自体は…」

「だが!!?」

リヴェリアのその言葉に、上がってない!!?と想起し、目を見張りながら振り返って迫った。

 

「上がっている、それもLv.は無限大表記だ。おめでとう」

「からかわないでよ!!!;なにさ皆揃って!!;」

「迷惑料、とでも思ってくれないかい?^^」

「くっそぉ!!;それ言われたら何も言えない!;」

リヴェリアとフィンの言葉に叫ぶ最中、「元々11年の修業で上がっていたのではないか?」「確かに。今更階層主程度で上がるとは思えないね」とまで言われる始末。

 

そう言えば確認してなかった…最下層に行ってからフィアナの下にって決めてたし。

どうなってるんだろう?まあいいや!時間は戻らないし…

 

って言うか確認すればよかったなあ。って考えるのはもうなし!集中しろ!!

 

 

「それよりも今はフィアナ!!

えっと、空間魔法で神の力を覆って。フィアナと繋がる糸を掴んで…」

 

そして予め言ってたように、光魔法をその糸へ添わせて皆に見えるようにしていく。

 

 

「探索はしなくていいの?」

「ケイトの瞬間移動でいつでも来れる。もしするならばその時にしよう。

最下層の壁が赤土だなんて誰も信じないだろうけれどね」

 

ティオナの言葉にフィンが肩をすくめながら答える中、50階層に居る皆が一か所に固まったのを感じた。

 

 

「今から皆を黄昏の館に瞬間移動で送る。そして私は、あいつの下へ殴り込みに行く!」

「必ず帰ってくるんだ。いいね?」

「わかってる!」

そう叫ぶ中、周囲から声がかけられる。

 

「待ってるね?」

「うん!」

『待ってる』

「待っててくれ!」

「頑張って!」

「おう!」

「くたばんじゃねえぞ」

「誰が死ぬか!」

「それよりもぱっぱと行かんか!!キリがないわい!!」

「ぱっぱと行ってぱっぱと帰ってきなさい!」

「ほい!!;」

すぐ傍まで来て声をかけてくれたアイズ、ハク、ティオナ、ベートの言葉に逐一返事する中、ガレスとティオネが叫んできた。

 

丁寧過ぎたかな?;

 

 

「私から言いたいことは…わかっているな?」

「生きて共に帰る!!」

真っ直ぐリヴェリアを見つめながら真剣な表情で叫んだ私の言葉に、リヴェリアは満足したかのように微笑んで頷いてくれた。

 

そして「時間もそうないくせに」とぶつぶつ言うガレスと、「仕方ないよ。そういう真面目な性格なんだ」というフィンの会話を背に、「送ります!」という掛け声と共に私は黄昏の館へと私以外の皆を瞬間移動で送った。

 

 

(よし。忘れ物無し。と言うかフィンに魔石とドロップアイテムを入れたカバンは預けたままだから、大丈夫なはず。

そう言えばあのカバン、見た目的に入らなそうなものまで入るんだよなあ。

 

って、関係ないことに思考回すな!)

ぱぁん!!

 

そう独りきりのまま両頬を両手で叩いて思考を追い払い、一つのことへと意識を向ける。

 

 

 

そうして…私は糸を辿って、文字通り世界と世界の間にある空間を超えるよう

 

ランクアップに伴って得た『神の力』を使い、迷宮を光という理をも超えた速度で世界を越えた。

 

 

 

-------------------------

 

 

6月13日、昼

 

神界、とある空間

 

 

「あと…30分もないのね」

 

初めて会った時の空間…真っ白な背景、フィアナ以外に何もない空間…そこで一人の女性の声が虚しく響き渡る。

 

右手で掴んだフィアナと繋がる糸の先にある空間、その中にフィアナが居るのを確認後…私は左拳に力を溜めた。

 

 

「うおおおおお!!!」

バリィン!!!!

 

空間の中に私は文字通り障壁を殴り飛ばし、文字通り殴り込んだ。

 

ピシピシシと音を立てる障壁、後ろの割れて行く空間に背を向けたまま…中央に居る馬鹿に目を向けた。

 

 

「!!ケイト!」

「ぶん殴りに来たぞ!馬鹿女神!!」

椅子も無いが故に立ったまま凄まじい物音によって振り返るフィアナに対して

そう叫びながら歩み寄り、私は軽く拳をフィアナの頬へと押し付けた。

 

音も無く、痛みも無く…『神の力』を送り付けるだけのものを。

 

 

「…これで…お前の神としての寿命は持つ。

 

私への神愛加護も解除させたからな!^^」

「馬鹿でしょう!!?何の為に」

 

背の温もりが消えたのを感じながら笑みを浮かべて叫ぶ中、逆にフィアナは叫び返す。

 

「何の為にしたと思っているの!?」とでも言わんがばかりに。

 

 

「ああ。

これで魔力と気は0から開始だ。精神力も全部元通り」

「なわけないでしょう!

送り続けていたものだけ無効とされます。そしてそれは、神愛加護だけです!」

 

「ああ…知ってるよ。

だから、Lv.も身に付けた力自体は何も変わらない」

 

「あなたは…っ!!

自分の力が惜しくないんですか!!?」

「お前を失うこと以上に惜しいものなんてあるのか?」

 

眉を顰めて首を傾げながら問いかける中、フィアナは愕然とした表情を浮かべて信じられないものを見るかのようにこちらを見やる。

 

未だ真っ直ぐに向かい合ったまま、言葉は続く。

 

 

「私は…お前とも、平和だって感じる日常を歩みたい。

 

幸せだって思える時間を過ごすには…どうあっても、不可欠なんだよ。

だから…迎えに来た」

すたすた

 

そう言いながら、足をフィアナへと進めてさらに距離を縮める。

 

50Cほどあった距離が、30Cほどに縮まる。

 

 

「っ!」

「帰ろう?」

 

その言葉に息を呑み、両手を口元に持って行き…彼女は涙する。

 

それに対し、私がするのはただ一つ…「帰ろう」という言葉と、差し伸べる手だった。

 

 

「……馬鹿でしょう」

「馬鹿だ。

 

フィン達と居れば、そりゃ幸せだよ?

でも…それはお前がいなきゃ、在るはずもないものだった。

 

そのお前が…最期の最期まで送り続けようとしてるのに、黙っていられるか。

だから殴りに来たんだよ、バカダチを!」

 

微笑みかけながら真剣に叫んで再び手を取れとばかりに目の前で手を差し出しながら振った。

 

 

「……っ…はいっ^^//」

 

その言葉に、ようやく涙を流しながらも手を握ってくれた。

 

 

それとほぼ同時に、フィアナのいた空間が…空間を保っていられるほどの『神の力』が残されていないことを示すかのように、ヒビがピシリピシリと拡がると共に弾かれるように全て砕かれた。

 

恐らく…無理やり立ち入ったことによる影響もあるのだろう。

 

 

 

下へと落ちる感覚が私達を包み込む。

 

何故か私達の周囲には青い空があり…その遥か下、何M先かわからないほど離れた場所に見慣れた地球があった。

 

 

神界(神達が住まう世界)と、現界(地球のある世界)…

 

神の力を持ってしてもなお足場が作れない異空間、今なお落ちてゆく感覚が示していた。

あと5分もすればこのまま違う世界の外壁に叩き付けられて…消えるだろうと。

 

 

 

その中で、私はフィアナを送る為に神の力を全て解放させる。

 

温かな感触が全身に満ち、拡がり、フィアナまでをも純白な光が包み込んでいく。

 

 

「…凄い」

 

そう呟くフィアナに対し、空中で手を離しながら軽く突き飛ばしてから、私は微笑みかけてあることを打ち明ける。

 

 

 

「私の残りの力は、もう…片道分しかない」

「え!!?」

 

「ごめん…フィン…皆……本当は、一緒に帰りたかった。

でも…やっぱり何百年も帰れてないこいつを、帰らせてやりたいんだ…

 

どうせ一人しか無理なら、お前を送るべきだろう?」

「っ…ふざけないで下さい!!」

 

「大丈夫だよ。

何年かけてでも絶対私も帰る。約束したからな!^^」

「また…人を立てるんですか!!?

人を立てて!自分を犠牲にするんですか!!?」

 

「ああ。送り返す」

 

そう言いながら中空で正面から向かい合ったまま…フィアナへと翳した左掌に力を集め、フィアナを送るよう力を込め始める。

 

 

「そんなこと、私が赦すとでも思っているんですか!!?

 

私だって!あなたと同じく、恩恵も無い状態で徳を積んで神にまで上り詰めたんですよ!!?

 

私が!あなたと想い人を引き離すような真似を許すと本気で思ってるんですか!!?」

「!」瞠目

「許しませんよ!!絶対、許しませんからね!!!?」

パシィッ!!!

 

真剣な表情でそう捲し立てた後、中空で与えた力を使って私へ向けて飛び

今もなお送り続ける私の力を振り払い、無理やり私へと手を伸ばして私の左手を掴む。

 

 

「帰るなら…二人…一緒にです//」微笑

 

そうフィアナは笑いかけ、離れ行く私の手を強引に取った。

 

 

「っ…」

うるっ

 

それに対し、私は涙を浮かべながら笑った。

 

 

「馬鹿だな…本当に^^//」

双眸から涙が零れ落ちる最中、彼女はなおも笑う。

 

「黙りなさい…あなたには言われたくはありません」

そう言いながらくすりと笑みを浮かべ、なおも言葉を続ける。

 

「大好きですよ…あなたのこと。

ずっとずっと見ていました…心から、心配で堪らなかった(ぽとっ)

 

いつしか…壊れてもなお奮闘し続けるあなたに、私は惹き付けられた。心を奪われた。

 

大事で…仕方のない人となったんです^^//」

 

「……私だって…同じだよ……

こうしてまで助けようと尽力してくれた人は…お前が初めてだった//」ぽとっ

 

「ええ…私もです//」

 

目を伏せながら笑うフィアナに、私もまた笑みを浮かべる。

 

ぽとぽとと涙が上へ上へと零れ落ち、落ちていく私達とは対照的に上がっていく中…フィアナの口から、再び声が聞こえる。

 

 

「だから…帰りましょう?今度は一緒に…

 

あなたを心待ちにしている人達がいます。帰りを待つ家族が、私を送ろうとした世界にはいるんです!

私だけを帰してそれで終わりだなんてっ…絶対に、絶対に許しませんからねっ!?」

ばっ!!!

 

「!!何をっ

「私の溜め込まれていた力も使います!それなら、あるいは」

『ならん!!』

 

その直後…荘厳とした球状の光が私達の下へと現れ、落ちる私達にぴったりと添い続けてきた。

 

 

「…!!(魂?)」

「最高神様!?」

 

『さすればお主は消える。

ケイトよ…お主は、神として神界で目覚める前に送り込まれた。

 

どうせ使うのならば、こちらにせよ!』

ぽおおっ

 

次の瞬間、元々の世界で渡されるはずだった神の力が私の中へと雪崩れ込んできた。

 

 

「!神様!」

それに、うるっと目を濡らすフィアナ…その中でもなお力を送られていた。それほどに強大だった。

 

「っ…」

「「ありがとう、ございます!!」」

私もまた涙で目を濡らしながら

そう声を揃えながら最高神へ礼を言って頭を下げる中、なおも最高神様は付いてきてくれていた。

 

私は下を見て、時間がそう残されてないのを感じる。距離があと少ししか…時間にして、もう2分しかない。

 

 

しかしその視界に…元居た世界で関わった人達の姿が見えた。

 

 

『ケイトよ…お主は今、どうしたい?』

「帰りたい」

 

『元居た地球の場所か?』

「違う。フィン達の居る場所だ!!」

頭を振って答える中、最高神様は満足気に笑みを浮かべて頷いた。

 

『そうか…ならば行け!迷うな!!ワシが送る!!!』

その叫びに、流れ込んでくる力に…

 

私は声を詰まらせながらも、感謝の言葉を述べて頭を下げた。

 

 

落下する最中、最高神様の力によるそれに…既視感がよぎる。

 

あの日、あの時…違う世界へと落とされたあの感覚が……

 

 

 

『では人の子よ、さらばだ!』

 

その言葉を皮切りに、私は見慣れた場所の空中に居た。

 

遥か下に黄昏の館が見える。それも…50M先に!!

 

 

 

「「最高神様の馬鹿ああああああ!!!」」

同時に私達は空中で顔を見合わせ、今なお落ちながら「送り返す手伝いをしてもらった恩」にも拘らず全力で叫んだ。

 

「こうなったら…フィアナ!」

「あ、はい!!」

「あの時のこと、覚えてるよな!!?」

私が名を呼んで叫び掛ける中、フィアナは私の方へ向く。

それを見てから私は空中で笑いかけながら、左拳を握り締めてみせた。

 

「あ…わかりました!」

それに笑顔を浮かべて頷くフィアナへ、私はあの時(黄昏の館、参照)のように叫んだ。

 

 

「燃え上がれ、我が怒りよ!!」

そう言葉と共に今度は魔法円を展開しながら叫ぶ。

 

「私に当てれますかね!?」

フィアナはあの時とは違ってパネルではなく、両腕を交差しながら叫ぶ。

 

「プロミネエエエエエンス!!!」

かっ!!!

 

次の瞬間、白い光が爆発して天へと爆ぜた。

そしてそれはフィアナを遥か上空へと解き放たれる。

 

 

「(よし。これで時間は稼げるはず)」

どさくさに紛れて、全力で殴りたかったというのもある。

 

全力でぶつかり合えたことを拳を通して感じながら

私も態勢を整えた後、空間魔法で障壁を作ってプロミネンスを解き放つ。

 

 

そして再び上空へ浮き上がって重力が0に近くなった矢先…フィンが突如として私達の目の前に現れ、私を抱き締めた。

 

先程のプロミネンスで白い光と共に雲が全て吹き飛ぶ上空の光景を見て、私とフィアナが着いたのだと気付き

それを見たフィンは、予め渡しておいた「一度だけ望んだ願いを叶える道具」(出立、参照)を使って、私の下へ飛ばすよう願ったらしい。

 

 

 

「馬鹿!こんな高さの時に!」

「瞬間移動を使え!!」

咄嗟に手を握りながら何で来たとばかりに叫んだ中、フィンは私の双眸を真っ直ぐに見つめながら叫んだ。

 

「君ならばできるだろう?!」

「(はっ!)わかった!!」

その言葉に、フィンの言わんとすることがわかった私は頷く。

 

フィアナを神の力で引き寄せながら三人で固まり、魔法円を展開させ、【自由自在】で黄昏の館の中庭へと瞬間移動を行った。

 

 

落下状態で内心混乱していたこともあって頭もいつものようには回ってはおらず、恐らく…フィンから言われなければ気付けなかっただろう。

 

 

-------------------------

 

 

しゅんっ!

どさささっ!!

 

辿り着いた場所は…初めてフィアナに全力の魔法をぶつけた場所……黄昏の館の中庭だった。

 

フィアナが私の前に、私の後ろにフィンがいるのを感じる。

 

 

小人族(パルゥム)としての身体のまま、戻っていた。

小人族(パルゥム)として生き、神にまで上り詰めた体のままで…

 

そしてフィアナもまた…栄光を与えた小人族(パルゥム)としての姿へと戻り、それでありながら神の力を有していた。

 

 

「ぁ…ぁぁっ……」

そう息を呑むフィアナに対し、私は手繰り寄せるように抱き締め、頭を撫でた。

 

「帰って…来たのね?……夢にまで見た…あの世界にっ」

未だ信じられないようで、ぽろぽろと涙を零すフィアナに、私は頷いた。

 

「ああ…待ち望んだよ。

 

おかえり、フィアナ^^//」

 

「ただいま…ただいまっ」

 

涙目になりながら笑いかける中、フィアナはぽろぽろと涙を流しながら微笑み、正面から抱き締めてきた。

 

 

ぎゅうううと強く抱き返される中、彼女の涙の慟哭が響いた。

 

 

 

「あああああああああああああああああああああああ!!

わああああああああああああああああああああっ!!!」

 

一体どれほど…何年待ち望んだのだろうか…

 

哀愁の雰囲気を纏い、ただただ咽び泣くフィアナに…私はそっと、抱き返した。

 

 

その泣き叫ぶ声が止んだのは…落ち着きを取り戻したのは…数時間が過ぎた後だった。

 

 

 

フィアナの慟哭から数分も経たない内に、駆け付けた周囲によって変化は訪れる。

 

「おっかえりいいいいいい!!!」

「うぉう!;」

まずはパネルを手に満面の笑みで左前から飛び付くロキ、頭を滅茶苦茶に撫で回され、フィアナにはパネルが押し付けられていた。

 

「ケイトー!!」

 

どごぉっ!!

「ぐほおっ!!;」

「あっはっはっはっ!!^^」

ぎゅうぎゅうと後ろからティオナが飛び付き、私が咳き込む中でもなお屈託のないティオナの笑い声が響き渡る。

 

 

そして…中空からの瞬間移動から既にいた彼がようやく動く。

草を踏み分けながら一歩一歩近付き、足音と共に歩み寄ってきた。

 

「…おかえり」

 

そう右斜め前へ歩み寄り、笑いかけてくるフィンに…

一度は何年かけてでも帰ると別れを覚悟しかけたこともあってか涙が止められず、涙ながらに飛び付いた。

 

空中の時には余裕が無かったのもあって浸れなかった、再会できた感動が胸の内を占めた。

 

 

「ただいま!!」

 

そう立ち上がりながらフィンへと飛び付く。

その中でもなおフィアナは腰に、ティオナは後ろから、ロキは左斜め前から縋り付かれたまましたこともあり…

 

「!!」

どっすぅん!!!

 

飛び付いた結果…フィンは下敷きになった。

 

 

「私サンドイッチじゃないいいいい;」

じたばた

「落ち着け、落ち着いてどくんだ!」

「でもフィンの上からはどきたくないいい!!」

「潰れる!!」

「Lv.8がそんなことで潰れるもんかああ!!」

「いや、それはそうだが」

ギャーギャーと言葉をぶつけ合う私とフィンに、皆は笑いかけていた。

 

 

「ケイト…おかえり」

だきっ!

「うぉっ。待ってアイズ、重さが増して;」

「仕方ないわね。団長おおおお//」

「待て!今はこれ以上は!;」

「ケイたんの柔らかさマジhshs」

「ロキ、お前だけは引き剥がそう」じろ

「待ち!待つんやリヴェリア!本気で泣いとったから!!

そないなじと目で睨まんといて!?;」

アイズが乗っかり、私が感想を零し、ティオネが駆け寄り、フィンが焦り、ロキが柔肌なるものを堪能し、リヴェリアが諫めた。

 

勿論ロキは離すまいとしがみ付いていたが、リヴェリアから後ろ襟を掴まれて猫のように持ち上げられ引き剥がされていた。

 

 

その騒ぎを前に、また別の人達が会話をしていた。

 

 

「問題はここからじゃろうに、まったく」

「ランクアップの件だろ」

「Lv.8当時のケイトさん倒して遠征メンバー全員がLv.8になったなんて…どう言い訳したらいいんでしょうね?;」

「ラウル、それは言わぬが花ってものよ;」

ガレス、ベート、ラウル、アキが各々零す中…私はすぐ近くに、全身に感じる温もりを堪能していた。

 

私は、フィンの後ろ頭へ右腕を回して自身へ引き寄せながら密着して頬へと寄り添いつつ、フィアナの頭を左手で撫で続けていた。

 

 

勿論…ハクもまた心底嬉しそうにさらに上に乗ってこられて、さらにカオスへと突入していった。

 

「ハクうううう!!

ああでもフィンの温もりがああ///腕の中があああ///」

「どいて…どいて、くれ」

「あ、いっそのこと胸を頭に押し付けた方が

「殺すつもりか!!?///;」

腕の中の温もりによって『帰ってきた』という実感をより強める中、フィンから叫ばれた。

 

「所で…黄昏の館に帰ってから一体どれほどの時間が?」

「ああ、あの瞬間移動から5分も経っていない」

「!!

(最高神様…わざわざ気を遣って時間をいじって)

 

…ありがとう」

 

微笑みながら天を仰ぎ、最高神様へ向けて礼を言う中…

 

その最中でもなお

『おかえりなさあああい><///』

キャーとばかりに興奮し切ったハクに満足するまで押し潰され続けたわけで

 

今にも潰れそうなほどに悪化する現状に伴ってどかす為に皆が奮闘することになるのだが…ここでは割愛しておく。

 

 

ああ、でももふもふで気持ちよかった//まるでもふもふ毛布///

 

そう私は心より楽しみ、押し潰されながらもなお堪能できていたのだが…

フィンは死んだような目でどこか遠くを見つめており、それでありながらどことなく幸せそうに口元は微笑んでいた。何故?

胸に触れていたからだと明かされるのは、子を産んだ後になってからだった。理性と本能の狭間に揺れに揺れ、ひたすらに無心になるよう努力して死んだ目になっていたという。

 

 

 

後にこれまでのやり取りは『英雄譚』として、私の僅か8日の冒険が載せられることになる。

 

 

ディアフォロンもまたその時を境に知られることになるのだけれど、製作は私にしか出来ないし、持っているのは私とアイズだけだから奪われてもいない。

そもそもLv.8がほとんどのファミリアに喧嘩を売る者も無く、平和に過ごせているのが現状だ。

 

こんな幸せな日々が続いて欲しいと、心から願うばかりだった。

 

 




カバンから出しながら→背から抜きながら
皆が固まった→皆が一か所に固まった
草を踏み分け、一歩一歩近付く→草を踏み分けながら一歩一歩近付き、
6月22日21:50訂正

世界に入る→世界にはいる
6月23日11:34訂正
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