神様を殴る為に神を目指すのは間違っているだろうか 作:-恵-
黄昏の館、大食堂――
私はロキ・ファミリアの大食堂で夕飯を食べさせてもらうこととなった。
その道中の時、また新たに知ったことがある。
「……やはり、いつもとは空気が違うな」
「え?」
「いや…お前の周りの空気が、どことなく澄んでいるように感じる。まるで森や大自然の中にいるかのような」
「へ?」
「!言われてみれば…」
「確かにそうじゃの」
「えげつない魔力がぼんぼん出てんのになあ」
『歩く清浄機ですからね』
「「「「「え?」」」」」
『あなたの魂の性質は浄化、どんな穢れにも染まらず、だからこそここに送り込みました。
それも当然、あちらの世界で神に至ったのですから』
「…はい?私がしたことはそんなに大それたことじゃないよ?精々我慢し続けてきた程度で…
マザー・テレサならわかるけど、私は外に出た時に通り道で多少助けた程度で」
『精神的に助けられていた人がどれほどいたでしょうね』
「い、いや…でも第一軟禁状態でそんなに外に出れなかったし、出れたとしても買い物で荷物持ちをしてくれぐらいで」
『あなたは誰よりも素直で、純粋で…誰よりも真っ直ぐに相手と向かい合える人です。
あなたの境遇を紙芝居で説明しましょう』
何で…いきなりそんなことを始めるの?(汗)
パネルに浮かぶケイト物語という映像に、足を止めて周囲もまた凝視しだした。
『産まれた後、父母から水の中へ顔を押し込められました。
そしてあまりの苦しさに暴れますが暴れる度に何度も何度も殴られ蹴られ、暴力と暴言を振る舞われ続けました』
「うん。よく覚えてる。ってあれ?…苦しかったっけ?」眉顰め
その呟きなど無視し、さらに1枚めくった。
『結果…苦しいという感情も、痛みも麻痺して水の中で窒息していたとしても暴れなくなりました。
この状況が彼女にとっての「普通」となってしまったのです。
しかし、その痛切な想いは彼女の胸に焼き付いていました。
その為、苦しみや痛みが垣間見える相手には助ける為に必死に動き続けていました。
幼い頃に図書館で読んだフィアナ騎士団の後、それを信仰として頑張り続けました。
たとえ不条理な目に遭わされようと、その後の相手の苦しみを顧みて何度も何度も踏み止まりました。
周りは増長しましたが、助けを必要とする者には助け続け、死の瞬間まで周囲に尽くし、その中に自分の時間はありませんでした』
「でも漫画読んでた時あるよ?」
『あのですね…自分という時間がどれほど少ないか考えたことありますか?
たった数時間あるかないかでしょう』
「?ない日の方が多いぞ」きっぱり
『それだけ人に尽くしといて、過労を超えても続けて、不整脈引き起こしてもなおやめず、止めず、死ぬまで続けた馬鹿はどこですか?』ずいずい
「あ…ああ…そういうこと?」
『はい!あなたの誠心誠意貫き続けた行為が認められたのでしょう。
なんたってその背景が異常極まれりですからね。あんなに踏んだり蹴ったりな環境なんて滅多にありませんよ。
しかも助けてくれる人が皆無って何なんですか!!?あっちの世界滅ぼしても構いませんか!!?』
「それよりもお母さん大丈夫?お姉ちゃんが面倒見てくれると助かるんだけど」
『ほら!!自分のことよりも人のこと!!!』
「それだけちょっと気になってたんだけど…まあ、お姉ちゃんは自由人だけど優しいから大丈夫…だと…いいなあ」遠い目
『大丈夫ですよ!』
「生命保険下りたかな?あっちの方で金銭面苦労してないかな?」
『どれだけ馬鹿なんですか!!自分の人生を謳歌しなさいと何度言いましたか!!?』
「まだ今回で2回目だよ」
『それはそうですがもう少し自分というものを重んじてですね!!?』
「やだよ、めんどくさい」
『普通の人と逆なんですよ!!!!』
「んー…え?人のそれも顧みずに動けってこと?
そんなことするぐらいなら死んだ方がマシだよ」
『はい!!死にましたよね!
では最後の絵です!!
「そうして…水の中に周囲の都合で振り回されながらも、勇猛果敢に自らの生き方を貫く為に奮闘し続けた彼女は死に絶えました……」』
「でもなあ…助け求められないと助けなかったし、困ってた人を手当たり次第助けただけだし」
『それで普通だと思える周囲が異常なんです。しかもあなた悪人扱いされてましたよね?』
「え?他と違っててそれが相手にとって合わない形なんだから仕方ない
『そんなこと言ってたら全人類で戦争しないといけなくなりますよ!!!!!』
ぜーぜーと息を荒らすように女神フィアナの感情が現れていた。ので…
「大丈夫?お水ある?一息ついた方が」おろおろ
『大丈夫ですよ!!!ちょっとは自分のこと気に掛けたらどうなんですか!!?』
「え?自分のことなんか気に掛けた所で喜ぶ人なんて一人もいないでしょ?」
『あんたは自分の人生を考えろ!!!!!』
「何でそんなに怒ってるの?(心配しただけなのに)」汗
『ちょっとは自分で考えて下さい!!ぷんっ!!』
「???」眉顰め&首傾げ
「…この発言全部に嘘が一つもないんが逆に凄いわ」
「…あー…うん…大体は分かったよ」
『そうだ。フィンさん』
「?何だい?」
『ケイトのことですが、あなたが嫁にもらって下さい』
「「!!!!??///」」「「「!!!?」」」
「私あっちじゃ彼氏経験なんてないんだよ!?結婚もしてなかったんだよ!?何言ってんのフィアナ!!
ファーストキスだってまだなのに!!///」
「!!!??///」「「「!!??」」」
『魂の波長的に合うのが彼なんですもん。お互い合致してます。
そもそも、そうでなければあなたが男性に抱き付いたまま寝るなんて異常事態起こり得ません。彼だってあの後で寝てましたよ?』
「いや、それについては別に今言う話では」
「でも相手の都合もあるし!想い人いたら私ただの邪魔者でしょ!?」
『いるわけないじゃないですか!女性経験もファーストキスも皆無なのに!』
どすっ!!
『娼館だって行ったことないんですからね!』
どすすっ!!
『ケイト!あなただって行ったことないでしょう!!』
「そんなの結婚相手とだけやればいいんだよ!!第一そういうのを知ったのは24歳の時だ!
行為自体に対しては具体的にどうすればいいのかもわかんなかったし!!」
『薬学で何学んできたんですか!!』
「薬がどのようにして効くのかに決まってるじゃん!」
『解剖学の身体の違いから察しなさい!』
「はっきり口で言われないとわかりません!!」
「生々しい話に切り替わりおったの…」汗
「これ以上無粋な発言はやめてくれないか?汚らわしい」睨視
『「ごめんなさい」』汗
「にしても、ようフィンのこと知っとるなあ。ウチが知っとるんは14歳からやけど」
『ちゃんと下調べは済ませていますので。神の力があるので一瞬で済みます』
「(そう言えばさっきからフィンから言葉が返ってこな…)ってフィン!?大丈夫!!?」汗
「い、いや…君が誠実で安心したよ。女神フィアナが推薦するだけはある」
「心に深手を負っている…だと!?
フィアナ!人の個人情報勝手にばらすな!!プライバシーの侵害!!」
『えー?いずれにしろどさくさに紛れて会わせる気でいましたし…お互いに互いのことを知れてよかったじゃないですか。
あなたも彼も配偶者探しが異常に難航していたようなので』
ぐさぐさっ!!!
その何気ない一言と気遣いは、私の心に深々と突き刺さった。
「「…………」」
がくっ!!
膝から崩れ落ちたのは…何故だろう…何故……力が出ない……
「ケイたんは父親といじめっ子のせいで男性が苦手なんやったな?」
「確かに…そうだ……でも…まともな人…いなかった」
『兎にも角にも御飯にしましょう。お腹が空いてきた頃合いでしょう?』
「お前が仕切るな!!」
『ナイスツッコミ♪流石浪速の関西人♪』
「せめて…一発でいい…一発でいいから」
「落ち着き。もうすぐで大食堂なんやから挨拶の言葉考えときや?」
「!!!!!!!!!????」
「……どないした?…この世の終わりみたいな表情して」
『最初の難関…それは…大人数の前での自己紹介!
大人数の注目を集める中でのそれは、いじめられていた時の
「大袈裟にもほどがあるやろ!!ただ軽く声出すだけやで!?」
『いじめられていた時…なんて言葉を投げかけられたかわかる?
罵倒されるのが普通だったのよ?周囲全員からそんな言葉を投げかけられる地獄…あなたは考えたことがあるかしら』
「うん、済まんかった。軽率やったわ」
「しかし、我々が言うわけにもいかんだろう」
「そうじゃの。27歳にもなってできんとは…」
『8名以上の密集場所は霊感からか周囲の感情を感じて気分が最悪になってたものね』
「逆を言うと感情を持つ者がいるかいないかがすぐにわかるのか。便利だね」
『そう思うのは最初だけ。死した者まで視える感じる聞こえる、制御できるまでどれほど苦労したことか…
それでも周りに当たらないし、余裕なくても人に尽くすし…』
「まあ、ともかく…自分の言葉で伝えたいことをはっきり言ってくれ。
君にとっては今までの周りの人間はそういう人ばかりだっただろうけれど、少なくともここは違う。ロキが直々に選んだものが多いからね」
「そうそう!肩の力抜いてなー?^^」
ぽんぽんっ
そうロキから肩を軽く叩いてこられる中、フィンは言葉を続けた。
「事情についても、君が寝ている間に大体は説明してある。理解もあるだろうから気にしなくていい。
怯える気持ちもわからないでもないけれど、胸を張ってはっきりと伝えてくれ」
「!…(じわっ)
はい!」
『惚れましたね』じと目
「!!?//何で涙滲んだだけで」
『心許してるじゃないですか。気付いてないみたいですけど』
「な、何のことかわかんない!//」
すたすた!
「ちょい待ち!先に行ったらあかんって!!」
だだだだっ!!
「まったく…騒がしくなりそうだな。ただでさえ騒がしいというのに」
「がははははっ!ワシは気に入ったぞ?」
「気に入ってないとは言っていないだろう。それに、問題はこれからだ…
(異世界の住人、それが転生と共に種族を変えられ転移してきた。神が玩具として扱おうとしてくるのは必至。
どう守るかが胆となる。そして何より…異常極まりない力を、どう隠すかだ)」
リヴェリアがそこまで考えを巡らせているのを僅かに感じる中、私は大食堂に着いた。
そして…そこには既に、たくさんの人達がいた。
緊張して立ち止まり、硬直した私だったが…
「お~い、皆!嬉しいお知らせやからよう聞きや!?
なんと今日新たな団員が増えたで!自己紹介するからよう聞きや!?
ほい、ケイたん頑張り!」
軽く肘で小突かれて我に返った私は、弾かれるように声を出した。
「初めまして、私の名前はケイトです!家名はありません。
至らぬ点があると思いますが、その都度指摘して下されば助かります!皆さんよろしくお願いします!!」
叫んだ後、深々と頭を下げた。
(よし!噛まずに言えた!ちゃんと言えた!!)
しかし内心はドキドキでいっぱいいっぱいだった。
それとは裏腹に、団員達は「あ、庭をマグマにした子だ!」とか「あの子、可愛いな//」などと各々様々な反応を見せ、受け入れているようにも見えた。
しかし…魔法を使える人から見れば、異様なまでの魔力が常に私の全身を中心に渦を巻いているのが見て取れていた。
「あ!庭をマグマにしてしまってすみませんでした!!」
ずさあっ!!
「「「土下座!?」」」
ざわっ
「直ったんだし気にしないでいいんじゃない?」
「気楽過ぎるのよ、あんたは。そもそもガラスが割れなかったこと自体異様じゃない」
「魔力が……」「…化け物かよっ」
ざわざわ
(まずいな…魔力が無限大だということまで伝えたのは時期早々だったか?)
そうフィンが思考している最中、一人の狼の耳と尻尾を携えた男が気に食わなそうに舌打ちをした。
「はっ。随分といいご身分だな?
丁寧に魔力を無限にしてもらって送り込まれて…父母に反発できないただの甘ちゃんだろうが」
椅子を蹴って立ち上がり、私を睨視しながら彼は言葉を続ける。
「てめえの両親にも姉にも散々自分のやりたいようにやらせといて、それだけで強くなれんのかよ?」
「ベート!」
「待つんだ、リヴェリア」
ぎりっ!
フィンが肩を掴んで止める中、リヴェリアは歯噛みしながら睨み据え叫んだ。
「フィン、何故止める?今止めなければまたっ!」
「どうせ止まらないし、まだ皆は初対面だ。
いくら言い聞かせた所で、いつか不満は爆発する。それも必ずね。
ならばいっそ…ここで大いに爆発させておいた方がいい。
理不尽に対して怒ってもいいのだと、今度こそ伝える為に。彼女は特に知っておくべきだ」
「……見守るしか…ないのか」
「ああ。彼女の出方次第だけれどね」
「?どういう意味だ?」
「いや…彼女の性格上、家族への侮辱を黙って聞いていられる性分だとは思えない」
「てめえの家族とやらは暴力も暴言もやりたい放題のクズだ。てめえはそれに振り回され続けた雑魚だ!
その渦中にいたてめえが、抵抗できずにいたてめえが、一体どう強いってんだよ!?」
「取り…消せ…」
ばぢ
「あ?」
ばぢぢ
私を覆う魔力が雷へと変質していく。
「取り消せ!」
ぼぉっ!!!
自身の身を覆う魔力が雷と炎へと変質し、荒々しく自身の周囲を包み込んだ。
「家族への侮辱は赦さん!!」
「けっ…赦さねえなら何だってんだ?あ?」
ぱんっ!!
そのベートと呼ばれた彼の言葉に対し、自身の右掌へ左拳を叩き込んで握り締めた。
「実力が不満だと言うのなら、示すまでだ!」
「なら魔力抜きで来いよ!チート野郎!!」
「わかった。
フィアナ!全部吸っていけ。お前が与えたもの、全てだ!!」
『言葉が通じなく
「ならそれ以外全て無効にしろ!!そのパネルがお前の神界に通じてあるのは知っている!!」
『!!』
「…だから…私に与えた全てを、そこへ吸い取って封じ込め!」
『私と会話もできない、私があなたを見ることもできなくなる…それでも…やるの?」
「当たり前だ!!!」
『傷付けてきた家族の為に、戦うの?』
「違う!!私の誇りの為にだ!!!
守ってきたのは、食べ物を与えられたからじゃない。温かみも無いからといって投げ出さなかったのは…
その中に必ず、痛みがあったからだ!!余裕のない苦しみを感じたからだ!!!逃げなかったのは…それでもなお生きる為に抗い叫ぶそれと、真っ向からちゃんと向かい合いたかったからだ!
それに!…ベートさんの雑魚って言葉も、それだけの意味じゃない感じがする。
だから…どうせ戦うのなら、自分という存在一つだけでやりたい!!」
『………』
「はっ!(にや)
買ってやるぜ!気概だけはな!!」
「待て」
「何だよフィン、邪魔すんな!」
「どうせなら…戦う相手は強い方がいい。
女神フィアナが直々に力と敏捷がLv.7、耐久がLv.9、器用がLv.10だと判断したんだ。その力の片鱗は見ておきたい」
「…手加減する気じゃねえだろうな?」
「手心を加えるつもりは一切ない。全力で行くつもりだ」
「…ちっ。負けんじゃねえぞ」
「…私も、やりたい」うずっ
「ダメだ。まだ君はLv.5だろう?アイズ」
「あ。アイズ、ジャガ丸くん返すね!」
「ううん。それはまだ取っておいて」
「それはそうと、先にある程度食べておかなければいけない。彼女は朝御飯も食べてないんだ。
まだ恩恵も刻んでいないということを理解した上で、偏見も持たず見定めて欲しい。皆、いいね?」
その言葉に、皆は黙ったまま頷いた。
『……わかりました。今から3時間後まで、力の一切を出せないようにします。
そしてあなたは…異世界においての戦闘力しか出せません。いいですか?』
「望む所だ!!」
「「「「「「カッコいい…///」」」」」」
その真っ直ぐ過ぎる姿勢に、何故か見惚れる人が多々いたという。
私は気付いていなかった…
その時点で私を見る目が変わっており、既に好人物へと映っていたなど……
『では…異世界言語以外の全てのそれを吸い取ります。パネルに手を触れて下さい。
通信もできなくなります。頑張って下さいね』
「うん!!」
『(感情が随分と出れるようになった…
そのきっかけとなったことだけは感謝しますよ、
その後…作業を終えた黒い板はうんともすんとも言わなくなり、地へと落ちた。
それをロキへ預けた後、
そうして御飯を食べ終えた時点からさらに10分経った、30分後…実力を証明する為の戦いは始まる。
重ね重ねすみません、書き間違い及び変換ミスを修正の報告です。
周囲全員がそんな言葉を投げかけられる地獄→周囲全員からそんな言葉を投げかけられる地獄
感情を持つ者がいる甲斐ないかが→感情を持つ者がいるかいないかが
てめえの両親も姉も→てめえの両親にも姉にも
その時点で、私を見る目が既に好人物へと映っていた→その時点で私を見る目が変わっており、既に好人物へと映っていた
2018年6月8日23:54変更
狼人(ウェアウルフ)さん→
2018年6月9日14:11訂正
アナルカム→アルカナム
2018年6月18日0:13訂正